「ククク……今宵の下着は血に飢えておるわ」
桜の木に身体を預けるようにもたれた侍は腰に女性モノのパンツをぶら下げて空を仰ぎ、嗤う。
「誰ぞ通らぬものか。嗚呼、待ち遠しい。待ち遠しいものよ」
もはや突っ込みどころしかないソレは気づかなかった。パンティを頭に被った下乃森・藩茶(パンティ掛け機・d34680)が電柱の影から一部始終を見ていたことも、直後に踵を返したことも。
「とりあえず、どこからツッコめばいいのかな、それ」
高校の制服に身を包んだ鳥井・和馬(高校生ファイアブラッド・dn0046)は微妙な表情でとりあえず尋ねた。
「おそらく、台詞回しに使い回された感が酷いところだな」
「そこぉ?!」
迷いなく口を開いた藩茶の回答に和馬がのけぞったが、きっと無理もない。
「いずれにしても、あれを黙って見過ごす訳にはいかない」
「いや、一般人襲う気満々の都市伝説っぽいし確かに放置出来ないけどさ、なんか、こう……」
腑に落ちなさに苛まれつつある約一名をスルーし、藩茶はパンティを頭に被ったまま君達に向き直る。
「都市伝説は待ち伏せるそぶりを見せていた!」
故に、藩茶が目撃した場所に足を運べば都市伝説とは普通に接触出来ると思われる。また、藩茶が発見した時獲物にありつけていないような様子だったことから鑑みるに、現場は人気がなさそうでもある。もちろん用心の為に人避け用のESPを用意していってもいっこうに構わない訳だが。
「あ、付け加えておくと俺が都市伝説を目撃出来たぐらいだ」
夜ではあるものの明かりは不要と補足し。
「あとは都市伝説の戦闘能力だが」
侍っぽさからすると日本刀のサイキックに似た攻撃を使って攻撃してくるかもしれない、腰にぶら下げたパンツで。
「日本刀? 下着……なんだよね?」
「どこかおかしいか?」
半眼で問う和馬に首をかしげる藩茶。二人の常識の間には大きな隔たりがあるのかも知れない。
「まぁ、いい。重要なのは、被害を出さないことだ」
都市伝説は待ちぼうけを食らっているようだったが、犠牲者が出ていないのは幸いでもある。
「犠牲など出させはしない! うおおおおおお、パ、パンティイイイイアアアアアアアアアアア! ――うっ」
いきなり高ぶってパンティ被った頭を激しくヘッドバンキングさせた藩茶は短く呻くと脱力したのだった。そう、悪のエンゼル体操である。
参加者 | |
---|---|
ミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735) |
神凪・陽和(天照・d02848) |
神凪・朔夜(月読・d02935) |
穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981) |
アルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674) |
備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663) |
双海・忍(高校生ファイアブラッド・d19237) |
下乃森・藩茶(パンティ掛け機・d34680) |
●ツッコミどころに事欠かない
「……春になってきたからこんな都市伝説も増えるのでしょうか?」
仲間から話を聞き、目撃現場へと向かう道の途中でアルゲー・クロプス(稲妻に焦がれる瞳・d05674)は首を傾げた。今度の都市伝説もまた濃い、そんな感想を抱かせたとしても無理のない存在は一方で別の灼滅者達を憤らせていた。
「うん、色々突っ込みたい所はありますが、その都市伝説を放置することは侍の名誉にかかわり、武人の家の生まれ育ちの私と朔夜の誇りが許しません」
「まあ、色々言いたいころはあるけど、一言『喧嘩売ってるのか、ふざけんじゃねぇ』だね」
