修学旅行2014~琉球衣装で過ごす時間

    作者:那珂川未来

     武蔵坂学園の修学旅行は、毎年6月に行われます。
     今年の修学旅行は、6月24日から6月27日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
     また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。

     修学旅行の行き先は沖縄です。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     
     
    「とうとう来たね!」
     生まれて初めての沖縄と、修学旅行というイベントに、レキ・アヌン(冥府の髭・dn0073)はすっかり浮かれた様子。修学旅行のしおりをぱらりとめくり、何処へ行こうかと、みんなでわいわい。
    「ねーねー。僕ここに行ってみたいな!」
     普段から民族衣装を着用している彼女らしいと言いますか。レキが得に気になったのは、沖縄観光テーマーパークにて、琉球貸衣装のコーナー。
     琉球王国時代に高貴な身分の方たちが着ていた、色鮮やかな本格琉装。赤や黄色、ピンクにブルー。花や鳥、独特の柄が美しい。
     そんな貸衣装を着たまま、琉球古民家が並ぶ園内を一時間自由に散策できるうえ、お写真も撮ってくれるので、とってもいい思い出になること間違いなし。園内で冷たいスイーツを食べたりしながら歩いても、楽しいはず。
    「僕は、この白地の衣装着てみたい」
     見知らぬ衣装の色合いに、レキじゃなくてもときめくひとは、多いはず。
     現地ならではの空気と潮の香りの中、遥かな時と繋がったような気分になれるかも。
     馴染みない文化に触れる機会はなかなかないから。折角の旅行だし、めいっぱい楽しみたいと。
    「良かったら、一緒に着ない?」
     
     普段とは違う景色の中、伝統衣装を纏い、一味違う時間を楽しみませんか?


    ■リプレイ

     琉球王国時代の華やかな色の衣装が、ずらりと並んでいて。
     赤や黄、青や白。沖縄の自然と歴史が表れた、どこかエキゾチックで、どこか懐かしい。
     黒地に金刺繍の流装纏い、千明は鏡の前でくるっ。シックな色合いも似合うなんて、自画自賛していたら、彩り鮮やかな婚礼琉球衣装に身を包んだ白雪が。
     可愛らしさに、千明は目をぱちぱち。いつもと違ったカッコよさに、白雪もどきどき。互いにほんわりと微笑みあって。
    「毎日が一番かわいい、ね」
    「お兄ちゃんだって、毎日が一番ステキだよ」
    「せっかくだし着替えた姿は写真に残そう」
    「あ、じゃあ白雪、フォトウェディングって知ってる?」
    「それじゃ、今日はわたしがお兄ちゃんのお嫁さんだね」
     婚礼衣装で『ごっこ』だけど。大切な思い出、帰ったら飾ろうね。

    「しかし良くもまぁ着る気になったな?」
     婚期が云々言いながら断ると思っていただけに。黙っていると絵になる一枚に縁が漏らしたら、
    「よかったわね? 縁さんも婚期遅れて女遊びできるじゃない」
     螢はにっこり微笑みながら容赦ない物理攻撃。ぷるぷる縁さん!
     庭園の中、この写真で妹達を驚かそうか、なんて2人でまた悪戯を考えたり。
    「ま、いつかはこういうのが着れる相手がお互いに見つけられたらいいな」
    「私も一応女性である以上一度は着てみたかったし……今は縁さんで我慢してあげる」
     螢はたっぷりの微笑と一緒に、パフェをすくって。

