クリスマス2015~武蔵坂学園雪合戦

    作者:天木一

    「はっはっはっ……」
     白い息を吐きながら、一定のペースを守りジャージ姿の少女がグラウンドを走っている。
    「はぁはぁ、……こんにちは」
     貴堂・イルマ(中学生殺人鬼・dn0093)が灼滅者達に気付き立ち止まると、深呼吸して息を整えながら汗を拭う。
    「もうすぐクリスマスだな。毎年学園ではクリスマスのイベントが開催されているのは皆も知っているだろう」
     その言葉に去年のクリスマスを思い出しながら灼滅者は頷く。美味しいケーキを食べたり、恋人達がデートしたり、みんなで騒ぐ楽しい一日だ。
    「そこで今年も『雪合戦』が開催される。それにわたしは参加するのだが、皆もいっしょにやってみないか」
     クリスマスにはグラウンドに人口雪を降り積もらせ、一面が銀世界となる。そこで雪を使って遊ぶのだ。
    「ルールはシンプルだ。東西の青軍と赤軍とに分かれ、相手を全滅させた側の勝ちとなる」
     1A梅組、2B桃組といったクラスや学部単位のグループを均等になるように振り分けられる。
    「雪玉が当たれば失格だ。場外に出てもらう。もちろん雪玉は敵だろうと味方だろうと関係なく当たれば失格だ」
     つまり同じ軍であっても戦う事はできる。個人的に戦いたい相手がいればチームに関係なく思う存分に雪遊びをすればいい。
    「雪玉の数を確保する為、雪球製造器が幾つか設置されている。これで弾薬を補給する事が大事になるだろう」
     雪玉が無くては戦えない、もちろん手でも作れるが、道具を使うとでは効率に雲泥の差がある。
    「合戦というだけあってチームワークが物を言う。皆で力を合わせたチームが勝利を掴むだろう」
     集団の力こそが重要な戦いとなる。役割分担が出来ていれば無駄無く行動できるはずだ。
    「そして今年も勝った側にはお汁粉が振舞われる。甘い小豆汁に餅を入れたものだ。雪に触れて冷たくなった体を温めてくれることだろう」
     想像したら食べたくなったとイルマは笑う。
    「負けた側にも温かいココアがもらえるので、それで体を温めて風邪をひかないようにしてくれ」
     戦い終われば皆で温かいものでほっと一息ついて休息となる。
    「今年はどちらが勝つのか、もちろんわたしも所属した側が勝つように全力を尽くす。今もこうして体力作りをしているところだ。今年もお汁粉が食べたいからな」
     お汁粉の為にも手加減は無しだとイルマがやる気に満ちたようにランニングを再開する。灼滅者達もそれぞれ作戦を練ったり、特訓したりと、雪合戦に備えて準備を始めるのだった。


    ■リプレイ

    ●雪合戦
     雪の積もったグラウンドに左右に分かれて灼滅者達が対峙する。
     東の青いゼッケンは1A梅組、3C桜組、4D椿組、5E蓮組、6F菊組から成る東軍。
     西の赤いゼッケンは2B桃組、7G蘭組、8H百合組、9I薔薇組から成る西軍。
     大学生は両軍に割り振られ準備できると審判が前に出た。
    『ただ今よりクリスマスイベント、雪合戦を始めます!』
     ピストルの音が鳴り響き、両軍総勢54人の戦士が一斉に動き出した。

