●慈愛と水晶の小夜曲
「……どうして、どうして放っておいてくれなかったの」
闇の中、小さく小さく響く声。
「大丈夫、私にはあなたが見えます。灼滅されて尚、残留思念として囚われているのですね」
「光なんていらない。音なんていらない」
「私は『慈愛のコルネリウス』。傷つき嘆く者を見捨てたりはしません」
「静かで安らかで、穏やかであればそれでいい。それでよかったのに。どうして邪魔をするの。どうして……!」
雲間から月が姿を現す。月の光は、ふたりの存在を阻害しない。
「……プレスター・ジョン。この哀れな少女をあなたの国に匿ってください」
コルネリウスの姿を模る何かが囁く。
少女の世界は、反転した。
●水晶と螺旋の輪舞曲
「慈愛のコルネリウスが、灼滅者の皆に倒されたダークネスの残留思念に力を与えて、どこかに送ろうとしているわ」
その残留思念は、かつて小鳥居・鞠花(高校生エクスブレイン・dn0083)自身が予測した事件に関わっていたダークネスだという。鞠花の表情には自然、複雑な感情が過る。
「残留思念に力なんてないはずよ。でも高位のダークネスなら、力を与える事も不可能ではないのかもしれないわ。そう、コルネリウスのようにね」
力を与えられし残留思念はすぐに事件を起こす事はない。だが放置する事が出来るわけもない。
だからコルネリウスが残留思念に呼びかけを行ったところに立ち入って、彼女の作戦妨害を行って欲しいのだと鞠花は告げた。
「慈愛のコルネリウスは強力なシャドウよ。現実世界に出てくることは出来ないわ。つまり今回の現場にいるコルネリウスも幻みたいな実体を持たない存在なの。戦闘力はないと言っていいでしょうね」
だが彼女は灼滅者に対し強い不信感を持っているらしい。戦闘も交渉も難しいだろう。
「問題はここから。コルネリウスによって力を与えられた残留思念は、自分を灼滅した灼滅者の皆を、……恨んでいるわ。得た力を用いて復讐を遂げようとする。戦闘は、避けられないでしょうね」
残留思念と言えど高位ダークネスに力を分け与えられているのだ。ダークネスに匹敵する戦闘力を持つため、油断は禁物よと鞠花は念を押す。
「残留思念について説明するわ。名前は『渕上・笙子』。元々はノーライフキングよ。もう一年くらい前になるかしら、不死王戦争の後の事件を覚えている?」
コルベインの水晶城にいたノーライフキング達が迷宮を作ろうとしていた一連の事件。笙子もそのノーライフキングの一人だ。足元まで届くほどの長い髪を大きな三つ編みにして、生命の彩宿さぬ緑色の瞳で静寂を見詰めていた少女。
眩しい光を、音を厭い、只管に静かな闇を好んでいた。
自らの居城を作り他者と世界を拒絶していたが、迷宮を踏破した灼滅者達によって灼滅された。
「性質は当時とほぼ変わっていないわ。ただコルネリウスの力を分け与えられたからかしら、能力は格段に上がっているから気を付けてね」
使用サイキックはエクソシスト相当のもの、契約の指輪のものを使いこなす。幼くとも屍王として存在していた相手、舐めてかかれば必ずや足元を掬われるだろう。
「場所についても触れておくわね。時間は夜。地盤沈下でもあったのかっていうくらい傾斜のある野原よ。灼滅者の皆なら気を付けて臨めば戦うのにも不自由はしないはず」
郊外という事もあって月明かりで人の判別はつくほど明るい。ただ念のため足場に気を付けておけば、足を取られる心配はないだろう。一般人が近づく心配もしなくていい。
「本当、慈愛のコルネリウスって何を考えてるのか掴みかねるってのが実情なのよね……」
説明資料のファイルを閉じ、鞠花は集まった顔ぶれに視線を走らせる。
とはいえ何もせず手をこまねいているわけにはいかない。信頼を籠め、鞠花は灼滅者達を送り出す。
「行ってらっしゃい、頼んだわよ!」
