勘違いの汗日和

    作者:奏蛍

    ●暑苦しい勘違い
     セミの声が開け放たれた窓からこれでもか! と言うほど耳を打つ。一緒に微かな風が部屋の中に流れて来て、汗が流れる一騎の体をすっと冷やす。
    「……999……1000!」
     千回目で腕立てを中断した一騎は、スポーツドリンクを流し込む。しかし、筋トレだけでは物足りない。
     そのとき、セミの声に混ざって荒々しい声が聞こえてきた。ぶつかりあう体と体。
    「これはっ……!」
     これなら自分は満足できるのではないか? 強いものもいるかもしれない!
     一騎の頭の中は、待ち受ける戦いでいっぱいになるのであった。テレビから流れる映像は、昨年の祭りの風景。
     神輿を担ぎ、ぶつかりあう体と体。決して格闘ではない……ないはず……。
    「おぉ! 今年はこれからか!」
     早速、出陣しなければと急いで一騎は部屋を後にするのであった。
     
    ●暑ければ汗が出ます
    「いろんな意味で暑苦しい……」
     ちょっと嫌……と言うようにふらっとした須藤まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)だが、すぐに気を取り直して灼滅者(スレイヤー)たちに視線を戻す。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、彼女たちエクスブレインの未来予測が必要になる。
    「お祭りに行ったことなかったのかな」
     でもやっぱり肩を落としてしまうのだった。アンブレイカブルの一騎が何を勘違いしたか、テレビで流れた映像を格闘と思い込んでしまった。
     このままだと、お祭りに乗り込んでたくさんの命を失うことになってしまう。そこでみんなには、一騎をお祭りに参加させないようにしてもらいたい。
     そもそも、なぜお祭りに行こうと思ってしまったのかと言うと暇だったからだ。筋トレだけでは物足りなくなってしまったのだ。一日何回腕立て腹筋をしていたのかは、怖いので想像しないでおく。
     そのため、満足さえさせればお祭りに行かずに大人しく帰ってくれるだろう。見た目は暑苦しく、言動はふざけた奴だが実力だけはある。無理な深追いはおすすめしない。
     満足しさえすれば、みんなの命まで奪おうとはしないだろう。さらに強くなったみんなと再び戦いたいと思ってくれるはずだ。
     まずはお祭りに到着する前に一騎と接触しなくてはいけない。ものすごいスピードで自転車を走らせる一騎を止めてもらいたい。
     一本道の土手をまっすぐ進んでくるので、見つけるのは容易だろう。だが、ただ道を塞ぐだけでは力にものを言わせて突破してしまうだろう。
     みんなは灼滅者……ということで、力づくで止めてもらえればと思う。一騎にこいつらなら楽しめる! と思わせることが出来れば成功だ。
     お祭りのことはすっかり忘れて、みんなに夢中になってくれることだろう。けれど、満足させることができなければ、お祭りに再び向かってしまうので気をつけてもらいたい。
     一騎はストリートファイターのサイキックと解体ナイフを使ってくる。
    「油断できないのは当たり前なんだけど……その、飛び散る汗には気をつけてね」
     汗自体に攻撃力はない。ないが、飛び散る汗を想像したまりんの顔は心なしか青ざめていた。


    参加者
    椎名・紘疾(クイックシューター・d00961)
    ミリア・シェルテッド(中学生キジトラ猫・d01735)
    須賀・隆漸(双極単投・d01953)
    夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)
    清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)
    神宮寺・刹那(狼狐・d14143)
    齋藤・灯花(麒麟児・d16152)
    龍月・美里(喰霊使い・d19905)

