春のバーベキュー大会

    作者:泰月

    ●突発バーベキューのお誘い
     新学期が始まり2週間ほど経った、春も本番といった陽気のある日の事。
    「大分暖かくなって来たから、外で肉を焼きに行こう」
     上泉・摩利矢(大学生神薙使い・dn0161)がそんな事を言い出した。
     ――何でまた、唐突に。
    「折角の春だからね。それにちょっと前に桜を見に行った時、思ったんだ。桜じゃ、腹は膨れないって」
     だからがっつり肉を焼きたくなったらしい。
     花より団子を地で行く女子大生(もうすぐ19歳)が、そこにいた。

     そんな訳で、バーベキューである。
     場所は、川原にあるバーベキュー場。相談したら、貸切になったらしい。
     調理器具は鉄板と焼き網、大鍋がレンタル可能だが、ガス設備はない。
    「火は任せてくれ。焚き火を熾すのは、昔良くやったからちょっと得意だ」
     得意と言う摩利矢に任せても良いし、火力の調節に拘りたい人は、ガスバーナーを持参しても良いだろう。
    「食べ物の方だけど。皆も好きなものを焼けた方が良いだろうから、あんまり用意してないんだ」
     摩利矢が用意したのは、牛肉とキャベツのみ。
     肉と野菜を追加するも良いし、魚介類を持ち込んだって良い。デザート類など焼かないものも良いだろう。
     ご飯はその場で飯盒で炊いても、弁当箱に詰めてきてもOKだ。
     川の魚や山菜なら現地でも採れるかもしれないが、ほどほどに。
     ごみは全て持ち帰りなので、変なものを持ち込むと、後で困るかも知れない。
    「とにかく、皆で色々焼いて食べられればと思う」
     焼いて食べるだけだが、皆で集まれば楽しい時間になる筈だ。
     あと、栄養バランス的にもその方がいいと思います。


    ■リプレイ

    ●まずは準備
     キャンプ場を訪れた59人の灼滅者達は、まず火の準備に取り掛かる。
    「人として生きる事にした君に聞いていいものかどうか――君と羅刹の違いとは何なのだらうね」
    「今、言ったじゃないか」
     木板と棒で火を熾しながら、摩利矢は有無の問いにそう答えた。
    「人として生きるって、羅刹の頃にはなかった考えだよ」
     そうして炭に火が着いたのを確認すると、摩利矢は他の火熾しを手伝いに向かう。
    「とりあえず扇げ扇げー――って煙で目が痛い!?」
    「任せて。慣れてるし、久々に派手に焼きたい」
     不慣れな者もいれば、チャコスタと言ったキャンプ用品を使いこなす者もいる。
    「ばーべきゅーばーべきゅー♪」
     そんな中、焼き網を並べるヒマワリがいた。ミカエラだ。
     【文月探偵倶楽部】の面々は、今日も着ぐるみである。
    「炎は男の浪漫、火起こしなら任――」
    「あ、バーナーあるよ」
     クロネコな直哉の横からサボテンな新が手を伸ばし、バーナーで火を着ける。
    「にゃふ!?」
     煙がクロネコを直撃した。
    「私の一押しは、マグロ大トロね。あと豊後牛に大分産の椎茸よ」
    「青空の下、皆で集まりバーベキュー……実に良いですね。料理は得意でありますし、焼くのはお任せください」
     マグロぐるみなまぐろが用意したマグロや肉を、ロジオンが切り分けていく。
    「焼いたお肉も美味しいけど、生のお肉もアタシは好きなんだよー」
     その切れ端を、もふりーとな毬衣は待ちきれずにあぐあぐ。
     火の準備が整えば、後は皿と箸を持ち、焼くのみだ。
    「焼くのは任せてあんた達はてきとーにくつろぐか、可愛くしてなさい!」
    「……凰呀、わざわざこんな仕込みしてたのね」
     中には『ぎんが』と書かれた犬用っぽい器も並ぶが、即スルーされる。
     肉は充分。基本の牛・豚・鶏肉に、どこで入手したのか猪や熊だと言う肉もあれば、魚介類もアワビの様な高級品からししゃもまで揃い、春の野菜も勿論たっぷり。
     さあ、食べよう。