    ●緒戦
     東軍が雪を準備しながら前進していく。
    「おー! 雪だ雪ー! 雛っこ、雪ー!」
    「はわー、雪ですねぇ。雪ー! ふわわっ」
     楽しそうに和希が雛の顔にぼふっと雪をくっつけて遊んでいると遠くから雪が飛んでくる。
    「っと、始まった! このくそ!」
    「っと。始まりが突然ですー!」
     和希が慌てて反撃し、雛が屈んで雪玉を作り始めた。
    「私が雪玉を作りますから、イルマさんは攻撃に専念してください」
    「了解した! 一人でも多くの敵を倒そう!」
     紅緋が雪玉を作り、それをイルマが受け取った。
    「今回は同じチームだな、一緒に冬の風物詩を楽しもう」
    「頼れる仲間が居れば心強い!」
     ヴァイスと肩を並べてイルマも雪を投げ始めた。
    「上も気にしなくっちゃあさ」
     シェルターの上から奇襲したユスティルが笑いながら違う場所へ移り敵を翻弄していく。
     西軍の動きは速く中央に東軍よりも早く近づいていた。
    「今年も勝利目指してがんばろーねっ!!」
    「おー!」
     結月の掛け声に仲間達も一斉に腕を上げる。
    「段ボール被っていたらアウトですかね」
     七波はそんな事を考えつつダッシュでシェルターを確保する。
    「ん、こういう時には冷静さが必要だよね」
     七葉は動かずに状況を見極め、援護するように雪を投げた。それをノエルがにゃにゃっと応援した。
    「今年もやります、長距離砲撃・山なりの弾道雪玉ミサイル(仮称)」
     敵陣深くのシェルターに向け星流が山なりに雪を投げ、視界外からの攻撃に敵の動きが鈍る。
    「幾度もの戦場で見せた拙者となゆた殿の連携を今こそ見せるべきであろう!」
    「夜のご馳走を味わうためにも、目一杯動いておかないとね!」
     神羅となゆたは互いに背中を預け隙の無い動きで敵を攻撃していく。
    「めっちゃ寒いわ……」
     水着に青いゼッケンと寒中我慢大会スタイルを貫くクリミネルの声が震える。その目立つ姿に雪が飛んでくる。
    「負けませんからねー。全力尽くして楽しむのです♪」
    「スナイパーの本領は待ち、そして確実に仕留める事!」
     楽しそうに翡翠が壁から雪を投げて牽制すると、敵を狙える場所に待ち伏せていた千尋が狙撃した。
     刺繍倶楽部のメンバーは男子と女子で東西に分かれていた。
    「供助兄ちゃんと力合わせて勝利を掴む!」
    「建すばしっこ! やっぱヒーローは一味違う」
     健が雪原を猛スピードで駆け抜けシェルターを利用して移動すと、援護するように供助が狙って投げつけた。
    「ふおぉ健くん素早い……! こ、これはつわものの予感。でもチームワークは負けてられへんよね」
    「健さん、雪上とは思えぬ速さ、流石です」
     気を取り直して希沙が迎撃する為に雪を投げ、藤乃も負けじと反撃を行う。

    ●混戦
     中央付近では露草庵の面々が敵味方に分かれて戦っていた。
    「さあ、どこからでもかかって来なさい!」
     そう言いながらも巳桜は東の壁に隠れて雪玉を握っていく。
    「みてみてー!おにぎりみたい!」
    「あ、黒谷くんの雪玉はちょっと美味しそうね」
     才葉がおにぎりを作るように固めた雪玉を見て巳桜は微笑む。
    「っしゃ、嵐行くぜ!」
    「じょーとーう。こっちこそ、女だからってナメんな」
     西側から御伽が気合を入れて雪を投げつけると、嵐も用意しておいた雪を纏めて投げ返すがすぐに息切れしてしまう。
    「野乃くんは手強そうだと思っていたけれど、杠さんもかなりやるわね……!」
     巳桜も負けじと投げるが雪玉を避け損ねて当たってしまう。
    「きゃっ、やったわねー!」
     当てられながらも巳桜は楽しそうに笑った。
    「えへへ、雪合戦精一杯頑張るさん!」
     夜音も加わり雪をへろへろと投げる度に帽子のぽんぽんが揺れる。
    「中学生になった私だって一味違いますのよ!」
     音雪は嵐に倣って意気込むと雪を投げ、合間にナノナノのちまきをぽいっと投げつけた。
    「ち、ちと、ちと待て……! わ、と、っと」
     嵐がそれを避けてバランスを崩す。
    「ふぇっ、今ちまさんのお声が聞こえた気がするよぉ……?」
     気を取られた夜音がよそ見をしながら雪玉を放る。
    「ふふふ。今年も騙されましたね、それはちまさんです。本物はこっちですのよてーい!」
     音雪の雪を嵐が避ける、だがその先にへろへろの玉が落ちてきて嵐の頭に当たった。
    「例え、ジュリでもこういう時は容赦しないんだから!」
    「勝った方が相手を好きにできるって賭けだからね、負けられないよ」
     アイリスエルとジュリアンが対峙し、手にした雪を投げ合い始めた。
     柴くんち御一行は男女に分かれ勝った方がお願いできるという勝負を始めていた。
    「俺が勝ったら? うん、泊まりで原稿ね。負けたら? 彼女達がしない分男子が頑張ってくれるよ」
    「くそっ勝っても負けても原稿とか地獄ですか、観月先輩は鬼」
    「とりあえず勝たないと男だらけのお泊まり会(徹夜残業)って事は理解した。悪いけど全力でいくね」
     観月の返答に侑二郎と蓮二が目の色を変えて雪を投げる。わさびは離れた場所からそれを観戦していた。
    「一発でも当たったら終わりだからなあ、二人を囮……もとい前衛に使う方がいいかな」
     観月は後ろに隠れるようにして敵を狙う。それに対して女子側も反撃してくる。
    「画材が充実すると嬉しいのですよ、トーンも増やしてください」
     勝ったら何をしてもらおうかと考えながら昭子が次々と雪を投げる。
    「勝ってカラー原稿用のインクとか道具をもらうわ」
    「めざせ画材だねひよりちゃん、私もインクほしいな」
     ひよりが用意した雪を京子が運び、真珠がそれを投げつけた。
    「この可憐なメンバーをみて雪を投げれますか! アッ投げられる!」
     堂々と前に出た千架は鬼気迫る勢いの男子からの投擲を見て慌てて逃げた。
    「あっ痛いこれ痛いあれっでも雪玉じゃない、これは……雪だるま(石入り)……?」
     侑二郎が当たった物を確認するとそれは硬い雪だるまだった。
    「……飛んでくる玉が異様に硬そうなんだけど、これ石入ってない? 大丈夫? ねえ? 死なない?」
     それを見た蓮二が不安そうに尋ねる。
    「石は入っておりません、だいじょうぶです、だいじょうぶですよ」
    「ちょっと片めにぎゅっと雪球握っただけだよ、大丈夫きっと致命傷にはならぬ!」
     昭子が微笑みながら全力で雪を投げつけ、冬季限定のアイスのラインナップを増やす為、千架も雪だるまを投げつけた。
    「わさびさん……は戦ってないみたいね」
     ひよりが周囲を見渡しほのぼのしているわさびさんを見つけ和む。
    「差し入れはするのでがんばってくださいね」
    「原稿は、まかせた」
     真珠が逃げ道を無くすように雪を飛ばすと、止めの一撃を千架が放り投げた。
    「俺たちの原稿はこれからだ」
     最後に倒れた観月が顔を押さえながらそう呟いた。