    ■リプレイ

    ●特別製の自転車!?
     土手に立った椎名・紘疾(クイックシューター・d00961)が首を傾げた。
    「んー、まぁ、言われてみれば、祭りって戦ってるようなものもあるらしいし……」
     勘違いするかもしれない。けれど今回のは流石にないだろう……と肩を落とした。
    「まっ、良いんだけどさ。楽しめれば」
     大きくひとつ伸びをしてから、気怠そうに道の先を見つめる。道を塞ぐだけではダメなら、攻撃しても無駄なのではと考えてゆるく首を振った。
     悩んでも仕方ない。ものは試しと先制攻撃を仕掛けてみることにする。
     横で紘疾の言葉を聞いていた夕凪・緋沙(暁の格闘家・d10912)はうんうんと頷いていた。祭りを格闘技と見間違えるなんて、どれだけ格闘技好きなのかと思ってしまう。
     もちろん、緋沙も格闘技好きだ。でもそこまでマニアックではないと思うのだった。
    「そろそろでござるか?」
     口元をマフラー的なもので隠した清流院・静音(ちびっこ残念忍者・d12721)が遠くを見るように目を細める。その瞬間に、口元まで上げたマフラー的なものが下がる。
     無意識にまた上げる。そして下がる。びっくりするくらい小さくて小学生に間違えられるレベルのせいなのかはわからないが、その姿は非常に愛らしい。
     静音の言葉に顔を上げた神宮寺・刹那(狼狐・d14143)が思案するような表情をみせる。
    「高速で移動する自転車ですか、アンブレイカブルなら相当速いと思いますけど自転車は壊れたりしないのですかね?」
     人間離れしている身体能力を耐えられるのであれば、特別製の自転車なのかもしれないと刹那は思う。シャドウボクシングをして気を引いてみようと頑張っていたミリア・シェルテッド(中学生キジトラ猫・d01735)が、自転車という言葉に反応した。
    「……そういえば、自転車の全力疾走って時速六十キロくらい出たりしませんかね……?」
     もし出たとしたら、シャドウボクシングする自分は見えるのだろうかと不安になる。しかし残念なことに、どう見てもシャドウボクシングと言うより盆踊りになっている。
     見よう見まねのせいか、動きが微妙に違うのだった。
    「来たな」
     拳を作って、自らの手のひらで受け止めた須賀・隆漸(双極単投・d01953)の視界に自転車を走らせる姿が映る。そして映ったと思いきや、どんどん大きくなる。
    「やはり特別製……」
     砂埃を上げながら暴走するように走ってくる自転車を見て、刹那は呟いた。持てる程度の大きさと重さの巨大な看板を隆漸が持ち上げた。
     そこには堂々と通行止めと記載されている。
    「喰霊解放、白叡!」
     すぐに力を解放した龍月・美里(喰霊使い・d19905)の背中から霊犬の白叡が飛び出す。そして自転車目掛けてガトリングを連射する。
    「この先には行かせない……勝負」
     楽しい場所であるお祭りを惨劇の舞台にはさせないと、美里は心の中で強く誓う。連射によってタイヤの方向が定まらなくなったのか、スピードはそのままに蛇行運転が始まる。
     土手に隠れていた齋藤・灯花(麒麟児・d16152)が待ってましたとばかりに飛び出した。狙いは一つ。
     自転車の車輪の間に槍を突っ込めば止まるかもしれない。
    「ヒーローのとーじょーです!」
     大きな声と一緒に、愛用の妖の槍と思い切り穿つ。
    「むっ!?」
     横から来た灯花に一騎の瞳が見開かれる。動くのと同時に大量の汗が飛び散る。
    「小細工無しのぶつかり合い、止めれるか止めれないか、試してみましょうか」
     横に気を取られながら突っ込んでくる自転車を前に、刹那が武器を握る手に力を入れ直す。そして、軽やかに地を蹴った。
     超弩級の一撃を、迷うことなく一騎に振り下ろす。殺気に気づいた一騎が、飛び上がった。
     運転手を失った自転車が、スピードに耐えられないというように飛び跳ねて土手を転がる。一騎はと言うと、刹那の頭上を飛び越えて走ってでもお祭りに向かいそうな勢いを見せる。
     そんな一騎に紘疾が突っ込んだ。
    「何勘違いしてんのか知らねぇけど、祭りは格闘じゃなくね? バカなのか?」
     言葉で挑発しつつ、雷を拳に宿して飛び上がりながらアッパーカートを繰り出した。拳はしっかり一騎に当たった。
     けれど思った程の手応えを感じられなかったことに、紘疾から気怠そうなため息が漏れる。命をかけた戦いに魅せられ勝てない相手と戦うのが好きな紘疾だが、スロースターターでもある。
     仰け反った体でそのまま一回転した一騎が、綺麗に着地する。大量の汗を撒き散らしながら。
    「……うぅ、触りたくない、殲術道具も近づけたくない」
     飛び散りまくる汗を見たミリアは涙目になっている。というか、もう逃げたそうだ。
     そんなミリアが必死に我慢をするのは、守るべき命のためなのだった。