    ●肉>野菜
    「肉を食えー、肉を食えー♪ 今日も元気だ肉を食えー♪」
    「肉おいしー。どんどん焼くよーにくにくー!」
    「肉しか食べてないし。何でそんな飢えてるの」
     予想通りに肉食女子なウルスラと羽衣を見て、玉は野菜色々持ってきて良かったと痛感していた。
    「だってバーベキューって肉を焼くものでしょー! 肉は飲みものって言うし!」
    「ヒカルももっと食べるデース。食べないとせくしぃになれんでゴザルよ?」
    「……太るよ?」
     玉の鋭い指摘に、羽衣とウルスラがビシリと固まる。
    「で、改めて、今年度もよろしくね。新しい年も色々遊びに行こう」
    「うん。2人とも今年もよろしくね!」
    「ウイも、ヒカルも、拙者こそ今年度もよろしくデース!」
     玉が笑顔に戻ると2人もすぐに笑顔を浮かべ、そして肉を頬張った。
     仲間とワイワイやりながら食べるのは、楽しいものだ。

    「結衣奈。高校でも、いつでもクラスに遊びに来ていいからね!」
    「高校生になっても凰呀ちゃんとお隣同士だもんね」
    「高校生になる頃にはもっと身長伸びてると思ったのになぁ」
     凰呀と結衣奈の会話にぼやきで混ざった銀河は、肉を取ろうと箸を伸ばして、向かいの夜桜が肉を食べようとしているのを見た。
    「……なんか、夜桜ってお肉食べてる姿似合ってるね」
    「あたしが食いしん坊みたいな響きね……あたしゃそこまで大食いじゃないわよ……」
     ぼやいた夜桜だが、普段より食べているのは確かだ。
    「夜桜。私、焼いてて忙しいの。食べさせて?」
     そこに焼肉奉行役を務める凰呀が、雛鳥の様にあーんと口を開いてみせる。
     夜桜は迷わず、焼き立ての肉を突っ込んだ。
    「ちょっ、あふっあふひっ!」
    「よーく味わって食べなさいよ、ほらァ!」
     更に、凰呀の顎を下から押さえつける。
    「高校生になってもブレないよね、凰呀ちゃん。夜桜ちゃんも苦労するね……」
    「やっぱりライオン属性……」
     いつもの事なのか、結衣奈も銀河も微笑を浮かべてお肉に箸を伸ばすのだった。

     天文台キャンパスの2年C組グループの網の上に並んだ、大量の鶏肉豚肉。
    「外で食事って初めてだから、すっごく新鮮! 何だろう、いつもと違う場所だから? それとも、みんなで食べるからかな?」
     それらを切り分けた志野が、声を弾ませる。
    「……野外で食べるんは格別なんよねぇ。解放感もある上で、皆でおんなじ料理囲むわけやしな~」
     肉を買って来たゆずの声も、楽しそうだ。
    「こういう雰囲気も調味料よね。家で同じ様に作っても、なんか違うんだろうね」
    「みんなと一緒遊ぶのも、食べてるの見るのも楽しいよね」
     茜とジェーンは、横で野菜を焼いている。
    「皆の分はもう少し待ってね? 私は半生くらいが美味しいから」
     祝は裏返したばかりの肉を数枚、早めに自分の皿に取った。
    「野菜は焼けたよー! とうもころし?とか、ニンジンとか玉ねぎとか、美味しいよ」
     残りの肉がそれぞれの好みの加減に焼き上がるより早く、ジェーンが焼けた野菜を取り分け始める。
    「え……やさいはいいよお……? 嫌いじゃないけど、お肉の方が好きだなあ」
    「お肉は私も大好きだけどね」
     思わず少し皿を引いた志野に、茜は自分が嫌いな人参をこっそり載せていく。
    「好き嫌いはあかんよぅ? 体も育ちにくくなるゆーし……うん、その筈」
     自分の体型は見ないようにして、ゆずは皆の皿にピーマンの挽肉詰めを乗せた。

    「右から神戸牛、丹波牛、和牛だ。正解は和牛だけだったな」
    「違うのは判るけど、どれがどれは……どれも美味いしな」
     渡里に誘われ牛肉の食べ比べに挑戦した摩利矢は、降参、と両手を挙げた。
    「美味しかったならいいじゃない。野菜も食べてって」
     そこに、晶が茄子やジャガイモ、焼き豆腐を載せていく。
    (「ちょっと多すぎたかもって思ったけど、残さずに済みそうね」)
     摩利矢の食べっぷりに、こっそり胸中で安堵する晶。
    「新玉ねぎのホイル包、焼けましたよ」
     そこに渡里達とも顔見知りなので加わった御理が、鉄板の上のアルミホイルを開く。
     塩胡椒とオリーブ油でシンプルに焼かれた玉ねぎは、とろとろで甘くて美味しい。
    「御理も私より料理、上手いな」
     摩利矢の手が御理の頭を撫でて、兎耳を揺らした。

