クラブ同窓会~ようこそカフェちょいさーへ!

    作者:森下映

     とある武蔵野市の武家屋敷。
     そこは灼滅者達が集い、交友を深めたり鍛錬したりと力を蓄える場所だった。
     そこは戦いの続く中でも、いつも優しい場所だった。
     それは世界が平和になった後も変わらず、皆のたまり場となっていたが、9年目の8月27日、唐突にChaser休業宣言が出されている。

     そして秋、冬と季節を越した10年目の春。

    「あ……!」
     今は大学院で史学研究をしているルオは、1通の招待状を手にした途端目を輝かせた。その招待状はもちろん『皆』の元に届いている!

     ――4月9日、Chaser新装開店! その目で確かめるべし!

     武家屋敷の佇まいは以前のまま。けれどもそこには、タレ耳銀ウサギと青目黒猫が睦まじく並ぶ『Cafe Chaser』の看板が。

    「ようこそ、カフェちょいさーへ!」
     出迎えはもちろん、Chaserの部長だった東当・悟(せいてん・d00662)の満面の笑顔。
    「メニューはこちらや! パティシエ想希自慢のスイーツがてんこ盛りやで!」
     言えば、準備に勤しんでいた若宮・想希(希望を想う・d01722)も顔を出す。その手にはカゴいっぱいの、
    「今は苺の季節やさかい苺パーリーや! あ、この苺は栃木の農家を専属契約して作ったヤツや! 凄いやろ!」
     悟が言う。つやつや輝いて甘い香りが漂って。それだけでもこれから始まるひとときを期待させるには十分。
    「飲み物は俺プロデュースやねん。珈琲とかもあるで! 食うて飲んでかんと損やで! なんてったってここは、」