    ●陽射しの下で……
    「そんなに慌ててどこに向かうでござるか?」
     マフラー的なものを上げながら、未だにお祭りに向かうことに夢中になっている一騎に静音が声をかける。紘疾が手応えがないと感じたのと同じく、まだ一騎にしてはお祭りという格闘の方が気になっている。
    「この先への軽車両、並びに祭りの趣旨を理解していない者の侵入は禁止とさせてもらうぞ!」
     一歩も通さないと言うように、持っていた看板を地面に突き刺した。重さを感じて、一騎の瞳が面白いものを見つけたように開かれる。
     汗をすごくかくことになりそうだと持参してきた手ぬぐいを、灯花は豆絞りにして頭に巻きつける。
    「あんしんしてください。灯花たちは、つよいですから!」
     びしっと決めた灯花に一騎が視線を向ける。
    「強いか……」
     自分たちは強いと言い切る灼滅者たちにさらに興味が湧いてきたのか、順番に姿を見つめていく。
    「戦いを求めたいのでしたら、私たちがお相手しますよ」
     祭りよりも楽しいバトルを始めましょうと緋沙が構えた。同じく隙なく構えていた静音の体が微かに沈む。
    「お主、かなりの使い手と見受けるでござる。であれば……」
     手合わせを所望致す! と声を出すのと同時に駆け出した。シールドを出現させ、一騎に殴りかかる。
     紘疾に続いて、静音の攻撃を受けた一騎が少し思案するように首を振った。見事に飛び散る汗。
     慌てて、距離を取るように飛び下がった静音が恐ろしいものを見る目で一騎を見る。
    「本来、夏場の汗というものは輝くものにござろうが……」
     一騎の汗は不思議とそう感じさせない。正直、かかりたくないと思うのが当然だった。
    「格闘前に一汗かくのもまた一興か……よし、手合わせしてやろう!」
     ここで一汗というより、もう一汗以上かいている一騎だ。では行くぞと言うように構えた瞬間、紘疾の目の前に一騎がいた。
     鍛え上げられた超硬度な拳が紘疾の体を吹き飛ばす。その衝撃にくらっとした紘疾だったが、土手を転がる前に何とか体勢を立て直す。
     舌打ちした紘疾がそのまま一騎に向かっていく。それに合わせてミリアが漆黒の弾丸を一騎に放つ。
     なぜかミリアの片手には日傘が握られている。日に焼けたくないと言いながら、防水スプレーを必死にかけている。
     漆黒の弾丸を避けた一騎に紘疾の一撃が決まる。そして間髪開けずにシールドを出現させた隆漸が一騎を殴った。
     二人の攻撃に一歩、後ろに下がった一騎の顔に笑みが広がる。そんな一騎に美里が飛びかかる。武器に影を宿して殴りつけた。
     同時に白叡も飛びかかる。しかしその体からは想像できない速さで、一騎が後ろに飛び下がり攻撃を避けた。