    「えらい煌びやかな衣装やね」
    「見るからにとても鮮やかで、気品があって、華がありますね」
     夕霧はこれを着る自分想像してちょっとくすぐったそうにしていて。昭乃はどれを着ようか子どものようにワクワク。
    「皆で一緒に結ってもらおうよ!」
     赤の流装着て見せて、朝乃は一つ提案。皆テンションアップ♪
    「やっぱり女物のほうが色鮮やかで琉球衣装って感じよねえ」
     しばし男性用を見ていた伊澄だったけど、女性用の華やかさに目を奪われていたら、朝乃と昭乃の視線。
    「って、伊澄ちゃんもそれ着るんかい!」
     夕霧が笑顔で、無意識かつ無邪気に煽ってみる!
     普段女装には興味ない伊澄ですが。こういう衣装ならまた別かも――というわけで。
    「あたしもみんなとお揃いにしよ~っと♪」
     ルンルンで更衣室へ!
     まるでみんなでお姫様になったような気分。
    「わあ、みんなとっても綺麗。……あ、うん、伊澄くんも含めてね。男の子なのにこういう格好が映えるのはすごいなあ」
     詩月が素直に感心していたら、女だと思っていたスタッフさんの、驚く顔に一同沸いた!
     華やか衣装に、可愛いスイーツ。カフェテラスにて、お茶会始まって。
    「朝乃ちゃん、もし良かったら別々の買って交換こしよう? 夕霧ちゃんと、昭乃ちゃんと、伊澄くんも良かったら一緒に」
     やっぱり、皆で分け合った方が楽しさも美味しさも増すよね。
    「これ、甘くて美味しいです。お茶も美味しい」
     折角だから、家族やクラブの皆さんにお土産に決める昭乃。
     異国の香りの中、ゆったりとした時間。最後は、写真に切り取る思い出。

    「はいっ!!!」
     鮮やかな赤の流装纏い、オリキアくるりと一回転。
    「どうおー? 似合ってるー?」
    「似合ってる!! おりたん超似合ってるよぉ!!」
     周りをくるくるとアラウンドしているオリキア。人は興奮しつつ、ぱっしゃぱしゃ写真を撮りまくって。
     アイス食べよーと、日傘をくるっと肩に乗せ、オリキアしゃなりしゃなりとしつつ園内へ。貸衣装にアイスがつかないかハラハラ人さん!
     最後にお写真。せーのっと二人は息合わせ、
    「「シーサーのポーズ!!」」
     肩寄せ合い、がおー。

     周は赤、セレスは青の流装を纏って。
    「レキや周もよく似合ってる。私は――服に着られているような気がする……!」
     人の姿に自信がないというのもあるらしく、恥かしそうにしているセレスへ。
    「沖縄の海みたいに綺麗ですよっ」
     周さんも太陽みたいで、お二人ともお似合いですーとレキ。
    「やっぱり民族衣装ってのはいいよなー」
     周はご機嫌な様子で。考古学部に通っているからか、その土地の特徴に応じた発展の仕方や和服との共通点に興味もいっぱい。
     カメラ片手に周は、
    「せっかくの沖縄だし、撮らないと損だろう」
    「そうだな、あの辺りなんてどうだろう」
     切り取った風景は、赤い花と青い海、沖縄の香りが滲む場所。

    「鮮やかな色……素敵」
     黄色の流装身に纏い、着物とはまた違う雰囲気に、依沙はどきどき。婚礼衣装だから余計なのか。
    「依沙ちゃん、琉球衣装も似合ってるぜ!」
     着付けを終えた涼が入ってくるなり絶賛して。一目見てテンションアップ!
    「……涼さんも、いつも以上に素敵ですよ?」
     涼がクールに着こなす姿に、依沙も高揚。お写真一枚目は普通に片寄せて。でも二枚目は――
    「……誓いのキス、しよう」
     真剣な声音だけど、にこやかに涼が問えば。恥かしげに、そっと顔をあげる依沙へ、涼は優しく唇重ね。
     二人の幸せそうな照れ笑いは、永遠の瞬間へ。