     世界一幸せになれるカフェ。

     あの頃もいつだって皆を幸せにしてくれたChaserの仲間達がそこに集い、ティーパーティで語る十年間。果たしてどんなものになるだろう。


    ■リプレイ


    「足元に気をつけろよ? 転ぶなよ? あ、荷物はオレが持つから大丈夫だって!」
     七瀬・遊(烈火戦刃・d00822)が世話を焼くのは最愛の妻、
    「だ、大丈夫だよまだお腹大きくないし……」
    「なんならお姫様抱っこで行くか?」
    「さ、さすがにここで姫抱っこは……!」
     遊の過保護っぷりに、はわわ状態の旧姓、花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)。それぞれ小学校の先生と養護教諭をしている。桃香はもうすぐ二児の母。大人びて見えるのはツインテールじゃなくなったせいだけではないだろう。
    「新装開店おめでとさん!」
     2人を迎えたのはコック服姿の若宮・想希(希望を想う・d01722)と執事服姿の東当・悟(せいてん・d00662)。そして、
    「開店おめでとう!」
     後ろからもう1つ聞き慣れた声。九十九坂・枢(飴色逆光ノスタルジィ・d12597)。
    「先輩、さっぱりしはったんやなあ」
     悟が言う。枢は長く伸ばしていた髪を切り、眼鏡をかけている。続き、
    「ボンジュール!」
     周防・雛(少女グランギニョル・d00356)らしい挨拶とドレス姿、隣にはぴったりと寄り添うエステル・アスピヴァーラ(おふとんつむり・d00821)。
    「お久しぶりね、悟! 想希とは初めましてかしら」
    「そうですね、お話しするのは初めてでしょうか」
    「こんな立派なカフェを持つようになったなんて、素敵」
    「むきゅむきゅ、おしゃれなカフェなのです」
     エステルも言った。
    「東当さんお久しぶりなのです。ライブハウスでいろいろあそんでたの懐かしいの」
     そして一度雛にむぎゅ、
    「お店おめでとう~。これで『いっこくいちじょーのあるじ』? なの~」
    「えぇやろ」
     そういって悟はひとつ微笑み、想希とも微笑み合うと、
    「雛とエステルってそうか。お互いえぇ縁やな」
     と、そこへ、
    「東当さん、想希、開店おめでとう♪」
     白の花々で作られたリース型のアレンジメントを差し出しながら、彩瑠・さくらえ(望月桜・d02131)。
    「いらっしゃい、さくら」
    「先輩おおきに!」
     2人は飾る場所を早速相談。
    「皆さん、お久しぶりです」
     坂月・ルオも到着。が、そこへ迫る黒い影――、
    「にゃー」
    「わっ!」
     気配なく現れた巨大猫にルオが目を丸くする。
    「……坂月さんでしたか……」
     猫がいきなり二足歩行に……と思いきや、着ぐるみ猫はまさかのというかやはりというかの、
    「ミリアさんっ!」
    「えと、10年ぶり……です?」
     ミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)が武家屋敷を見上げて首を傾げた。時々ちかくは通っていたため、時の流れがあやふやである。
    「坂月さんは……土鍋怪人ぶりでしたっけ……?」
    「ミリアさーん……一緒に巨大リスと遊びにもいったじゃないですかー」
     ルオはさっそく鞄からタブレットを取り出すと、想希と悟のハートピザ写真……に映り込むにゃんこミリアを指差す。
    「はわ……いつのまに撮ったんです……」
    「わ、懐かしい」
     想希が写真を覗き込み、
    「今日の様子も加えられたらいいな」
    「はい! 今日の写真もまとめて皆さんがダウンロードできるようにしますね。土鍋怪人のお話も伺ってはいるんですよ。ミリアさんが怪人の頭の土鍋で寄せ鍋を作ったという武勇伝とか」
     そして悟の方を見ると、
    「鍋奉行も出現したらしいですね」
    「そうやったか?」
     にやりとぼける悟。
    「はっ……土鍋といえば……」
     ミリアはごそごそ、
    「土鍋プリンどうぞです……」
    「わ、食べてみたかったんです! やったー!」
     土産話のかわりにお菓子でごまかしたつもりがテンション爆上がりのルオにミリア、やや引く。
    「それにしても猫度があがってますね」
    「高校時代に見た黒猫さんをインセクトして、猫っぽさと機能性を上げてみました……リジェクトでしたっけ?」
     恐らく黒猫紳士の着ぐるみを普段から着ていたにゃんこ大好き女史のことと思われるが、インスパイアもリスペクトも言えてないあたりやはりミリアである。
    「私も忘れないうちにこれ……」
     桃香がそっとお土産を差し出した。それはレジンでできた銀兎と黒猫のお手製ブローチ。
    「カフェの雰囲気に合うと良いのですが」
     学園時代は武蔵坂クラフト倶楽部の部長だった桃香、仕事に子育てに忙しい中でも創作は続けているようだ。
    「おおきに! ぴったりや! なあ想希」
     ええ、と想希が悟の執事服の胸元にブローチをつけてやる。
    「オレからの土産その1はこれ。勝浦坦々麺のセットだぜ」
     想希は遊からのし箱を受け取り、
    「ありがとうございます。その1ということは、」
    「その2も?」
     枢が言った。
    「その2はなー妻と子供が毎日可愛すぎな惚気話を少々、な?」
    「それは楽しみ!」
     当然桃香は真っ赤。
    「私からはあちこちで買うた色々な凝ったスプーン」
    「わあ、素敵です」
     枢が少し箱をあけてみせると、覗き込んだ桃香の瞳が輝く。
    「好きなんどうぞ」
    「ぜひお席で」
     想希と悟にエスコートされ、皆で『Cafe Chaser』へ入店。


