クリスマス2016~灯りと言の葉

    作者:篁みゆ

    ●クリスマスキャンドル
     12月24日、武蔵坂学園では例年盛大にクリスマスパーティが行われている。それは今年も例外ではなく、10メートル近くある巨大クリスマスツリーのそばをメイン会場として、いろいろな場所でさまざまな催しが開かれるのだ。

    「ふぅ……流石に寒さが厳しくなってきたね。もしかしたら少し、雪が降るかもしれないね」
     神童・瀞真(大学生エクスブレイン・dn0069)は窓の外を見つめて息を吐き出した。窓を開けているからか、その息は白くなって、そして、溶けてゆく。
    「君達はどうやってこの日を過ごすか、もう決まっている?」
     瀞真は様子をうかがうように軽く首を傾げて、手にしていたファイルから一枚のフライヤーを取り出した。
    「今年もあるみたいだよ、キャンドルナイト」
     それはメイン会場の周辺をキャンドルで飾るという催しだ。学園の用意したキャンドルホルダーとキャンドルから好きなものを選び、好きなところに飾りに行く。
    「去年と同じように、キャンドルホルダーに飾りをつけたり、絵を描いたり、メッセージを入れたりするのも自由だよ」
     今年は大きく分けて3タイプのキャンドルホルダーが用意されているという。
     硝子でできた、装飾の少ないシンプルなタイプ。デコったりメッセージを入れやすいのはこれ。
     ステンドグラスのような装飾や、特殊なカッティングが施されているタイプ。これはキャンドルに火を灯した時の表情の変化が楽しめるだろう。
     花の中心にキャンドルを置けるようになっているフラワータイプ。光り輝く花は、幻想的な雰囲気を作り出すだろう。
    「キャンドルもキャンドルホルダーも、色やタイプも色々有るみたいだから、迷ってしまうかもしれないね」
     瀞真はくす、と笑った。
     友達同士で一箇所にキャンドルを集めて飾るもよし、キャンドルで灯りの道を作るのも良い。ひっそりと見つからぬように、恋人や友人とひと気の少ない場所で灯火を楽しむのも良いだろう。
    「蝋燭の灯って不思議だよね。見ていると、普段は言えないことも言えそうな気がしてきたり」
     ゆらゆらゆれる灯火の魔法だろうか。灯りを見つめながら言葉をかわすのも悪くない。
    「幻想的な空間で過ごすクリスマスは、忘れられないものになりそうだよ」
     そう告げて瀞真は希望者にフライヤーを渡すのだった。


    ■リプレイ


    「本日予約した峯村です」
    「……予約されても提供できるモノなんて無いんだけど」
     そんなやり取りをしつつも差し出された颯人の手を取る彩。そんな彼女が手に取ったのは陽だまりの色。いつもなら静かな青に惹かれるのに何故だろう――柔らかな橙はささやかなのに確かな安心感をくれる。隣で颯人が選んだのは、カシスのフロストガラス。一目見た時から惹かれて焦がれて、気づけば追っていた色。その硝子の見せる変化はまるで誰かさんみたいだよねと軽く告げれば、声だけの反論が。
     願いを灯火に託すなら、彩をもっと知りたいと願う颯人。対して彩は、昔から変わらず願う、颯人の幸せな未来を。
     小晴が即確保したのは、橙色のボール状の蝋燭。運命を感じたそれを乗せるのは、カッティングが綺麗で蝋燭を引き立てるもの。
    「巫は何にしたの……白キャンドルに花ホルダーか、いいね」
    「目立たなくても綺麗な花って、見っけたらちょっと得した感あるっすよね!」
     隣で巫が笑う。
     火を灯せば、ほわりと暖かな光がふたりを照らす。
    「蝋燭の火って趣あっていい」
     告げる小晴の横顔は、灯りに照らされて。
    「……うん、綺麗っすねぇ」
    「君のほうが綺麗とか言わないの」
     視線に気づいてふざけたように発した心晴の言葉、それは内心の照れを孕んでいた。

