守れ! 乙女のハートチョコ

    作者:カンナミユ

     放課後、極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)は何気なく商店街を歩いていた。
     ほとんどの店でバレンタイン関係のものを販売しており、商店街はバレンタイン一色である。
    「あ、このチョコ可愛い~。こっちもいいな~」
     並べられた沢山のチョコを前に舞の目はきらきらと輝く。
    「いいよなぁ、チョコもらえるなんてさ」
     背後からひがみを含んだ声。振り返ると自分と同じくらいの少年達が言葉を交わしていた。
    「くっそー、羨ましいぜ」
    「ホントだよなー」
     チョコを貰う予定がないらしい3人組は歩きながら言葉を交わしているが、
    「あーあ、チョコ買い漁ってさ、チョコ渡せないようにできればなぁ~」
     一人がそんな事を口にした。
    「チョコを独占?! ムチャ言うなよ~」
    「そんな事したら狙われるっつーの!」
    「だ・よ・な!」
     遠慮のない大笑いを響かせ、買い漁りを口にした少年がにかっと笑い、言葉を続けた。
    「ま、狙われるっつーのは噂だから」
    「噂かよ!」
     ビシッと突っ込みを入れ、また笑う。
    (「……噂?」)
     その言葉に舞は思わず舞はその少年を見つめてしまう。少年達を目で追うが、話題はバレンタインから週刊誌の連載漫画で盛り上がっていた。
    (「何だか嫌な予感がするなあ……」)
     自慢の胸をぽよんと揺らし、舞は商店街を後にした。
      
    「バレンタイン、ね。俺には縁のないものだ」
     的中した舞の予測に結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は言いながら机に置いた資料を手に取った。
    「そうなの?」
    「相手はいないが、羨ましいとも爆発させたいとも思わんしな。……じゃ、説明をはじめよう」
     首を傾げる舞の言葉をさらりと流し、相馬は説明をはじめる。
     チョコがもらえない男達が話す愚痴に反応した女性達が流した噂が広まり、都市伝説と化した。
    「この都市伝説はチョコを買い漁ろうとすると現れ、襲ってくる」
    「チョコを買い漁らないと現れないの?」
     買い漁るとなれば山のようにチョコを買う事になる。首をかしげる舞の言葉に相馬は資料をめくった。
    「さすがにチョコを買い漁るには金銭的にも、物理的に無理だろうな」
     チョコを買い漁る必要はないらしい。どうやらこの都市伝説は買い漁ろうとするフリやそういった話題をするなど、とにかくチョコを独占しようとすれば現れるようだ。
     場所は駅前商店街。ほとんどの店舗でフェアを行っている。夕方という時間もあり、沢山の人が訪れている。
    「商店街の隣にある公園に移動するのもいいかもしれないな」
     資料をめくり、商店街の隣にある公園を指差しながら相馬は話した。
     現れるのはチョコホワイト、チョコピンク。名前の通り、白とピンクをそれぞれ基調としたお腹がチラリと見える可愛らしい魔法少女のような衣装に身を包む二人組の都市伝説である。
    「女性二人組かあ……」
     乙女のチョコを守る都市伝説である。可愛らしい女の子二人組を思い浮かべ、説明を聞いていた灼滅者達の一人が呟くが、エクスブレインの反応はない。
    「誰が女性だと言った」
    「……は?」
     無表情にぺらりと資料をめくり、相馬は言う。夢とロマンを打ち砕くその言葉に思わず口をぽかんと開いてしまう。
     説明によれば現れる都市伝説達は長身の体躯に筋肉隆々、腹は見事に割れた6パックス。格闘家の如く鍛え上げられた肉体を誇る野郎共だ。
    「夢もロマンもないね」
    「俺に言うな」
     金髪ポニーテールのチョコホワイトと茶髪ツインテールのチョコピンクという野郎二人だと聞き、舞もげっそりする。
     二人はハートのロッドを手に愛と魔法の力を駆使して襲ってくる。強さは灼滅者達と同じくらいだ。
    「バレンタイン前で忙しいとは思うが全員、頑張って欲しい」
     質問がない事を確認し、相馬は資料を閉じる。
     そして説明を聞いていた男性灼滅者達を見渡し、にやりと不敵な笑みを浮かべて言葉を続けた。
    「……カッコイイ所を見せる事ができれば、チョコをもらえるかもしれないからな」