    「双調。後ろ向いて」
     燐は慣れた手つきで、双調の髪を結いあげて。
    「これでよし。やっぱり似合い過ぎるよね」
    「ええ、こういう衣装は着慣れていますので」
     壮麗な佇まいに微笑む燐。褒め言葉もそうだけど燐直々に着付けしてもらって、双調は少し照れたようで。
    「空凜も来れれば良かったですね。素敵すぎる双調の姿見れたのに」
    「燐さんも、お綺麗ですよ。紫とか黒を着てらっしゃるのは良く見ますが、燐さんの瞳の色も赤なので、赤もなかなか」
     了承もあったから。双調と燐、腕を組んで寄り添って。

     ゆまは、黄色地にオレンジの花柄、花笠でとっても華やか。心太は三司官で凛々しく。律はエイサー衣装で、男らしくキメてみた。
    「タイムスリップしたみたい」
    「不思議な気分ですよね」
     心太とゆま、テンション高めであっちにふらふらこっちにふらふら。
    (「なーんかこの二人、ド天然でふらふらしてっからな……」)
     目ぇ離さない様に気をつけねぇと――と律が思った傍から。
     忽然。
    「どこいったアイツらー!」
     探し回る律が通った後の店から、
    「うん、これ美味しいですね。ゆまのはどうです?」
    「美味しいよ? 食べる?」
     和気藹々、甘いもの頬張るゆまと心太。そして一人彷徨う律。タイムリミットで、お店に戻ってみたら。
    「もー! 何してたの、りっちゃん!」
    「あ、律兄さん。迷子になっちゃ駄目ですよ」
    「ちょっ……何で俺が怒られんのっ? 迷子はキミ達でしょー!」
     呆れる二人に、一人疲労感。

     髪を結い、ハイビスカスの髪飾りをあしらって。黄色の流装纏う律花を、凛々しい三司官姿で連れゆく春翔と叡。
     紅芋タルトにソフトクリーム。あれこれ迷っていた律花だけど。
    「よかったら三人別々の食べない? 交換とかどうかなって」
    「交換……俺は別に気にしないけど春翔が気にするんじゃないの? ソフトクリームだと間接にならね?」
    「間接!? あ、叡のバカ!」
     照れる律花が、からかう叡を叩く様を、春翔は少し笑って見ながら、
    「生憎二人を信用しているのでな。ところで、叡。いつもと喋り方が違うが――?」
    「気にしなさんな、寧ろこれが素だぜ」
     同じく信頼の証ってヤツだと口元を綻ばせる叡へ、春翔はそうかと頷いて。律花の頭を撫でて窘めつつ、
    「どれが食べたいのか決まったのか?」
     子供扱いされている感じがして、同じ様に背中をペシペシしながら拗ねた顔で。
    「いいわよ! 叡の分も春翔の分も食べちゃうんだからね!」
     望夜は鮮やかな赤の流装を纏って。対して朔夜は青系の三司官衣装にて。
    「どうかしら朔夜ちゃん、似合う?」
    「姉さん、毎度毎度言ってるけどちゃん付けは辞めてくれ」
    「ふふ、朔夜ちゃんはもちろん似合ってて、カッコイイわよ?」
    「……はいはい、衣装は似合ってるよ」
     綺麗に聞き流す望夜を、朔夜は、美人だし衣装も似合ってるんだが何故こう、中身が残念なのかと溜息。
     途中箱庭ラボの三人へ挨拶したりして。ゆるりと園内を見て回ればもう時間。
    「衣装を返さないと……ふふ、いっそのこと買っちゃおうかしら?」
    「……姉さん、いくらすると思ってるのそれ……」
     冗談と限らないのが怖い。

