シャベルに魅入られた男

    作者:刀道信三

    ●地下駐車場
    「油断したっスか、センパイ?」
     男の持ったシャベルの刃が、もう一人の男の腹部に深々と突き刺さる。
     シャベルを持った男は、致命傷を与えようとコンクリートの壁に押しつけながら、突き刺さったシャベルの刃を捻り込んで内蔵を掻き回した。
    「もうちょっと開けた場所だったら、まだアンタの方に分があったかもしれないっスね」
    「クソッ!」
     悪足掻きのようにガンナイフのような武器から撃ち出された弾丸を、シャベルを持った男が、引き戻したシャベルの刃で受け流し、返す刀でザクザクと、武器を持った方の腕の付け根と喉元にシャベルの刃を突き込む。
    「やれやれ、六二一位でもこんなもんか……あー、コイツを倒したから、もう俺が六二一位だっけ?」
     男がシャベルの柄を肩に担ぐと、ゴロリと序列六二一位だった六六六人衆の首が地面に落ちて絶命した。
     男は自分の名前などに興味がなかった。
     身分証なんかを探せば、きっと人間だった頃の名前はわかるかもしれないが、ダークネスとなった今では意味のないことだ。
     ただ気がつけば武器としてシャベルを愛用していた。
     たぶん最初に人を殺した時に手にしていたのがシャベルだったのだろう。
     別にシャベルが武器として優れていると主張する気なんてない。
     多くの場合に道具が凶器になる時のように、偶々手に取ったのがシャベルだったのだと思う。
     愛着を持ってしまった以上は、それに合わせて殺し方を工夫すればいいだけだ。
    「さて、次は誰を殺そうかね」
     六六六人衆は、シャベルの柄で肩をトントンと叩きながら、地下駐車場を後にした。

    ●未来予測
    「ふふ、皆さん揃ってますね? では説明を始めます」
     教室に集まった灼滅者達を前に、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)が口を開く。
    「今回は序列六二一位の六六六人衆の行動を未来予測で察知しました」
     六六六人衆は気分で一般人を殺戮する非常に性質の悪いダークネスである。
     放って置くだけで一般人への被害を増やし続ける。
     未来予測で行動を察知することができた今こそ、この六六六人衆を灼滅する好機である。
    「序列六二一位の六六六人衆は、特に名前などの情報のないダークネスですので、仮にその特徴から『シャベル使い』とでも呼びましょうか」
     この六六六人衆はシャベルのような形状の武器を使い、せまくて直線的な地下駐車場のような場所を、殺害現場として好んで選ぶ。
    「今回シャベル使いは、4人の一般人を地下駐車場で殺害しようとしています」
     犯行時間より前に、灼滅者達はその地下駐車場に入ることができるが、シャベル使いと一般人達に接触できるのは、一般人達が地下1階に車を停め、エレベーターホールに向かう途中で、地下駐車場の奥、地下2階からシャベルの男が登って来て、一般人達を殺害しようと駆け寄る瞬間である。
    「シャベル使いは、皆さんと一般人達を、獲物として大きく区別することがないようですので、一般人達を避難させる必要があるでしょう」
     頭数を減らすために、一般人から狙ってくるということはないが、攻撃に一般人達を巻き込むことを特に気にすることはないだろう。
    「避難経路は大きく分けて二つです。エレベーターホールのエレベーターか非常階段、あるいは引き返して車道を地上階へと向かってもらうことになるでしょう」
     シャベル使いは、かなり高い戦闘能力を持った六六六人衆なので、避難誘導に手間取るほど、戦闘が不利になっていくだろう。
    「あとシャベル使いは、不利を悟ると撤退を図ってきます。問題はこの逃走経路が、避難経路と同じということです」
     一般人達が戦場から十分な距離を離れていなかった場合に、シャベル使いに撤退途中に殺されてしまう可能性がある。
    「未来予測の優位はありますが、シャベル使いは地の利を活かして相当高い回避能力を発揮することが予想されます。油断せず、十分に作戦を練って灼滅に挑んで下さいね」