    ●お祭りよりも盛り上げて!
    「わっしょーい! わっしょーい!」
     精一杯に声を上げて、それこそお祭りのように盛り上げようと灯花がする。戦いだけでなく、一騎を楽しませようとする計らいだった。
     そして片腕を異形巨大化させて一騎を殴りつけた。その衝撃に一騎の体が軽く後方に飛ぶ。
     地面に足が着く前に、刹那がふわりと一騎の目の前に現れる。避ける隙を与えずに、超弩級の一撃を振り下ろした。
     直撃した一騎の体が土手に転がる。一騎は転がる反動を使って、そのまま立ち上がった。その間に、緋沙がシールドを広げ味方を防御する。
    「楽しめそうだ」
     爽やかな笑顔を浮かべた一騎だが、転がったのと汗のせいでいろいろくっついている。正直、汚い。
     嬉しそうな一騎の死角から隆漸が斬撃をくわえる。斬った手応えは確かにあると言うのに、一騎が弱まる気配はない。
    「この一撃を、食らいなさいー!」
     だっと地を蹴った緋沙の体が高速の動きで一騎の死角に回り込みながら、斬り裂いた。にやりと笑った一騎が刃をジグザグに変えて襲いかかる。
     力任せに静音の体を斬り刻む。
    「っ……!」
     あまりの衝撃に静音は息を飲む。けれど痛みを飛ばすように頭を振ると、まっすぐに一騎を睨みつける。
     忍びとはいついかなる状況にも耐え、主に尽くすのが宿命だと静音は心得ている。それゆえに、肉体を強靭とするのは必定のこと。
    「簡単に倒れるほど、甘い修練など積んでおらぬ!」
     確かな信念を持った静音が言い切り、耐え抜いてみせるとオーラを癒しの力に転換させる。揺るがない心に肉体とは違った強さを感じて一騎の瞳が輝く。
     それだけではたりないと言うように、ミリアが夜霧を展開させ傷を癒していく。
    「はぁー……」
     何度目かのため息をついて、紘疾が片腕を異形巨大化させる。そして一騎を殴りつけ吹っ飛ばした。だんだんと火がついてきたのか、手応えは最初の一撃とは比べ物にならない。
     一騎が体勢を立て直す前に美里のガトリングが連射される。同意に刹那が体内から噴出させた炎を武器に宿して叩きつける。
     ともかく小細工なしで、全力で攻撃を打ち込もうと刹那は次の手にすぐ備えるのだった。

