クリスマス2015~X'masは赤と白、蟹鍋だ!

    作者:陵かなめ

    「ららら、クリスマスは赤と白~♪ それは素敵な色よ~♪」
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が上機嫌で鼻歌を歌っている。
     大切に抱えたクーラーボックスから、何やら磯の香りが漂っているようだけれども。
    「あ、こんにちはー。クリスマスだねー。クリスマスといえば、赤と白よねー。そ、し、て、赤と白といえば、そう!!」
     紺子がクーラーボックスの蓋をぱかりと開けた。
    「そうです、蟹です!! ね? クリスマスカラーでしょ? じゃあ、蟹鍋するよ!!」
     ささ、クーラーボックスの中をご覧ください。カット済み、今すぐ調理に使ってくださいと言わんばかりの蟹がびっしりと詰まっているのですよ。
    「どうかなどうかな。超贅沢蟹鍋どうかな。あったかいよぉ。ジューシーで美味しいよぉ。一緒に蟹鍋を囲もうよー!!」
     紺子は言う。
     蟹は美味しいと。
     そんな訳で、今年のクリスマス、紺子は蟹鍋パーティーを提案する。蟹は赤と白。それはクリスマスカラー。蟹こそクリスマスカラーの鍋だと。そう言うわけであるのです。
     できた蟹鍋を、みんなで美味しくいただいちゃいましょう!!
     仲間と鍋を準備する、友達と鍋を囲む、ただひたすら食べる。色々な楽しみを、蟹鍋パーティーで実現させよう。勿論、追加食材歓迎します。クリスマスっぽい飾りつけも募集中。
    「蟹鍋を食べながら、クリスマスを満喫しようね!! はー。きっと美味しいクリスマスが迎えられるよねー♪」
     そう言う紺子の瞳は、蟹鍋を思いキラキラと輝いていた。


    ■リプレイ


     灼滅者達は鍋を目の前に、パーティーの始まりを待っていた。
    「みなさーん。今日は集まってくれてありがとう! パーティーを始めるね♪ メリークリスマス! メニーカニアリマスだよー!!」
     紺子が皆に向けてグラスを傾けた。乾杯の声と鍋の蓋を開く音が聞こえる。
    「よし食うぞー。どんどん入れよ」
     漣香が次々に蟹を鍋に投入して行く。
     それを見て、サズヤはホタテも一緒に入れてみた。煮える鍋からいい匂いが漂ってくる。
    「ほんと、カットだと楽だねー」
     ミツルも頷きながら、わーいと手を上げた。【イトマカルタ】のメンバーの囲む鍋もそろそろ食べごろのようだ。旨味を抱いた蟹へ次々と手が伸びる。
    「んー、美味しい!」
     蟹の脚を剥きつつ巳桜が声を上げた。
    「あっ巳桜さんそこのポン酢取ってー」
     漣香が伸ばした手に乗せてやる。
    「はいはい、と。十六夜くんもちゃんと食べている?」
    「ん、みおさんありがとー。大丈夫、確り食べてるよー。あ、れんがさん野菜食べなきゃだめだよー。蟹ばっかりずるいー」
     蟹の殻と格闘しながらミツルが漣香を見る。
    「い、いやちゃんと野菜食べるよほら。まぁ皆遠慮しないで食べな食べな」
     オレが用意したんじゃないけどなーとか言いながら漣香は黙々と蟹を食べるサズヤへ視線を向けた。
    「……! ……上手に、出来た」
     ちょうど綺麗に蟹の身を取り出したところだ。仲間が蟹を剥くのを見習って、頑張って剥いたのだ。あつあつほかほか、剥きたての蟹を口の運ぶ。
    「ん……美味しい」
     言葉少なく、もしゃもしゃと蟹を味わった。
    「さずやさんー、蟹美味しいねー」
     ミツルが笑顔で言うと、サズヤもこくりと頷いた。
     楽しく語らいながら、鍋は続く。
    「なかなか、難しい、ですね……」
     殻の奥の身を深追いしながらいを里が呟いた。
    「かに剥くのって結構大変だよぉ」
     愛華がすかさず頷く。ほら、男子たち、優しくレクチャーしてくれなよ。なんなら剥いてくれても良いんだからねぇと、周りの男子をちらりと見る。
    「お手伝いしますよ」
     手元に蟹の剥き身の山を作りながら弥太郎が笑った。
     隣では、鶫が小さめの皿をずいと誠に差し出す。
    「真月、この私がむいてあげたのよ。食べなさい」