    「豚肉、ゆで卵、並べまーす!」
     一先ず食べてお腹が落ち着いた着ぐるみーずは、燻製にトライしていた。
     燻製器まで持ち込んで、結構本格的である。
    「スモークサーモンもあるんだから、マグロの赤身の燻製も当然おいしいわよ!」
    「ソーセージと、チーズも置いて、と。あとは桜のチップを……」
     まぐろもロジオンも新も、思い思いの材料を燻製器に並べていく。
    「点火しまーす! 煙がいっぱい出まーす!」
     ミカエラは燻製器に点火すると、煙が出る前に少し離れた。
    「美味しいベーコン食べるんだも――にゃふ!?」
     わくわくと燻製器の正面にいた直哉が、煙に包まれる。
    「燻製の濃い味も美味しいよねー……出来上がりが楽しみなんだよ」
    「上手く燻せると良いのですが。皆も燻されそうですね」
     煙の中で揺れる毬衣の着ぐるみの尻尾を見て、唯一生身なロジオンが危惧した通り。燻製が美味しく出来上がる頃には、着ぐるみにも香ばしい匂いが着いていた。

    (「うーん、焼けた匂いを嗅いでるとどんどんお腹が空いてきますね」)
     そんな事を思った紅緋の前に、摩利矢が良く焼けた魚の乗った皿を置く。
    「海育ちで肉は苦手と言っていただろう? あっちで焼いて貰ったんだ」
     あっち、と摩利矢が指した先では。
    『ジャカジャカヘイ』
     大きな鶏肉がセットされた丸焼きセットの周りで、機械音声を上げてバニラがどこぞの民族のような奇妙な踊りを踊っていた。焼ける前の暇つぶしらしい。
    『ジャカジャカヘーイ』
    「ヘーイ!」
     何か気に入ったのか、目が合った摩利矢はバニラと唱和して紅緋を驚かせた。

    ●激戦
    「最近何も食べてなくて、水ばっかりで……次はいつ食べれるようになるか分からないので、今日はしっかり食い溜めさせて貰います!」
    「大食いさんには負けないんだから!」
     久しぶりの肉に感涙する優太朗。おいしくなぁれ、と念じる誇。
     2人の箸の動きは競い合うように疾くなっていく。
    「うちの分残しといて……って言ってる場合じゃ無さそうね!」
     火からおろした飯盒をひっくり返して、由宇も再び肉に挑む。
    「みんな、良く食べるね……激辛ソースつける隙が全くないわ」
     【百花繚乱】部長の凛は、一部の部員達の食欲にイタズラを諦めた。そんな隙を伺っていたら、食いっぱぐれかねない。
    「可笑しいな。俺はバーベキューに来たんであって、大食い大会に来たつもりはないんだが……」
    「絶対取り合いになると思ったの。特に肉」
     そんな様子を、彌月と夢安は半眼で見つめていた。
    「彌月。疲れてないで、美味しいご飯食べて一緒に体力回復しよ。夢安も、ちゃんと食べてる?」
     クリスタは遊のおにぎりに味噌を塗って網に並べながら、2人を促す。
    「そうだな、食べるか……そこ。肉だけじゃなく、野菜も食え野菜も」
     頷いた彌月が自分の分を取るついでに、ほとんど肉しか食べていない面々の方に野菜を寄せる。
    「ほら、オレ成長期真っ盛りだから、肉を……」
    「お野菜も食べないとダメよ」
     抵抗を試みた遊だが、クリスタにもたしなめられて観念して野菜に箸を伸ばした。

