運動会2017~綱の上の攻防線

    作者:幾夜緋琉

    ●運動会2017~綱の上の攻防線~
     6月11日……この日に行われるのは、武蔵坂学園の大運動会。
     パン食い競争やら騎馬戦など、普通の運動会で行われるような競技を初めとして、様々な競技で優劣を競う武蔵坂学園の一大イベント。
     そして……各組連合毎に力を合わせ、優勝という名誉に向けて、しのぎを削り合うイベント。
     勿論、我が組こそナンバーワンになるが為に手を取り合い、優勝に向けて一心不乱に進んで行く……そんな一時は、もう間近に迫っているのであった。
     そして、行われるは綱引き。
    『普通の綱引きじゃないのー? そんなの、普通じゃん』
     と、誰かが言ったかもしれない。
     単純に綱を引き合うものである……と思われる綱引きではあるが、今回の綱引きはちょっと違う。
     各組連合の綱が真ん中で接合され、三角形の形をした綱を互いに引き合う綱引きである。
     1A梅組から三チーム毎が対戦し、各組み合わせで勝利したチームが決勝戦を戦う、トーナメント形式の綱引き。
     勿論、チームの人数が多ければ多少は有利になるものの、作戦や、能力によって多少の有利不利も現れるだろうが……敢て同じ組み合わせの別チームと協力する、という事も可能である。
    「つまり……隣のクラスと力を合わせて、強いチームを撃破して、後は真剣勝負、って事も出来るって訳かー」
     そういう訳である。
     最終的な目標は優勝な訳で……今日の味方は次の敵、という事になるだろう。
     勿論、予選を突破しなければ、優勝も無い訳であるから、予選突破も重要になるだろう。
     そして、最後に。
    「優勝する為には3組毎の予選をどうにか勝利し、決勝戦はガチンコ勝負となる訳か……うん、それは負けられないね」
     と、拳を握りしめ……綱引き競争に向けて練習を開始するのであった。


    ■リプレイ

    ●運動会
     2017年の、武蔵坂学園大運動会。
     今年も又、パン食い競争や、大騎馬戦等々、様々な競技が開かれる、武蔵坂学園の一大イベント。
     優勝に向けて一心不乱に一勝一勝を積み重ねていくそのイベントに、灼滅者達を初めとして武蔵坂学園の面々が参加する。
     ……そんなイベントの一つ、綱引き。
     普通の綱引きであれば一対一の戦いなのであるが……今回は、一対一対一、の三チーム対抗戦。
     トライアングルの頂点にそれぞれのチームが配され、自分のチームの背後10mの所にある旗を掲げれば勝利、というルール。
    「これは中々……面白いルールですね」
     と四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)がくすりと微笑むと、それに月影・木乃葉(人狼生まれ人育ち・d34599)も。
    「ええ、そうですね……単純な力比べ、という訳では無いんですよね。例え力で負けてたとしても、作戦によっては勝つ事も出来る、という訳ですしね」
     勿論、一体一対一の三チーム対抗戦ではあるが、トライアングルの頂点という事は……それだけではない、という事。
    「悠花さんは……9組ですか。というと、ボクとは決勝戦で対峙する事になるのですかね?」
    「そうですね。木乃葉さんは……E組と言う事は二組目ですね。どんな作戦を取ってくるのか、楽しみにしてますよ」
    「ええ……互いに頑張りましょう」
     と、手を差し出す木乃葉に、悠花も微笑み、手を握り合う。
     そして……3組毎の予選が始まるのであった。