参加者 | |
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橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616) |
青柳・百合亞(一雫・d02507) |
霧凪・玖韻(刻異・d05318) |
中神・通(柔の道を歩む者・d09148) |
夢代・炬燵(こたつ部員・d13671) |
ラナーク・エンタイル(アウトロー・d14814) |
山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836) |
灯灯姫・ひみか(星降りシャララ・d23765) |
●闇から還る闇
「力を頂戴。わたしを滅ぼした、わたしの静寂を乱した灼滅者を倒す力を!」
「あなたの願いを叶えましょう。私の力を分け与えましょう。あなたの傷を少しでも癒す事が出来るのなら」
コルネリウスが闇夜に囁く。光の粒子がコルネリウスの指先から零れ出し虚空に注がれていく。すると光は輪郭を模り、残留思念でしかなかった屍王の少女が姿を現す。月光は少女の水晶の腕で煌き、存在をこの世に知らしめる。
灼滅者達が現場に駆け付けたのは、まさにその瞬間だった。
「……『私にはあなたが見えます』とはこういう事だったのですね」
コルネリウスとの交渉が難しければせめて話す事は出来ないかと考えていた灯灯姫・ひみか(星降りシャララ・d23765)が吐息を漏らす。屍王――渕上・笙子が顕在したその時には、コルネリウスは忽然と姿を消していた。
(「慈愛のコルネリウスさんは、いったいあと何人のダークネスさんに語りかけるつもりなんだろう……?」)
山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)の問いに答える者はいない。目の前にいるのは慈悲戴くシャドウではなく、再び現世に姿を現したノーライフキングだ。肩口から腕まで、水晶と化した少女は駆け付けた灼滅者達を見止めて不快感を顕にする。
「……また、なのね」
コルネリウスが何を企んでいるのか検討はつかない。
だが何をしようとしているのか分からなければ、阻止に回るだけだ。
「一度敗れたのでしょう。再度の灼滅、させていただきます」
ひみかの言葉に笙子は露骨に表情を歪ませる。暗澹とした復讐心を剥き出しにし眉根を寄せた。
「また邪魔をしに来たのね灼滅者。満ち渡るこの力を使う先は決まってる。――二度と貴方達に阻まれたりしない!」
残留思念を復活させる術に思案していたラナーク・エンタイル(アウトロー・d14814)の意識が、笙子の声によって現実に引き戻される。ラナーク自身は不死王戦争に興味は薄いが、予測の説明を受けてから少しばかり調べておいた。
調査結果を思い出し、細く息を吐く。
「外の世界を何も知らなかったノーライフキングで、結構強い、ってとこか。っていうかまたちいせえやつか……なんかやりづらいな……」
軽く髪を掻く彼の台詞に、瞼を伏せたのは青柳・百合亞(一雫・d02507)だ。それでも、これからを生きる自分達の妨げとなるのなら絶たねばならない。理解はしているがわだかまる感情、それを何と呼べばいいのだろうか。
非情だとわかっていても、やらなくてはならない時がある。だから決意を声に乗せ、呟いた。
「終わりの物語を始めましょう」
「終わるのは貴方達よ、勘違いしないで頂戴!」
反射的に返る笙子の声にも、霧凪・玖韻(刻異・d05318)は顔色ひとつ変えはしない。何も感じていないわけではないのだろうが、表面は何一つ揺るぎはしない。
「灼滅者を恨むのも解らなくはないが、今更だろう」