神凪・陽和(天照・d02848)と神凪・朔夜(月読・d02935)の二人にとって都市伝説は存在が既に許せない存在の様であり。
(「今回の都市伝説はヘンタイではなくてサムライですか? 昔の会津には、人を斬る前には花一枝を切り落とし口に咥え、そうなると必ず一人は人を斬る剣鬼が居たそうですが、こちらは下着を咥えそうですね」)
まだ姿を確認も出来ていないのに双海・忍(高校生ファイアブラッド・d19237)には想像の中で変態性が追加される始末。
「やれやれ、女性モノのパンツを咥える都市伝説ですか? 下着も都市伝説の一部だと思いますけど、近所の干してある洗濯物を盗んできたのだったら本当に最低ですね」
いや、まだくわえてると決まった訳じゃ、と言うか登場前から風評被害に遭う都市伝説だが、元々変態風味なのでそれも仕方なしか。
「ふう、ブルマの都市伝説が出なくなったと思ったら今度は……。ラジオウェーブ、節操は無いのか?」
「いや、今回の件はラジオ放送絡んでないし、ラジオウェーブはノータッチなんじゃ?」
応援の灼滅者からは大物タタリガミに風評が向けられるも鳥井・和馬(高校生ファイアブラッド・dn0046)がこれにツッコミを入れ。
「鳥井さんを……じゃなかったパンツ侍……じゃなくて変態伝説を、早く叩きましょう……」
「ちょっ、何でオイラと都市伝説間違えた風になってるのーっ?!」
新幹線並みに急ぎ足で現場へ向かおうとする表情でのそのそ歩くミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)の言葉にはたまらず叫んでいた。
「……和馬くん、落ち着いて下さい」
そんな思い人の取り乱す様子を見てアルゲーは和馬に近寄ると声をかけ。
「あ、うん。あり……っ」
冷静さを取り戻し礼を言おうとした和馬はむにゅんと押し当てられた柔らかい何かの感触にわたわたしだす。
「ふーん」
一部始終を観ていた備傘・鎗輔(極楽本屋・d12663)が動き出したのはこの直後だ。感情の起伏はなく、ただじっと標的を見据えたまま、手には縞々アダルトおぱんつ大刀。凄い名前であるが、カテゴリ上は無敵斬艦刀である。
「鳥井君、男らしくなったんだから、ここでもう一丁、漢の怪段を昇って貰おう。モテる男なら、これ位、彼女の前でも軽いよね?」
「え゛?」
アルゲーが思い人を落ち着かせようと敢えて胸を押しつけたことが一人の灼滅者をある種の暗黒面へ駆り立てたらしい。
「パッ パンティ侍かッッ」
都市伝説とは関係ないところで約一名がピンチに陥る中、目を見開き絶句した者が居た、穂照・海(暗黒幻想文学大全・d03981)である。その海の視線を追えば、桜の木にもたれた人影が一つあり。
「まだ居たか。パンティ侍」
情報提供者でもある下乃森・藩茶(パンティ掛け機・d34680)の言で人影が都市伝説と確定する。やりとりをかわす間に現場付近までたどり着いていたらしかった。
●しょくぱん
「千年以上も続いて来た神凪の家の陽和と朔夜の前に出たのが運の尽きだね」
目視した時点で朔夜は言葉を交わす必要すら感じなかった。
「ええ。いい度胸です」
陽和もまたそれは同じ。二人は殲術道具を手にするや、即座に駆け出す。
「拙いねぇ。鳥井君、これを。熱い下着兵器談義をするんだ、時間がないよ」
二人が都市伝説に逆襲撃をかけると見た鎗輔は縞々アダルトおぱんつ大刀を和馬へ差し出し。
「え゛?」
顔を引きつらせる鳥井君に鎗輔は伝える、殺界形成で人払いは済んでいるからと。
「や、人払いとか問題じゃないよね?」
そもそも何故熱い下着兵器談義をしなくてはいけないのか。このままなし崩しに戦闘に入って倒しちゃえばいいんじゃないのと引きつった誰かの顔には書いてあり。
(「女性モノのパンツを頭に被る羽目にならないといいのですが」)