     元社務所のメンバー同士が戦いを始めていた。
    「遮蔽物、遮蔽物な」
     小次郎は何かを思いついたようにシェルターを蹴り折って動かし始める。
    「織兎さん、ミカちゃん。つっこんで壁になるから後ろから来て」
    「よ~~し、勝つぞ~~!! 小次郎さんに続け~~!!」
    「……つまり、二人の後ろに隠れればいいってことだね!」
     その後を織兎とミカエラが追いかける。
    「狙いは雪玉を補充して戻る途中の人かしら……って、雪の壁が動いてるわね?」
     銘子が驚いて手を止めた。
    「杣を右へ先行させて誘き寄せしましょう」
     銘子の指示に霊犬が駆け出す。
    「了解です、青チームには負けませんよー!」
    「なんとなくですけど久篠さんが1番倒しやすい気がする……ままれが飛んでる近くにおるやろうし!」
     紗里亜と結希も挟撃しようと反対側から迫る。だがそれに応じて雪壁から雪が飛んできて投げ合いとなった。
    「ひゃっ、背中に入ったー!?」
     反撃を受けた紗里亜は雪が首から入り体を震わせる。
    「雪玉補給完了でアリマス! 行け、ままれー!」
     ミカエラの作った雪玉をまーまれーどが運び、それを織兎が投げる。
    「うぉっ」
     一方を防いだ小次郎が反対側の攻撃に被弾すると、銘子にも雪が当たる。
    「くらえ! 魔球・佐倉スペシャル!」
    「勝負は非情! 勝たせてもらうぞ!」
     結希と小次郎が投げた雪が同時に当たり、気付くと玉を作るミカエラだけが残っていた。
    「よーし、それじゃ頑張ってこ!」
    「よーし勝利、貰っちゃうよ!」
     竹緒と埜子が仲良く声を掛け合って見知った顔に向かって雪を投げ始める。
    「お汁粉……お汁粉ね、食い物が掛かってるとあらば仕方ないっすねェ……いざァッ!!」
    「雪遊びといってもやるからには勝つぜ」
     やる気満々の雛罌粟と治胡が雪を投げ返し、互いに楽しそうに投げ合う。
     アルニカの面々は男女に分かれて戦いを始めていた。
    「こういうのは先手必勝ヨ! 攻撃、攻撃、そして攻撃!」
     つぐみが一気に攻勢に出る。
    「手ごわい相手ですが、負けませんよ!」
    「相手は年上の男性ばっかりですが……負けません!」
     それを敬厳が援護し、注意が逸れたところをめいこが狙う。
    「今年もこの暴れる日がやってきた!」
    「相手は女性と年下っすけど……手加減されるのも嫌でしょうから、ガンガン行くっすよ」
     千鶴がノリノリで飛んでくる雪を躱し、律は緩急をつけて相手を惑わすように投げる。
    「雪合戦でもガンガンぶっ放すのが私のスタイル、ヨ!」
     つぐみは引かずに注意を引くように投げ続け、千鶴を狙う。
    「たいちゃん、お願い!」
     千鶴を庇い大智が体で受け止めた。
    「油断大敵、っすよ」
     そこへ律が投げた雪がつぐみに当たった。同時に狙い澄ました敬厳の雪玉が守るものを失った千鶴を撃つ。
    「めいこさん!」
    「任せてください!」
     一瞬視線を合わせ敬厳が投げながら律に向かっていく。律に狙い撃たれるがその隙にめいこが雪を見事的中させた。
    「折角の聖夜だというのに、騒がしくなりそうだね……嫌いじゃないけど」
    「クリスマスに雪合戦、楽しそうじゃぁありませんか」
     明浩と詩織が対峙して視線を合わせる。それが始まりの合図だった。互いに雪玉を投げ始める。
     速球の中に明浩が緩い玉を混ぜる。だが詩織は予想していたように躱す。それにムキになった明浩が思わず前のめりに攻撃に移ると、背後から隠れていたビハインドが雪塊を投げつけた。
    「全く、キミは昔から詰めが――」
     詩織は作戦通りと笑みを浮かべると、そこに流れ玉が直撃した。
    「ははっ、詰めが甘いのはお互いだ」
     それを楽しそうに明浩が笑い。詩織は不貞腐れたようにそっぽを向いた。
    「イルマ、真剣勝負よ!」
    「受けて立とう!」
     曜灯に応じてイルマが構える。互いに持った雪玉を投げつけ動き回る。手持ちの雪が無くなれば拾いながら投げ合う。イルマが動きを予測して投げるが曜灯はそれよりも速く一歩を踏み出し、接近するとすれ違いながらイルマの胸に雪を撃ち込んだ。
    「むぅ、負けてしまったか……」
     残念そうにイルマが雪を叩く。
    「次は私が相手をしよう」
     一騎打ちが終わると次は仇をとろうとヴァイスが前に出る。
    「本気で雪合戦するのって楽しいわね」
     それに応え曜灯は笑みを浮かべて次の戦いへと駆け出した。
    「圧倒的ではないが、我が軍は」
     軽口を叩きながら七波が迎撃していると、雪が頭に直撃した。
    「七葉ちゃん、あっちお願い」
     すぐに結月が攻撃してきた敵を指差す。
    「兄さん、油断しすぎ」
     溜息をつきながら七葉はその敵に向かって雪を投げた。
    「あそこに隠れていそう」
     星流がシェルターに山なりの雪を投げ込むと、雪を被った敵が出てきた。だが狙撃しているのがばれたのだろう、星流に向かっても雪が降り注ぎ食らってしまう。
    「たけおちゃん、玉、いっぱい持ってきたから!」
    「あっ、ノコちゃん雪玉ありがとー!」
     埜子が雪玉を抱えて運んでくると、笑顔で受け取った竹緒が投げつける。
    「じゃあちょっくら雪玉作ってきまーす!」
     雛罌粟が玉を補給する為にキャリバーで移動を始める。だが勢いよく雪に滑って転倒して地面を転がる。そこに笑みを浮かべた竹緒が現れた。
    「采華……」
     それを何とも言えぬ表情で治胡が見つめ、溜息をつくと反撃に向かった。