ダークネスが邪魔な灼滅者を狩るのも、癒しのために灼滅者がダークネスを狩るのも、玖韻からすればただの生存競争だ。否、根源が同一と考えるなら共食いに近いだろうか。
やや視線を外し、中神・通(柔の道を歩む者・d09148)はコルネリウスがいた場所を眺めていた。そこに最早存在していないとわかっていても、複雑な感情が過る。
「渕上が求めていた安らぎってのは、生きている間は絶対に得ることの出来ないものじゃ無いだろうか」
どんな思惑があれ、それを引きずり出したのは間違いなくコルネリウスだ。
「慈愛の名が泣くぜ」
「でも、ここで再生残留思念を倒せれば、目論見が何であれ達成されないわけだから、頑張るよ……」
小さく掌を握り、橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)は通と一緒に月を背に出来るよう、さりげなく歩を進める。
様々な思惑や感情が入り混じる中、夢代・炬燵(こたつ部員・d13671)は改めて笙子に向き直る。コルネリウスに幾つか言いたい事もあったが、それが出来ないのならばと口を開く。
「私たちが灼滅者です」
眼前にはっきりと突き付ける。
「再び灼滅に来ました」
それだけは揺るぎようのない真実だったから。
●螺旋の迷い仔
「the die tell you die!」
「御許に仕える事を赦したまえ……」
響いたのはラナークと瞬兵の解除コード、スレイヤーカードを展開させれば各々の殲術道具が月夜に顕在した。
「倒されるのはどちらのほうか、今度こそ教えてあげるわ!」
夜風に水晶の指先躍らせ、笙子は灼滅者達を迎撃する。呼び出した輝ける十字架を捉え、警戒していた通りかと玖韻は静かに目を眇める。
闇夜に降り注ぐ幾多もの光の雨。十字架が内部から無数の光線を放ち前衛陣を穿つ。あらかじめ立ち位置に配慮していた事が功を奏したか、撃ち抜かれた仲間の数は決して多くない。
だがそれが傷の浅さに繋がらないという事に気づき、ラナークは笙子に向かって言い捨てる。
「ったく、懲りねぇ奴だな」
俺たちもだけどな――呟くが早いか、ラナークは癒しの力を込めた矢で百合亞を射抜いた。矢が触れた個所から傷が埋まり、武器を阻害する力をも粉砕したと知ると百合亞は澄んだ思考で前を向く。
ひみかの霊犬・右舷も懸命に浄化の力を瞳に湛える。その頼もしい姿に頷いて、ひみかはマントを翻す。
「覚悟なさい!」
足元に注意を払いながらも迷わず地を蹴った。振り翳すは破邪の斬撃、白光が眩い残痕を笙子に与えると同時、己を護る強い力が漲る事がわかる。
「炬燵様!」
「はい、行きますよ、……、……!」
連携し前に出ようとする炬燵の足が少しもつれる。自分は走り回るほうではないから大丈夫だと思っていたが、戦場ではめまぐるしく立ち位置が変わるのが常だ。ずっと同じ場所にいる事が出来る者などいない。予測でも念のため足場に気を付けるべきだと告げられていた。
それでも転ばずにいたのは念のための注意を怠らなかったからだ。
段差のある戦場で足を取られては致命的な隙を生む事にもなりうる。前のめりになるところ、炬燵は気力で踏み止まる。勢いのままに片腕を異形巨大化させて力づくで殴りつける。水晶に僅かに罅が入る。だが敵に焦りは感じられない。
(「……微妙なところだな」)
怒涛の如く連ねるべき攻勢に若干弛みが出来てしまうのは、足場に注意を向ける灼滅者が少なかった事が大きい。敵の攻撃力を削ぐのが無難だろうと判断した玖韻も一瞬思案した後、足を踏みしめた状態で妖気を氷柱に変換する。
命中率を高め一直線に撃つ。常なら確実に当たったはず、だが間一髪で避けられ、代わりに黒髪が数本、夜に散った。
危ないところねと囁くも笙子には余裕が保たれている。緑の瞳に暗澹たる静謐を秘め、彼女は唇を開く。
