「……あれ?」
バレー部の中学2年生である古間・ますみは、鞄を覗き込んで目を丸くした。
鞄に入っていたのはいつものトレーニングウェアではなく体操服――それも、古式ゆかしきブルマつきのやつだったのである。
「やだーお母さんが仕舞い込んでた学生時代の体操服と間違えちゃった? それにしても……」
身体に密着しそうなぴっちりしたシャツ!
丁寧な手書きで『古間』と書かれたゼッケン!
そして――脚を極限まで露出し、魅せちゃいそうなブルマ!
「……仕方ないよね、トレーニングウェアないんだし……」
だが――腕を、脚を通した瞬間、彼女の雰囲気が変わる。
活発から、淫靡へと。
「いやー、これいいなぁ。みんなにもオススメしちゃおうかな!」
全てを魅了する笑みを浮かべながら、スキップでますみは体育館へと向かう――。
「前略! 中学校でブルマ旋風発生!」
嵯峨・伊智子(高校生エクスブレイン・dn0063)がべべんと教卓を叩く。
「その名もフライングブルマを着た古間・ますみちゃん中学2年生を中心に、夏休みに部活の練習をしている女の子にブルマを勧め、拒否する子にはブルマか死かを選ばせるという容赦ない宣伝活動……今はみんな泣く泣くブルマを履いてるけど、どうしても拒否する子が出ちゃったら……怖いので止めてあげてください!」
ちなみに同様の服装で同好の士っぽく見せかけたり、本心からブルマを褒め称えれば、相手は油断するので有利に戦えるかもしれない!
「敵はフライングブルマを着てるますみちゃんと、強化一般人になっちゃったやっぱりブルマの女の子が5人。ご当地キックっぽい技とか脚で閃光百裂拳っぽく蹴ってきたりとか、ティアーズリッパーっぽく服破いて来たりするよ!」
なお、強化一般人はKOするかますみを――というかフライングブルマを撃破すれば元に戻るし、ますみへのダメージは全部服が受け止めてくれるので安心。
「あ、でもでもますみちゃんをKOすると、服が全部破けて下着姿状態のますみちゃんが、目を覚ました状態でブルマ着てる間の記憶全部失っちゃってるから、全力で何とかしてください! 頼むね!」
ある意味これが一番の難題である。
「とゆーわけで、よろしくお願いします! ますみちゃんも全部フライングブルマのせいで女の子達脅したりしてたので、あんまし本人を怒らないだげてね!」
そう言って伊智子は、ぱたぱた手を振って灼滅者達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
采華・雛罌粟(モノクロム・d03800) |
曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934) |
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566) |
黛・藍花(小学生エクソシスト・d04699) |
長瀬・霧緒(仮面ブルマーエックス・d04905) |
華槻・灯倭(紡ぎ・d06983) |
紅月・燐花(妖花は羊の夢を見る・d12647) |
千歳・ヨギリ(宵待草・d14223) |
目的の中学校は、華やかな喧騒に包まれていた。
けれどその奥、体育館には、フライングブルマという淫魔の眷属が巣食い、いたいけな少女達の価値観を捻じ曲げているのである!
「最近……フライングなんとかっというのが流行ってるみたい、ね……」
どうせなら、ぬいぐるみやお菓子が飛んで来ればいいのに、と可愛らしい事を呟く千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)。
「ブルマ……ちょっと懐かしい響きだね……履いたことないけど」
華槻・灯倭(紡ぎ・d06983)、中学三年生が呟いた。
確かに今の世代は、だいたいがハーフパンツで授業を受けている頃である。
だがしかし。
「絶滅危惧種というのは、本当に絶滅してしまいそうなトラとかウナギのために使われるべきです」
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)がそう言って眼鏡を上げ、溜息を吐く。
その、なんだ、ごめんなさい。
「ブルマは滅んでも別にいいですよ」
それに学生さんお断りな大人の世界では愛好者がいてまだまだ勢いがあるとも聞いていますよ、と摩那は肩を竦めて。
