「あーつーいー」
「本当だねぇ……」
「まだまだかき氷とかアイスクリームとかが美味しい季節だよ全く」
「アイスと言えばさ。アイスランドって島があるの知ってる?」
「え? アイスの国? アイス食べ放題な島?」
「何その素敵テーマパークみたいなの」
「どこにあるの?」
「さあ?」
「知らないのかよ!」
「島、だから海だよねぇ……」
「秘境だったりするのかなぁ」
「行ってみたいねー」
「そんな噂を調べるしたら、島を見つけたデス!」
バサッと地図を広げ、右手で海の1点を示しながら、椛山・ヒノ(ハニーシュガー・d18387)はうきうき笑顔で灼滅者達に説明を始めた。
そこは誰も訪れない小さな無人島。
その姿は、海と砂浜に囲まれた森、といったところ。
だったのだが。
「森にアイスいっぱい出たきたデス」
花の中に、葉の上に、切り株を器に、木の実にぎっしりと。
溶けることなく様々な形でアイスは森を彩っているとか。
もちろんその色と味は多種多様。
探して楽しい、食べて美味しい、そんなアイスランドです。
「いっぱいいっぱい食べるしたら、アイスがなくなって、都市伝説もなくなるですよ!」
自信満々に言い切るヒノに根拠はないけれども。
まあ、都市伝説ってそんなもんですよね?
あ、食べきれなかったら攻撃して消しちゃってください。
無人島なので一般人被害はありませんが、一応、生態系とか心配ですし。
と、細かいことはさておいて。
「それじゃ、アイスランドにしゅっぱーつ! なのデス!」
左手に握ったアイスのコーンごと左腕を掲げると。
キャラメルとチョコミントのダブルアイスを旗印に、ヒノは瞳を輝かせたのでした。
参加者 | |
---|---|
ミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735) |
紫乃崎・謡(紫鬼・d02208) |
苑田・歌菜(人生芸無・d02293) |
煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509) |
北沢・梨鈴(星の輝きを手に・d12681) |
霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152) |
中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179) |
椛山・ヒノ(ハニーシュガー・d18387) |
●あいらんど
「楽園到着っ!」
とんっと足取り軽くその島に降り立った中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)は、そのままくるりと回ってから皆に笑顔を向けた。
楽しげな様子に微笑みながら、霞代・弥由姫(忌下憧月・d13152)も島に降りる。
「アッイスー♪」
その横を、踊るように煌・朔眞(秘密の眠り姫・d05509)が通り抜けて。
「まだまだアイスの季節なのですよ! いえ、アイスの季節は永遠に!」
「夏でも秋でも、皆さんと一緒にアイスを沢山楽しむデス!」
続く椛山・ヒノ(ハニーシュガー・d18387)と共に、足を弾ませる。
「生態系維持の為にも、食べ尽さないといけないね」
紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)が真面目な表情で森を見据えるけれども。
「あくまで世の平穏の為だからね。
勿論楽しみだけれど。楽しみだけれど」
「……アイス嬉しいオーラが隠せてないわよ、謡」
繰り返される言葉に苑田・歌菜(人生芸無・d02293)が苦笑しました。
即座のツッコミに振り返った謡に、何か言いたげにじっと見つめられたので、歌菜は、そうね、と笑みを深めて。
「世の平穏の為だからね」
「そう。平穏の為」
笑顔で同意すれば、謡がこくりと頷き、紫瞳を輝かせる。
とりあえず皆さん、アイス楽しみ、ってことでいいですかね?
「都市伝説の懐の広さにはいつも驚かされます……」
北沢・梨鈴(星の輝きを手に・d12681)も物珍しそうに周囲を見回し、目をぱちくり。
でもまだ梨鈴が居るのは森の外側。
見える光景も普通の島のそれで、砂浜や近くの草木も特に変わったところはない。
アイスはこの先、森の中へと入ってから。
「……美味しくないです」
だから、手近な枝を切り落とし、ぱくりと口にしたミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)の感想は残念なもので。
「楽しみですね。ミリアさんは何のアイスが好きですか?」
「早くアイスの森に向かうデス!」
朔眞とヒノは、戸惑うミリアを無理矢理にならないように先導して森へ向かっていく。
「木の実のようにアイスがなっているのでしょうか……?」
梨鈴も森の様子を想像しながら歩き行き。
大人しく控えめな挙動ながらも、その表情は期待に微かに色づいてました。
そして森の中に入った一行を出迎えたのは、カラフルな木々。
緑の葉の隙間から、梨鈴が想像したようにアイスが生っていたり。
花やつぼみの代わりというようにアイスが咲いていたり。
どこを向いても何かの形で目に入る鮮やかな色彩に皆の顔が輝いて。
「さーて、一杯食べましょっ♪」
紅葉の声を合図にするように、一斉にアイスへと向かった。
●あいすふぉれすと
枝に実のようについているそれに、梨鈴はじっと顔を寄せ。
淡いクリーム色の実の下にカップを置いて、そっと落としてみれば。
「……アイスですね」
カップ越しに伝わる冷気に実感する。
この色合いだとバニラだろうか?