    「って、肉もうないのかよ!?」
     月夜が汗水流して得たバイト代で買って来た良いお肉達は、彼の予想以上の早さで消費されていた。
    「月さんの分? ないですよぉ? ウチの胃袋の中です!」
    「美味しくて、月夜くんの分まで食べちゃってさ。今、残った脂と野菜で焼きそば作ってるから、ちょっと待っててね」
     かぐやは幸せそうにしれっと告げて、樹咲楽は麺を炒める手を止めずに返す。
    「こちらも、食べてください」
    「……あの。焼きそばの後でお菓子を作るつもりなんですけど、甘いもので良ければ月見里さんも……!」
     府月が取っておいたウィンナーを差し出し、千尋もまだ作るものはあると伝える。
    「樹咲楽も府月も千尋も、ありがとな。遠慮なく貰うぜ」
    「鶏もも肉焼けたよ!」
     月夜が笑みを浮かべて、ウィンナーを齧ろうとしたそこ、睦月の声が響いた。
    「いっぱいおいしモノを食べて、おなかいっぱいで幸せになろうね!」
    「こんなにお肉食べるなんて、ウチってめっちゃ幸せ者ぉーー!」
     睦月が煙に咽ながら焼いた鶏もも脚に、一番お肉を食べてたかぐやが真っ先にかぶり付いた。

    「お、上泉さーん! 牛肉恵んで下さ――がふっ!」
    「上泉さんも、一緒にどうです?」
     覚えのある声に振り向いた摩利矢が見たのは、手招きしているゆまと、何故かその足元に落ちている律の姿だった。
    「ふふ。とっても仲良しさんね」
    「うん、いつもの光景だ」
    「皆食べてる? しっかり食べなきゃ駄目よ?」
    「いつも通りですね。野菜も肉も、バランスよく食べなきゃダメですよ」
    「お父さーん、うちもっとお肉食べたい!」
     【刹那の幻想曲】の面々はと言うと、百花とエアンは軽く流し、日和の焼いた肉ばかりひょいひょい取る日々音には龍之介が野菜を盛り付ける。
    「このクラブの様式美はさて置いて、摩利矢さん。焚き火で焼くお肉と言えばコレと決まっております」
     ペーニャも気にせず、アルミに包まれた塊を差し出してきたので、摩利矢も特に気にせずそれを受け取って、開いてみた。
    「荒々しくかぶりつけば貴方も立派な原始人です!」
     それは、いわゆるマンガ肉だった。
    「ぺーにゃん、上泉サンにまた変な事……」
    「骨はゴボウなので、全て食べる事が出来ます。これぞ、ボーントゥビーワイルド、でございます」
     顔だけ起こした律のツッコミをスルーし、駄洒落で締めたペーニャだが。相手が悪かった。
    「良く判らないが、肉もゴボウの骨も美味いぞ」
     摩利矢に今の駄洒落を理解できる英語力は――ない。
    「あ。お肉取り過ぎたかな……でも、ももが補充してくれると思うよ?」
    「ま、任せて!」
     エアンはいつの間にか肉をがばっと持って行って、目配せを受けた百花はステーキ肉を追加で焼き始める。
    「でも、エアンさん。お野菜もいっぱい食べてね♪」
    「う……うん」
    「ラブラブさんだなぁ……」
    「はい、ゆまさんあ~ん」
     そんな2人をにこにこと眺めるゆまに、日和が残っていた肉を差し出す。
    「どう? 美味しい?」
     少し照れた様子でぱくんっと食いついたゆまに、微笑む日和。
    「幸せそうでイイねぇ……んじゃ、釣りでもしますか」
     復活した律が、後ろを流れる川に釣り糸を下ろす。
     数分後、彼は『ゆまが川で冷やして忘れていた西瓜』を釣り上げ「川で西瓜は泳いでないから!」と摩利矢に力説する事になる。