    参加者
    田所・一平(赤鬼・d00748)
    外法院・ウツロギ(轢殺道化・d01207)
    鏡水・織歌(エヴェイユの翅・d01662)
    咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)
    朧月・咲楽(神殺しのサクエル・d09216)
    野乃・御伽(アクロファイア・d15646)
    綺羅星・ひかり(はぴはぴひかりん・d17930)
    佐倉・結希(ファントムブレイズ・d21733)

    ■リプレイ

    ●地下駐車場
    「六六六人衆か、アイツらは狡猾で頭がキレる。何しだすか分かんねー分、油断は無しだ」
     六六六人衆は殺人のためなら手段を選ばない。
     野乃・御伽(アクロファイア・d15646)は、かつて戦った六六六人衆のことを思い出しながら警戒を強くする。
    「シャベルは武器にしても強いて聞いた事はあるけど、自分が戦う事なるとは思ってなかったなぁ……」
     シャベルが戦争で武器に使われたこともあるという、どこかで耳にした知識を思い出しながら、佐倉・結希(ファントムブレイズ・d21733)は仲間達と共に駐車された車の陰に隠れる。
     灼滅者達はシャベル使いの襲撃を待つために、車道とエレベーターホールを見ることができる場所に身を隠していた。
    「地下駐車場が好きってのはマニアックな趣味だな、シャベル使い」
     咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)はそう言いながら地下駐車場に視線を走らせる。
     灼滅者達やダークネスが戦場にするには支障があるほど、せまいということはない。
     しかし空間は開けてはおらず、所々に駐車された車は遮蔽物に利用できそうである。
     仮にシャベルを得物に選んだのなら、ここは殺害現場に向いていると六六六人衆なら判断するのではないか、という印象を千尋は思った。
    「相変わらず序列の入れ替わりが激しいねー」
     未来予測によってもたらされた情報によると、シャベル使いは自分より上位の六六六人衆を殺害する場合にも地下駐車場などを使用する。
     自分の内なる闇である『ロードローラー』が、そのように地の利を活かして殺人を行っていた六六六人衆を狩っていたことを、外法院・ウツロギ(轢殺道化・d01207)は思い出す。
     シャベル使いの使用する地下駐車場は、特定の殺害現場というわけではないが、この場所自体がシャベル使いにとって武器なのだと、ウツロギは認識した。
    「シャベルで穴掘って埋まるアイドルちゃんなら聞いたことあるけど、シャベルで殺すダークネスってのは初耳だにぃ。人を殺すのはダメなんだにぃ。きっちりおしおきだにぃ!」
     大きな体を一生懸命屈めながら、綺羅星・ひかり(はぴはぴひかりん・d17930)はナノナノを胸に抱きつつ気合いを入れる。
     ここがシャベル使いにとっての有利な場所なら、灼滅者達にも未来予測という情報的な優位がある。
     これから行われようとしている殺人を無視することはできないと、灼滅者達はエレベーターホールを挟んだ車道の端と端に視線を凝らした。

