なんもない県のこと栃木っていうんじゃねえよ!

    作者:空白革命

    ●栃木だったいいとこいっぱいあるよ! あ……あるよ! あるって言ってんだろ!
    「ハーッハッッハ! 栃木に来る意味? ないんだなーこれが!」
    「だーよなー!」
     辺鄙すぎて大型ショッピングセンターすら来ず、未だに商店街が現役で生きているという脅威の町がある。どことは言わん。
     そんな商店街でちょっとヤンキーっぽい兄ちゃんたちがサイダー片手にゲラゲラ笑っていた。(尚、人口がやけに少ないこの土地でガチな非行に走ると末代まで特定されるので以外と治安はいい。だから彼らは見た目だけのヤンキーである)
     と、そこへ一人の青年が現われた。
    「おいお前たち、栃木の悪口はそこまでにしてもらおうか!」
    「だっ、だれだお前!」
     青い燐光が美しい衣のスカーフを巻き、どこか爽やかなグラデーションカラーのジャージに身を包んだその男こそ……!
    「フッ。俺か……俺の名は……!」
     腰に手を当て、拳と腕を強調するように顔の位置へぐっと持ち上げ、なんとなーく栃木の旗章に近い感じのポーズをとったその男こそ……!
    「聞いて驚け俺の名は……!」
     更に栃木生での産量日本一とさるいちご(皆知ってる乙女のあれだが商標登録されてるから言うわけにはいかないぞ!)を模したバッチを親指で示した、その男こそ……!
    「そう誰もが口ずさむ俺の名は……!」
     でもって県のシンボル動物でもあるカモシカの角から作られたという一対のダガーをかっこよく構えて見せた、そうその男こそ……!
    「誰だ?」
    「誰だっけ」
    「名前なんだったかなあ」
    「まあいっか。ゲーセン行こうぜ!」
    「おー行こう行こう」
     サイダーの空き缶をちゃんとゴミ箱に捨てて帰って行くヤンキーたち。
     男は膝から崩れ落ち、頭を抱えて叫んだ。
    「カッコイイ名前……思いつかねえええええええええええええ!」
     
    ●おまえ栃木でも同じこと言えんの?
    「栃木はイチゴの生産量日本一なだけでなく日光という宗教的建築学的にも重要な土地をもち多くの漫画家や監督などを輩出したとても素晴らしい土地でミスター緑川もそこの出身なんだぞ。だから……その、なんだ……あれだ……」
     大爆寺・ニトロ(高校生エクスブレイン・dn0028)は世にも苦しげな顔をして灼滅者たちに背を向けた。
    「そんな土地でご当地ヒーローをしていた奴が、闇堕ちしたんだ」
    「……ちなみに、なぜ?」
    「格好いいヒーローネームが思い浮かばなかったらしい」
    「…………」
    「あ、一応言っておくが、『じゃあ名前をつけてやればいい』という簡単な話じゃないからな。本人の立場から見れば結構重い話だからな」
    「お、おう……」
     何もあんたがフォローしなくても、と思う一同であった。
     
     要約すると、栃木の北西側にある町でご当地ヒーローをしていた佐藤一郎くん高校一年生はあまりにイイ名前が思い浮かばず、色々鍛錬を重ねたり小さな事件を解決して回ったりお祭りを率先して手伝ったりと様々な努力をした割に全く名前が浸透しないという悩みを抱えていた。
     そりゃまあ灼滅者にはバベルの鎖がバベッてるのであんまり噂が伝わらないにしても、助けて貰った当事者とかはやっぱ覚えててくれる筈なわけで、そんな人たちも久しぶりに会うと『ああ、あの……君』とか微妙なにごし呼びで誤魔化す始末。正直やってらんねえよと頭を抱えて闇堕ち下次第である。
     彼は闇堕ちしたはいいけどどうしたらいいか分からず、とりあえず悪いことでもしようかなと商店街へ訪れるところ……で、我々灼滅者が乱入できる手はずになっているらしい。
     このタイミングもやっぱりバベりの影響で、他の方法をとると『あ、なんかヤバいな、バベってるな』と察知されて色々ご破算になりかねないらしい。
    「まあ勿論ダークネスになってるだけあってかなり強いぞ。全員で束になってかかってようやくって所だ。しかし彼も元はご当地ヒーロー。ヒーローの心がまだ彼には残ってるはずだ。もしそれを呼び起こすことができるなら……」
     ぐっと拳を握ってニトロは締めにかかった。
    「こんな任務を任せられるのは世界広しといえど武蔵坂学園くらいなもんだ! 頼むぞ、皆!」