「勘違いしないでと言ったでしょう? わたしは春の宮で教育を受けた正統なるノーライフキング。そして今、新しい力を得たわ。だから」
上手く足並みが揃わぬ相手を見逃すほど屍王は愚かではないらしい。高所を占めたはいいが、それが故に攻めあぐねた一瞬の隙。
通は目の前に迫りくる魔力の弾丸に備え護りを固める。
「!!」
「地に伏せるのは貴方達のほうよ!」
防御に徹し構えたのが功を奏したか、通は凄まじい威力に吹き飛ばされそうになるのを堪えた。これで無防備に喰らっていれば、急所を抉っていたかもしれない。そう思えば肝が冷える。
安堵の息を漏らし、改めて気を引き締め直し瞬兵が符を操る。
「今、回復するよ……!」
防護の力宿る護符を通へと飛ばす。神仏の加護の如き癒しを齎すそれは、攻防両方に気を配ると決めていた彼だからこそ、的確に付与する事が出来たのかもしれない。
その間を埋めるかのように透流が高く跳躍する。雷の如き風格の闘気纏い、一足飛びで屍王の懐に飛び込んだ。
「人間さんたちがよくする殺菌って知ってる?」
笙子が怪訝な顔をするが、構う暇など与えてやらない。
強く踏み込んだ透流は拳に雷を宿ししたたかに顎下へ繰り出す。態勢すら崩さないものの相応の衝撃を与えたのだろう、笙子は堪らず顔を顰める。
「細菌さんが人間さんにとって危険かもしれないって理由だけで、そうじゃない細菌さんまで巻き込んで殺してしまう人間さんたちの危険回避方法」
配下に連れていないから口には出さないが、正直雑菌も多いだろうゾンビをよく眷属に出来るものだと、透流は思う。
「私たちがアナタにしたことはそれと同じ。そして、これからすることもそれと同じ」
いのち宿さぬ緑の瞳を捉え、告げた。
「アナタが私たち灼滅者にとって危険な細菌かもしれないから。それだけの理由で、ここでいまアナタを灼滅させてもらう……!」
「そんな勝手な言い分、通すわけがないわ!!」
互いに相容れぬ感情を錯綜させたまま、夜を馳せる。
●まほろばの帳
静かな生活に突如振って湧いた災厄。それが笙子にとっての灼滅者。
「……何もしてないのに全てを踏みにじられ命まで奪られるのなら、そりゃ誰でも憎みますよね」
己の傷に霊光を集中しながら百合亞は独りごちる。石化に蝕まれた痛みが引いた後、知らず漏れたのはため息だ。自分にそれが起こった時、きっと同じ思いを抱くと思ったから。
でも。
「――だからこそ私はここでそれを止めます」
エゴでも構わない。憎まれても構わない。百合亞は逸らさず笙子の瞳を見据えた。
「恨みに満ちたままなのはさぞお辛いでしょう。ここでその思いも断ち切って差し上げます」
「勝手な事ばかり……!」
「そうですね。それでも、止めますよ私は」
傷が癒えきっていない足を引きずり、それでも尚歩む事をやめない。
戦いは長引いた。決して相手を舐めてかかったわけではないだろうが、
「詰めが甘かったのは事実だろうな」
玖韻の想定していた敵の戦術理論――『列攻撃で数人を足止めし、その間に各個撃破する』はほぼ正鵠を射ていた。だがその術を理解しているのが一人きりではどうしても対策に穴が開く。
「共有すべきだったかもしれんが、今それを言っても詮無き事だ」
二度目はないぞと宣告し、再び妖気の氷柱を出現させる。今度は迷わず屍王を捉え、自然には融けぬ氷を植え付ける。
炬燵が積極的な注意喚起をした事で、誰もが足場を気にするようになった。そして戦場に慣れさえすれば、元々身体能力の高い灼滅者達だ、戦うにも支障はなくなっていく。
バランスを崩したラナークの腕を通が引きかろうじて立て直すと、端的に礼を述べた後、視線を流し屍王の少女に問いかける。
「お前、蘇って何かしたいことがあるのか?」
戦いの最中ふと落ちる、静寂。
笙子が瞬き、揺らぎ、苦々しく呟いた。
「静かに過ごしたいだけよ。それだけよ、それだけ!」