    ●生き残り
     激しい攻防の末、戦場に残ったのは数える程の人数になっていた。
    「お汁粉の為に、そしてお気に入りの猫耳帽子をもふられない為に! 手加減なしでいくでござる」
    「勝っても負けても恨みっこなしだ」
     サーニャと夜霧が雪を投げ合い始めた。互いに雪を避けながら相手を狙う。
     そこで夜霧が山なりに投げる。フェイントにサーニャの視線が向いた隙に、顔に雪が叩きつけられた。
    「玉を作るのに熱中していたら残ってしまいましたね」
     紅緋が雪玉を抱えて放り投げる。
    「よし頑張ろう」
     既に味方は殆ど居ない、それでも諦めずにユスティルは雪玉を投げつける。
    「拙者、この戦いが終わったら今夜、なゆた殿に述べたい事が……」
    「え? 神羅君、それなんとかフラグ……?」
     神羅の言葉に思わずなゆたが見返した。するとユスティルの投げた玉が見事に神羅に命中する。
    「七葉ちゃん行くよ!」
    「任せて」
     そこへ左右から結月と七葉が突っ込み、ユスティルと紅緋に雪をぶつけた。
    「おい才葉行くぞ。男は黙って特攻! だろ?」
    「もちろん! 負けないぜー!」
     向かい合った御伽と才葉がニヤリと笑い、走り出した。飛び交う雪玉を掻い潜り投げつける。才葉の玉が御伽に叩きつけられる。だが僅かに遅れて御伽の玉も当たっていた。
     最後の東軍の生き残りが倒れ合戦は終わった。