早速予想外の展開に直面する和馬を見て忍は思う。鎗輔の話がどう転ぶかわからないというのもあるが、灼滅者達の中には既に一人居るのだ、頭にパンティをかぶる者が。
「あっ、コレは腹拵えにどうぞ」
朔夜達が動いた時、藩茶もまた動いていた。こう、何故かわからないが礼儀正しく頭を下げつつ都市伝説にパンティを差し出していたのだ。
「やられた。先を越されたよ、鳥井君」
「や、先を越されたって何?!」
よくわからないファーストコンタクトの様子を感情の乗らない淡々とした口調で評す鎗輔へ即座にツッコむ自称ごく普通の男の子。だが、藩茶はまだ止まらない。取りだした別の下着をその場で食べ始めたのだ。
「今日もパンティが美味い! 頑張るぞ皆!」
くるっと味方を振り返りぐっと拳を握る藩茶。
「っ」
味方の奇行に息を呑む海。
「鳥井君」
名前だけ呼んで何かを期待する鎗輔。
「頑張れ」
肩に手を置き同情の目で見つめる応援の人。
「はぅ、パンツを食べるなんて……鳥井さんひどいです……」
藩茶を眺めて他者を非難するミリア。
「……あれ? 鳥井さんがこっちにも居ます……?」
非難してから別の方向を見て当人を見つけ、ミリアはきょとんとし。
「誰が食べるかーっ!」
やっぱり和馬は絶叫した。
「その得物ごと跡形もなく灼滅してやるよ!!」
「ほう、面白い」
こう、既に始まったっぽい戦闘を背景に。
「手向かい致すつもりとは活きの良い獲物よ。どれ、童ども戯れに名を聞いてやろう」
「パンティ侍に名乗る名前などない!」
どう名乗ってもインパクトで負けるからと言う本音を押し隠し、聞かれても居ない海の方が吐き捨てる。言葉の応酬、この間も向き合う一部の灼滅者達と変態都市伝説は攻撃の応酬を始めていた。陽和の射出したRainbow Archが侍風の都市伝説の身体をかすめれば、下着を振りかぶった都市伝説は真っ直ぐ斬撃を繰り出す。
「何故あの得物で斬れるか理解に苦しみますが」
「次はこっちの番だ」
「ぬっ」
咄嗟に身をかわした陽和に気をとられた下着侍が顔を上げれば視界を埋めるのは巨大化した朔夜の片腕。
「ごはっ」
殴り飛ばされた都市伝説は吹っ飛んだ。
「……えっと、鳥井さんの救出依頼じゃなくて、今吹っ飛んだ鳥井さんの偽物を叩けば良いんですよね?」
「偽物ってどういうこと?!」
とある灼滅者は確認するミリアにツッコんだ。
「それでいつ下着談義ははじまるのかな?」
「始まらないから! と言うか始まるとしてもあっちの都市伝説とか次第だから!」
鎗輔にもツッコんだ。
●しりあす?
「お前に、好きなようにパンティで人を殺させるものか!」
雲耀にパンティとルビをセルフでふり、上段の構えから藩茶が真っ直ぐ重い斬撃を振り下ろす。
「っ、なかなかの下着筋よな」
「何っ、受け止めただと?!」
「ぬんッ」
下着に金属の様な悲鳴をあげさせつつ藩茶の殲術道具を防いで見せたパンティ侍は気合いと共に殲術道具をはね飛ばすと両手でパンティを握り構えをとる。
「オレの一撃を止めたことといい、ここまでの攻防といい、相当腕が立つようだな!」
「童どもとてなかなかのものよ。ただこの『一桃髪帯白貞』の染みと消えるだけかと思えば、ワシに手傷を負わすとは……」
とりあえず下着に銘まで付いてる事にツッコむべきか、誰かがそう思考した矢先のこと。
「行くぞパンティ侍!」
「参れ童」
海の叫びへ即座に応じたのは、ここまで幾人かと刃を交えていたからだろう。海の手にしたサイキックソードを構成する光が爆発し、生じた爆炎が都市伝説を呑み込んだ。
「くかかッ、刃を斬撃ではなく爆発にして攻めるか面白、ぐッ」
その爆発から煙の尾をなびかせ笑いつつ飛び出してきたパンティ侍が着地しようとしたところで何かがその身を貫いた。
「忘れて貰っては困りますよ」
忍の射出したダイダロスベルトであった。
「ぐっ」
「私もですけど、うつし世はゆめも」