     会場の隅っこに小さなテントを張って、カッティングのホルダーに百合水仙のマークを入れてテント内に吊るして。ふたりでテントの中に横になって、恭輔の腕枕でリィザは甘えて顔を寄せる。語るのは、2回共に過ごしてきたクリスマスのこと。
    「東京来てからのクリスマスイブって、毎回リィザといるんだね」
    「1年目は付き合う前で、去年はデートスポット。今年は2人きりで……来年は、どうなっちゃうんでしょうね?」
     今まで一緒に寝転んだことなど殆ど無くて。リィザの心臓は早鐘を打つ。しかし。
    「なあ、すっかり忘れてたけれど……夕飯どうしよう」
     返ってきた恭輔の言葉は答えからずれていて。
    「……もう、ムードないんですから」
     リィザは小さくため息を付いた。
    「動くなよ」
    「あ、え……おお?」
     突然貫に告げられて、『必勝』の2文字を入れたシンプルなホルダーを持った柚羽は動きを止める。慎重に真剣な顔で真正面から近づいてくる貫。じわじわと頬が熱くなる。なにが――。
    「うん、やっぱり花似合うなユズ!」
    (「なんだこれは」)
     貫が近づいてきたのは、柚羽の頭に赤いポインセチアのホルダーを乗せるため。彼女がいつも花の髪飾りをつけているからと思って。嬉しいのだが冷静に考えると複雑で、柚羽は答えに詰まる。
    「……いやいくらなんでもいきなり頭にキャンドルホルダー乗せるとか無いわ俺! 悪いユズ!お詫びに俺からいもんの頭にもなんか乗せていいから! 乗せやすいようにしゃがむから!」
     通常運転に戻ってまくし立てる貫。柚羽が別に構わんよと言い礼を告げるのは、嬉しいからだ。
     ゆらゆら揺れる炎についうとうとしてしまった梗花。隣で南守が軽口を叩きながら何か考えている。瞳を開けて、考え事してた感じ、と告げれば南守から差し出されたのはふわふわ毛糸の帽子。いきなりのプレゼントに驚いて、ちょっと早いサンタさんに問う。
    「早速かぶってもいい? 似合う?」
    「ばっちり似合ってるよ」
     その答えに安堵して、梗花が取り出したのは薄手だけどあったかい手袋。
    「って、この手袋を俺に?」
     同じこと考えたんだな、と零れる笑みと手に宿る温もり。
    「メリークリスマス、親友」
    「メリークリスマス、親友。笑顔で迎えられて、嬉しいよ」
     ふたりの顔を灯りが照らし出している。
     花のホルダーに赤い蝋燭。揺れる炎をぼんやりと眺める依子が思うのは、先日表に出た自分の闇。それを胸の奥に送り、ともしびを慈しんでいた、灯を慈しんだ友を思って願いと祈りを籠める。
     今、どこにいても、寒い夜など過ごしていませんように。またあした、そう言って笑うあの子をはやく、迎えに行けますように。