「写真撮りたい、あわよくば家に持ち帰って愛でたい未だ未発達のJKのブルマ姿ッ!」
ほらそこにもブルマスキーが一人。
采華・雛罌粟(モノクロム・d03800)がカメラを抱え、目をきらっきらさせている。
「やっぱり今の時代、体育館でブルマを強制されるとか、ものすごく恥ずかしいよね。どんな罰ゲームか、と思えるくらい」
「ブルマか……」
曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)が真剣な顔で呟く。
呟いた内容はともかくとして。
「見てる側としてはどきどきするが、着る側としては恥ずかしいだろうな」
いずれにせよ、妙な服の問題は解決しないといけない、と綺麗にまとめる華琳。
「機能性には富んでるんだろうけど……着なれてないとちょっと、恥ずかしいよね……」
そう頷いてから、「今回女の子ばっかりでちょっと安心だね」と灯倭は微笑む。
「フライングブルマ……、……まあ、どうしてこうなったかは知りませんが……とりあえず古間さん達を助けましょうか」
表情を出さずに、黛・藍花(小学生エクソシスト・d04699)が国利と頷いて。
「ますみちゃん、しっかり正気に戻してあげないとね」
「そう、そしてそんな物凄いコスチュームを用意しちゃう眷属は、ここでしっかり殲滅しないとね!」
灯倭の言葉を引き取って、きれいにまとめる摩那。
で。
「……ところで、常々疑問に思っていたんですが、依頼の報酬にブルマが入ってたりするのは何故でしょう……」
思わず素朴な疑問を呟いて、まとまりかけた空気を華麗に解きほぐす藍花。
ちなみに、武蔵坂学園の体操服はハーフパンツである。
無事に校内に入った灼滅者達は、一路体育館を目指す。明らかに中学生には見えない小学二年生のヨギリも、お姉ちゃんに忘れ物を届けに、と事務員に伝えたらお菓子までもらえた。
体育館の入り口まで迷うことなく辿り着き、紅月・燐花(妖花は羊の夢を見る・d12647)がプラチナチケットを使い、体育館の見学に来た関係者だとバレー部員を納得させる。
「お前達は知っているか? ブルマーとは……」
そしてその横を堂々と進み出る武蔵坂学園制服姿が一人。
その口から溢れ出るブルマという言葉に、思わず目が釘付けになる部員達。
「十九世紀アメリカの女性解放運動家、アメリア・ジェンクス・ブールマーが旧来のコルセットのような拘束型女性衣服の転換という革新的な試みとして考案した、動きやすく自由度の高い史上初の女性用下着を原型とする体操着」
制服の裾に、手がかかる。
「そして後の化学繊維の発達により改良されたのが――」
「変ッッ身ッ!」
武蔵坂学園の制服が宙に舞う!
「このブルマーだッ!」
その下から現れたのは、ブルマ姿の長瀬・霧緒(仮面ブルマーエックス・d04905)だッ!
ちなみに着替えた華琳もブルマ。雛罌粟の防具の下もブルマ。
「……えと、何故かブルマを着ることになったのよね……どうしてかしら……脚がスースーするの……」
武蔵坂学園では普通のハーフパンツなのに、と呟きながら、下着がはみ出していないかちょっと気にするヨギリもブルマ。
「確かに、かなり脚がスース―しますね……」
必死に――表情には現れないが結構必死に、上着で脚を隠せないか裾を引っ張ってみる藍花もブルマ。
そんな中、優雅にメイド服でバレー部員達に一礼する燐花のぶれないこと。
これぞメイドの心意気!
ともあれ霧緒の登場に皆が唖然としている間にパニックテレパスを使い、さっくりと一般人のバレー部員を体育館から退避させる灼滅者達。
「……ブ、ブルマ仲間として、あなたのそのブルマは認められません、それは悪魔のブルマです……」
その間に時間を稼ぐため恥ずかしがりながらも口を開く藍花に、「何てこと言うの!」と進み出たのは古間・ますみ。
「ブルマこそ体操着の真なる姿! そうでなければ、なぜあんなにも長い間体操着として使われたのか……」
「ブールマー! イイ! ブールマー! イイ!」
そこに行進しながらやって来たのは、大声で軍歌っぽい何かを歌いながらやってくる華琳である。
「ブルマは見てハァハァする派です」
そして堂々と宣言する摩那。
「ブルマッ! 最近ではショートパンツやジャージの時代なのでしょうが判ってないッ!」
さらにそれに賛同し、ますみとがっちり握手を交わす雛罌粟。
「ブルマの良さは運動時の動きやすさ! というのは表向き。その最大の魅力は一見、下着っぽく見えるコスチュームからすらりと伸びる白い肌と太腿!」