気をとられてビハインドであるうつし世はゆめが晒す顔をまともに見てしまった都市伝説は呻くと目を押さえ。
「……ではステロはいつも通りお願いしますね」
ビハインドのステロに一声かけたアルゲーは和馬くんと思い人の名を呼ぶ。
「あ、うん」
落ち着かせる為抱きついていてすぐ側にいた人物は即座に応じ。
「……変態に慈悲はありませんよ、叩きます」
返事を耳が認識した時、アルゲーはロケットハンマーの柄を握りしめ地を蹴っていた。
「おのれ、次から次へとうぎっ」
弧を描くロケットハンマーの鎚頭を視界に収めたパンティ侍の言葉を途絶えさせたのは、ステロの一撃。
「ぐ、がぁぁぁッ」
生じた隙へ一組の男女による連係攻撃が決まり。断裁靴を駆りつつこの光景を見ていた鎗輔は不満を漏らす。
「下着談義はまだ?」
期待していたのだろう。
「鳥井くん! 下着談義を早く!」
ハッと顔を上げた海は弾かれた様に振り返って要求し。
「誰がするかぁぁぁぁ!」
「え」
絶叫に誰かがあげたのは驚きの声。
「くくく、ははは……無理も無かろう。女子連れともならば語るはその女子とのみ、手にする下着もその女子の脱ぎたてのものでなければ大問題。期待されても出来ぬこともあると言うことよ、のう童」
「や、弁護してくれるのは良いけど全力で間違ってるから」
然りと頷く変態都市伝説を和馬は半眼で見据え。
「そっか、鳥井君はアルゲーさんのモノしか被らないのか、ごめんねぇ」
「って、そっちも納得しないで!」
忍が無言で一歩後ずさったこともあってか、若干黒いオーラをだだ漏れさせつつ謝る鎗輔に慌てて抗議する。
「どうやら鳥井さんが下乃森さんに持っていかれる事はなさそうです……?」
ダンボールに潜り込み、味方を癒しつつミリアがこてんと首を傾げるが、心配された側からすると見せ場なんて存分に持って行かれちゃって構わなかったかもしれない。
「黒死斬」
そんなコントめいたやりとりの向こうでこちらに気をとられていた都市伝説へ相変わらずサイキックの一部にパンティとルビ振って藩茶が強襲する。
「っ、ぬか」
「下着の力を間違った方向に向けちゃいけない!」
ぬかったと言い終えるより早く視界に入ってきたのは、自身に飛びかかってこようとする海の姿。
「なん」
「パンツをーーーーーーーーーーーーーッ!」
何のつもりだったのかを知るのは、組み付こうとしつつ叫んだ海のみであろう。
「陽和」
「うん」
よくわからなかろうと他者に気をとられ生じた隙を見逃す手はなかった。まして、全力で叩きつぶしたい相手なら尚のこと。
「な、待、ぎゃぁぁぁぁッ!」
不穏な気配に気付き振り返ってあげた制止の声はすぐに悲鳴に変わった。
「……混沌な状況ですが和馬くんをこれ以上巻き添えにはさせませんよ」
陽和と朔夜に切り刻まれるパンティ侍を見たアルゲーはウロボロスブレイドを手に加勢に回る。
「ぐ、が……不覚、このような無様を晒す事になろうとは……」
「お前には愛が無い。パンティを扱う者、愛がなければな!」
不意打ち気味に始まった集中攻撃でズタボロになりつつ蹌踉めく都市伝説を真っ直ぐ見つめ、パンティを頭にかぶった藩茶は言い放った。
「……くっ、はは、ははははは……『愛』か」
ボロボロのまま傷をおさえてパンティ侍はおかしくて堪らないと言った態でわらい、呟く。傷だらけでありながらその目はまだ死んでおらず。
「ならば見」
「あ、ところで今日は座本先輩のお下がりの制服ではないのだな。あれを着て囮になるのかと思っていたのだが。胸が余る事を除いては良く似合っていたしな」
「何で今更ーッ!」
手にした下着を構えたところで応援の人の呟きと応援される側の絶叫が都市伝説の声をかき消した。
「な」
「と言うか、女子制服着て囮やる理由ないよね?」
決めぜりふ的なモノを潰されるとは思わなかったのだろう。都市伝説が呆然とするにもかかわら指摘は続き。