「元が元だけに、流石に1口目は少々緊張しますね」
弥由姫も同じ実を取って、用心深くスプーンで掬う。
お腹を壊しても何とかなるようにと持って来た薬の瓶を確認してから。
観察しつつ、2人でぱくり。
「問題なさそうですわね」
(「アイス天国、なの……」)
その美味しさに梨鈴と弥由姫は微笑み合った。
都市伝説とはいえ普通にアイスで美味しいと分かれば、皆を止めるものはもう何もなく。
持参したカップやコーンを手に、思い思いに探し出す。
「抹茶にオレンジ……これは苺かな?」
「これだけあると目移りしちゃうわね」
謡も味を想像しながら歩けば、歌菜が言葉通りに視線をあちこち動かしながら並んで。
「なんだろう此処、天国かな?」
「うんなるほど、楽園はここにあったのね」
静かに瞳を輝かせる謡に、くすりと笑って頷いた。
手にするまでは溶けない便利さと、どこを見ても必ず見つかるくらいの量だから、急ぐことはないと歩みはゆったりしています。
だからこそ、最初に探すのは大好きな味。
「ラムレーズンはどこだろう?」
「レーズンが入ってるから……ブドウみたくなってるとか?」
謡と共に探しながら、歌菜がふと上を見上げると。
そこには木に巻き付いた蔓に生る、干し葡萄入りのアイスがあった。
あら高い、と目を瞬かせると、すらっと影の刃が伸びて。
刈られ落ちてきたのをカップで上手く受け止めたのはミリア。
「えと……」
そのままちらっと歌菜に視線を向けたけれども、はぅ、と俯いてしまう。
内気な様子に目を瞬かせた歌菜は、でもその気持ちを察して。
「もしかして、採ってくれたのかしら?」
声をかけると、慌てたようにカップが差し出された。
「ありがとう」
歌菜は笑顔と共に手を差し出し、そっとラムレーズンを受け取る。
ミリアの手はカップから逃げるようにぱっと離されて。
でも、嬉しそうな歌菜を見たその表情が、ほっと緩んだ。
「私もお手伝い、できます」
梨鈴はそっと箒に腰掛け、ふわりと宙から声をかける。
なら早速と謡がコーンを手渡して、お願いと共にラムレーズンを指し示せば、箒と笑顔がふわりと舞って、求める手へとアイスが渡った。
手伝いはサイキックやESPだけではなく。
「めーぷる、体重かけて枝を少し下げてねっ!」
あともうちょっと、という位置に手を伸ばした紅葉の指示で、ウィングキャットのめーぷるが枝に白い前足をかける。
しなった枝は紅葉の元へと届き、めーぷると同じ色のアイスをゲット。
でも味はメープルじゃなくてヨーグルトでした。
「リオも手伝ってくださいね」
朔眞も傍らのウィングキャットに笑いかけて、さてどれにしようと目移り開始。
そこにあるのは? と、リオにめくって貰った葉の後ろにあったのはチョコミント。
「見つけましたわ!」
それを見た弥由姫が、探していたと駆け寄れば。
「あら。では朔眞にお任せくださいね」
朔眞はリオと連携して、弥由姫にチョコミントを進呈した。
「アイスの森も良いデスね!」
ナッツ入りを食べたヒノは、休む間もなくマーブル模様のキャラメルに手を伸ばし。
「アイス食べすぎはお腹をこわすみたいデスが……
女子ですから仕方ないと思うマス!」
ペースの早さを気にしつつも開き直って、ぱくんと1口。また笑顔。
「……でもアイスは倒せば消えるから、きっとお腹も大丈夫ですし……
きっとノンカロリーですよね……」
お腹に手を当てたミリアは、女子らしいところを気にかけ呟く。
聞こえた皆の手が、一瞬止まったけれども。
「勿論ノンカロリー。ノンカロリー」
「都市伝説って便利ね」
アイスの魅力には勝てず、すぐに手も口も動き出す。
そして、その甘さと冷たさに、舌鼓を打つだけではなく。
「紅葉さん、何書いてるデスか?」
「じゃーん! アイスマップよ」
覗き込んだヒノの前に広げられたのは島の地図。
どこで何の味のアイスを見つけたのか、その情報が書き込まれていた。
位置はスーパーGPSまで使って正確に。
