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12月24日。武蔵坂学園でもまた、例年通りの盛大なパーティーが催される。
夕焼け浴びてきらきら光り輝くのは、メイン会場に大きく聳える『伝説の木』だ。
この日の為にと会場を彩る生演奏。その優美な調べに心弾むがまま、足を踏み入れたなら――まるでお伽噺めいた幻想的な世界へ誘われることだろう。
其処は、煌めき溢れる一日限りの舞踏会。
見上げればはらり、ひらりと舞う雪もまた、今日という一日を祝福するかのよう。
さあ、きみの手を取り、共に踊るのは――――。
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「チャオ! うふふっ、もうすぐクリスマスね。今年も学園でダンスパーティーが開催されるそうよ」
笑みを綻ばせながら、ジョバンナ・レディ(陽だまりトラヴィアータ・dn0216)はあなたへとそう声を掛ける。
彼女が手のひらで示す先にあるのは、学園の掲示板に貼られたポスターだ。
「おお、もうパーティーの案内が張り出されてんだな。なになに……」
偶然にも立ち寄った白椛・花深(大学生エクスブレイン・dn0173)もまた、興味深そうにポスターへと目を向ける。
「時刻は黄昏時、場所はメイン会場か。伝説の木もクリスマスらしく仕上がって、ライトアップが始まってる頃合いだろうな」
案内を読み上げてはふと、窓の向こうに聳え立つ『伝説の木』へと視線を遣る花深。
ジョバンナもまた一緒になって外を見つめては、未だ見ぬ華やかな巨大ツリーを思い描きながら呟く。
「普段は見慣れた学園の敷地内でも、この日ばかりは特別感たっぷりでドキドキしちゃいそうね。なんだか大人な気分かも」
「ははっ。そう気構えなくても楽しんだモン勝ちってことで良いだろーぜ。学内のパーティーだしな」
花深はそう、ぐっと親指を立てて笑ってみせる。
参加者は学園の生徒同士。故に堅苦しさもなく、メイン会場へは気軽に足を運べることだろう。
社交ダンスは基本ペアでの参加となる。
恋人は勿論、気になる相手を誘うには絶好のチャンスだ。
他にも友人、サーヴァント――あるいは一人で赴き、現地で誰かに声をかけ、新たな出逢いを求めてみるのも良いことだろう。
「ふふっ、でも折角のパーティーですもの。めいっぱいドレスアップして行きたいわよね。当日には衣装のレンタルもあって、種類も豊富に揃っているそうよ」
改めてポスターを眺めては、ジョバンナはさらに瞳を細めて夢見心地に笑ってみせた。
一方の花深はというと、
「そうだ。そういやクリスマス当日の天気は……おっ、晴れ時々雪ってトコか」
スマートフォンを滑らせながら、目を瞬かせてそう呟いた。
「まあ、ホワイトクリスマスだなんて素敵! イルミネーションと相まって、まるで魔法のようね」
両手を組んで、甘い溜息を一つ。
煌めく聖夜の舞踏会に胸膨らませては、ジョバンナは改めてあなたを見つめて語りかけた。
――ねえ、黄昏の舞踏会へ訪れてみない?