    「沖縄衣装でございますか、初めて着ますねー」
     普段は中華だけど、アジアンな衣装も興味津々。フィズィが鏡の前でくるりとしていたら、レキと陽桜がやってきて。
    「すごーい、琉装って、けっこー鮮やか、なんだね?」
     陽桜は目をキラキラ。写真を撮ろうというフィズィの提案に、ノリノリで陽桜とレキもお着替え開始。
    「ひお、この、ピンクの衣装がいいなー」
    「わ、似合うー」
     花笠被った陽桜を、レキ絶賛。
    「お互い普段特徴のある恰好な分、着替えると雰囲気かわりますねー」
    「ホントだねっ」
     フィズィとレキは、違う民族衣装でなんだか新鮮。
     色取り取りの衣装で並び、三人仲良く肩寄せてはいチーズ!
     私は流装なんて着ないわよ、なんて京香は言っていたけれど。人が引いたのを見計らい、こっそり着こんで、鏡の前でポーズをキメていたら、忘れ物で戻ってきたレキと目があって。京香は顔を真っ赤にしながら、
    「店員さんが絶対似合うから着てみてはって言うから仕方なく、仕方なくね!?」
     雄一は三司官衣装を纏って。意外に涼しくてビックリしつつ。
    「へー、和服だけど袴とか着流しとかそういうのとはやっぱり違うんだな。さすがは司官服」
     水鳥は鮮やかな色彩纏い、ハイビスカスの簪を挿して、日傘を手に。琉球風情に身を委ねれば、まるで王国時代に迷い込んだよう。
    「本当に異国みたいんですね……」
     一休みに、マンゴーのスムージーとパイナップルのパフェ。
     柚羽は赤い琉球衣装に袖を通して。
    「琉球衣装ってとても華やかで綺麗ですよね……」
     いつもとは違う服装になることにどきどきしていたけれど。日傘を手に、しゃりしゃりと道を歩きけば、見知らぬ世界に溶け込んだ様な気がして。昔の王族の人達も、この潮の香りのする空気を吸っていたのかなと思い馳せ。
    「わあ、とても美しい」
     大きな花の模様が付いた赤い衣装がとても華やかで綺麗で、エドヴァルドは早速袖を通させてもらったのですが。
    (「これ、女性物のようです……」)
     しかし容姿もさることながら、モデルのアルバイトをしているせいか堂に入っていて、誰も気づいていないけど。

     普段着以外は抵抗ある勇弥が拒否している姿を、をさくらえは涼しい顔であしらって。さくらえが男なんてまるで気付いていないスタッフさん。彼女さんと合わせるならと、勇弥へ勧める深緑の三司官衣装。
    「とりさん、すごく似合ってる!」
    「そ、そか、似合うか? ……あの、すんげー落ち着かねーんだけど」
     勇弥は照れ隠しに、冠とか触りつつ、琉球舞踊の琉装纏うさくらへの姿に、
    「さくらはまた本格的に似合ってるよな」
    「とりさんにそう言ってもらえると嬉しいよねぇ。それじゃ、折角だしこのまま散歩行こ、散歩♪」
     しばしフリーズ。困惑していたが、時間を楽しむことに気持を切り替えて。

    「俺は三司官衣装を着るとしよう」
    「……三司官衣装って言うんだね、これ」
    「うーむ、渋くていいのだが……」
     いち早く好みの色を見つけた松庵。そしてシックな色合いの衣装を物色している山吹のお隣で、无凱は多少のハメ外しもいいかと思うのだよと、眼鏡をきらーん!
    「何だか偉い人になった気分だよ」
     山吹は着付けをしてもらいながら振り返り、
    「皆は、どんな服を着――」
    「似合いますかねー?」
     扇子片手にはんなりと。スタッフさんのグッジョブと无凱の顔のつくりの良さ的な何かの合わせ技で、美人がそこに!
     似合っているのでコメントしづらい棒立ちの松庵。
    「……また、なんというか。個性的だね」
     山吹は柔らかな笑顔で返し。
    「まあ、ともあれだ」
     松庵はこほんと咳一つ。土産探しのついでに、沖縄文化でも学んでこようと。