    ●綱に賭ける思い
     そして綱引き大会、予選の開始。
     まずは1A梅、2B桃、3C桜の3チームの対抗戦。
     取りあえずこの三チームにおいては、何か作戦があるという訳でも無く……ただただ純粋の、力の比べ合いになる。
     最初の内は、ほぼほぼ綱の引き合いは均衡しているが……少しずつ、体力が削れてきたのか、その均衡も崩れ始める。
     そして……最後に強い力で、一気に引っ張り込むのは、1A梅組。
    「やったー!! 勝ったー!!」
     と、互いに手を取り合い、嬉しそうにジャンプしている彼ら彼女らを見ると……何だか応援為ているこちらの方も、何故か嬉しくなってしまう。
    「……ふふ、やっぱり勝つと嬉しい物ですよね」
     と悠花は微笑む中……木乃葉はいつの間にか、其の場からは居なくなっていた。
    「……あれ?」
     と、ふと木乃葉を見てみると……他の4D椿チームと会話している。
    「あれ……もしかして……?」
     と悠花が小首を傾げている一方、木乃葉は……。
    「すいません。4D椿組さん、ちょっといいですか?」
     と、各組のリーダーの元へ向かうと……。
    「今回、あの6F菊組みました? 何だか、すっごい力の強い人を揃えてきたみたいなんです」
    『何? それは本当か?』
    「ええ。多分、一対一になったら、直ぐに負けちゃいますよ。だから……協力しませんか?」
    『協力??』
    「ええ。互いに、チームの間の方に綱を寄せて、相手チームを一気に引き寄せるんです。二チームの力を合わせば、きっと相手チームを封殺する事が出来ますよ。勿論、その後は一対一の勝負ですが、そこは正々堂々いきましょう!」
    『そうだな……まぁ、敵を先に減らすのは作戦として間違い無い。わかった、取りあえず6F菊チームを、力を取り合い相手を倒すとしよう!』
     と手を握りあい、相手チームとの協力体制を築く。
     ……が、木乃葉の作戦はそれだけではなかった。
     4D椿チームだけでなく、同じような話を6F菊組にも持ちかけたのである……勿論、相手チームの居ない所で、秘密裏に。
     片方のチームだけに話をすれば、相手チーム同士で連携をとられかねない……逆にこちらから2チームに連携を持ちかければ、自分のチームだけが連携から外される事も無いであろうし……逆に別のチームからの話を持ちかけられたとしても、それはそれで混乱に陥ってしまうだろう、という予測の下。
     ……そして、いざ4D椿、5E蓮、6F菊の勝負。
     掛け声と共に、4D椿、6F菊は、5E蓮組の方に移動する……しかし、5E蓮は動かない。
    『『……!?』』
     と驚く各組……木乃葉はあえて慌てて、タイミングが遅れたかの様に振る舞うが……その一瞬の内に、二チームの力具合を判断。
     ……僅かに4D椿組の方が力が強い、と判断すると、木乃葉は綱をくいっと左に振らせる。
     それは6F菊組に加勢して、4D椿を先に倒す、という合図。
     6F菊組の方に移動して、2チームで綱を一気に引けば……流石に1チーム対2チームとなっては、なすすべ無く6F菊組は引き摺られ、倒れてしまう。
     そして……残るは4D椿と5E蓮組の戦い。
     一直線上にその綱を引き合う2チーム。
     完全な一騎打ちになり、数分の力の均衡……ただ、綱を引くのはずっと引き続ける訳では無く、力を入れると引くタイミングに隙間が生じる。
     その隙間を縫う様にして。
    「おー、えす!! おー、えす!!」
     と木乃葉が掛け声を上げて、相手の緩んだタイミングにちょっとずつ、綱を引いてジリジリと、自分の幡多に向けて躙り寄っていく。
     ……そして、20分程の後。
    「おー、、えす!!」
     と、力一杯の掛け声と共に……その綱は、自陣の旗の下に到達。
    「やった、勝ちましたよ、皆さん!!」
     と仲間達と肩を抱き合い、嬉しさを表現する木乃葉……そんな5E蓮組を見ながら。
    「そう言う事ですか……中々の作戦を考えましたね。でも、こうなると私達も使えませんね……もとより使う気はありませんでしたが」
     と、悠花は微笑みながら、頭のリボンを締め直す……そう、次は自分達の居る、7G蘭、8H百合、9I薔薇チームの戦い。
     綱越しに対峙する3チーム……それぞれの一番前に居るのが、互いのチームに睨みを利かせる。
     ……そして、いざ……開始の号令と共に、綱がピンと張り合う。
    「みんな、耐えて!!」
     と悠花が叫ぶ。
     そして最初の引き合いに、ぐっと足を踏ん張り、その対峙に対抗。
     9I薔薇チームが頑なに耐える為、綱はほぼ7G蘭、8H百合の二チームの対抗戦の形相を呈する。
     ……でも、こちらも同様、少し時間が経つと疲れが出てきたのか、その均衡が僅かに崩れ、押し引きに差が出てくる。
     そして、その差に勝てている、8H百合チームの方に、9I薔薇チームも少しだけ寄っていく……そして2チームの力でもって、7G蘭を倒す。
     そして間髪を入れずに。
    「今です!」
     と、悠花の号令の下、自分のチームの旗の方へ、一気に綱を引き寄せて行く……流石に最初の対峙で力を大きく削られていた8H百合チームは、みるみる内に引き摺られていき……敗北。
    「……! やりましたね、私達の勝利です!!」
     とガッツポーズを取る悠花。
     そして、決勝戦は1A梅組、5E蓮組、そして9I薔薇組の三チームが駒を進めるのであった。