    「では店主さま、ご自慢のカフェーとガトーをシルヴプレ!」
     雛に悟は一礼、
    「かしこまやで!」
    「ヒナは苺のシャルロッテケーキと甘めのカフェモカ、苺ワインを。エステルは?」
     雛は隣のエステルと顔同士を近づける。
    「うみゅ、けーきは雛ちゃんと同じ苺のシャルロッテケーキで飲み物はダージリン、4月だからファーストフラッシュでスッキリ飲めそうなの」
    「ここはアルコールもあるんですね……あ、私はちょっと……」
     もじもじする桃香から察した枢は優しく微笑み、
    「東当さん、桃香さん分の酒精私に!」
    「かしこまや! 枢先輩にたんまりアルコールやな! めっちゃ強そうやな先輩!」
    「それは想像におまかせ」
     実際この10年で、枢の酒好きはすっかり表面化。
    「ワタシ、東当さんの入れるブラックの珈琲が飲みたいな。スペシャルブレンドをよろしく?」
     さくらえが言った。
    「こちらもかしこまや。腕によりをかけるで!」
    「スイーツは、苺のミルフィーユを」
    「かしこまりました」
    「オレ、クレープ食いたーい! つやつや苺とクリーム巻き巻き!」
     想希のスイーツをとても楽しみにしていた遊。
    「はい、では焼きたてをご用意しますね」
    「あとはブリュレも。デザートはジュビレにしましょうか」
    「ぶりゅ……? じゅび……?」
     横文字が苦手なのも変わらないミリアである。
    「若宮さんのスイーツ、流石全部輝かしい……みないただいてもOK?」
     枢が言えば、
    「私も同じく……もちろん体に影響のない範囲でですけれども」
     地獄のつわりが始まる前に若宮さんのスイーツを堪能しなくてはっ! と桃香も言う。
    「僕も全部いただきたいです!」
     久々の想希のスイーツ、ルオの顔もだいぶだらしない。
    「えぇ、好きなだけどうぞ」
     そして想希は桃香に、
    「2人目も楽しみですね」
     再び照れる桃香に誇らしげな遊。
    「ミリアにはこれやな! ってほんまにこれでええんか?!」
    「……? これ、美味しいですよ……?」
     ミリアは悟から猫ならまず夢中になるというブツを受け取る。味覚も猫化しているのだろうか。
    「それならええけども……最近どや?」
    「えと、最近……卒業してから? は、猫の忍者をしてます、です……」
    「猫忍者! 逞しい素早い可愛いと無敵や」
     枢が言った。
    「無敵……かはわかりませんが……探しものとか素行調査とか天気予報とかご用命はこちらまで、です……」
     ミリアは名刺をだしつつ猫おやつをちゅー、
    「ところで九十九坂さんは……」
    「私は私設図書館の司書やってるよー」
     ミリアの名刺を受け取り、枢が言う。
    「魔導書が中心で、夜な夜な啜り泣いてうろつき回る本とかあるよ」
    「枢先輩それ怖い奴や! 変わらずおもろい細工好きやな」
    「その図書館……お邪魔しても?」
     想希そわそわ。
    「き、肝試しにいってもえぇやろか?」
     悟どきどき。
    「ぜひぜひ。閲覧、捕獲、肝試しに来てね……ふふ」
    「うん、入り口で想希押し込んで帰る奴やけどな!」
    「私も行きたいですが……」
     桃香は少し考え、
    「夜に行ったら息子が半泣きになりそうな気もするので、是非お昼にお伺いです、はい」
    「もちろん、昼も大歓迎」
     学園時代から愛するものの1つが読書であった枢のこと、これ以上ない職業だろう。お菓子への愛もそのまま、鞄の中は相変らず飴でいっぱいな枢の前に、悟が色とりどりの飴の入った本グラスを置いた。
    「あ、これが私のイメージ? 光栄の極み」
    「炭酸焼酎や」
    「じゃあ改めて七瀬夫婦の新しいお子様に祝杯。おめでとう! 末永い幸せを!」
     枢が七瀬夫婦に向かってグラスを持ち上げる。礼を言う遊と桃香の前には丸時計カップに星のアラザンを浮かべた果物ルイボスティーと、太陽グラスに入ったカンパリ蜜柑が置かれた。
    「おふたりそのものですね! あっ、そうだ!」
     ルオがタブレットに指を滑らせると、
    「あ」
     桃香が道中のやりとりも相まってこれ以上ないほど真っ赤に。運動会の徒競走。お姫様抱っこでゴールした後、意識がとんでしまっていた桃香に遊が目覚めのキスを贈った瞬間に写真。遊もあの時平静を装ってはいたものの、内心バクバクだったのは秘密。
    「これは周防さんとエステルさんですね」
     気を取り直して桃香が言う。
    「ひなちゃんにだっこでゆさゆさした時のー」
     がんばってゴールした雛の頰にエステルがちゅっとしている。
    「よかったら2人でわけわけしてな! 今日もらぶらぶしてってな!」
     悟が置いた苺ワインには生苺が添えられ、カフェモカに連鎖のチョコハート。ダージリンティーの良い香りに苺のシャルロッテケーキが華を添える。
    「こちらは彩瑠さんと奥様でしょうか」
     ルオがさくらえにタブレットを見せる。
    「あー、もうこの時は結婚の約束してたんだよねぇ」
     スタート時のいきなりのキスに照れるエリノアを抱いて1位でゴールした瞬間。
    「ほんまに妻帯者なんやなぁ……先輩が妊娠とちゃうんか」
     と悟がさくらえの前においたのは、父親に貰った奈良発祥珈琲店の豆を使ったブラックコーヒー。
    「こらこら。結婚10年目こえたんだぞー」
     2人の娘と妻を溺愛中のさくらえは髪結と和装着付専門の美容師をしている。
    「なんといっても東当さんと想希は実質ワタシたちのキューピッドだからねぇ。改めてありがたやありがたやだ」
     悟の推理で予知された怪人を倒す依頼。男嫌いだったエリノアにビームのせいとはいえ熱烈に口説かれおろおろした挙句、最後はビンタされたのもいい思い出。
    「お、東当さんと想希の写真もあるね」
     想希の肩を足の指で掴んで仁王立ちする悟の図。自分で立って並んで駆ける、それが自分達だと選んだ形。
    「驚きましたけどね。 ……肩も凝りましたし」
    「勝利の茶碗蒸しつきハンバーグ、サイコーやったな」
     思い出し笑い合う2人。
    「それにしても想希の作るスイーツに東当さんのドリンクの組合せって最強だねぇ」
     珈琲とミルフィーユを味わい、さくらえが幸せそうに微笑む。
    「ふふ、すごく楽しみにしてたんだ♪」
     これもまた想希と悟の形。お菓子とドリンクの幸福に満ちたマリアージュ。
    「ミルフィーユお土産にいただいてもいい? 妻と娘達にも食べさせたいので♪」
    「勿論です」
     想希が頷く。
    「本当に美味しいですわ。エステル、切り分けて差し上げますわね。はい、あーん」
    「雛さん、エステルさん妖精みたい」
     想希がその場でキャラメリゼしたブリュレを堪能しながら枢が言った。
    「素敵なドレスやねぇ。ブライダルドレスデザイナーやってはるんやったね、流行だけでも伺いたいところ」
    「そうね……」
     ドレスを褒められた雛は照れながら、
    「ヒナは流行りよりも作りたい物を作る主義ですの」
    「すごい人気なんですよね」
     ルオが言う。
    「以前はアイドル衣装を作ってらして……僕の知人も周防さんの大ファンで」
    「そうでしたのね!」
     雛が言った。枢は、
    「お二人が着てる写真とかあるん?」
    「そうですわね、これとか……」
    「ひなちゃんのドレスかわいいのー」
     世界にらぶを届けるため活躍する雛のらぶの源は、きっとエステル。