     スタッフさんが選んだのは女物。とても綺麗ですねって褒められたぐらいにして。
    「……おかしい、どうしてこうなったんです?」
     更衣室から出てくるなり、複雑な顔をしている蘇芳。朗は顔を合わせるなり「綺麗だな」と褒めれば。
     嬉しいのは勿論なんだけど。思わず、見とれてなんてないんですからね! とか言って逃げたいくらいに。朗のかっこよさにぽーっとしちゃったりして。
     こんな場所で。こんな衣裳で。ゆっくりとした時間、まるで違う世界に転生したかのような。
    「ああ、なんと言うか。もし生まれかわって他の場所で出逢うとしても、またこうやって巡り逢いたいものだな」

    「よし。ひいか、結婚しよう! 今すぐ」
    「ええええっ!? いや、ちょっと待て、なに言ってんだよ!?」
     それが琉球婚礼衣装のことだと聞いたのは後から。
     綺麗な衣装だから着てみたいことは着てみたいひいかだけど。撮影の間中、顔真っ赤。
     そのまま異国情緒漂うカフェテラスへと。色とりどりのご当地のスイーツを並べて。
    「はい、ひいか。あーんして?」
    「あ、あーん……!?」
     笑顔でフルーツパフェを差し出す雪花、照れながらもひいかはあーん。
     もちろん雪花もひいかに「あーん」をして貰いたいから。おねだりに赤くなりながらも嬉しそうな顔でしてくれる。
     幸せいっぱい。

    「って沖田、さっき私と同じ三司官衣装を着ていたのにいつの間に女装を?」
     しかもこっちの方が似合うなんて一体どういう事なんだと孤影。
    「華やかさが足りないんだもん」
     黄色紅型に赤模様の着物を翻す直司。
    「そういえば、お二人は彼女の事をどう思っているのですか?」
     写真のあと園内を散策しながら、緋頼は何の気なしに。
    「大丈夫、私はヒナを愛してるから寂しい思いをさせないよ」
     ヒナのために危険を冒したことはあるけどと苦笑する孤影へ、あまり寂しがらせないように、と緋頼。
    「ボクも事情があって彼女は一人じゃないんだけれど。でもほら、それは好きで好きで離れられないからこうするしかなくて」
     直司も苦笑交じり。そんな緋頼は、と問えば。
    「何するか分からないので傍にいたいのです」
     寂しがり屋で他にも好きな人がいると公言して。とても物騒な人で時々かっこつけて。
     今はあの場所にいるその人を思い浮かべて。