    ●最後の力
     そして、三チームの決勝戦。
     流石に決勝戦ともなれば、自分のチーム優勝に向けてピリピリとした雰囲気が周りに漂う。
     ……そんな雰囲気の中、木乃葉は先ほど迄の二チームの戦い方をビデオに取った上で分析。
     仲間達と、どちらのチームの方が強そうか……今迄の作戦からして、どちらにも話をするのは最早通じないだろう。
     とは言え、純粋な力比べになれば、戦況は予測できない。
     ……一方、悠花のチームは。
    「……相手2チームは強敵です。ですが綱引を引き合うのは変わりません。私達は作戦を変えずに行きましょう。少しでも、ベクトル的に均衡を崩す様にした上で、その隙を突いて……一気に引き寄せましょう!」
     と……それぞれのチームが作戦を立てて、いざ……決勝戦の開始。
     3チームが対峙する綱の上で……睨み合い、そして。
    「レディ……ゴー!」
     と、言う掛け声に合せて、一気に綱が張り詰める。
     ピンとした綱の対峙……9I薔薇チームは地面にしっかり足をつけて、二チームの消耗を待つ。
     一方、木乃葉は相手チームの動きを見据えて動こうとするのだが……9I薔薇はじっと耐え、1A梅は強く強く引っ張り続ける……となれば、自分達も引っ張らざるを得ない。
    「……そうですね……このままでは不味いです。ならば……」
     と木乃葉は、悠花チームと一直線に対峙する方向へ移動し、二チーム合せて1A梅を一気に引っ張り倒す。
     そして、一直線の千になり、悠花の9I薔薇組と、5E蓮組の正面衝突。
     ……引くタイミングと、緩むタイミングに緩急を付けて、少しずつ引っ張る5E蓮組。
     一方悠花は、引かれるのをぐっと耐え、ちょっとずつちょっとずつ、後ろの旗へと躙り寄っていく。
     そんな2チーム同士の対峙は、数分続く。
     各チームの仲間達が次々と疲弊していくが、優勝に向けて、どうにか勝利を手中に収めようと、力を合わせる。
     ただ……緩急を付けた攻防は、多少体力を使う作戦であり……じっと耐える方が、持久戦には向いていた。
     そして、決勝戦開始から十数分。
    「……今です!!」
     と、5E蓮組の隙を一気に突いて引き寄せる9I薔薇組。
    「わ、わわっ!」
     と、木乃葉を始め、5E蓮組の足元の砂が滑り、そして……綱引き大会は、9I薔薇組の優勝で、幕を閉じるのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2017年6月11日
    難度:簡単
    参加:2人
    結果:成功!
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