    「さくらの所は2人とも娘さんか……何か分かる気がします」
     クレープを手際よくサーブし想希が言う。途端ぱああと親馬鹿オーラを発したさくらえ、
    「うん、娘可愛いよー?」
     と見せた写真には金髪碧眼の子と黒髪碧眼の子が並んで写っている。それを見た遊、
    「うわー美人姉妹だ! 」
    「七瀬家も写真ないんですか?」
    「よーし、対抗? してウチのイケメンを披露しちゃうぜ!」
    「さすがや、遊先輩似で子もイケメンや! 学校に俺の子預けてえぇか」
     悟が言い、
    「うん両家共パパママの面影ある」
     想希が頷く。
    「さくらえさんの娘さん達、男性の理想高くなりそう」
     枢が言った。まだ身近にパパ友が少ない遊は、親馬鹿なやりとりがとても楽しく、その様子を桃香は微笑ましく見守る。
    (「うちも次は女の子のような気がします」)
     らぶ話が大好きなのは今も昔も変わらない雛もにこにこと話に耳を傾けつつ、
    「エステル、ヒナ達の子供はいつ頃に致します……?」
     といって冗談ぽく笑えば、
    「ひなちゃんとのこども? うーん……どうしたらできるのかな、帰ってから甘々する?」
    「うふふ、そうね」
     エステルったら……とぎゅっ。置かれたタブレットにはエステルと雛が『おふとん』でスヤスヤ眠る写真。
    「ミリアさんもクレープ食べませんか、美味しいですよ……ってどこにいったんだろう……」
     たびたびいなくなる猫忍者ミリアに、きょろきょろするルオ。と、
    「ルオさん、史学の研究してるんですね。趣味程度ですけど俺も歴史好きなんです」
     想希が言った。
    「想希歴史語り始めると凄いさかい、喋るん専門なってお菓子出て来おへんようなるで!」
     悟がにまにまと茶々をいれ、
    「想希と色んな城攻めたな。沖縄の城とか、中国のながーーい奴とかも行ったで!」
     万里の長城ではいきなり寝転がり出した悟に想希が驚かされたり、戦いの日々を思い返しつつ手を繋いで歩いたり。
    「僕も万里の長城は行きました。中国に行くこと多いんです」
     そんなルオの前に置かれたのは、底に蜂蜜漬ブルーベリーヨーグルトの入ったグラス。悟はそこへミルクを注ぎ、ミントの水色の小花を浮かべる。
    「綺麗です……」
     照れながらそっとかき混ぜ一口、優しい甘さにほっとしながら、つい涙腺まで緩みそうになるのを耐え、
    「そうだ、オバケスイカの時の写真もあるんですよ」
     そこにはスイカをレシーブする想希やキャッチアンド腹へリリースな悟、BBQで取り愛中の2人やどーなつ浮き輪で波を楽しむ2人が写っている。
    「もう10年か」
     悟がぽつり、
    「皆、よう生きたな。 ってルオ?!」
    「い、いえっ、もう、ほんとに……そう思います……!」
     涙腺があえなく崩壊したルオのそばに、にゃんこ手がそっと猫印のハンカチを置いた。