     見ると皿の上の蟹身は、頑張った感じだがちょっぴりボロボロだった。
    「オレは道産子なんで蟹を食う経験はそこそこ積んでるぜ!」
     蟹を受け取りながら、誠も蟹を剥いてみせる。器用に殻を割りするりと身を取り出した。
    「その代わり野菜も食えよ!」
    「ちょ、私は元々健康だから野菜なんて食べなくても平気なの」
     怒って言いながらも、結局鶫はしぶしぶ野菜を食べる。
    「蒼崎さんの分は真月くんに任せたほうがよさそうです」
     2人の様子を見ながら弥太郎が微笑んだ。
    「そいやー鶫っち、誠っちとの仲はどーなのさ」
     弥太郎から蟹を受け取りながら愛華は身を乗り出す。
     瞬間、鶫の頬が真っ赤に染まった。素早い動きで愛華の皿を野菜で山盛りにする。どうやら、仕返しのようだ。
    「あ、蟹をありがとうございます」
     いを里が受け取った蟹を口に運ぶ。とても美味しい。
    「いを里とはこうやって一緒に飯食ってたらもうダチだぜ!」
     その様子を見て誠がニカッと笑った。【吉祥寺1-6】の仲間達も、鍋を囲みながら楽しい気持ちを感じていた。日々の安らぎを感じ、そして、同じ鍋を囲むと距離が縮まる感じがする。
    「クリスマスに鍋とは、その発想はなかったな。だが、だからといってクリスマスらしさを損なうわけにはいかねぇ」
     そう言ってファルケが取り出したのは、ペースト状の魚のすり身だ。これを絞り袋から出せば、ちょっとしたクリスマスケーキ風になるはず。
     味付けを仲間に任せ、鍋が煮えるのを待つばかり。
    「味の方は問題ない……よな? さて、食べるとしよう」
     ファルケがそう言うと、【星空芸能館】の仲間達が次々に鍋に手を伸ばした。
    「まだまだいっぱいありますからどんどん食べて下さいね~」
     えりなが皆に具材を配る。
    「大根とかちょーいいよー、ほどよく柔らかい!」
     結衣菜がすっかり柔らかくなった大根を持ち上げてみせる。
    「あ、うん、大根とかも美味しいよのう!」
     何度も頷き、心桜が紺子へ視線を延ばした。
    「わらわ、お鍋に入ってるネギもとろっとして好きじゃ。はい、紺子先輩もあーん♪」
    「わーい。ありがとう♪ 遠慮なく頂きます」
     呼ばれて紺子が嬉しそうに手を伸ばす。鍋は良い感じに煮えてきている。
    「今日はお任せしちゃいますね♪ それと、地元のちゃんこ屋さんから頂いた鶏団子も入れちゃいましょう」
     いつもはお母さんモードに入る紗里亜だが、今日はえりなと心桜に任せるようだ。鶏団子は野菜の甘味を吸って美味しくなるに違いない。
    「カニ、足、食べ……」
     蟹を食べようとしていた心桜がそっとマサムネを見た。どうやら、蟹の身を解すのに大苦戦しているようだ。
    「カニの身って取るのが大変ですよね~」
     くるみもじっと手元の蟹を見つめる。
    「ん、カットされてるとはいえカニの殻って確かに硬いよな。ちょい女子ーズ貸してみ? 殻むいてやっから」
     それを受け、マサムネは快く蟹を取り、無心に殻を剥いてやった。心桜とくるみは嬉しそうに礼を言い、蟹を口へ運ぶ。
    「え、あれ……? えりなっち部長微妙な顔してるけどどしたん?」
    「あ、いえ、何でもありませんよ」
     マサムネがひょいとその顔を覗きこむと、えりなはニコリと笑顔を返した。実は蟹は苦手なのだけれども、それは内緒の事なのだ。
    「マサムネさんカニ剥き上手ですね。せっかくだからお言葉に甘えちゃおうかな♪」
    「いいよいいよ。貸してみ」
     紗里亜もマサムネに蟹を剥いてもらった。
     代わりに、甲羅に蟹味噌を溶き解し身を浸したものを手渡した。見るからに、おいしそうな一品だ。
    「それにしても蟹を食べていると、ちょっと静かなような……気のせい?」
     結衣菜が仲間達の様子を見る。いつの間にか、皆、蟹に夢中だ。
     さて、【キルセ】の仲間達も黙々と蟹を食べていた。