「さらに、じゃじゃーん! 3色ボールペン3本セットっ♪」
そして種類は、苺が赤、葡萄が紫、といったように色分けされて、ぱっと見ても分かりやすくカラフルになっている。
「手伝うですよーうっ! 絵は任せて下さい!」
ヒノは協力に名乗りを上げて、アイスがどう生っているか、どんな模様かなど、分かりやすくも可愛いイラストを添えていく。
ついでに簡易似顔絵で、発見時の様子や皆の好みも付け足した。
「ここがチョコで、そこがバニラ、あっちにミントがあるみたいですよ!」
朔眞は見聞きしたアイスの分布情報を伝えて。
黒に黄に緑にと、紅葉の手元でペンの色がくるくる変わっていく。
梨鈴はそっとアイスのシールを出して、地図にぺたり。
「……女子力満載なマップ、楽しみです」
「本当。シールに絵に、アイス情報がいっぱい。これぞ女子力って感じね」
歌菜も地図を覗き込み、楽しそうに笑う。
「夢のような地図になりそうだね」
ラムレーズンを食べながら謡も応えるように微笑んだ。
そして、手元の最後の1口を味わってから。
「木や花に生っているアイスは、ミントやシャーベット系が多そうな気がするけれど」
さてどうかな? と謡もアイスの位置を確認しに動き出す。
でもその手にはしっかりとスプーンが握られています。
後を追う歌菜も、お皿を忘れず持って、探索と共に味見もする気満々。
そんな探す手伝いと見せかけて食べたい皆を、だが紅葉は指摘するどころか。
「アイスマップには味の情報もしっかり載せないとねっ」
味見には多すぎる量が取れるディッシャーまで持って、うきうき森を進んで行く。
あ、でも、味が混ざらないように小さなスプーンを沢山持ってたりもしますが。
「もちろん味見は別腹よねっ!」
……大きなスプーン用意した方がよかったんじゃないかという勢いです。
それでも、味見とはいえ、ちゃんとお皿にとってからぱくり。
「直接口をつけないように気を付ける女子力っ♪」
味見の量が多いのも女子力でしょうかね。
「チョコミントの位置もしっかり書いてくださいね」
弥由姫はアイスマップに書かれた、好きな味の情報を確認して。
さらなるチョコミントを探し行く。
しかしこちらも探すだけではなく、気になるアイスを次々とカップに詰めて。
溶けないようにでっかいクーラーボックスに入れていく。
「こんな大きな箱、どうやって持ってきたんですか?」
「こういう時こそ、ESPを使わないとね」
驚く梨鈴に弥由姫は片目を瞑って、アイテムポケットを発動。
アイスを詰めたボックスがあっという間に収納されたのでした。
「わ。それじゃあ私もです」
ぱちぱち拍手を送ってから、梨鈴が発動させたのは隠された森の小路。
歩きやすくなった道に、今度は弥由姫が驚き微笑んだ。
「……こっちにチョコアイスがある気がします」
ミリアも大好きな味を目指して、特に根拠なく森を進み。
朔眞は歌菜を手招きして、木陰でちょっと休憩。
もちろん2人とも、手にはアイスがあります。
「ふふふ、つい楽しく探検しちゃいますね」
「がっつり戦闘も楽しいけど、こういうのんびりしたのもいいわね」
のんびりと一休みするその前では、謡がわくわくうろうろしていて。
「チーズケーキのアイスか。まだ食べてないね」
「謡さんのキャラメルも食べたいデス!」
「あそこにコーヒーのもあったわよ。めーぷるが取ってくれたの」
「今リオが栗と南瓜のアイスを取ってきてます。秋らしいでしょう?」
話しかけたヒノだけでなく他の皆も加わり、それぞれの味を交換したり。
「アイスのシェアも女子力デス!」
にこにこ笑顔のヒノの隣で、梨鈴もキャラメルの甘さに頬を緩めた。
(「ずーっと食べていたいの」)
●あいすらんど
アイスだらけで少し寒気を感じたミリアは、用意してきた紅茶をコップに注ぐ。
その温かさにほっとしながらも、だが周囲の皆を見て。
「……はぅ」
どうぞ、という声をかけられずに固まった。
それに気づいた弥由姫は笑って手を差し出す。