    参加者
    天羽・蘭世(暁に咲く虹蘭の謳姫・d02277)
    狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)
    曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)
    天王寺・司(龍装闘士ドラグレイカー・d08234)
    金岡・劔(見習いヒーロー・d14746)
    鴇・千慶(ガラスの瞳に映る炎と海・d15001)
    黒芭・うらり(中学生ご当地ヒーロー・d15602)
    笹原・ササクレ(向上心・d19912)

    ■リプレイ

    ●特撮番組とかでやたら広い平原とか石切場で戦ってたら多分それ栃木
    「あのー、一郎くんですか?」
     天羽・蘭世(暁に咲く虹蘭の謳姫・d02277)が身体ごとかくっと首を傾げ、長い髪を垂らした。
     一瞬固まるお兄さん。
    「いえ、自分はそこのパン屋です」
    「じゃあ……あなたが一郎くんなのですか?」
    「いいえそれはジョンです。肉屋です」
    「意外と見つからないのです……」
     唇に人差し指をあててぽーっとする蘭世。
     そんな光景を、曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)と天王寺・司(龍装闘士ドラグレイカー・d08234)はレモンの香りがする牛乳(でもレモンは入っていない)のパック飲料をちゅーちゅーしながら眺めていた。
    「確かに栃木は一見して目立たないし、名前が思いつかないのもしょうがない」
    「マジで同情するわ……勝手に自称できちまう図太さがあったらなあ」
    「あれじゃん? ヒーローの名前をシンボルにして町を元気にしたかったとかじゃないのってこの釜飯やばい! 石釜ごと出てきてなんだこれって思ったけどやばいくらい美味い!」
     元々駅弁として有名だったけど駅ごと無くなったために別の意味で名物になった釜飯弁当をひたすらにかっくらう鴇・千慶(ガラスの瞳に映る炎と海・d15001)。
     関係ないけどあの釜が一人暮らしに便利だからって調子乗ってコンロにかけてると釜かち割れるので注意しよう。
    「あー、私も釜飯にしたらよかったかも」
     一方で五百円玉の倍くらいあるイチゴをもふもふ食べてる黒芭・うらり(中学生ご当地ヒーロー・d15602)。
    「……っていうか何それでかい。こわい」
    「スカイベリーだって」
    「えっ、なにそれスカイツリーに乗っかった何かなの?」
    「さあ……でもカルチャーショックばりに美味しいよ?」
     おとめの後継種としてつい最近に開発されたイチゴで高さ五センチくらいあるのにおとめばりに甘いという嘘みたいな品種である。贈り物にするとビビられる。
     巨大なパワーとポテンシャルを秘めてて否が応でもインパクトを与えてしまうくせになんでか『いやあ別にうちの土地までアピールしなくていいですよ』という奥ゆかしさと大らかさをもった栃木を象徴するかのようなイチゴである。
     それを一個ほど貰ってまじまじ見つめる笹原・ササクレ(向上心・d19912)。
    「でもこう……どっちも『え、それ栃木なの?』っていう印象あるッスよね。あとなんでだろ、さっきから自分ら千文字に渡って栃木のグルメアピールをしているような気がするンスけど」
    「気のせいだろ」
    「気のせいッスか」
     手を後ろで組んでいた金岡・劔(見習いヒーロー・d14746)が身体を揺らして言った。
    「じゃあ、そろそろひとまとめしてもいいかな?」
    「どうぞどうぞ」
    「僕のご当地もいいもの沢山あるんだけど、よく分からないって言われるの。親近感があるんだ」
    「だが語るべき土地あっての人。愛すべき人あっての土地。そのどちらかが失われるというなら……行かねばなるまい」
     狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)は両足を肩幅以上に開き片腕を腰にもう片方を額へ水平に翳してぺらりとプラチケを垂らして片目を隠す……というやけに回りくどいポーズをとった。
     通りすがりのTシャツ短パンのにーちゃんが聞いてくる。
    「あのー、きみたちさっきから一体……」
    「全国ご当地振興会の者です!」
    「……あ、はい。どうもお疲れ様です」
     聞いたこともないけど本人が言うならそうなんだろうなあくらいの気持ちで通り過ぎていくにーちゃん。
     と、そこへ。
    「あのー、一郎くんですか?」
    「…………え、あ、はい」
    「「怪人だったよ今の!」」
     伏姫たちは一斉に振り返った。