     錠が、葉が、香艶が、ただひたすらに蟹を剥いて食べている。無心でカニの身をほじくり出し、ひたすら足をもいで、全力で、やっべこれ蟹超でけェしマジテンションあがっぜヒャッハァァ! と内心で叫びながら、黙々と蟹を食べているのだ。
    「カニの脚、身のきれいな取り方ってこの間テレビでみたんだよね」
     鈴が正しく蟹の足から身を取り出し、それをすかさず葉が口に運ぶ。
    「ちょっと葉やめてもってかないで」
     鍋の周りで鈴の哀しい叫びが聞こえた。
    「………おい、なんかしゃべろよお前ら」
     と、唐突に葉が顔を上げる。これは相棒として全力で応えねェと錠が声を上げ――。
    「やっべこれ蟹超でk……」
    「お前は万年発情脳内ウェイ系だろ聞いてねぇよ黙ってしらたきでも食ってろよ」
     白滝をそっと皿に盛られる。
    「うっうっ。やさしい錠がめぐんでくれるって私信じてる。……あれ、なんでずっとしらたき食べてるの? 葱いる?」
    「……ん? 万事は何で白滝ばっか確保してんの? 好きなの? まぁ、確かに鍋の白滝って美味いけどな」
     鈴と香艶は、心からの親切心で錠の皿に白滝を追加し葱を乗せる。
    「おぅどーした鈴、またピンク(葉)にいじめられたのか。俺が剥いた蟹食ってくれよ……葱サンキュ……」
     しょんもり白滝を食べていた錠だった。ちょっぴり落ち込んで白滝食べてるけど、きっとすぐ復活すると思う。あと、蟹のエキスを吸い込んだ白滝は超ウメェ!!
     霞、陽太、音の3人も、黙々と蟹を食べ続けていた。
    「霞くん、ほじるやつとってほじるやつ……うん、ありがと」
    「ん? ……ほい」
     2人、顔も上げずアレを受け渡す。
    「なー! 見て見て! カニ足殻15連結!!」
     黙々と蟹を食べる事にやや飽きてきた音が蟹の殻を持ち上げた。
    「あーすごいすごい」
     霞の声はただ平坦な棒読みを返す。
    「音さんうるさい。これはカニと人の真剣勝負なんだから、もっと真剣にやって」
     陽太はピシャリと切って捨てる。一切顔も上げなかった。
    「あ、ハイ、ふざけてすいません……」
     その冷たい声色に、黙らざるを得ない。
     真剣勝負だから仕方ない。仕方ないのである。

    「恋人同士で蟹を囲むと、会話がなくなって仲が冷えるなんて話を聞きますが、そんなもの我々にはどうってことないっていうところを証明するのです♪」
    「へぇ……そんなジンクスがあるのですか。ならばその幻想……もといジンクス、我々の手でぶち壊そうではありませんか」
     朱毘と三成が微笑みあう。
     一緒にいて、一緒の物を食べ、同じ時を過ごす。それだけでも、十分心地良い。
    「樋波、あーん」
     流汰は樋波に食べてほしくて、一生懸命蟹を剥いたのだ。
     気付いたら、樋波は器用に蟹を沢山剥いてくれているし、自分は遅いしボロボロだしとしょんぼりしてしまう。
     けれど樋波は齧り付いて微笑んで見せた。
     少しボロボロだけれど、懸命さが伝わってきてまた愛おしい。
    「有難う流汰」
     樋波が食べてくれた。そう思うと流汰はぱっと笑顔を取り戻した。
    「こうして来年も一緒に、幸せに過ごせたらいいな」
     来年も再来年も、こうやって二人の思い出作っていこうと微笑みあう。
     祝と漣は向かい合って鍋をつついていた。
    「……おいしいけど、これは何か違わないっすかね? クリスマスだぞ、男女だぞ。クリスマスだぞ!」
     ただ黙々と蟹を食べる作業に、漣が疑問を呈する。
    「どうしよう藤原、蟹おいしい。すごくおいしい」
     とは言え、祝の嬉しそうな顔を見ていると、こう言うのも良いかも知れないと思う。
     でもちょっと悪戯したくなって蟹を切る邪魔をしてみたら。
    「キッチンばさみをダンッってした、ダンッって」
    「ちょっと私食べるのに忙しいから、話とかはまた後でな!」
    「もー、あとでちゃんと街歩きとか付き合ってもらうっすからね」
     とりあえず、今は蟹を食べようと。
     メイニーヒルトは、蟹の身を器用に取り武流の口元へと運んでやった。
    「やっぱりメイニーってお姉さんだよな」