     貝類にバラ肉、塊肉。野菜も色々でポテト・ボムなんて凝った料理も。料理のバリエーションに富んだ【梁山泊】の場は、ちょっとした戦場だった。
    「肉ぅぅぅぅ!!!」
    「あ、そのお肉は私が狙ってたのにーっ!」
     腹ペコ怪獣と化した翼が、春陽が目の前に寄せていた肉を奪い取る。
    「とまあ、あんな感じで食べ頃の肉はすぐに取らないとなくなる、弱肉強食の世界がバーベキューらしいですよ」
     呼ばれて混ざった摩利矢は、チーズバーガー片手に心太の解説に頷いていた。
    「いや、あれは弱肉強食じゃなくて食い意地が張ってるとかそっちの方だからね!」
    「理央、ウチの連中の食い意地については……諦めた方が良くないか? あ、心太、ぼたん肉そろそろ焼けるぞ」
     ツッコミ担当理央に、倭は色々諦めた顔で言いながら肉をこまめに裏返す。
    「摩利矢ねーちゃん。ホルモンが嫌いじゃなかったら、ホルモンバーグもお勧めだよ。それにしても春陽ねーちゃんの焼きそば捌きも中々凄いね」
    「ウチの実家の方で良く作ってたのよ。こってり系だけど、美味しいわよ?」
     ホルモンの食感をそのまま楽しめるハンバーグを勧める來鯉の隣で、春陽がホルモンを混ぜた焼きそばを作っていた。
    「もうすぐ焼きおにぎりも上がるので、ライスバーガーも――あっ」
     静菜の視線が摩利矢の方に向いた隙に、近くに寄せていた肉を翼が奪い取る。
    「おー、やってるな。ボタン肉、ホルモン、梁山泊名物の垣メシ――まさに戦場よ」
     そこに、釣竿片手に小次郎が川から戻ってきた。
     そして戦場と称しながら新たな火種として、釣ってきた岩魚と何故かイカとカマボコを串に刺して、焚き火の周りに寄せていく。
    「魚ぁぁぁ!!」
    「待て、まだ焼けてないから!」
     まだ怪獣モードの翼を、理央が食い止める。
    「静菜さん。ここの肉がちょうど良さそうですよ。はい、どうぞ」
    「わーい、しんちゃん、ありがとうございます♪」
     心太と静菜は、多分意図せず見せ付ける。
    「ま、プレゼント代わりにうちでも食っていきなよ」
    「うむ。遠慮なく喰っていけ」
     小次郎と倭に勧められ、摩利矢は静かに頷いて、一言告げた。
    「遠慮しないでいいんだな?」

    「魚、美味かったな」
    「釣りは向かないとか、もう言わせないぜ」
     多分ヤマメを食べ終え、エルメンガルトと民子は他愛ない話をしていた。
    「民ちゃんと二人って初めてか。思えば、割と長い付き合いになってる気もするなー」
    「なんだかんだ、いつも付き合ってくれるもんね」
     何となく顔を見合わせ、エルも民子も小さな笑みを浮かべる。
    「これからもヨロシクの気持ちで、どーぞ!」
    「じゃーあたしも感謝を込めて、どーぞ!」
     そして、焚き火で炙ったマシュマロとベーコンを、それぞれ差し出した。

    ●宴の終わり
    「美味しそうですね、頂きます!」
     遊が作ったデザートに、一番肉を食べた優太朗が真っ先に手を伸ばした。
    「デザート甘美味ぁ……」
     溶けたマシュマロとチョコが絡んだ焼きバナナの味に、誇の頬が思わず緩む。
    「2人とも良く食べるね……あ、美味しい」
     軽い驚愕を覚えながら、凛も口に運ぶ。
    「……先に言ってくれれば肉セーブしたのに……俺、もう食えない」
    「私も1つにしておくの。食べてすぐ寝たらブタになるの」
     彌月と夢安は、1つずつでストップ。
    「……遊はいいお嫁さんになれそうね」
    「うん、マジでいいお嫁さんなれると思う!」
    「オレは男だっての!」
     クリスタと由宇の評価に言い返す遊だが、その表情は嬉しそうだ。
     デザートを楽しんだのは、彼らだけではない。
     【刹那の幻想曲】では日々音が持参したプリンを配り、【StarGazer】では結衣奈がバームクーヘンを焼いていた。
     そして【夜空庭】は千尋のマシュマロとチョコのクラッカーサンドでの菓子パーティーを終えて、記念写真という話になっていた。
    「摩利矢さーん! 一緒に記念写真撮ろうよー!」
     流希の焼き林檎も美味しく頂いた摩利矢は、手招きする樹咲楽に呼ばれてそちらへ小走りに駆け寄った。
     ちなみに肉を多く食えるか摩利矢と競っていた誠は、川辺で食休み中だ。
    「写真? いいのか?」
    「摩利矢ちゃんも入って入って!」
    「おう。誕生日おめっとさんって事で、お前も入れよ」
     列の真ん中にいるかぐやとカメラを持つ月夜に促され、摩利矢も列に加わった。
    「じゃあ撮るぞー……ってこれじゃ俺写れねェ!」
    「交代しますよ。出来たら写真下さいね」
     府月が交代して2回の撮影すれば、解決。
     列から離れた摩利矢に、渡里と晶から飴細工と干菓子が。來鯉から、バナナケーキともみじ饅頭が渡される。
    「土産までありがとう。今日は色々食べられて、楽しかったよ」
     こうして、楽しく美味しい時間は賑やかに幕を閉じた。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年5月1日
    難度:簡単
    参加:58人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 11
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