「こんな感じ?」
さっとポーズを取ってみせるますみと強化一般人ズ。
「え、体操服の白との相性は最高です。ほんと運動女子にはブルマが似合うのよねー」
「アレは良いモノです。低学年の多量ゴムで緩く小さい子がちらっとハミパンしてしまう可愛らしさも良し」
ずざざっと思わず後ろに下がるヨギリ。
「スパンゴムの裾を直すために指をつっと滑らせるのもエロい!」
さらに下がるヨギリ。「こんな風に……ね?」とブルマの縁に指を滑らせて魅せるますみ。
「今となっちゃご覧になる事は稀っすが、チョウチンブルマも可愛いっすよねェェェェッ!」
「同志ィィィ!」
思わずがばりと抱き合う雛罌粟とますみ。
「あ、皆様、避難終わりましたわ」
そこにひょいと顔を出す燐花。
思わず顔を見合わせるますみと灼滅者達。
「……まさかっ! ブルマを語ってその間に私達をバレー部の仲間から分断する、なんて卑劣な作戦!」
「ご、ごめんなさい!」
顔を真っ赤にして言いながらも、鬼神と化した腕でぽかんと強化一般人をひっぱたくヨギリ。
「おっと、テンションが上がり過ぎました、気合いを入れて行きましょうー!」
雛罌粟が思いっきり拳を突き上げ、そのまま影の刃で強化一般人のブルマ少女――長いので以下強化ブルマちゃんの一人をぶっ飛ばす。
「せば参りましょうかのう」
戯けた態度は一変、ニィと凶悪に歪んだ顔を向けて。
――闇堕ちはしてないからみんな安心してね。
「私の中にあるもう一人の私よ、今ここに……」
燐花がカードに封じた力を解き放てば、清楚であった雰囲気が一気に妖艶さに変わる。他には何も、変わっていないのに。
優雅な仕草で、燐花はすっと取り出した防護符を己の身に貼り付けて。
力の解放と共に現れた藍花のビハインドはお揃いのブルマに体操服姿で、顔を隠した布から覗く口元は、無表情に恥じらう藍花を労わるように柔らかく微笑んで。
伸ばした影と霊障波が、同時に同じ強化ブルマちゃんを張り倒す。華琳が読んだプリズムの十字架が、光を生みますみの脚から力を奪う。近づいてきた強化ブルマちゃんには明らかに只者じゃない殺気を放ちながら、霧緒が閃光百裂拳を叩きつけて吹っ飛ばす。壁に叩き付けられて倒れた強化ブルマちゃんは動かない――まずは、一人!
「一惺、行こう!」
さらに灯倭が霊犬の一惺を呼べば、威勢よく吠えた一惺は素早く刃を閃かせて。同時に制約の弾丸が、強化ブルマちゃんの動きを止める。
「一刻も早くますみちゃん達を剥いちゃいましょう」
「へ、変態!」
ぴき、と摩那の額に青筋が浮かぶ。さっきまでブルマ愛を語っていたのは「騙りですよ。えぇ、まったく」とのことである。
ともあれティアーズリッパーと斬影刃を連打して、強化ブルマちゃんのブルマをひん剥き、怒りの連発キックは雛罌粟が滑り込んで受け止めて。そのまま体を回転させ情熱のダンスを繰り広げれば、燐花が高らかに歌声を張り上げて。
その胸を爪先がかすめ、ぱっくりと衣装の胸元が裂ける。けれど貼り付けた防護符の力で、するすると服の傷は塞がって。
「お生憎でございますが、私のメイド服を真なる意味で脱がす事など出来ないのでございます」
そう言って、どこか妖艶に一礼。起き上がりざまに下から縛霊手を叩き付け、霊力の網で強化ブルマちゃんの一人を縛り上げる。さらに灯倭が影を大きく膨らませて頬張るように――影が戻った時、そこには倒れている強化ブルマちゃん。
「ブルマか死かなんてちょっと極端すぎるんじゃないかな? ブルマは好みで履くものだよ」
そうますみに向かって声を掛ければ、「機能的で素敵な体操服なら着ない理由も、着せてあげない理由もないじゃない!」と声が飛んできて。
「というか、ますみちゃんも皆も、恥ずかしいでしょ……? ホントは……」
あ、強化ブルマちゃんが一人、こっそり頷いた。
「なっ、ななななな……私と、ブルマを侮辱したね!」
弾丸のように飛んできて、灯倭へと跳び蹴りをぶちかますますみ――けれどその背後には、待ち構えていた霧緒がいる!
「ふっ!」
ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブ、ストレート。
相手の蹴りはさっと捌き、一進一退の攻防が始まる。
さらにそこに、華琳が無敵斬艦刀をかざし飛び込んで。それを紙一重でかわしたものの、霧緒の当身には思わずよろめく!