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粉砂糖めいた雪がふわり舞い降りる夕暮れ。
会場に聳える伝説の木も、色彩溢れるキャンディケーンやクリスタルベル、天使の人形や天鵝絨のリボンでおめかし。
ライトアップが始まったなら、黄昏の舞踏会の幕が開く――。
指揮者のタクトが宙を裂く。奏でられるは、聖夜の円舞曲。
会場に集う学生達が次々に手と手取り合うなか、葉と千波耶も雪降るダンスホールへ。
クリスマスらしく様変わりした学園を見渡し、千波耶は心なしか浮かれ気分。
改めて傍らの葉を見遣れば、常とは違うグレーのセットアップスーツ姿で。
「葉くん、そういうのもカッコイイ」
するり、自然と毀れた言葉は雪解けのよう。怖かったダンスも、彼とならただ楽しいと想えるから。
「ちーたんは今日もかあいいね」
冗句めかして千波耶へそう返す葉。眸に滲んだ憂心も、彼女の笑顔を見ればすぐに掻き消える。
今宵はクリスマス・イブ。冬の夕暮れは短いけれど――。
――せめてこの曲が終わるまで、目の前の笑顔を見ていたっていいだろ。
「あれからもう何年も経ってるんだね。時間が経つのはあっという間だ」
「少しは上達していればいいのですが。前踊った時は、お互いぎくしゃくしてましたね」
2年前の思い出話に花咲かせ、凍路とさくらは手と手取り合い踊り出す。
演奏が終わった合間、休憩の素振りで彼へと身体を預けたさくら。
ふわり漂う春の甘い香り。ふと、凍路は湧き上がった衝動を抑えられずに――そっと、重ねた唇。
ほんの一瞬の口づけ。されど顔の火照りは治まらぬまま、凍路が次いで向けた言葉。
「――愛してる」
「……わたしも」
さくらもまた精一杯にそう一言囁き返す。
そのまま凍路は彼女の細い身体を抱き寄せる。
溢れんばかりの幸せを胸に、さくらは瞳をそっと伏せた。
「こうして幻想的な雰囲気の中で踊ると、まるで童話の世界みたいだね」
伝説の木をふと仰ぎ見ながら、燕尾服姿の拓馬は樹へ語りかける。
久しぶりのダンス。思い出すようにステップを踏みながら、樹はカーマインのドレスを風になびかせる。
「童話の世界なら拓馬くんは王子さまね」
手と手取り合い、離れてはまた重ねて。樹は楽しげに笑みを深めては言葉を続ける。
「それならわたしは、お姫さまになったつもりで今の時間を踊って過ごすわ」
「それじゃあ、大切なお姫様をしっかりエスコートしないとね」
微笑み返しては手を握り返す拓馬。お伽噺は黄昏から夜へ、少しずつ頁は紡がれてゆく。
「三年前に一緒に踊った時のこと、思い出すっすね」
メイン会場へと赴き、菜々はしみじみと呟きながら式の手を取る。
「変わらずこうして隣にいられること、幸せっすよ」
そう嬉しそうに微笑む彼女は、常と違うドレス姿。「すごく、きれいだ」と式は菜々に見惚れながら、曲に合わせてゆっくりと足を踏み出す。
「いまだにダンスが下手なのは勘弁っす」
「ううん、すごく上手になったね」
苦笑する菜々には首を横に振って、演奏が終わった後――式はそっと、彼女を抱き寄せた。
「こんばんは、ボクのお姫様。よろしければ、今宵一曲」
小郎は恭しく跪き、愛する姫たる智歩の手の甲へ唇を落とす。
彼の装いはきらびやかで、まさに王子様。対する智歩もふんわりドレスで着飾って。
「はいっ。よろしくお願いします、王子様……」
緊張とときめき入り混じり。足や衣装の裾を踏まぬよう、それでも智歩は小郎に夢中。
そんな彼女の耳元へ、小郎は「大丈夫、ボクだけ見て。踊りは気にしなくていいから」と囁いたのち。
「だから、ボクにも智歩だけ見させてね、お姫様」
「う、うん。ちほ、いっぱい頑張るから」
――いっぱい見ててね、王子様。
人混みに紛れて交わされた甘いキス。その後、姫を抱きかかえて休憩所へと連れて行く王子の姿が見えた。
銀狐のケープがふわり風に舞う。
楚々とした振舞いで踊る汐音の手を引き、青ベースのタキシードを身に纏う銀静はゆったりとリードして。
舞踏の最中、銀静からの問いに汐音は静かに答える。
どうしても『兄様』と踊りたかったのだと。
「兄様に、一つずつ夢を叶えて貰うことが出来て。私は本当に幸せです……これからも、毎年一つ、クリスマスにお願い事をしても構いませんか……?」