    ●襲撃
     未来予測の示した時間がやって来た。
     エレベーターホールに向かって歩く一般人達は、階下より現れ自分達に向かって走ってくるシャベル使いの姿に悲鳴を上げる。
     シャベル使いの姿はわかり易く異形の化け物というわけではないが、高々と振り被られたシャベルから放たれる殺意に咄嗟に足を動かすことができない。
    「お客様、ここは危険ですので申し訳ありませんが、そこの非常階段より地上へ避難をお願いします」
     真っ先に物陰から飛び出し、一般人達の前に駆け寄ると、ウツロギはプラチナチケットを使用しながら一般人達をエレベーターホールに誘導する。
    「死たくなかったら早く逃げて!」
     ウツロギと千尋に続いて一般人達とシャベル使いの間に割り込んだ結希は大声で一般人達に指示を出す。
     通り魔のようなシャベル使いの姿に動揺していた一般人達の止まっていた足も指示を受けて動き始める。
    「此処はその……私達に任せて」
     ヘッドホンをつけた鏡水・織歌(エヴェイユの翅・d01662)が、一般人達を安心させようと声をかける。
     プラチナチケットの効果で、突然現れた大勢の少年少女達に、一般人達は疑問を抱くことなく素直に指示に従った。
    「……んで、此処から先はアタシが通さない」
     一般人達がエレベーターホールに向かったことを見送ってから、織歌はヘッドホンを外し、バベルの鎖を瞳に集中させながらシャベル使いを睨みつける。
     そこに結希の癒やしの矢が加わることで、織歌の視覚は更に鋭さを増した。
    「今日の獲物は少ないと思ってたけど、なかなか大漁じゃないっスか」
     シャベル使いは灼滅者達が現れたことで一度足を止めていた。
     言葉にある通り、シャベル使いにとっては邪魔をされたというより、獲物が増えたと思っているらしい。
     何人いようが障害にならない一般人に比べれば念のため警戒するが、灼滅者達を一瞥したシャベル使いの目は殺人の獲物を見るそれである。
     シャベル使いからしたら、一般人達と灼滅者達の差は噛みついてくる獲物か、そうでないかの違いにしか映らない。
    「まあ、見す見す何人か逃すというのも勿体ないし、さっさと片づけるっスかね」
     グッと後ろに大きくシャベルを構えると、シャベル使いはシャベルを思い切り振り抜く。
     シャベルで地下駐車場内の空気を掴み、パンッという乾いた音と共に、攪拌された空気が衝撃波となって灼滅者達を襲う。
     正面からそれを受けた田所・一平(赤鬼・d00748)が吹き飛ばされ、コンクリートの壁に激突する。
     ウツロギが自らの身を壁にすることで、衝撃波からエレベーターホールに向かう一般人達を守った。
     千尋のライドキャリバーであるバーガンディは、主を乗せたままシャベル使いとひかりの間に割って入り、衝撃波のダメージを肩代わりする。
    「初めましての挨拶代わりだ、貰っとけ」
     御伽がエアシューズで地を蹴る度に上がる火花を流星のように駆け抜けたあとに置いて行きながら、シャベルを振り切ったシャベル使いの死角を狙いスライディングのような低空の飛び蹴りを繰り出した。
     シャベル使いは咄嗟にシャベルを引き戻すが、その隙間を縫うようにすり抜けて御伽の蹴りはシャベル使いの脚に直撃し、メキメキと骨の軋む音を立てる。
    「隙あり」
     車の後ろを抜けてシャベル使いの背後に回り込んでいた朧月・咲楽(神殺しのサクエル・d09216)の日本刀から放たれた黒死斬が、御伽の攻撃で体勢を崩していたシャベル使いの脹ら脛を斬り裂いた。
    「よくもやってくれたな、オラァ!」
     咲楽と挟み撃ちするように接近した一平が、先ほどの攻撃で流血しながらも、縛霊手の指を揃えた手刀でシャベル使いの太腿の肉を抉り飛ばす。
    「バーガンディ、いくよ」
     二人分の衝撃波を受けたバーガンディもウツロギの集気法を受けて損傷を持ち直し、エンジン音で千尋に応える。
     バーガンディに騎乗しながら両手で持ったクルセイドソードによる千尋の斬撃はシャベル使いに躱されるが、それに気を取られたシャベル使いの足をバーガンディのタイヤが轢き潰した。
    「にょわー! ひかりんぱわーだにぃ☆」
     中肉中背のシャベル使いより二回り以上は大きいひかりが肩からシャベル使いに体当たりし、シャベル使いの腹部に押しつけたバベルブレイカーの射出口から錐揉み回転する杭が打ち出される。
    「ハッ、雑魚の集団かと思ったら……いいぜ、お前らのことを敵と認識してやるっスよ!」
     脇腹に開いた傷口を庇いながら一度距離を取り、シャベル使いは気合いを入れるように一吼えするような声で宣言した。
     灼滅者達による執拗な脚狙いが、シャベル使いの回避力の高さという優位性を見事に殺しており、シャベル使いは灼滅者達を脅威として認めざるを得ない状態になっていた。