    参加者
    アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)
    ミリア・シェルテッド(中学生キジトラ猫・d01735)
    ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)
    エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)
    極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)
    九葉・紫廉(ヤクサイカヅチ・d16186)
    雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)
    鈴鹿・美琴(異端のカタルシス・d20948)

    ■リプレイ

     商店街はバレンタイン一色に包まれていた。
    「よさそうなチョコが多くて迷うっすね」
     アプリコーゼ・トルテ(三下わんこ純情派・d00684)は言いながらわんこ尻尾を揺らし、色とりどりのチョコレートを眺める。
     今回、灼滅者達が戦うのは、チョコを独占しようとする輩を成敗する二人組の都市伝説だが……
    「バレンタイン前にチョコ買い漁るとかすごい迷惑なのはわかるけどさー。それを守るのが魔法少女服の筋骨隆々の野郎どもってどんな変態だよ……」
     ライドキャリバー・カゲロウを伴う九葉・紫廉(ヤクサイカヅチ・d16186)が言うように、相手は魔法少女服に身を包む筋骨隆々の野郎共である。
     可愛らしい衣装の都市伝説なのだから、それに見合う可愛らしい少女が妥当なのだが現実は甘くない。
    「全く、ただでさえバレンタインの準備で忙しいというのに都市伝説は際限なく沸いて、オマケにそれが変態と来たものだ……」
    「チョコを買い占めることが迷惑なのはわかるが、どうしてこんな都市伝説になったんだろうな……」
     げんなりするするヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253) に雪峰・響(雪風に潜む白兎・d19919)も頷き言葉を交わす。変態が絡む以上、きっちり倒しておかなければ。
    「よっしゃーこの調子で全部買い占めてやるぜヒャッハァ!」
     大量のチョコを抱えた紫廉はテンション高めにチョコを買いまくっている。
     チョコを買い占める輩を成敗する都市伝説達、という事で灼滅者達はチョコを買い込み彼等を呼び出そうとしているのだ。
    「この商店街のチョコを駆逐する勢いで買い占めて巨大チョコを作るわ!」
     豊満な胸をチョコが入った袋で押さえながら、エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)は歩き、
    「じゃあチョコを買い占めて私達だけで食べちゃおう♪」
     自慢の胸をビキニに包み強調する極楽鳥・舞(艶灼姫・d11898)もチョコを抱えながら戦闘場所である公園までのルートを復習する。
     その公園ではミリア・シェルテッド(中学生キジトラ猫・d01735)とエイティーンを使う鈴鹿・美琴(異端のカタルシス・d20948)が待機していた。
    「変態にチョコか……無くならん組合せだな……」
     美琴は言いながら頭を押さえる。今回の敵は『魔法少女の格好をしたガチムチ野郎』というだけで変態ではないのだが……。
     そんな彼女と共に物影に隠れるミリアはエクスブレインの言葉を思い出す。
    (「バレンタインは……じ、女子が全員忙しいなんて思い込みですよー」)
     どうやら忙しくないミリアはそのまま泣きじゃくりそうになり――ふと、恐ろしい光景を目の当たりにした。
     