「僕も……少し……楽しく、嬉しい……ただ、僕は僕のやりたい事をしているだけだ」
淡然とした、それでも不器用ながら紡がれる本心。
誰かの願いを叶える行為は辛い――だが、
「君の願いを聞くのは…あまり辛くない。だからクリスマスだけは許します」
精一杯の言葉に対し、汐音は安堵と嬉しさに満ちた笑みを向けた。
流れ始めた静かなワルツに「いよいよかな」と徒が手を差し出す。常のジャージとは一味違う、大人びたスーツ姿に千尋の頬は熱帯びて。
対する彼女も白のドレスを翻す。手を取りヒールを鳴らす千尋の姿は、徒にとってまばゆい程美しく映った。
確りとエスコート出来るようにと続けた特訓。彼女の動きに合わせ、徒がのびやかにリードしたなら、
(「よし、あたしも華麗にステップを決めるぞ!」)
小さく意気込む千尋。練習の甲斐あって、互いに息の合ったステップは続く。
「ありがとうね、あたしに付き合ってくれて。……徒先輩と二人で、ダンスパーティーに出てみたかったんだ」
「こちらこそ、だよ。この時間がいつまでも続けばいいのに」
次第に楽しさと幸せに満ちながらも、二人の舞踏は続く――。
まばゆい白のスーツに身を包む理央の姿に、心ときめかせ「カッコイイ!」と瞳輝かせる燈。
一方の燈は薄橙色のパーティードレスに、髪は高く結いて大人可愛くおめかし。
ドレス、似合っているよ――格別に綺麗な彼女へそう囁いたのちに理央は跪き、
「踊っていただけますか、お姫様?」
手の甲へと口づけ落とす。
嬉しさから瞬く間に赤らむ燈の頬。繋いだ手にやんわりと力を込めて。
「エスコートお願いね、王子様」
そう微笑むお姫様の身体を抱き寄せ、理央は祈る。この幸せがずっと続くように。
彼が居るからこその幸せ。相思相愛、お揃いの気持ち。
さすが燈と理央だね! さらに深めた笑みを、燈は最愛の王子様へと贈った。
賑わうメイン会場を彩る、静かな円舞曲。
会場の端に設置された椅子に腰掛け、ルウと冷都はホットドリンク片手に会場を眺める。
流れ始めたワルツの曲名を冷都が訊ねたなら、音楽に精通するルウが「ああ、この曲は――」と語り始める。小鳥の囀りのように密やかに、楽しげに。
小休憩の後、新たな演奏が始まった。その音色には聞き憶えがあるーー昨年に二人で踊った曲目だ。
ルウの前で跪いた冷都は、彼女へ恭しく手を差し伸べて。
「一曲、お相手頂けますか?」
その誘いには笑顔で応え、ルウは緑のドレスの裾を摘んで一礼し。
「はい、喜んで」
手を取り、光溢れる雪色のダンスホールへと歩んでいくーー。
会場へと足を踏み入れる前、国臣は「オリヴィア」と愛する人の名を呼んだ。
振り向いた彼女の左手を取り、片膝をつく。
「1つ、形を用意した。というだけなんだがな」
そう一言前置いたのち、真っ白な手袋をするりと外して。
「私の愛を、私の心を、君に贈る。今までだってそうだったが、ここに、こういう形で、改めて、だ」
――生涯、君を愛する事をここに誓おう。
灯りに照らされ、薬指に飾られた指輪が輝いた。
そうしてその指に国臣が口づけ落とせば、オリヴィアは幸せいっぱいのまま想いを紡ぐ。
「あぁ……本当に、夢のよう、です。バレンタインのあの日、勇気を出して、本当に良かった……」
私も、時果てるまで、あなたを愛し続けることを誓います――と。
「こういう風に2人で踊るという事もなかったですし、新鮮ですね♪」
「ん……確かに……新鮮だね……」
蒼香に手をひかれ、リードされながら零桜奈はステップを踏む。
特注の青いドレスを身に纏い、ドレスアップした蒼香の美しさに魅せられ――零桜奈の視線は彼女の顔と胸元を行ったり来たり。
「っと!?」
その時、神様の悪戯か。足を踏み外した零桜奈はそのまま前へと倒れ込んで……。
大胆にも豊かな胸へダイブしてしまった彼だが、蒼香は常の穏やかな笑みのまま。
「慣れてなければ仕方ないですよ。楽しみはまだまだ続くのですから、気楽にやりましょう♪」
「ん……そうだね……今は……ダンスを……楽しもうか……」
二人の聖夜は、舞踏会が終わっても続くのだから。
藍が身に纏うワインレッドのドレスは、真っ白な雪によく映える。
黒の燕尾服を着込んだ統弥が「惚れ直しましたよ♪」と笑みを綻ばせたなら、藍の頬に朱が差して。