     もっとも、その彼氏としてはもう少ししっかりしたいところでもあるけど、と。武流は蟹を咀嚼する。
     2人の様子を見て、成美と奏音がこそこそと意見を交わした。
    「椎葉同輩とメイニー先輩がまるでこの鍋のように盛り上がって居るわけだけど、あるな同輩……奏音……私たちは一年間、一体何を……」
    「何でこれだけ綺麗所が揃っててリア充があそこだけなの……」
     いや、クリスマスに食べる蟹鍋は美味しいけれども。
    「鍋って美味しいしあったまるよねっ」
     あるなが言うと、気を取り直したように成美が蟹を手に取った。
    「……うん、来年頑張りましょう!」
     ポジティブに言ってみる。
     奏音も頷き、蟹切りバサミで次々と身を解していった。
     こうして皆で鍋を囲み、わいわいやるのは楽しい。
     5人でのお喋りは楽しくて、ずっと続いた。
    「大根アートなんてどんだけ大根使うと思ってんだ。フープロ使えよフープロ」
     そう言って、フードプロセッサーを拝借してきた翌檜が、大根をどんどん摩り下ろして行く。
    「ふ、フープロつよい……!」
     萌火とアネラは、山となった大根おろしを鍋に積み上げ形を作った。
     鍋友4人衆が作るのは、青い雛鳥のヒート君だ。
    「わ、すごい萌火くん私たち超すごいよ!! 天才!!」
     青い食紅で色付けし、完成したところでアネラが声を上げた。萌火がサムズアップして答える。羽やくちばしなど、細かく作業した甲斐があったというものだ。
    「すごく出来の良いヒート君……壊したいな」
     皆の作業を生暖かい目で眺めていた繭が、完成したアートをじっと見つめた。
    「繭、てめぇだめだからな!?」
    「繭ちゃん、一生懸命つくったやつだから壊さないでね!?」
     萌火とアネラが声をあげ、その様子を翌檜がやれやれと傍観する。
    「ほら、そろそろ食うぞー」
     翌檜が蟹を投入すると、みるみる鍋の中が青と赤の絶妙なヤバさを醸し出した。
     けれど味は最高で、心も身体も暖まって、繭は少しだけ笑顔が出来そうになる。
     正直なところ、こういう付き合いは無縁だったから、内心ちょっと嬉しかったのだ。
     ああ、でも恥ずかしい。
     あわてて寝ているフリをしたけれど、きっと誰かは分かっている。最高に楽しくて、美味しいクリスマスだ。

    「って、アレ? オレ、剥いた蟹此処に置いといたんだけど誰か知らね?」
     今日は目一杯食うぞと意気込んでいた遊が深刻な声を上げた。
    「遊は何を遊んどんねや、蟹なくなってまうでー……ってアレ、俺のいっぱい身取り出しといた皿、誰か知らん?」
     柚貴もきょろきょろとストックしていた蟹を探す。
    「ハッ、コレはアレか! 神隠し……じゃなくて蟹隠し事件か!」
     犯人はこの中にいる、と、あさってのほうをビシリと指差し遊が事件解決を誓った。
    「……ふーん……蟹って、剥いても足だけで逃走すンだ」
     時兎がつられてその方向へ視線を向ける。手元には蟹が1本。つついてみると、まだ少し熱い。
    「蟹が消えたってそんな事が……と思うけどこの学園ならあっても不思議じゃないよなあ」
     騒いでいる仲間を横目に見て、小鳥は蟹を食べる作業に戻った。
     これはとても真剣に思うのだが、蟹失踪事件より目の前の蟹の方が大事だ。
    「七瀬さん、無くなった蟹の行方追うより、今目の前で消費されつつある鍋の中の蟹追っかけた方が良いですよ、多分」
     黙々と蟹の殻を剥いていた晃が顔を上げた。
     何故人は、蟹の殻を剥いている時は無口になるのだろう。
    「それにしても、いつもコンビニで適当にやってる面子で落ち着いて鍋を囲んでるのって、なんだか不思議だね」
     蟹用のスプーンで易々と身を掻き出していた仙が言った。適度に蟹を味わい、優雅に皿を隠している。
     いや、皆が黙々と作業している様を見ると悪戯心も湧くよね。うん。
    「結構……まどろっこし……」
     ようやくぬるくなった蟹の殻を時兎が剥き始める。