    「ぎゃーす変態!」
     豊かな胸を派手に揺らすエルファシアと舞を先頭に、仲間達が全力ダッシュでやって来るではないか。
     大量のチョコを抱える仲間達の後ろには可愛らしい格好の、可愛らしくない男が二人。
    「どこへ行く、お前達!」
    「こっちだよ♪」
    「ええい、待たぬか!」
    「誰が待つか!」
     盛大に胸を揺らす舞と紫廉の言葉に挑発され、恐ろしい形相で追いかけてくる異様な二人はどう見ても都市伝説だろう。
     ミリア、美琴と合流し、現れた都市伝説二人を公園まで誘導できた。響とヴァイスは被害が出ないよう殺界形成を展開させる。
     強襲できないかと美琴は武器を構えるが、
    「チョコを独占しようとする悪党共よ」
    「我等愛の戦士が成敗す」
     突然の声。振り向くといつの間にかジャングルジムの上にあの野郎二人が立っているではないか。
    「チョコピンク!」
    「チョコホワイト!」
    「「見・参」」
     キュピーン♪
     可愛いキメポーズをとると、ハートのエフェクトが散った。
    「魔法少女も、たくましい男の子も好きだけど、これは……」
     雄々しい姿に舞は呟く。
     本来ならば可愛い女の子がやるべきだ。なのに目の前には威圧するように可愛らしいポーズをとる野郎二人。しかも金髪ポニーテールに白、茶髪ツインテールにピンクの魔法少女衣装ときたもんだ。チラリと見える6パックスの腹筋が眩しすぎる。
    「どうしてこうなった……」
    「あんなのが一人だけでも目の毒なのに、二人もいるとは恐ろしいな」
     魔法少女ならぬ魔法野郎二人を前に美琴と響はげっそりし、余りの姿の酷さにヴァイスは吐き気を催してしまう。
     が、ここで負けては灼滅者の名が廃る。
    「魔法少女はかくあるべきというものをみせてやるっす」
    「いくぜ! 変・身!」
     アプリコーゼがマジカルなステッキを振りかざすと紫廉と共にキラキラした背景でくるくる回りながら全身ギリギリぼかした虹色シルエットに変わる。
     キラーン♪
     効果音と共にフリフリミニスカ衣装に帽子とロングジャケット姿のアプリコーゼとバレンタインフォーム称した全身チョコ塗れならぬカレー塗れの紫廉が負けじと可愛いポーズを決めると、
    「私も負けないよ! いぐにっしょん!」
     胸が揺れるほどの勢いでスレイヤーカードを手に声を上げ、さすがに変身はしないが鈍器のような妖の槍と無慈悲なマテリアルロッドをエルファシアはぶん、と構えた。
    「(あ、あの……ダンボール)」
    「あ、ああ」
     小声で囁くミリアに服を引かれ、思い出したようにヴァイスは反応する。戦闘中も何かに隠れていたいという彼女に頼まれ、商店街からダンボールを分けてもらう事になったのだが……
    「聞いて回ったのだが、それしかなかったのだ」
     すまん、と申し訳なさそうな声。
     彼女の手には頭がすっぽり入るくらいのダンボール。完全に隠れる事はできないがミリアはそれを受け取る。
    「お前達は目に毒だ、消えてもらおう」
     ジャングルジムから降りた都市伝説を前に美琴は言い放つとしゃん、と日本刀を抜くと地を蹴った。
     