    ●飛び散る汗
     一騎の超硬度な拳に打ち抜かれ、倒れそうになった紘疾が片手を地面につけて回避する。そして欠伸を噛み殺すように深呼吸して仕切り直す。
    「面白くなってきたな。その調子でもっと満足させてくれよ」
     強者を求める紘疾は負けて満足、勝ったらがっかりと思う。ようやく本調子と拳を握り、オーラを集束させた拳で一騎を連打する。
    「白叡、回復を紘疾に!」
     白叡が動くのと同時に、ミリアも再び夜霧を展開させる。紘疾の拳を避けるように後方に飛んだ一騎を静音のビームが襲う。さらに刹那が一騎を殴りつける。
     一緒に魔力を流し込み、体内から爆破させる。
    「グーでいきます!」
     揺らいだ一騎の体を灯花がグーで殴りつける。休む暇は与えないと言うように、美里の漆黒の弾丸が一騎を撃ち抜いた。
     一騎の死角から飛び出した緋沙が攻撃を仕掛ける。これを体を横に倒すことで避けた一騎が、そのまま緋沙に雷を宿した拳でアッパーカートする。
     あまりの衝撃に緋沙の体が飛ばされる。手加減してバトルを楽しもうとしていた緋沙だが、一騎には必要なかった。
     まりんも言っていた通り、実力だけは本当にあるのだ。そんな一騎に、隆漸が超硬度の拳を叩きつける。
     鍛え上げられた体の硬さを改めて隆漸は感じた。流れる汗が一騎の体をてからせる。
     汗まみれの格闘家……アンブレイカブルって変な人が多いんでしょうか。ミリアがそんな誤解をしてしまうのも仕方ない状況だ。
     出来る限り汗がかからないように気をつけなければと、再度認識しながら緋沙の傷を癒す。
     刃をジグザグにして迫った一騎が紘疾を斬り刻む。あまりにの苦痛に顔を歪めた紘疾だったが、自然と口元が笑みを浮かべてしまう。
     一騎は強い。オーラを癒しに転換させて自らの傷を癒しながら、紘疾はまだまだと言うように勢いよく起き上がる。
    「体が特別製と言われたら、信じてしまいそうですね?」
     冗談のように呟いた刹那が再び超弩級のひと振りをお見舞いするために前に出る。刹那と一騎のサイキックが正面からぶつかった。
     相殺された衝撃で刹那と一騎の体、両方が後方に吹き飛ぶ。お互いに見事に着地してみせた。
     握った武器からの重みに刹那の指が微かに痙攣する。対する一騎は笑みを深めただけだ。
    「この先には行かせない……」
     同じことを呟いた美里が、武器に影を宿し一騎に向かう。瞬時に白叡が駆け出した。
    「助太刀致す!」
     一騎をかく乱するように、静音がビームを放つ。同時に灯花もビームを放った。
    「ご当地会津そばビーム! 略して、灯花びーむっ!」
     どこをどう略したのかはとりあえず置いておいて、一騎に攻撃を加えていく。さらに緋沙が飛び出す。
     ビームに気を取られる一騎の死角に回り込みながら斬り裂く。揺らいだ体を美里が殴りつけた。
     何とか持ちこたえた一騎の死角からさらに隆漸が斬撃を与えるのだった。
    「むむっ!?」
     攻撃をくらった一騎がはっとしたときには、足元に黒い影が広がっている。咄嗟に飛び退いた一騎を影が口を開けて飲み込もうとする。
     あと少しで喰らいつくというところで、ミリアの影は一騎を逃してしまう。
    「これでどうだ?」
     影を避けた一騎に異形巨大化した紘疾の腕が迫る。殴られるのと同時に一騎の体が土手に叩きつけられる。
     一瞬の沈黙。
    「ふははははははは!」
     響いた大きな笑い声に、灼滅者たちは戸惑った。ゆっくりと起き上がった一騎が楽しそうに笑う。
     あれだけの攻撃を一気に受けたというのに、余裕そのもの。
    「久しぶりにいい汗をかいた!」
     満足と言うように、うんうんと頷きながら転がった自転車を拾いに行く。
    「もっと強くなったらまた戦おう!」
     爽やかに汗を大量に撒き散らしながら一気が土手を帰っていく。来た時も唐突なら、帰るときも唐突だ。
    「またいずれ、お手合わせしましょう!」
     一騎の背中に向かって緋沙が声を上げる。同じく去っていく一騎を見ていた隆漸はあることに気づいた。
    「……ぐは、汗臭っ!?」
     返り血ならぬ返り汗と、自分の汗でだくだくになっている。飛び散る汗で暑苦しく感じていたが、よく考えたら炎天下でこんな激しい運動をすれば汗をかくのが当たり前。
     おまけに柔術着を着ている隆漸は見た目からして臭いそうな気がしてくる。
    「……銭湯寄って帰るか」
     その言葉に灯花が反応する。何か汗でベトベトしてそうな気がしてたまらない。
    「もしくは、そのままお祭りのお神輿でも見に行きましょうか!」
     どっちにします? と言うようにみんなを振り返る。
     みんながお祭りに行くならついて行こうと思う美里だ。自分たちが守ったお祭りを眺めてみたい。
     けれど喋り方を知らない美里は言葉を止める。かちっと日傘を閉じたミリアから悲痛な声が漏れる。
     ばっちり汗がついている。どこまで汗を飛ばしたのかと聞きたいところだ。
    「大丈夫でござるか?」
     マフラー的なものを上げながら静音が首を傾げた。
     実際に特別製なのかどうか知りたかったと思いながら、一騎の自転車を刹那は見送る。
    「ふぁぁ……」
     その横で紘疾が柔和な表情に戻って欠伸するのだった。

    作者:奏蛍 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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