     騒いでいた遊と柚貴が再び蟹の殻を剥く作業に戻る頃、仙がそっと蟹の皿を元に戻してみたり。
     〆の雑炊までには、まだまだ蟹をたっぷり味わいつくすのだ。

     蟹鍋の件を色んな仲間から褒めてもらい、紺子はその度嬉しそうにブイサインを返している。
    「しかし、クリスマスに蟹は予想外だったなぁ……あ、紺子ちゃん良かったら俺剥いたげよっかー?」
     器用に蟹を剥き、要が蟹を近くの仲間に差し出した。
    「今年も飾り付けまで手伝ってくれてありがとう♪ じゃあ、蟹を1本頂きます」
     紺子は嬉しそうに頷き、蟹をまるっと1本分口へ放り込んだ。ジューシーで蟹は美味しい。
    「今年も楽しいクリスマスありがと♪ 来年も一緒に美味しいもの食べようなっ」
    「こちらこそ、ありがとう♪ ああー、次は何食べようかなー」
     話は尽きない。
    「……なんかこう、女友達と~ってあんたがいうと不思議な気持ちになるわ。そしてそれに慣れているあたしである」
    「いひひ、そのうち不思議でも何でもなくなるよ」
     鶴一と七はテンション高く蟹鍋を味わっていた。
     話題はそのうち、七の出身地北海道での海鮮食べ放題からバイクの旅に及ぶ。
    「じゃー春ぐらい目処に計画練ろうよー」
    「ふっふ、楽しみ」
     鶴一が言うと、そうしようと七が頷く。
    「のぉんっ。目に汁が、汁がーっ」
     日本の冬を体験しようと悪戦苦闘を繰り返したリュカの目に、蟹の汁が飛び跳ねたのだ。
    「助けてナイさんっ」
    「リュカ様、大丈夫ですか……?」
     ナイはそっと傍に寄ってハンカチで目を拭いてやる。
    「大丈夫です泣いてません」
     ようやく落ち着きを取り戻し、リュカが取り出した蟹の身を口に含んだ。
    「食べるまでに悪戦苦闘しましたが、美味しいね、ナイさん」
    「とても良い味ですね」
     と、笑いあう。
     日本でもケーキやターキーを食べるのが一般的と聞いていたけれど、2人ならこんなクリスマスも悪くない。
     そろそろ教室内では鍋の締めが始まった。
    「さて、いよいよ〆ですね」
     悠花が取り出したのは、白いご飯と溶き卵だ。
    「あ、蟹雑炊だー!」
    「いいねーいいねー」
     近くにいた要や紺子が寄って来る。
    「いただきませう!」
     手を合わせて、悠花達は〆の雑炊を鍋から器に移し始める。
    「じゃあお返しに蟹雑炊でも作るか」
     柚羽が貫のために蟹を解しておいてやったのだ。そのお礼と言う事なのだが……?
    「え? まて、雑炊? 締めだろう? うどんじゃあないのかね折角の蟹の風味が薄れやしまいか!」
    「え? うどん? だって蟹だぞ!?」
     思う存分蟹を味わった貫と柚羽が互いの言葉に顔を見合わせた。
    「よしどっちにするか蟹の身ほぐし勝負だ!」
    「成程そこで勝負……いいだろう受けて立とう!」
     貫の提案した勝負に柚羽が口の端を上げる。
     魚介類を堪能したあとに、紅葉と毬衣は牛肉やラム肉を次々と鍋に投下していた。
    「お肉ー……」
     これから始まるお肉タイムに毬衣は瞳をキラキラと輝かせる。
    「毬衣ちゃん、野菜もちゃんと食べてね? あ~ん」
     キノコや白菜も入れながら、紅葉が釘を刺した。
    「あ、うん、分かってるよ野菜もちゃんと食べるよ?」
     だから、お肉は生で食べたら駄目だろうか。
     毬衣の着ている着ぐるみが、ひょこりと揺れた。
     蟹は美味しいね。〆の雑炊も最高だよ。教室中が笑顔で溢れている。
     来年もみんなでこうしてクリスマスできますように!
     灼滅者達は、その後も心行くまでパーティーを楽しんだ。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月24日
    難度:簡単
    参加:54人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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