    ●某ウィザードのアンティークショップがあるのも栃木。よく出てくるサーキットも栃木。アキバの人たちがやたらワープしてくる岩場も栃木。ある意味ヒーローのメッカ栃木。
     どっからどう見ても昼飯買いに来た近所のにーちゃんだけど確かによく見たらダークネスっぽいオーラが出てるし(厳密な話は避けるが、ふつうダークネスくらい気配でわかるもんだ)間違いなく栃木怪人(佐藤一郎)だと思うので、多少調子は狂ったものの一斉にヒーローポーズをとって見せた。
     具体的には商店街のど真ん中でこう……。
    「めろでぃっくふぉーぜっ!」
     ロッドを掲げた蘭世を中心に音符マークが大量にくるくる周り、アバンで使えるような一色背景の中で骨の入ったドレススカート、きゅっとしまったコルセット、フリルをあしらった肩掛けを順番にキュピンッとか音をたてつつ着用したかと思うと最後に虹色の翼をばっさぁやってポージングして見せた。ちなみにここまでアバンである。今期シリーズであと12回は確実に使う。
    「メロキュン・ランゼ……なのですっ!」
    「なにっ、魔法少女が一体なぜこの商店が――」
    「(※お好きな解除コードをいれてたのしもう)!」
     一郎くんの台詞をキャンセルして返信する華琳。
     漢服(中国の時代劇とかでよく見るやつ)を一瞬にして身に纏った華琳は、天から降ってきた刀を握りしめた。
    「遠からんものは音に聞け。近くば寄って目にも見よ! 我は武帝が子孫、曹・華琳!」
    「えっ、いきなりでちょっと展開がわか――」
    「龍装!」
     またも一郎キャンセルをかけた司がハットを天に放るとどこからともなく大量の装甲が出現。すべてが自動的に司の身体へ張り付くと視界確保用のシールドが炎のように光った。
     説明しよう。龍装闘士ドラグレイカーがバトルコスチュームを龍装するタイムは僅かコンマ零五秒に過ぎない。では龍装プロセスをもう一度見てみよう!(脳内でな!)
    「龍装闘士ドラグレイカー、参上!」
     ブルーのメタルボディを外気に晒し、アームブレードを誇張するように構える司、いやさドラグレイカー!
     一郎くんは両手を翳した。
    「ちょ、ちょっと待とうか君たち。俺はまだ――」
    「海を楽しむ里と書いて、うらり……!」
     うらりは架空の海へ手を突っ込むと一匹のカジキマグロを引き抜いた。大量にあがった水しぶきに包まれ、再び姿を現わした時には独特のウェットスーツとゴーグルを装着していた。
    「三崎港よりの使者、まぐろヒーロー(仮)! 根性入れ直してあげる!」
     なんかいきなり雰囲気を支配しはじめる灼滅者一同である。
     そんな中で千慶はびしりと一郎くんに指をさした。
    「栃木の怪人! 君の悪い心をぶっつぶし、頼もしくって気が利くけどちょっと影が薄い……そして優しいヒーロー佐藤一郎を取り戻すよ!」
    「あ、あの、うん、君たちの気持ちはよくわかったんだ、うん、だからその――」
    「説明せねばなるまい!」
     小指を立ててマイクを握り、キラッとした姿勢でプラチケを翳した伏姫が彼らの横へスライドインした。
    「これは全国ご当地振興会主催の突発ヒーローショーである! 嘘では無いぞ、なぜなら我は……関・係・者!」
     無駄にピカーって光るプラチケ。基本的に何の関係者かは指定できないプラチケだが、場の空気と勢いによっては言ったもん勝ちになるのもまたプラチケであった。要するに無くてもなんとかなった。
     その証拠にパン屋のおっさんも肉屋のジョンも「これってヒーローショーらしいですよ」「しょうなのォ!?」みたいにあほみたいな会話をしていた。
    「さあ」
     くいくいっと手招きする華琳。
    「名乗りはどうした?」
    「名乗りのことは言うなあああああああああ!!」
     するとどうだろうか。突如として佐藤一郎の周囲から竜巻がおこり、服は引きちぎれるわ短パンははぎ取れるわ道行く女子中学生は両手で顔を覆って指の間からチラ見するわで大変なシーンを二秒ほど映した後どこからともなく取り出したキャリーバッグからなんか黒い全身タイツを取り出し『あ、一瞬、一瞬待って』と言いながら着替えた後近くのおじさんに背中のファスナーをあげてもらった。最後に悪そうなサングラスをかけると……。
    「ククク、この姿を見たからには生かしておけ――」
    「くらうッスぅー!」
     一郎くんが着替えてる間にささっと変身していたササクレが高く飛び上がり、サイキックソードと影業の剣を左右それぞれ振り込んだ。