    「はうぅ! やっぱり伝統の衣装は現地で着るに限る!」
    「すごく鮮やかな色にため息が出るなあ」
    「私は普段の気分と変えて、ピンクの衣装にチャレンジしてみようかな」
     眞白は朱色の琉装に花笠もチョイス。摘佳は色とりどりの衣装に見惚れ。黄色のもいいけど、せっかくの機会だしと花梨。
     初めて着るけれどこういう服も悪くないわねと、いの一番に着替え終わった鏡花が、鏡に姿を写しながら、
    「王族、士族が着ていたなんて私にぴったりじゃない」
    「ちょっと恥ずかしいね、ちゃんと似合うかな?」
     壱もエイサー衣装で沖縄堪能。
    「俺もエイサー衣装にしようかな。抱えた太鼓を叩くのって恰好よくね?」
     壱の格好を見て衣装を決めた南守。芯は更衣室へ入ってゆく姿を見送りつつ、
    「あれ、もうみんな着始めてる感じ? 早くない?」
     次々と更衣室に消えては出てくるクラスメイトに、え、マジ何しようと悩む芯。
    「僕は三司官の衣装にするよ」
    「私もそうしよう」
    「いつもは和服だけどこういうのもいいよね」
     渚緒と真も衣装を決めて。壱は残っている衣装を見ながら、「へーこっちは王様が着た服なんだ」
    「あ。丁度着てないし、俺それ着ようか?」
    「あっ、王様の帯結ぶの俺やってみたい!」
     芯が立候補したので、壱は着付け手伝いに挙手!
     シャーンと豪快にカーテンを開きながら、エイサー南守が現れて。
    「どうよこの……こ、小者感」
    「小者感って……自分で言ってて悲しくないかしら?」
    「ええい、言うな水月!」
     鏡花のツッコミに、言いながら南守が亜高速で振り返ったら、
    「ウチ、化粧とか髪ゆうんとか、こんな艶やかな衣装着るんも初めてじゃけぇ……」
     黄色の流装纏い、緊張の面持ちので出てきたハゼリ。似合ってるじゃんと口々に言われ、花笠でそっと口元を覆っている仕草がまた可愛い。
    「みんなとってもかわいい&カッコいい!」
    「よぉ似合っててお姫さんみたい。男子もなかなか様になっとるわ」
     眼福眼福と眞白。映画でも撮れそうやねとハゼリ。真も頷きながら、
    「女性陣はさすがに華やかですねェ……ってあれ、蔵人?!」
     どうやら蔵人は、スタッフに何故か女性用の琉球衣装を着せられ出て来たとか!
    「女性と間違われる程度には似合っている?」
     これはこれで思い出になるっちゃなるので、敢えて蔵人はそのまま楽しむことに。
    「痛い痛い痛いストップストップストップ!」
    「あ、やべ。締めすぎた?」
     壱さん帯ぐいーっ。芯さんぐえーっ。
    「……おや、王様が危機に瀕していらっしゃる」
     そして呑気な真さん!
    「よし、風宮を止めるぞ三蔵、そっちを持って……」
    「こっちを持てばいいんだね! せーの、えいっ!」
     南守と渚緒は果敢に救出に向かうんですけれども。
    「あれ? 余計締め上げてね?」
     逆効果!
    「お前等、全員、さっさと帯から手ぇ離せ!!」
     ぷるぷるしている姿を、眞白は遠巻きに、何故か遠巻きに見ながら、
    「……芯君無事……?」
    「灼滅者の身体は丈夫に出来ているからたぶん大丈夫でしょ」
    「楽しそうだから、いいんじゃないかしら……」
     鏡花はしれっと言い切って。王様の状況を見ながら、摘佳苦笑い。
     すったもんだの末、全員揃って記念撮影。
    「ね、折角来たんだから散策もいってこようよ!」
     シークワーサーアイスが食べてみたいなぁと、花梨はカフェテラスの方を指さして。
     皆でスイーツを手に、もう一枚パシャリ!

    「紫亜さん紫亜さん、やっぱり似合うね、素敵!」
     綺麗に着こなす紫亜に、珈薫は感激しどおしで。
    「……そうかしら」
     適当に返す紫亜だけれども、褒められて悪い気はしない。珈薫は本心で言ってくれるとわかるから。
     珈薫も、最近ちょっとだけ感情の動きがわかるようになってきた気がするから。嫌がられてないってわかる。
    「ねぇねぇ紫亜さん、私もどう? 似合う?」
     少しだけ紫亜の前に出てくるり。
    「……あまり、上手い事はいえないけど。その……カカオも似合ってる、わよ?」
     上手く言えなくても伝わる。珈薫の喜ぶ顔を見れば。

     髪は結わずに花飾り、鮮やかな赤の鳥模様の琉球衣装は、舜にとても馴染んでいて。
    「アキラの着物の超かわいいー!」
     紀里恵は綺麗な姿に目を輝かせ。
    「華やかだけど可愛い衣装だな」
     紀里恵の綺麗に結いあがった黒髪の、凛とした姿を見て舜はほぅ、とため息。
    「紀里恵、このアイス美味いよ!」
     スイーツに綺麗な衣装纏えば、気分盛り上がるのも当然。紀里恵は舜にあーんしてもらって。
    「ありがとー! 超美味しい! アタシのも食べてー?」
     お返しに舜もアイスをあーん。最後に満面の笑みで思い出一枚。