     がづん!
     ホワイトが手にする可愛らしいロッドと日本刀の刃が激しく打ち合い、火花を散らす。
    「良い太刀筋だ」
     感心するように言うとぶん、と払うと美琴も一歩引く。
    「私達もいくよっ♪」
    「おっけー! 無慈悲なフォースブ……」
     ガトリングガンを手に弾丸をばら撒く舞に続くエルファシアはロッドを構えるがフォースブレイクを使えない事を思い出し、そのまま拳を振り上げた。
    「閃光百裂拳!」
     連撃を拳を腕で防ぐホワイトに紫廉がカゲロウと共に死角に回りむと、
    「ところでお主」
    「何だよ」
     ホワイトが真面目な顔で話しかけてきた。収束させた闘気で障壁を形成するマンゴーシュを鍛え抜かれた腕で受け止められ、カゲロウの攻撃もかする程度のダメージしか与えられずに眉をひそめる紫廉へ更に言い放つ。
    「その格好、恥ずかしくないのか?」
     お前に言われたくないんですが。
     言い返すより早くホワイトの目がカッと見開かれると、
    「ラブ・ビーム!」
    「ラブ・ハリケーン!」
     恐ろしい目力と共にビームが、次いでピンクのハートロッドから竜巻が生み出されると灼滅者達を襲う。
    「私を無視なんてさせないよ♪」
     竜巻を前に服が裂けるのを構わず舞は飛び出し攻撃を防ぐと紫廉も服が盛大に破けた。
     その衝撃でカレーが飛び散りとてもとても表現できない状態に陥り恥らいつつ、飛び散ったカレーをもったいないとなめとったが、詳細な描写は文字数の都合でカットした。
    「大丈夫、ですか?」
     ヴァイスがブラックフォームを使う中、ダンボールで体を隠すようにしながらミリアは仲間達の傷を癒す。
    「あっしもいくっすよ!」
     両手持ちのステッキを敵に向けてアプリコーゼは構え、地面に描いた光の魔法陣からミサイルを繰り出すと、響も影を操り斬りかかった。
    「なかなかやりおるな」
     攻撃を受け多少はダメージを受けたホワイトだがまだ余裕のようだ。
    「我等、愛の戦士。負ける訳にはいかぬ」
    「私達だって負けないよ♪」
     魔法野郎二人に舞が言い放つと武器を手に灼滅者達は再び攻撃を開始した。
     こうして都市伝説と灼滅者達の戦いの火蓋は切って落とされた訳だが、戦いは激しく攻防を極めた。
     可愛らしいポーズをきめ、可愛らしい技名を言いながら放たれるどぎつい攻撃を灼滅者達は受け、流し、そして防ぎ戦い続けた。
    「もう、せっかくの服がビリビリだよ!」
     攻撃を受け続けた舞は胸とビキニはかろうじて守っているが、マントやホットパンツは所々が破け、際どい状態である。ダンボール越しにちらりと見てしまったミリアは思わず赤面してしまう。
    「名誉の勲章だな!」
    「ディフェンダー冥利ってやつ?」
    「嬉しくないよ~」
     同様に攻撃を受け上半身がヤバイ紫廉と牛柄ビキニがアウト寸前のエルファシアから声をかけられ、胸をガトリングガンで守りながら舞は言い返す。
    「それにしても本当に油断ならん相手だ」
     武器を手に言う美琴の言葉に響は頷く。灼滅者達の攻撃を受け、それでも戦い続ける男二人に視線を向けると標的をヴァイスに定めたようだった。
    「チョコを買い占める悪党め、食らえ! ラブパワー放出!」
    「ラブ・ダイナミック!」
     ディフェンダー勢が食い止めようとするが間に合わない。
    「……っ!」
     武器を構え防ごうとするが全てを防ぐ事は不可能だった。攻撃に黒衣が裂け、ヴァイスは一瞬でギリギリアウト寸前になる。
     次の瞬間、
    「……こ、この……ド変態共があぁぁぁ――ッ!!」
     灼滅者達は見てはいけないものを見てしまった。
     クールで沈着冷静なその顔が地獄の悪鬼さえ逃げ出す形相に変わると同時に虚空ノ幻を体に纏い、高速の連撃がホワイトの腹に叩き込まれたのだ。
     さすがのホワイトもそれを避ける事はできなかった。腹を押さえ、ぐらりと体がよろめく。
    「あ、あとちょっと、です」
     ダンボールで顔を隠しつつ仲間を癒すミリアが言うと、
    「いくっすよ! 響さん」
     アプリコーゼは飛び出すとマジカルなステッキを振りかざし魔法(物理)を叩き込むと、続く響の放った強酸性の液体がその体を服ごと腐食させた。
    (「……あ、これはまずいか?」)
     純白の衣装が溶け、引き締まる筋肉を目にした響きは内心で違う業を使えばよかったと思ってしまったが、
    「ぬ、ぬおおおおぉぉぉぉ……!!」
     二人の攻撃が致命傷となったようだ。ホワイトはうめきながらハートを散らし、消えていった。
    「どうっすか、魔法少女はかわいらしくりりしくあるものなんっす」
    「あとはピンクだけだな」
     えへんと胸を張りアプリコーゼが言うと肌を隠そうと苦戦するヴァイスもバベルブレイカー・ガネットを構えた。
    「ホワイトが逝ったか……だが、我は負けぬ!」
     息つく暇さえ与えぬ灼滅者達の攻撃をさばき、ピンクは威圧するような声を上げると、ハートロッドを振り上げた。
     相棒を失い一人となった都市伝説と灼滅者達の戦いはそう長くは続かない。回復を試みるが受けるダメージがそれを上回り、ピンクは受けた攻撃に顔をしかめるがそれでも戦いをやめる事はなかった。
     チョコを守る為、恋する乙女を守る為。
    「焼きチョコもありかも♪」
    「私は焼肉がいいなあ」
     繰り出された槍と炎を腕で庇うピンクを目に舞とエルファシアは言葉を交わす。そこへ紫廉が拳を叩き込むとカゲロウの掃射をまともに受け、その身がぐらりとよろめいた。体力も残り少ないだろう。
     回復に専念していたミリアもダンボールで隠れながら仲間達と畳み掛けるように攻撃する。斬りつけられ、鍛え抜かれた腕や足からだらだらと血が流れた。
    「目に毒だ、一片も残らず消え失せろ!」
     ざん!
     血を流すピンクに鋭い一閃。手応えを感じ刀を一気に薙ぐと目の前に立つ巨体の体がざくりと裂け、血が服を赤く染め上げるとがくりと膝を突く。
     致命傷に息も絶え絶えのピンクだったが、口から流れる血を拭いよろりと立ち上がる。満足気な表情を浮かべ、ステッキを天にかざすとステッキの先端のハートがくるくると回りだした。
    「良き、戦いであった……」
     満足気な声。
     仁王立ちするピンクの姿がぼんやりと薄くなり、ハートを撒き散らしながら消えていった。
     