    ●戦い終わって
    『勝者西軍! おめでとうございます! 冷えないよう勝者にはお汁粉、敗者にはココアを配りますので順次受け取ってください。それではこの後のイベントも楽しみましょう。メリークリスマス!』
    「メリークリスマス!」
     勝利のアナウンスに西軍が沸き、皆は早速温かいものを取りにいく。
    「いっぱい雪玉つくって、いっぱい走って、今年もクリスマスが来た! ってカンジね。お汁粉も美味しいし!」
    「そうだね、冷えた体が温まる」
     結月と星流が熱々のお汁粉を味わい、その横では慌てた七波が餅を喉に詰まらせ七葉がその背中を叩いていた。
    「あかん、もう感覚があらへん」
    「暖かい物取って来ましたー♪」
     クリミネルが唇を青くしていると翡翠がココアを3つ持ってくる。
    「ん~、生き返るねぇ♪」
     受け取った千尋は暖かさにほっとなり、クリミネルは暖を取るように口をつけた。
    「へへ、雪まみれ!」
    「真っ白ですね」
     希沙が藤乃の手を引いて雪の上に倒れて雪まみれになって笑いあう。
    「締まらねえが、風邪引かんようにな」
    「楽しかったな! マジお疲れさん!」
     そこへ供助と健が貰ってきたココアを配り、メリークリスマスと乾杯するのだった。
    「あったまるね……」
     竹緒、埜子、雛罌粟、そしてメンバーでは最後まで残った治胡はお汁粉を分け合って体を温める。
    「負けたら負けたで拙者も覚悟を決めるでござるよ、ええい、もふるなら存分にもふれー!」
    「じゃあ遠慮なく」
     覚悟を決めたサーニャの猫耳帽子に夜霧が手を伸ばした。
    「少し早いがささやかなクリスマスプレゼント」
    「おお、ケーキか。クリスマスにはやはりこれが必要だな」
     ヴァイスが差し出したシフォンケーキを美味しそうにイルマは頬張る。
    「それじゃ、イルマさん、この後もお付き合いしていいですか?」
    「負けてしまったがクリスマスはまだまだ続く、最後まで楽しもう」
     紅緋が差し出すココアを受け取りイルマはちびちびと口をつけて温まる。
    「おしるこでもココアでも、激戦を戦ったライバルと一緒だと格別ね」
     隣で曜灯もほっと一息つきながら微笑んだ。
    「おー! 運動した後の甘いもんって勝敗関係なく美味いよな!」
    「甘くて美味しいです。楽しかったですねぇ」
     和希と雛はマシュマロを入れたココアでほっこりと温まっていた。
    「お汁粉……」
     ユスティルはお汁粉が食べられないショックに猫を撫でながら泣いた。
    「味方を盾にするなんてずるい!」
    「勝ちは勝ちだよ」
     頬を膨らますアイリスエルを抱きしめ、ジュリアンは体をくすぐる。そして悶えるアイリスエルの反応を楽しむのだった。
    「あれ、お汁粉、神羅君のほっぺについてない、かな?」
     なゆたが気になった神羅の頬を突く。
    「お汁粉以上になゆた殿が拙者を暖かくしてえくれているよ」
     神羅が呟き顔を上げて微笑んだ。
    「黒谷、さっきのおにぎり球、残ってない?」
    「はい! どうぞ」
     嵐に満面の笑みで才葉がおにぎり雪玉を差し出した。それを齧った嵐は何とも言えない表情で凍りついた。
    「帰ったら何か暖かいものでも作りましょうか」
    「あ、暖かいものですね。甘酒、仕込んでありますよ♪」
    「冬の温かい食べ物は凄く美味しいですよねー♪」
     銘子の提案に紗里亜が甘酒の事を思い出し、結希は寒さを忘れたように微笑んだ。
     雪遊びが終わりクリスマスらしい飾り付けの学園を見渡す。
     どこもかしこも賑やかで楽しそうな笑顔に満ちている。今日一日を遊び尽くそうと、休息を終えて次のイベントに向かうのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年12月24日
    難度:簡単
    参加:53人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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