     恋人の到着が遅れるからと一人でサプライズの準備をする璃依。シンプルな物に二人の好きな桜と星をデコって、『カケルいナイト』とメッセージを添えてご機嫌。隅の方に飾って彼を待つ。きっと白い息を切らして現れて、優しい笑顔を向けて頭を撫でてくれる。思いは膨らみ待ち焦がれて。
     瀞真とユリアに過日の礼を述べてから、シャーリィは紫陽花型を、智秋は向日葵型を選んだ。互いに互いのイメージ。
    「キャンドル、いっぱい飾ったら……綺麗な道に、なりそうだもんね」
    「わぁ、きれー……」
     灯りで作った道の先、ふたりで掲げる灯火は優しくて、お星様みたいで。心温まる。
    「クリスマスも、この先も、また一緒に居られるのは皆のお陰ですの。改めて、ありがとね、ちーちゃん。これからも、一緒に。ずっと一緒、ですの!」
    「うん、うん、これからも、親友だもん。色んな事、二人で……しようね」
     沢山の灯火が証人の、約束。
     シンプルなものに『Ti voglio bene.』と書いた蝋燭はヒノエに。スチームパンクなステンドグラスの一角に『Ti amo.』と添えた蝋燭は菖蒲の手に。交換してメッセージを見て、照れや嬉しさ、愛や幸せを感じる。そっとひと気のない所に飾れば、蝋燭の灯火だけの素敵な空間。
    「今日は一緒ありがとう。こうやって一緒に時間過ごせるのが幸せだよ」
    「私の方こそ……いつもこうやって一緒に居てくれて有難う御座います。今年も貴方と共に居れた事を幸福に思います」
     微笑したヒノエにふふ、と笑って菖蒲が送ったのは頬へのキス。
    「同じ気持ちで幸せ」
     それは最高のクリスマスプレゼントだ。
    「今年も、色々あったね」
     フラワータイプに自分と菜々の名を入れる式の隣で、シンプルな物に『いつも一緒に』と書き込んだ菜々。灯りをつければそこは幻想的な空間に早変わり。
    「なんかロマンチックっすね」
    「そうだね。メリークリスマス」
    「メリークリスマス。今年もクリスマスを一緒にすごせて嬉しいっす」
     ふたりで肩寄せあって灯火を見る、それだけでも幸せだ。
     いつもと違う格好で、カッコいい蝋燭を選んだものの、火を付けたら溶け出してホラーな光景に……なんてやっぱりいつもの自分たちだとレミと直哉は思う。
    「いやー、今年は色々あったっすねぇ本当に」
     フラワータイプを地面において頬杖をつくレミは柔らかに光りに包まれていて、可愛いと思う。いつもと違う雰囲気に直哉が鼓動を高鳴らせている間、レミは今年の出来事を振り返っていた。
    「来年はどうな……って」
     そこまで告げて目に入ったのは、直哉の書いたメッセージ。熱で浮かび上がった『レミっち、大好きだ!』の文字は素直な気持ち。
    (「くっ……嬉しいけど恥ずい……!」)
     思ってても言ってやらないと心に決めても嬉しさは隠せない。
     杏子がオレンジのパンジー型をしたそれの後ろにリースと十字架のペンダントを置けば、あっという間に小さな教会の出来上がり。ステンドグラスのホルダーを選んだ理利がそれを置いてさらに教会の雰囲気が増した。
    「聖夜のお祝いと一緒にね、主の元に導かれた魂が、幸せになりますようにって、祈りを込めるの」
     その祈りは今、側にいる人達だけでなくみんなのためにも。
     響き渡る杏子聖歌。理利は歌声の奥、込められた願いに思いを馳せる。
    「みんな、にはね、さとり先輩も、入ってるなのよ?」
    「ありがとう。キョン」
     誰よりもあなたの幸せを――彼女にも幸せを――。