     光の刃と影の刃が交差するように飛び出し、一郎へと直撃したではないか。
    「ぎゃああああああああ!!」
     一瞬で引きちぎれる全身タイツ。
     BSの服破りは別に服が破れるわけじゃないんだけど、今回ばっかりはガチで破れていた。
     ダークネス栃木スーツ。出番は二行である。
    「ま、まだだ! これまで重ねてきた悪事によってわき上がったダークネスオーラがある!」
     ほぼ半裸になった一郎くんだがなんか黒っぽいオーラを噴出。
     それに対し、劔はフゥと小さく息を吐きつつホ式十三粍高射機関砲を三脚つきで出現させると片手で水平固定。空いた手に九七式自動砲を出現させて握り込んだ。
     両足を大きく開いて重心をとると、長い髪をほんの僅かに浮かせた。
    「こちらは見習いでもヒーローだ。遠慮は抜きにさせてもらう!」
     機関砲で連射をしかけながら自動砲での射撃を連続で叩き込む。
     一郎くんのダークネスオーラが二秒ではがれたのは言うまでも無い。
     はぎゃんと言いながら吹っ飛んでいく一郎。
    「死っ、死ぬわあああああ! あっ、生きてたああああああ!?」
     高射機関砲とアンチマテリアルライフルの直撃をくらって生きてるんだからダークネスはすごいなあみたいな、そういう顔をする劔。
     一郎くんは既にボロボロな身体を元気よく起こすとがりがりと頭をかきはじめた。
    「くっそぅ、くっそう! 折角すごい力が手に入ったのに、いきなりこんなに押されるなんて聞いてないよ! まだ空き缶のポイ捨てしかしてないんだぞ!」
    「案外ショボいな……」
    「その後ちゃんとくずかごに捨てたのがダメだったんだろうか……!」
    「ショボいどころかいい奴だったぞ!?」
    「いや、違う。やっぱり名前だ! 僕に名前が無いから新参者にやられちゃうんだよぅ!」
     頭を抱えてうずくまる一郎くん。既にちょっと泣いていた。
    「栃木になんて生まれなければ、栃木になんて住まなければ今頃僕は……」
     とか言っていたらうらりのカジキマグロがまっすぐ飛んできた。むろん刺さった。
    「笑止!」
    「んぎゃああああ!?」
    「栃木は悪いところじゃないよ。那須高原いったことあるけどすごくいい所だったよ! 本気で何もなくて、開放感がはんぱじゃなかったもん! 夏は涼しくて冬はぽかぽかする……どんなものでも、無価値なんかじゃない。私は、三崎港にマグロが水揚げされてる限り、地味でも無名でも、活動し続けるよ。あなたはどうなの!」
    「くっ……」
    「名前が思い浮かばないなら募集してみるのがいいッス。無理に考える必要ないっスよ」
    「いかにも」
     劔は一度力を抜くと、背後に設置されていたボードを顎で示した。
    「実はさっきから、商店街の人たちにヒーローネームを募集していたの。僕は見習いだし、君の切実な想いは理解できないかもしれない。けどご当地愛を闇に染めるのを放っておけないよ。さ、みんながつけた名前を背負っ――」
     振り返ってみる一同。
     ボードにはだいたい『一郎くん』『佐藤君』『佐藤一郎君』『シュガーちゃん』『高梨豆腐店をよろしく』『提供杉田商店』『ばか』『うんこ』『とちぎ』『明日の8時にセブン前集合な』などと書かれていた。
    「…………」
    「…………」
    「名前を背負って新たなヒーローとして生まれ変わるんだ!」
    「言い切ったー!」
    「この状況で言い切りおったッスー!」
     劇画調で身を乗り出す伏姫とササクレ。
     蘭世がまあまあと手を翳した。
    「栃木のフォローがまだなのです。えっと、いちごとか、世界遺産とか」
    「わんにゃん村とか昔あったな」
    「ハードテツなら知らぬ者のいない模型社が栃木だ」
    「あと大田原牛とかA5ランクだったぞ」
    「時代劇できるようなテーマパークあったよね」
    「そう、つまりそういうことだ」
     司と千慶がじりじり寄っていく。
    「なまえ、確かに呼ばれると嬉しいよな」
    「でもお前さん、見返りが欲しくて人助けをしてたんじゃないだろう」
    「君は栃木も、栃木の人も愛してるんだろ!」
    「そうなのです。名前を覚えて貰うより大切なもの! 栃木への……」
     うつむいた一郎の口が、小さく動いた。
    「いいひと、いいこと、つぎつぎ……『とちぎ』」
     そして、光が生まれた。