     こうして変態……いや、都市伝説は灼滅者達の手により灼滅された。
    「いやな相手だったっす。せっかくだからもう一度チョコレートみにいくっすかねー」
     戦いで乱れた公園を直し終えたアプリコーゼは言いながら帽子のずれを直す。呼び出すのに物色していたものの、買う素振りをしただけでチョコは買っていないのだ。
    「自分用に買って帰るか……」
    「オレもさっきの店でチョコを買って帰ろうかな」
     彼女の言葉に美琴と響が反応するとアプリコーゼはにかっと笑う。
    「響さんもチョコ買うっすか?」
    「……いや、買う素振りをしただけだから買っていった方がいいと思って」
    「チョコ好きなんすか?」
    「……そ、そういう訳じゃ」
    「好きなのか」
     二人に問われ、淡々とうろたえ否定するがバレバレである。
     そんな響の目の前に可愛らしい包みが現れた。
    「ちょっと早いけど、はい♪」
     にこりと微笑む舞から手渡され、響は礼を言う。
    「少ないけど、義理チョコ&友チョコだよ♪」
     紙袋から取り出し、言いながら舞は仲間達にチョコを手渡した。
    「私はバレンタインより焼肉のほうが嬉しいわね! でもありがと!」
    「ありがとう、舞さん」
     エルファシアは自分用に買っていた高そうなチョコをもりもり食べながら礼を言い、ミリアや仲間達も礼を言う。
     ふと、ミリアの視線がちらりと紫廉に向いた。
     舞やエルファシア、ヴァイス同様に都市伝説達の攻撃を受け、所々破けているものの、ギリギリアウト寸前の彼女達よりまだマシな状態であった。あくまで『まだマシ』であるが。
    「実は今回の俺の行動は友人に言われて仕方なくやっただけなんだ。普段の俺はごく普通の好青年ですよ?」
     などと言い訳をする紫廉だったが、そうだとしてもノリノリでそんな格好やあんな行動を取るごく普通の好青年がいるのだろうか。
     ――と。
     ぶちっ。
    「あ」
     紫廉が動いた拍子にマジカルコスのほつれが広がり、ばさりと落ちた。ギリギリでもアウトでもなかったその衣装は一発アウトである。
    「あ、いや、その、これは不可抗力ってヤツで……」
    「…………!!」
     うろたえる紫廉に光より速いヴァイスの拳が飛ぶ。
     その光景を見た灼滅者達は後に語る。その姿、将に鬼神の如き形相と姿であったと……。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年2月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