    ●包囲戦
    「そのイカれた頭の切除、手伝ってやるぜ?」
     御伽はニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、赤い鋼鉄の杭を備えたバベルブレイカーを構えてシャベル使いに肉迫する。
     シャベル使いは先ほどのシャウトで、切り傷からの出血や脚の骨へのダメージを無理矢理抑え込もうとしているが、それも見るからに十全ではない。
     本来脚力で比べるまでもない御伽の接近を許し、杭の装填されたバベルブレイカーをシャベルの柄で受け止めた。
    「シャベルって武器としてどうなんだ。まぁ、鈍器系だしアリっちゃアリだが、ぶっちゃけ使いづらくね?」
     鍔迫り合いをしながら高速回転する赤い杭を打ち出しつつ、御伽は鼻と鼻がぶつかりそうな距離でシャベル使いに問い掛ける。
    「知らないんスか? 前世紀の戦争の塹壕戦で最も人を殺したのはシャベルなんスよ」
     普段なら難なく受け流せたであろう攻撃を、足の踏ん張りが利かないため押し切られ、シャベル使いの頬と耳が回転する赤い杭の側面に触れて血が飛び散った。
    「へえ、それも使い手しだいなんじゃないか?」
     御伽の攻撃を防ぐために、足を地に縫いつけられたシャベル使い目掛けて、咲楽は大上段に構えた日本刀に煌々と燃え上がる焔を纏わせ、重い斬撃を叩き込む。
    「まあ、その通りで、それにシャベルが白兵戦最強の武器だなんて主張する気はないっスね。その頃の歩兵は穴掘りが主な仕事だったから使い慣れていただけで、俺も似たようなもんっス」
     咲楽の斬撃はシャベル使いの肩口に直撃し、その太刀筋はその体を一刀両断する勢いであったが、切っ先が鎖骨を断ち肺に到達する直前でシャベルを使い咲楽の日本刀を弾いた。
     軽口を叩いてはいるがシャベル使いの額に滲む汗は、レーヴァテインの炎の熱気にあてられただけではないだろう。
    「織歌ちゃん、任せた!」
     一平の鋼鉄拳がシャベル使いの守りを打ち破りながらボディーに叩き込まれ、シャベル使いは体をくの字に折りながら織歌の方へと吹き飛ぶ。
    「強い相手には動きを鈍らせておくノ、定石だろ?」
     待ち構えていた織歌の槍の連撃が、シャベル使いの脚を何ヶ所も何ヶ所も刺し貫いた。
    「足の次は目を奪ったら、どうします?」
     結希の放った夜霧がシャベル使いを包囲するように布陣した前衛達を包み隠す。
     大きく距離の取れない地下駐車場という立地が、今回はシャベル使いにとって仇となっていた。
    「元々動きも視界も制限される場所を選んでるっスよ。こんなのワケないっスね」
     バーガンディの座席を蹴って跳躍して夜霧から飛び出し、宙から打ち下ろすように繰り出された千尋の閃光百裂拳をシャベル使いは得物で受け流した。
     千尋が離脱するのを援護するように撃たれたバーガンディの機銃がシャベル使いの体を掠め、その横を通過したところでキャッチするようにバーガンディは再び主である千尋を自らに乗せ夜霧に紛れる。
    「そう言ってる割に隙だらけだねー」
     千尋達と入れ替わるように、シャベル使いの背後の夜霧からウツロギが手にしたクルセイドソードと影業を駆使した黒死斬がシャベル使いの脚の肉を斬り刻む。
     ウツロギが指摘するまでもなくシャベル使いの言葉は強がりだ。
     自分より強い同族、数の多い敵との戦いを想定して地下駐車場という戦場を選んでいるシャベル使いだが、今はよりシャベル使いの動きの方が制限されている。
    「そ~れ、ひかりんしゅーと!」
     棒立ちになったシャベル使いに、ひかりの放った神薙刃の渦巻く風の刃が命中する。
    「見えないなら見えないなりにやりようはあるっスよ」
     再びシャベルを大きく振り被ったシャベル使いの前動作を見て、まだ近接戦の距離に留まっていたウツロギが、クルセイドソードの刀身とガトリングガンの銃身を束ねて受け止めた。
     空気を裂くような音の代わりに、武器同士がぶつかり合う金属音が地下駐車場に響き渡る。
    「良いね良いね。斬って良し、殴って良し、埋めてよし。面白い武器だねー」
     空気を掴み衝撃波を生み出すほどのシャベル使いのフルスイングを受け止め、それでも発生した衝撃波を至近距離で受けたウツロギは、目隠しの隙間から血を流しながらも楽しげに言った。
     ウツロギがシャベルを振り切らせなかったことで、ウツロギの背後にいた一平とひかりに衝撃波が飛ぶことはなかった。
     しかしその範囲にいなかった千尋とバーガンディを衝撃波が襲った。
     バーガンディは自らに騎乗していた主を振り落とすようにして一身に衝撃波を受け、吹き散らされるようにしながら一時的消滅を迎える。