     体育館裏。石段に座り灯りの中、思うのは昔のこと。昔のことから目を背けなくなった千慶。一緒に『明日』が見れるようになったことを鈴は嬉しく思う。側にいてくれるから明日を迎えられる、それは互いに思っていること。
    「……ね、左手貸して?」
    「え? 左手……っ!?」
     乞われるまま差し出した左手の薬指に落とされる口づけ。へへ、と鈴は笑って。
    「これからもいっしょにいられるおまじない。いつもありがと、せんけー」
    「こちらこそ、いつもありがと。それから、これからもよろしく」
     顔真っ赤と笑われながらも、大切なことを告げるのは忘れない。
     共に過ごすクリスマスはもう三度目。重ねた時間と共に近づいた距離。遊は赤薔薇、桃香は白薔薇のホルダーを選んだ。
     薔薇は色や数で意味が異なると言う遊の言葉に白薔薇の花言葉が『尊敬』『私はあなたにふさわしい』だと答える桃香。そこには想いと願いが込められている。
    「あの薔薇が、オレの気持ちってことで」
     告げた遊は今知りたい桃香に負けて口を開く。
    「あー、つまりだな。赤い薔薇は『あなたを愛します』、1つだと『あなたしかいない』って意味なんで」
     平たく言うと桃香がめちゃくちゃ好きだ愛してるということ。真っ赤になった勢いでメリークリスマスと告げて、桃香の頬に口づけする遊。
    「!」
     桃香もまた、真っ赤になって。心の中で想うのは赤薔薇と白薔薇の花言葉。言えるのはいつになるだろうか。
     睡蓮の花のホルダーに花の香のアロマキャンドルを選んだクリスは、隣の桃夜の手元を覗く。三色のステンドグラス風ホルダーは蝋燭に火を灯せば光の白睡蓮が現れる仕掛け。互いにらしいね、と認めながらそっと人の輪から離れる。遠くから眺める淡い光はまるで蛍のよう。
    「……今年も色々あったけどさ、トーヤと一緒にまたクリスマスを過ごせてうれしいよ。ちょっぴり早いけど来年もよろしくね」
    「オレもクリスとクリスマスを祝うことができて嬉しいよ。うん、こちらこそよろしく」
     ぺこりと頭を下げたクリスに桃夜も倣って。毎年、毎年、これからもずっと一緒に。
     ダリアのホルダーとステンドグラスのホルダーが織りなす光が、静かな場所で混ざり合う。舞い散る雪と光の饗宴が何よりも綺麗で素敵。
     シルキーの用意したメッセージカードには『隣りにいる貴女が、幸せでありますように』と青い文字で書かれていて。クリスマスくらいは人の幸せを願おうかと思ったと告げるシルキーに、想々はメッセージが思いつかなかったと告げた。代わりに用意したのは青い小鳥の立体カード。これを並べたら、二人の願いが叶う気がして。
    「シルキーさんも幸せやったら私はもっとうれしいし、幸せです」
    「互いの幸せを祈る聖夜は暖かいのですね」
    「あったかいですね」
     胸の奥がじんわり温かい。
     ひと気のない場所で、翼とディアナは蝋燭に火を灯す。寒そうにしている彼女を抱き寄せて頭を撫でると、ふたりの体温が混ざりあって暖かい。
    「見てもいいわよ」
     ディアナからのメッセージは『Please keep holding my hands.I’m yours forever.』遅くなってしまったが、頷いただけで済ませてしまった気がするあの時の返事。これがディアナの気持ちだ。それを見て、そっと翼が自分の蝋燭をディアナの前に差し出した。彼からのメッセージは『Ich denke immer an dich』。
    「いつでもディアナのことを考えてる、今までも。そしてこれからもな」
     彼女の頭を、翼は撫でた。

    「こういうのって悩み出したらなかなか決まらなくて困っちゃう」
    「わかります、雑貨店なんて行ったら目移りばかりしてちっとも決まりませんから」
     イヅナと織姫はホルダーと蝋燭選びに難儀していた。漸くイヅナが決めたのは切子風のホルダー。緑のホルダーに白い蝋燭、赤い灯火はクリスマスカラーだと織姫は感心して。自分は夜空のイメージで青い花のタイプを選んだ。ふたり、火を灯して並べて。
    「やっぱり夜だとキャンドルの明かりが映えてとっても綺麗。メリークリスマス」
    「メリークリスマス。今年のクリスマスは良い思い出になるわ」
     ふたりで灯火を見つめ、時を過ごす。
     ツリーから少し離れた場所に、青い花が2輪。並んで蒼刃と薙乃は見つめている。
    「今年も兄妹そろって相変わらず家族で過ごすしかないクリスマスねっ」
    「……そうだな。クリスマスはずっと家族で過ごしてきたもんな。こうしてまた薙と過ごせてよかったよ」
     沈黙が落ちる。その胸に秘めたものに思いを馳せて。
     一緒に過ごせるクリスマスはあとどれくらい残されているの?
     蒼刃は胸の痛みを隠して、今この時を大切にと思う。
     薙乃は寂しさを抱きつつ、兄を助ける人になりたいと願った。
     お揃いのホルダーを手にして、ふたりは手を繋ぐ。一番いい景色の場所を探すというのは口実。彼女は気づいているだろうか?
     手を繋いで肩寄せあって、言葉をかわしながら歩く。
    「今年も一緒にクリスマスを過ごせてうれしいよ。来年からは高校生だね」
    「高校生になったら燈はもう少し大人っぽくなれるかな」
     理央に寄り添って、彼の隣りにいても恥ずかしくないような子になりたいと願う燈。
     付き合うようになってから一年。楽しいことがたくさんあった。だからこそ。
    「来年はもっと楽しい時間を二人で過ごそうね」
     灯火が見守る約束。
     冬舞は瀞真を誘い、ふたりで花のホルダーを飾る。
    「……一年、とても考えることの多い、年だった」
     ぽつり告げて今年の出来事を指折り数える。
    「……助けたいと思う人は信頼出来る仲間と共に助けられた、から。またソウルボードの中で会えればいい」
    「冬舞君に大切な人ができたみたいで、安心したよ。でもちょっと、寂しいかな?」
     微笑う瀞真に冬舞が胸元から取り出したのはドッグタグ。大切にしてるんだ、その言葉に瀞真も胸元からとりだして同じものを見せる。
    「これなら俺が俺で無くなっても、変わらないから」
    「……」
     エクスブレインとして聞き逃せぬ言葉。けれど友達として沈黙を選んだ瀞真に冬舞は微笑って。
    「良い年を。またな、瀞真」