    ●栃木のこころ
     名前も忘れられたような商店街。その真ん中で、光の柱が登った。
     『それ』に名前は無い。
     青い燐光が美しい布のスカーフとカラージャージ。
     いちごのバッジとカモシカ角のナイフ。
     彼に名前はない。
     ただし。
    「栃木、ゴージャスモード!」
    「――!?」
     華琳は反射的に刀を振り込んだ。一郎の靴底が刀とぶつかり合う。相殺? いや違う、華琳がキックによって吹き飛ばされたのだ。
    「栃木、カモシカキック」
    「なんというインパクト」
     華琳を追い抜いて飛び出していく司。竜巻がおこったが出番待ちしていたフェンリル(ライドキャリバー)が身を盾にして突っ込んでいった。
    「それでこそ!」
    「遣り甲斐があるというもの!」
     アームブレードを繰り出す司。と同時に真横まで飛び込み、アスファルトの地面がひび割れる勢いで着地した劔がライフルを突きつけた。発砲と打撃が同時に繰り出され吹き飛ぶ一郎。しかし彼は空中で上体を整えると、真っ赤で巨大なビームを繰り出した。
    「ベリービーム!」
    「おうおうイケてるじゃん!」
    「負けてらんないッス!」
     即座にワイドガードを発動させるササクレ。
     直撃をうけながらも濃霧を発生させる千慶。
     やったか? と呟いた途端、霧の中からうらりと千慶が飛び出してきた。
     二人の拳が同時に叩き込まれる。
    「閃光マグロ拳!」
     モロに食らって地面に叩き付けられる一郎。
     その枕元に伏姫がそそっと近づいた。
    「ふ、いつから我が司会のお姉さんだと錯覚していた?」
    「いや最初からそうは思ってなかったが」
    「問答無用! 伏姫ザ・アヴェンジャー推参!」
     うりゃーと言いながらガトリング射撃を叩き込む伏姫。
     もわもわ煙があがった中へ、高く跳躍した蘭世がキック態勢で飛び込んだ。
    「ぷちおやキック!」
    「負けない! 栃木最終奥義――!」
     煙から飛び出す一郎。
    「なんもないアタック!」

    ●かくして――。
     地面で大の字に横たわった一郎。
     身体を起こした彼の前に、司が立ち止まった。
    「栃木は!」
    「いい土地ぎ!」
     がしりと手を握りあう二人。

     この日、武蔵坂学園に一人のヒーローが訪れた。
     名前は無い。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 12/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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