    ●墓標
    「地下なんてお前に似合いの場所じゃねぇか。そのシャベルで墓穴掘らなくて済むぜ」
     宙返りしながら天井を蹴って急降下した御伽のスターゲイザーが、シャベル使いの片膝を容赦なく砕き、脚が関節とは逆に曲がった。
    「これでもくらえ」
     咲楽がシャベル使いの間合いに踏み込み、蹴り上げようとした足のエアシューズを強くコンクリートと摩擦させ、焔を纏った飛び蹴りがシャベル使いの顎を跳ね上げる。
    「いい加減慣れたっスよ」
     シャベル使いの足許を払うように繰り出された一平の手刀による黒死斬を、シャベル使いはシャベルの刃を盾にして受け止めた。
    「田所センパイだけじゃ終わらねえんだナ」
     大柄な一平の陰から出てくるようにして、織歌の縛霊撃が、一平の縛霊手を受け止めていて身動きの取れないシャベル使いに命中する。
     放射された霊力の網がシャベル使いを捕え、片足立ちになっていたシャベル使いを地面に引き倒した。
    「まだ倒させませんよ!」
     結希の癒やしの矢が傷ついたウツロギの体を回復させる。
    「これなら大振りのあたしでも外しようがないわね」
     まだ立ち上がれずにいるシャベル使いに、千尋は上段に構えた刀身を白く輝かせたクルセイドソードを振り下ろす。
     シャベル使いは柄で斬撃を受け止めるが、受け切れずにクルセイドソードの刃が肩にズブリと埋まった。
    「お返しだよ。ウツロギダイナミック!」
     ウツロギはシャベル使いの脚を掴むと、持ち上げて後ろに倒れ込むようにしながらコンクリートの地面に叩きつける。
    「自分で穴掘って埋まって反省するんだにぃ!」
     鬼神変で異形化したひかりの拳がシャベル使いの顔面を捉え、頭が地面をバウンドするように跳ねた。
    「くっ、さすがに厳しいっスね……」
     ネックスプリングの要領で跳ね起きたシャベル使いが、突破口を開こうとひかりに向かって突撃する。
    「ぐはっ」
    「ウツロギちゃん!?」
     近くにいたウツロギがひかりと位置を入れ替わり、シャベルによる殴打を代わりに受ける。
     ウツロギはコンクリートの壁にめり込むほどの勢いで吹き飛び、そのまま崩れ落ちて意識を失った。
    「往生際が悪いぜ」
     既に足許が覚束ず、横殴りにシャベルを振った後で大きく隙のできたシャベル使いの腹部に御伽は赤色の杭を打ち込む。
     回転する杭はシャベル使いの腹部を貫いた後で、その内臓をズタズタに傷つけていった。
    「今度こそ叩き斬る」
     再び火柱を掲げるように構えられた日本刀から咲楽の斬り下ろしがシャベル使いの片腕を付け根から切断する。
    「くたばりな」
     荒々しい独楽のような遠心力を乗せた一平のティアーズリッパーが背骨を断つ勢いでシャベル使いの背を斬り裂いた。
    「さて、仕上げだ。此処をアンタの墓場にしてあげようカ」
     死角から一直線に突き出された織歌の槍が、シャベル使いの左胸を貫く。
     シャベルを杖のようにして立っていた六六六人衆は、最期に痙攣すると血の霧となって消滅した。

    作者:刀道信三 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月18日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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