    「皆、キャンドルは選んだかしら?」
     雛が声をかけるのは【サーカス小屋】の仲間たち。エステルがロジオンの手元を覗き込んだ。
    「飾り付け、素敵なの~」
    「あんまり過度に装飾を盛るよりは、キャンドルの灯りを楽しめそうでございますしね」
     シンプルなものにビーズなどを飾り付けて名を入れたロジオンのホルダーは、見事に灯りを引き立てている。薫が選んだ薄物色の花は雨のイメージ。雨が選んだ花は暖かくて優しい橙で、薫のイメージ。
    「エステル、ヒナ達はここに飾りましょうか」
    「むきゅ、ひなちゃんの隣に置くの~、お揃いなのです♪」
     二つの蝋燭はまるでふたりのようで。
    「こんな感じで、二人ずっと一緒にいられるといいわね……いえ、ずっと一緒にいましょう、いつまでも」
    「むきゅ、えすてるもひなちゃんとずっと一緒にいたいのです、約束なの~……」
     エステルを抱き寄せて、頬にキスを落とす雛。そんなふたりと、そして薫と雨とも距離を取り、ロジオンはホルダーを置いた。
    「揺れる炎が幻想的で、美しゅうございますね……」
     二組をそっと眺められる距離で、ロジオンは灯火のように暖かく見守っている。
     いつの間にかふたりっきりにされていた薫と雨。気を使って貰って申し訳なくもあるが嬉しい。
    「綺麗だな、雨」
    「うん、キャンドル、とっても綺麗……!」
    「あ、うんキャンドルの事なんだけど……キャンドルを見つめる雨の顔も綺麗、だよ」
     言葉の意味を理解して、みるみる雨の顔に赤みがさす。
    「えっと……嬉しい、ありがとう……!」
     同じように真っ赤になってしまった薫の袖を引いて手を繋ぎ、微笑む雨。
    「あの二人には、ずっと幸せでいて欲しいものだわね……ねぇ、エステル?」
    「うん、幸せななのがいいことなの、です♪」
     物陰からそっと二人を見ていた雛もエステルも、笑んだ。

     キャンドル乙女会を始める【月秋嶌】の三人の前には、花に星にレースにリボン。これぞ乙女の集い。
    「そういえば、クリスマスのご予定は? 恋人さんとのご予定」
     女の子が集まればやっぱり恋の話。華月の直球に返されるのは。
    「そういえば私、華月ちゃんの彼氏さんってまだお会いしたことがないわ?」
    「あ、わたしも華月先輩の婚約者さま、知らないです……っ」
     千穂もイコも直球を打ち返す。ご紹介まだだったかしら、なんて華月は恍けてみたりして。語ってもいいのよと告げる千穂。逆に聞かれれば「……たのしいのって幸せね」と一言。
    「わたしのほうは……えへへ、お話すまでもないかしら」
     イコも笑顔で。ふたりともきっと幸せなんだろうと華月にはわかる。だって見ている側が幸せになれてしまうくらい嬉しそうな顔をしているから。
     灯火よりも輝く瞳で花開く恋バナ。まわりの灯火は、まるで祝福するように暖かく見守ってくれている。


     会場のあちらこちらに飾られたキャンドルは、想いを乗せた言の葉とともに、クリスマスを素敵に彩ってくれている――。

    作者:篁みゆ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年12月24日
    難度:簡単
    参加:47人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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