「その……不慣れなのでエスコートしてくださいね」
上目遣いの愛らしいお願いに統弥は、
「僕も素人ですよ。気負わず楽しみましょう」
優しげな声音は常のままに、二人の舞踏は始まる。
――と、その刹那。躓きかけた彼女の身体がぐらりと揺れる。
思わず統弥に抱きついたなら、彼は優しく藍を支えるように優しく抱き留めた。
「メリークリスマスですよ。統弥さん」
見つめ合い、藍の方から唇を重ねる。祝福の言葉と口づけと受け、統弥は愛おしげに――彼女だけに届くよう、囁いた。
「愛しているよ、藍。メリークリスマス」
窮屈だな、と呟いた惡人はジャケットの袖を捲り、襟のボタンを外してラクな格好に。
けれどその緩さがまた彼らしいと、撫子は微笑みながら惡人へ誘いをかける。
「さてさて、一曲お相手おねがいしますね~?」
「ん、ほぃほぃ」
流れる曲のリズムを一通り憶えた惡人。そっと彼女の手をひいてリードしながら、周囲に気配り開けた場所へ――。
なんだかんだで自分達も上手く踊れている。和柄をあしらった撫子色のドレスを翻しては、浮かべる微笑は淑やかに。
「たまには良いでしょう? こういう過ごし方も」
「ん? あぁ普段しない事ってなぁ良いもんさ」
撫子からの問いに惡人は飄々と答えたまま、ステップを続ける。
普段とは違う、『特別』を味わえる……そんなひとときもまた、楽しい。
「凄く似合ってるね。可愛い」
彼女の真っ白なドレス姿を見つめる史明は満開の笑みで褒めちぎる。
対する朔之助は気恥ずかしさを越えてやや訝しんでみるも――彼のタキシードを再び目の当たりにしふと思う。
嗚呼、あのダンスパーティーから5年も経ったのか、と。
いつかのあの日と同じ正装の史明は、いつにも増して格好良くて心臓が高鳴る。
「史も似合ってて……かっこいいぞ」
そっと褒め返す朔之助。けれど円舞曲が耳に届くとはた、と我に返り、
「シャルィーダンス!」
ドヤっと強気にダンスのお誘い!
史明は思わず吹き出すも、彼女の手を取って。
「お手柔らかに、お姫様」
じぃ、と見つめる史明の視線に一瞬の驚き。
朔之助は頬染めては「史にだけの、な?」と、小さく囁いた。
白の髪はアップに、この日の為に着飾るロングドレスはすらりと細身。
――一番あたしらしい、うつろう空の彩。
人混みのなか、暮夜色スーツをスマートに着こなす才葉を見留めたなら――朱那の澄まし顔は自然と綻んで。
「うん、やっぱりすごくカッコイイ!」
「わぁ…! シューナ、キレイ! 空を纏ってるみたいだ!」
才葉もまた瞳輝かせ、初めて見る装いの朱那にときめきが治まらない。
対する朱那はああ、と柔らかに笑む。
やはり才葉のこの素顔が、一番だと心から想ったから。
「なんだかオレたち、大人になったみたいだな?」
頬染めはにかむ才葉が手を差し出したなら、「あと少しで大人だよ」と悪戯っぽく微笑み返して朱那はてのひら重ねた。
さあ、今宵初めてのロマンスをご一緒に。
イミテンシルの纏うブルーのサテンドレスが、光を帯びて艶めく。
「こういう時は、男の人がリードするものよ」
「お、おう! 任せとけって」
くすり、と大人びた笑みを向けるイミテンシルに花深はタジタジのご様子。
緩やかなテンポで一歩一歩、確かめるように舞踏を続ける。
ちょうど曲が終わった頃、「花深くん!」と背後から夜音の声。
冬の舞踏会へ、雪解けの精が迷い込んだかのよう。冬から春へとうつろうドレスに、花深は目を細める。
「おお、夜音! 髪飾りさ、俺とお揃いだな」
白桃の髪を彩る白梅の花飾りを示されたなら、「花深くんも素敵さんなの」とへんにゃり笑いながらダンスに誘う。
少しずつ過ぎゆく時間。けれどその分、想い出を雪のように積もらせていきたい――今宵もまた、その一つ。
「大丈夫、ちゃんとリードするから。……どうぞ、僕のお姫様?」
ボールガウンドレスを身に纏うエリノアへ、笑みのせたさくらえは手を差し伸べる。
「でも、そこはお姫様じゃなくて嫁とか奥さんのがよかったわね――ねぇ、アナタ?」
エリノアが返したのは、悪戯めいた微笑み。
てのひら重ね、始まる舞踏。その最中、さくらえは彼女だけに聴こえるよう言葉を紡ぐ。
「いつも傍に居てくれて、ありがと。これからもずっと、傍にいてね?」
「私の方こそ、私を選んでくれて、好きになって、愛してくれてありがとう」