反対側では強化ブルマちゃんの一人に大きく服を裂かれた藍花が、悲鳴を堪えて(服の)傷口を押さえながら、何度も拳を叩きつける。駄々っ子パンチ状態の攻撃に、ビハインドは柔らかに微笑んで霊撃を解き放つのみ。
ともあれヨギリのシールドリングのおかげで、ブルマも何とか元通りになって一安心である。
摩那がさらにその強化ブルマちゃんの服を(光刃放出で)剥いて倒して一段落。
既に、ブルマ少女はますみも入れて半分の3人のみ!
仲間達に向きそうになった蹴りを連続で受け止めて、どくりと心臓の上に雛罌粟はトランプスートを浮かべる。極悪な笑みを浮かべながら、拳に纏わせた影で強化ブルマちゃんのブルマを切り裂いて。
燐花がさらに影で縛り上げ、ウロボロスブレイドを盾状にして身を守り傷を癒した灯倭が制約の弾丸を叩きこむ。藍花がオーラをキャノン砲と化して解き放てば、また一人が床へと崩れ落ちて。
後二人。既にかなり裂けたフライングブルマを確認し、ヨギリはますみの方に銃口を向ける。
「悪いブルマは燃やしちゃうの……!」
ヨギリが炎の弾丸を連続で叩きこむ。華琳が上段に構えた無敵斬艦刀を一気に振り下ろせば、致命傷と言ってもいいほどの傷がますみのブルマに生まれる。そして霧緒が当身から閃光百裂拳、オーラキャノンを解き放ち――!
「FINAL ATTACKRIDE『ブルマーキック』!」
渾身のキックによって、あえなくフライングブルマは体育館の塵となったのだった。
倒したと思った瞬間、下着姿になったますみがすぐさま起き上がって来たのは、予知で聞いていた通りであった。
「な、ななななな……きゃ……」
自分の格好に気付いて、ますみが悲鳴を上げる寸前。
「風を……」
ヨギリが吹かせた魂鎮めの風が、ますみを、ついでに強化ブルマちゃん達を眠らせる。
「ん? 何も着けてないのか……なら、私のを」
「スタァァァップ!」
おもむろに自分のブルマを下ろそうとした霧緒を慌てて摩那が止める。
ここで下着姿が増えたところで誰か入ってきたら、話は混迷を極めるだろうし。
とりあえず華琳が持ってきた着替えやすいワンピースを着せて。
「自分、力持ちなンす、運ぶのとか手伝います」
然し惜しい物を無くした、と呟きながら、雛罌粟が更衣室に運び。
さらに燐花が用意した着替え用のジャージに着せ替え終えた辺りで、「んっ……」と声を上げ目を擦りながらますみが起き上がる。
「更衣中に倒れちゃったみたいだけど、大丈夫?」
そう灯倭が声を掛ければ、戸惑いながらも「あ……うん」とますみは頷いて。
「様子を見に来たら倒れたので心配していたのですよ」
燐花がほっとしたような表情で微笑んで。それにしても今回は、女性ばかりで幸いでございました、と思う。
「管理教育反対! 万国の女子中学生よ団結せよ!」
何か華琳が最初に歌っていた歌からうっかり連想したのか、男子高校制服姿になりどこかでアジ演説なんぞを繰り広げているが、とりあえず燐花はますみ達のフォローに回ることにした。
とりあえず体調は大丈夫かと尋ね、頷いたのを確かめて灼滅者達は更衣室を後にする。
最後に部屋を出ようとした摩那が、ふと振り向いて。
「部員に会ったら、とにかく謝り通しなさい。それが一番だからね」
「え? は、はい……え?」
頭を捻るますみを置いて、更衣室の扉は閉じられた。
校舎から外に出れば、まだ太陽がまぶしい時間だった。
「それにしても最近はメイド服以外もかなり飛んでおりますわね」
燐花がそう言えば、ブルマからようやく着替えることが出来た藍花がこくりと頷いて。
「いったい誰が何の目的で、こんなものを作ったんでしょうね……」
フライングブルマも。
そして本物のブルマも。
「元々はスポーツのためのものですのに、それが別の意味合いを持ってしまったために廃止されていってしまった、と」
ふ、と燐花は息を吐き、空を見上げる。
「なんと申しますか、人の業を感じますわね」
溜息ついたその空に、フライングブルマが浮かんでいたような気がして……本当に浮かんでいたら、新たな事件の予兆かも知れないが。
「フライングブルマよ有難う……ッ!」
雛罌粟がサムズアップ気分で一緒に空を見上げる。
今回のフライングブルマは、灼滅を完了した。
けれどこれからもきっと現われるであろうフライング謎の服。戦いはまだまだ終わらない――かも、しれない。
作者:旅望かなた |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年8月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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