「よろしければわたくしにも頂けます?」
ミリアはこくこく頷くと慌てて紅茶を手渡して。
次のお茶を準備すると、今度は歌菜が、その後ろに謡が笑っていた。
おどおどしながらも嬉しそうに、ミリアは皆にお茶を配っていく。
「冷たいものばかり食べている時の温かいお茶っておいしいですよね」
梨鈴も温もりを手に、ふーふーと冷ましながら微笑んだ。
「コーヒーやスープもあるわよ。よかったらどーぞっ♪」
そこに紅葉もホットドリンクバリエーションを増やして。
自身はコーヒーと、バニラアイスの入ったカップを手にしていた。
興味津々覗き込むヒノの前、注がれるコーヒーで出来上がったのはアフォガード。
「メロンソーダもありますから、フロートもできますわよ」
弥由姫がずらりと並べたジュースは種類も豊富で。
アイスとの組み合わせで様々なフロートを作れそう。
「私はさらにフルーツポンチ!」
何故か対抗するように、紅葉は缶詰フルーツのサイダー割りを取り出して。
皆もそれぞれ用意してきたトッピングを並べていく。
「カスタードやヨーグルト味のアイスにはフルーツソースが合うと思うのよね!」
「ベリー沢山持ってきました。お好きなだけ使ってくださいね」
ヨーグルトアイスを手に見回す紅葉に、梨鈴が苺などを差し出せば。
「謡の黒蜜を分けてもらってもいい?」
「さつまいものスティックやモナカに挟むのもアレンジになるかな」
歌菜が伸ばす手に笑いながら、謡は何から試そうかそわそわ。
「フロートの上にさらにソースかけちゃいます!」
朔眞は豊富な材料をふんだんに使って、新しい味の組み合わせに挑んで。
「わ、色々トッピングしたらパフェみたいです」
迷いながら作った梨鈴のアイスも、とっても豪華になっています。
「これもどうぞデス。イチゴのふりかけデス!」
何だかやたらとおススメしてくるヒノのトッピングに、ドライフルーツかしら? と思いながら紅葉はラムレーズンのアイスを差し出す。
弥由姫もチョコミントに赤い彩りを添えてもらって、早速ぱくり。
「…………っ!?」
「何これ辛っ!」
実は唐辛子だった赤い粉に上がる悲鳴を見て、ヒノはにっこり笑った。
だったらロシアンアイスよ! とか変な企画も持ち上がったり。
誰のトッピングが一番綺麗かコンテストをしてみたり。
アイスの味だけでなく、皆との交流も楽しんで。
素敵な地図ができあがって。
たっくさんのアイスを食べて。
それでも森にはまだまだアイスが実っていた。
だから、食べて食べて食べまくって、満足したお互いを確認し合ってから。
「アイスおさめデス! ごちそうさまでした!」
ヒノは宣言と共に鞭剣を高速で振り回し、アイスを薙ぎ払った。
「名残惜しいですけど」
残ったアイスを残念そうに見ながら、梨鈴も冷気を辺りに放つ。
弥由姫も鞭剣を振るい、紅葉が祭壇を展開して結界を構築すれば。
「アイスの森が無くなるなんてもったいない……」
朔眞と謡も、これが最期とサツマイモとラムレーズンのアイスをちゃっかり食べながら。
「別に冬まで残っててくれても構わないけど……ごほん」
「冬は炬燵を持ってきて……こほん、な、何でもありませんよ?」
光線を乱射し拳を振り抜いた。
そしてミリアの放った炎によって、アイスは森から姿を消した。
何の変哲のない、普通の森に、そして普通の島に戻ったアイランド。
弥由姫はふと気づいて、クーラーボックスの中を覗くと、確保してあったお土産アイスは都市伝説と共に消えてしまっていた。
肩を落とす弥由姫に、でも歌菜は笑って。
「今度は学園で出張あいすらんどを楽みましょう」
ステキじゃない? と言う歌菜のルーツは七不思議使い。
都市伝説の吸収を察した皆から、歓声が上がった。
作者:佐和 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2016年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|