――ずっと、ずっと、側にいるわ……私の愛しい旦那様。
ワルツの余韻に浸りながら、さくらえは再びエリノアの耳元で「愛してる」と囁く。
重なり合う二人の影を、伝説の木は静かに見守っていた。
小さな身体に燕尾服を確りと着込んだ悠樹。
ご主人様たる彼女と手をぎゅっと繋いで、イルミネーション煌めく会場へと赴く。
「ボクは、その、やったことないから……教えてくれる?」
気弱に訊ねる悠樹へ、彼女は常の穏やかな笑みを湛える。
最初はぎこちなかったステップも、お姉ちゃんのリードで徐々に軽やかになってゆく。
「大好きなお姉ちゃんと一緒に踊れて、すごくうれしい♪」
ステップを踏むたびふわり、雪をはじいて翻る茉莉のドレス。
間近で踊る彼女の姿に南守は見惚れるのも束の間、
「よーし、ここでターン!」
「ターン!? よ、よし、こうかっ!」
勢いに任せ華麗にくるりと回転――を試みようとした二人。
(「わ、タロー踏んじゃう!」)
けれどぱたぱた、足元を走るは蝶ネクタイでおめかしした霊犬のタロー。
ずるりと滑った茉莉は躓きかけるも、南守が咄嗟に彼女を支えて。
「うわ、大丈夫か!?」
「び、びっくりした。ありがとう南守さん」
仄かに紅差す茉莉の頬。対する南守はほっと安堵の息を吐く。
(「でも、こういう方が愛嬌があって荻原らしいな」)
パーティーが終わるにはまだ早い。
次こそターンを決めよう、とふたたび茉莉へ手を差し伸べた。
陽が沈み、空に滲む宵の彩。
茅花のまとうドレスや星々きらめく髪と重なり、御伽は瞳を緩ませる。
初めて踊った一昨年の聖夜を辿るように、手を取って。雪が粧した新たな舞踏会へ。
はらり舞う雪に感じるあたたかさ。茅花が想い起すは、一昨年に紡いだあの日。
「ねえ、御伽さん。私が前にここでいったこと憶えてる?」
首傾げる御伽。けれど、彼女は続けてへにゃり笑って囁いた。
――ありがとう、だいすきよ。
確かめるようにぎゅっと繋いだ両手。御伽は一つ瞬いたのち、その華奢な手を握り返す。
(「茅花さんは、覚えているだろうか。覚えていてもいなくても、もう一度」)
年を重ねても変わらぬ想いをのせて――花脣へ重ねた口づけは、あたたかく、甘く。
賑わう会場から離れた場所だが、此処からでも生演奏は耳に届く。
通りがかりで綺麗なドレスは無いけれど、このままで踊ればいいとみかんは瞳輝かせ笑う。
「ねえ、サズさんは楽しい? 私はとっても楽しいのよ」
「……たのしい? そうか……俺も、たのしい」
一歩ずつ確かめるようにステップを踏むサズヤ。
来年、彼女は好きな人と踊るのだろうか。
俺じゃない、誰かと。
心に滲む憂いを晴らしたのは、みかんの無邪気な声。
「サズさん、今度はちゃんと準備して踊りに行きましょ?」
想いは奥底へ秘めながら、精一杯のお誘い。目を瞬かせ、サズヤは足を止めた。
――嗚呼、これは我儘。少しだけ、ほんの少しだけ、このままでと思うのは。
そして、この願いを伝えるのも、
「ん……今度は、ドレスを着たみかんと踊りたい。きっと、綺麗」
舞い散る雪と同色の、真っ白なタキシードとドレス。
手と手取り合い踊りながら語らう久遠と言葉の姿は、まるで新郎新婦のよう。
踊りを終え、久遠は言葉を見つめる。
「改まってこう言うのも気恥ずかしいのだが」
そう切り出しながらも、面差しは真剣そのもの。
「共に歩む決意をしてくれてありがとう、言葉。そしてこれからも共に歩んでくれ」
これから先も共に人生を歩んでいきたい、と。
その誓いに言葉は、
「私も、ありがとうって言いたいな」
じっと見つめ返し、幸せいっぱいに微笑む。
「勿論、これからもずっと一緒にいる……私も一緒に居たいから……」
どうぞ宜しく、かな? そうして言葉は、久遠の大きな手を握り返した。
二人で刻む時を、これからも共に。
作者:貴志まほろば |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2017年12月24日
難度:簡単
参加:43人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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