     色々な流装に、ましろは目移り。
    「キリカちゃん選んでくれる?」
    「良いよ? んじゃ、ましろにはー……コレ! 大人っぽくなりそーだしどーよ?」
     そして動きやすいタイプ、これ大事。
    「キリカちゃんには黄色とかどうだろ」
     ほんわかお花みたいで綺麗だと思うんだとましろ。
    「何だか自分じゃないみたいで、落ち着かないや」
    「ほらほら、ましろ、恥ずかしがらない!」
     後でましろの彼氏に見せるんだからとキリカはイジワルく笑って。
    「だめーっ」
     ぷくぅと頬膨らませる顔が可愛い!
     そんなほっぺも、アイスの言葉ですぐに元通り。

     着替えたドロシーは上機嫌。速攻新に見せに。
    「どうデスカ? 似合ってマスカ?」
     はにかむ様に尋ねれば、新は感動した様に、
    「……おぉ、似合うとは思ってたけど……すごい綺麗」
     ドロシーに抱きつかれたお写真撮ったせいか、火照りを冷やしにパフェを食べに。
    「ホラ、新、あーんしてクダサイ、あーん!」
    「……ちょっ、ドロシーさんその、人の目がですね……」
     言いつつもあーん♪
    「……はいドロシーあーん。 僕だけじゃなくてドロシーも恥ずかしがるといいよ!」
    「えへへ、新からもしてくれるんデスカ?」
     むしろ喜ぶドロシー前に。あまーい時間はゆっくりと進む。

    「女の子はやっぱり、赤とか黄色とか華やかな色が似合うんじゃないかしら。あー、でも落ち着いた青系も捨て難いわ」
    「朱梨はそれにしようかな……!」
     可愛い衣装があり過ぎて迷う春陽。一目惚れしたピンク色に花柄の衣装を手に朱梨ご機嫌。更衣室はとっても賑やか。
    「アイは婚礼衣装にするわ。花嫁さん♪」
     ハールも一緒ならよかったけど、今日は我慢。
    「春陽ちゃんは白系みたいだし、ここはそれ以外で……私は赤主体で選ぶわ」
     優希がシンプルな薄桃色の首里花倉織を起点にした流装を選ぶ傍ら、皆と被らない様に月子は赤主体で。
     すでに優輝は三司官衣装に着替えていて。黒地の衣装で凛々しげに。
    「華やかなもんだな」
     戻ってきた女性陣に眼福。
    「月子先輩はさすが大人の魅力って感じだし、春陽ちゃんもとっても美人さん。アイちゃんはすっごくすっごく愛らしいよう……!」
    「何時もと違うカンジで新鮮だし」
     朱梨と春陽も気分高揚、皆の可愛らしさにキュン!
     普段は帽子愛用の優希は、視野が広すぎて落ち着かないみたいだけど。傘と扇で顔を隠すように揃えるていると、奥ゆかしさが妙に強調されていて。
    「みんな、琉球の偉い人みたいね」
     優輝は本物の王様みたいよとアイレイン。
     記念撮影の後は、優輝の豆知識を楽しみつつスイーツ巡りへ。
    「学部のメンツで珈琲に合うものを探しながら色々巡ったんだよな。なんで、オススメとか教えるよー」
    「是非是非教えて貰いたいです!」
     喫茶店のマスターのお勧めなら間違いないと、朱梨たちの目はきらっきら☆
    「はい、あーん♪ アイレインちゃんの髪の色っぽいわね」
    「あーん♪」
     月子にあーんしてもらってご満悦のアイレイン。本人曰く、決して餌付けされているわけじゃないのよ?
    「甘いものが好きな子たちとぶくぶく茶を試に行くのもいいかもしれない」
     おっと、甘いのは付け合せのお菓子の方の話だったねと、優希は企み笑みを零してみたり。
     冷たいスイーツを片手に、エキゾチックでノスタルジーな風の中、本当にタイムスリップしたかのような時間は、あっという間に過ぎていって。
     日常に戻る時計の針は、もう其処まで来ているけれど。
     例え幕閉じようとも、思い出はきっと、色あせないから。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月27日
    難度:簡単
    参加:69人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 7
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