「元気だしなよ? 下着談義とかしたいなら少しぐらい待つよ?」
ポンと肩を叩いた鎗輔が励ましつつ申し出るが、きっとその機会はやってこないと思われる。
「頭にパンツは被せさせません」
「おごっ」
アルゲー同様ちゃっかり集中攻撃に加わっていた忍がバッサリとその背に斬りつけたのだ。
「油断は大敵ですよ?」
「おの……」
よたよたとパンティ侍は数歩前に進み。
「鳥井くん! 君のパンツを僕に!」
チャンスと見て海は仲間へ呼びかけ手を差し出す。
「え゛」
「……駄目です」
驚きの声しか出てこない愛しい人の前へと一歩踏み出したアルゲーは通せんぼうをする様にして拒絶し。
「よくわかりませんが、トドメを刺しますよ?」
何かやりたいことがあった様なので仲間に少しだけ配慮した陽和は無明宗國「太陽牙」に炎を宿し、振りかぶる。朔夜も玉響を鞘に収め、居合い斬りの体勢を作っていた。
「春の夜の、死合いの果てに、下着散る……数こそおれどよもや童どもに後れを取ろうとはな、見事、よ」
全てを焼き尽くさんとする一撃と一撃で斬り捨てる意思を込めた斬撃、双方が迫り来る中都市伝説は口元を歪め。
「ふっ、眠るが良い」
崩れ落ち消滅するソレに歩み寄った藩茶は武士の情けだと消えゆく頭部にパンティを被せる。
「強敵……だったね」
「えーと」
強敵うんぬん以前にいつの間にか服がなくなっていた海の姿に和馬は視線を逸らす。
「さて、体操しておこうか」
反らした先で徐に宣言した藩茶がスクッと立ち上がり。
「うおおおおおお、パ、パンティイイイイアアアアアアアアアアア! ――うっ」
激しく頭を前後に振り、一声呻いて動きを止めた。そう、悪のエンゼル体操である。
●おつかれさまでした
「……変わった都市伝説でしたがなんとかなりましたね、和馬くんは大丈夫ですか?」
心配そうにアルゲーの見つめた思い人は、うんと答えてから苦笑した。
「色々あったけどアルゲーさんが庇ってくれたし」
今更ながらに下着を着だした海や再びヘッドバンキングを始めた藩茶を視界に入れない様にして和馬はありがとうと感謝の言葉を贈る。
「……和馬くん」
良いムードであった。
「僕は都市伝説、下乃森さん、鳥井君の三人で、腰に下げた業物下着について、熱く語り合いつつ繰り広げる漢の戦いを見てみたかったけどね」
だからこそだろうか、淡々と己の希望を鎗輔は口にした。希望だけで済ませたのは都市伝説の言い分を真に受けていたからか、それとも。
「鳥井さんがこっちにも居ます」
と再びミリアにぱんつを被った別人と混同されたのも相まってか、誰かが再び顔を引きつらせる中。
「朔夜、お疲れ様。帰ってお風呂入りたいよね。……後、明日鍛錬に付き合ってくれる?」
「陽和、お疲れ様。うん、まずはお風呂だよね。まあ、あんなの見ると、自分の武術を見直してみたくなるよね。明日の鍛錬、付き合うよ」
陽和と朔夜はお互いを労い一つの約束を交わす。
「いずれにしても一件落着か」
当人の思い描く美しいポーズで海は視線を彼方へやる。丁度そこには桜の木々が春の風に梢を揺らしていて。
「夜桜見物をしながら帰るのもいいかもしれませんね」
ミリアが焼却処分した下着を片付けつつ同じ方向を見ていた忍はポツリと漏らす。
「視線を集める鳥井さん……」
片づけを終える忍が一組の男女にちらりと目をやったからか、鎗輔が未だにモノ言いたげに同じ二人を見ているからか。ミリアは想像する、刑事さんに諭される和馬の姿を。こう、当人が知ったら全力でツッコミを入れるであろう光景を。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年4月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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