悲痛な叫び。憎しみを力に変え、魔力を凝縮させた彼女が作り上げた弾丸が夜空に弧を描く。
ラナークに着弾する直前、身を挺したのはひみかだった。
「わたくしがいる限り、誰も倒れさせはしません!」
華奢な肢体で立ち塞がる。足手纏いにならないようにと己へ霊光を癒しと成し、懸命に胸を張る。彼女の気概を支えるよう、右舷も癒しの光を主人へと贈った。
「再度の眠りをあなたに……」
祈るように囁いて、ひみかは影を疾駆させる。黒き影は笙子を覆い飲み込んだ。彼女を苛むトラウマの姿は誰にも知りようがないけれど。
「輝く御名の下、生命司る光もて、立ち上がりし者に祝福を……」
そんなひみかの姿を見て、瞬兵は支える力を贈るべく裁きの光条を差し伸べた。あっという間に傷が塞がっていく。それは瞬兵が戦線を維持し、支えたいと強く願っていた気持ちの表れなのかもしれない。
通も負けじと声を張り上げる。出来る事は、まだたくさんあるはずだ。
「灼滅者が、俺が憎いだろう! 俺はお前が何処に隠れようと、引きずり出してやるぞ!」
「何を言うのよ!?」
笙子が癇癪気味に声を上げる。
僅かな、だからこそ見逃せない隙だった。
風が吹く。三つ編みが靡く。背を押された気がして、透流は獲物を振るう。
「フォースブレイク……クロス!」
その軌跡は屍王が放った十字の光にも似て、だがそれより近く、確かな手応えを持って魔力が放出される。堪らず笙子の唇から渇いた息が漏れる。
炬燵と百合亞が弾けるように視線を交わす。ここで攻め立てなければ手痛い反撃が待っている。――今しかない。
「あなたも使う石化の術です。体の自由は奪わせていただきます」
言う間もなく齎された呪いが、笙子の黒髪を乾いた石と成していく。自らが使うからこそその効果も一目瞭然、唇の端を噛む笙子に百合亞が言う。
「これが渕上さんの最後の舞台」
だからこそ全力で――そう物語っているのは百合亞が突き刺した傷跡の深さ。そして奪い取る、力の大きさだ。
「最高に盛り上がる、悔いのない全力の戦いをしようではありませんか。苦しいのも全て、受け止めてみせます」
「最後じゃないわ。最後なんかじゃ……!」
「折角の機会だ、俺もお前のこと覚えといてやるよ」
ラナークの呟きは笙子に届いただろうか。さっきの礼だと皮肉気に笑み、治癒の矢を放つと、通の背に吸い込まれていく。
力が宿る。
一気に肉薄する。襟元を掴み絞め技に入ろうとしたところを屍王の少女が振り解こうとする。だが、そのまま身体を沈め背負い投げに入る。所謂、岩石落だ。
「セィイヤアァッッ!」
「!!」
叫びは叫びになっていただろうか。力のまま叩きつけた技は魂ごと粉砕するかの如き威力、現の世界にしがみつく事など許しはしない。
傾斜のある地面、崩れた足場。そして、割れた水晶の破片。
再度光の粒子が漂い空へと舞う。
残骸など一つとして、残さずに。
●終焉の終わり
「……コルネリウスも野暮なやつだ」
蘇らせてまでやる事なのかと言ったラナークの声には、コルネリウスへの嫌悪感が滲み出ている。と、考えに耽っていたせいかまた足を掬われそうになったところで、さりげなく玖韻に腕を引かれる。
戦いが終わり、静けさだけが横たわっている。
だがそれを望んでいた少女はもう、いない。
「……月が綺麗な夜ですね」
百合亞の声に、誰ともなく灼滅者達は空を見上げた。
見守るように佇む月。
夜は密かに、静かに、傷痕を包み込む。
作者:中川沙智 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年6月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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