    「想希」
     一通りスイーツとドリンクのサーブが終わったところで、悟が想希の裾を掴む。
    「俺にも」
    「勿論」
     想希は10年間の幸せな時間を思い起こさせるような目尻の笑いじわをやや深めて応え、
    「まずは新作の白玉入り和風苺クレープをどうぞ」
    「あーん」
     悟がぱくりもぐもぐ、
    「うま!」
    「悟、俺にもラテアート……」
    「よっしゃ待っててや」
     そして悟からカップを受け取った想希がくすり。
    「兎ホット苺ラテや!」
     浮かぶは何でも羊化のアート。
    「……お2人の変わらぬ睦まじさにお腹一杯になってきたー」
     と綺麗になったお皿にフォークを置く枢。さくらえは微笑み、
    「ふふ、皆と会うのって十数年ぶりなのに、こうして話してると全然変わらないものだね」
    「そうだな。入部してから随分経つけど」
     遊もにっこりと笑い、
    「悟の明るい笑顔も、想希の優しい気配りも、ここにある暖かい空気は変わってなくて、ほっとする」
     デザートはミリアのお土産土鍋プリンと、さっと加熱した苺を熱々のままアイスにかけたジュビレ。
    「桃香さんにはアルコール抜きでお作りしますね」


     楽しい時間は満足と少々の名残惜しさを残して過ぎていく。
    「いい写真がとれたねぇ」
     さくらえのいう通り、だれもかれもが嬉しそうで楽しそうな集合写真。想希は人数分の紙袋を運んでくると、
    「お土産にドーナツもどうぞ。皆の幸せが更に先の未来まで見通せます様に」
    「ドーナツの穴から見る世界は幸せしかない世界へ続いとるんやで! 」
     悟が言い、ミリアの分はとりやすいようにテーブルへ。
    「これからも皆に幸あれ、やね」
     枢が言う。
    「さくらはこれも」
     想希が差し出したケーキボックスを、お礼を言って受け取ったさくらえは、
    「また遊びに来るね、これからもよろしく♪」
    「素敵な時間をメルスィ! また、お邪魔しますわね」
     と雛が優雅にレヴェランス。エステルも、
    「今日はとっても楽しかったの。みんなありがとうなの。ひなちゃんも……」
    「あらあら♩」
     雛は自分の頰にチュッとしたエステルをぎゅっとしてなでなで。
    「また来ますね」
    「次は新しい家族も連れて遊びに来るわ」
     遊と桃香が言えば、
    「楽しみにしてます」
     想希が優しく微笑む。悟はひつじならぬ執事らしくすっと右手を後ろに回し、
    「これからもよろしゅう」

     10年たっても20年たっても。
    「ようこそカフェちょいさーへ!」
     ここは世界一幸せになれるカフェ。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:9人
    結果:成功!
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