緋色のインテリア

    作者:陵かなめ

    「季節毎の模様替えは大変重要です。けれど、家具を移動させたり壁紙を張り替えたり、そんな大げさに考えることはありません。テーブルクロスを新調したり、カーテンにワンポイントを施したり、それだけで気分も晴れやかになるでしょう?」
     落ち着いた雰囲気の女性が、リビングで皆に話しかける。
    「そうですわね。朱琥珀(あけこはく)様の言うとおりですわ。部屋のインテリアを綺麗に保つことはとても素晴らしい」
    「私もそう思います。私達主婦の仕事は、家族が安らぐ空間を保つこと。それだけに、インテリアは重要ですわ」
     周りの女性達が、口々に同意を示す。
     朱琥珀と呼ばれた女は、満足げに微笑みこう切り出した。
    「カーテンやテーブルクロスにワンポイントの染を作るための染料が必要ですわね。では皆さん、少し重労働ですけれど、今日は染料の調達に出かけましょう」
     リビングに集まった女性達が、一斉に立ち上がる。
     各々、手には包丁が握られていた。
     インテリアを赤く染めるためには、人間の血液が必要だ。インテリアを綺麗にするためだから、それは仕方が無い。
     穏やかな笑みをたたえ、女性達は部屋を出て行った。

    ●ザ・ワンド
    「くすくすくす。家族思いの主婦達が、一般人を襲う。素敵なシチュエーションだね。実に僕好みだ」
     いつの間にそこに居たのか。全身黒ずくめの男が、くすくすと笑う。ただ、道化の仮面をつけているので、一体どういう表情をしているのか、窺うことはできない。
     一つ言える事は、同じ場所に居るだけで伝わる彼の強さだ。
    「これはワンド様。恐れ入ります」
     朱琥珀が恭しく礼をする。
    「くす。親しみを込めて、ワンド君って呼んでくれてもいいよ?」
    「とんでもございません、ワンド様」
     その返答に、またワンドが笑う。
    「何かあったら、絶対に助けてあげるからね? キミには期待しているんだ。この調子で、頑張ってくれよ」
    「有難うございます、ワンド様。それでは、私も行って参ります」
     朱琥珀もまた、出刃包丁を手に部屋を出た。
     その背中を見送り、ワンドが笑う。
    「まあ、絶対なんて、きっと絶対無いんだけどねぇ」
     くすくすくす。
    「さて、誰が一番僕好みの事件を引き起こしてくれるかな。楽しみ楽しみ」
     嫌な笑い声だけが、リビングに残った。

    ●依頼
    「ソロモンの悪魔の配下が事件を起こすって分かったんだよ」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)がそう切り出した。
    「強化された幹部クラスの配下の名前は、朱琥珀。強化一般人を連れて、駅前で一般人を襲うんだよ」
     朱琥珀は、『素敵な主婦のちょっとした気づき』と言う会を主催し、主に主婦を集めて活動している。快適な生活空間を保つためと大儀を掲げ、これまでにも横領や窃盗、暴行事件などを引き起こしていると言う。
     今回は、インテリアに使う染料として人間の血液が必要だと主張し、駅前で堂々と一般人を襲うと言うのだ。
    「皆には、朱琥珀と配下の強化一般人を止めて欲しいんだ。彼女達は駅前に集団で現れて、歩いている一般人に襲い掛かるんだよ。集団で現れたところから介入できるけど、歩いている一般人が居ないとそのまま帰っちゃうから、事前の人払いは慎重に考えてほしいな。朱琥珀は、魔法使い相当のサイキックを使うんだ。配下の強化一般人は、包丁を使って斬りつけて来るから気をつけてね。それと……」
     太郎が、一呼吸置いて目を伏せた。
    「実は、朱琥珀を配下にしているのは、ザ・ワンドって名乗るソロモンの悪魔なんだよ」
     聞き覚えのある者が居るかもしれないが、それは鶴見岳の激突で姿を見せたダークネスだ。今までその動向は全く分からなかったが、今回ひょっこり予知に引っかかったと言う。
    「今回は、ダークネスが出てくることは無いよ。でも、頭の隅にでもとどめておいてね」
     今はまだ名前しか情報がないけれど、いずれ相見える時が来るかもしれない。
    「それじゃあ、油断しなければ大丈夫だと思うけれど、皆頑張ってね」
     太郎は、最後にそう締めくくった。


    参加者
    如月・縁樹(花笑み・d00354)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    泉・星流(箒好き魔法使い・d03734)
    モーリス・ペラダン(夕闇の奇術師・d03894)
    東雲・蔓(求める兎・d07465)
    咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)
    吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)
    唐都万・蓮爾(亡郷・d16912)

    ■リプレイ

    ●駅前にて
     駅前の人通りを見ながら、敵の出現を待つ。
    「今回の悪魔も、強化一般人だけ送り出して、自分は高みの見物っすか。ヴァンプどもほどじゃないっすけど気に食わないっす」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)の言葉を聞いて、吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)がちらりと目線だけ動かした。
     昨年、その気に食わないソロモンの悪魔を仕留められなかったことに関しては、少々思うところもある。
     駅前に、まだ敵の姿は無い。
    「流石にこう言うのは見過ごせないのです。きっちり食い止めないとですね!」
     主婦の知恵アイテムみたいなのとか便利で良いんですけどねと如月・縁樹(花笑み・d00354)。
     それを聞いて東雲・蔓(求める兎・d07465)は少しだけ目を伏せた。
    「……血を塗料にするって……もう、手遅れすぎるよ……」
     位置のずれたサングラスを持ち上げ、駅前を注視する。
     目線を気づかれないようにするための工夫だけれど、同時に揺れた表情を仲間から隠した。
    「あれじゃないか?」
     咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)の声の先に、集団が見える。
     灼滅者達は、確認するように現れた集団を見た。
     女性達は、落ち着いた色合いの服装を着こなし、華美な装飾はせず、派手な化粧で目立つことも無い。一見、いかにも穏やかな主婦の集団に見える。
     その中心で1人の女が自分の仲間達に何かを語っていた。纏められ結い上げられた髪や穏やかな仕草が、清潔感を感じさせる。ただの主婦の姿だと思う一方で、他人に何かを強制させる力強い語りかけの姿だとも思えた。あれが『朱琥珀』だと瞬時に理解する。
     そして、主婦達は一斉に包丁を取り出した。
     それがあまりにも自然な動作だったので、一般の通行人は主婦達の奇行に気づいていない。
     灼滅者達は互いに視線で確認し、急いで飛び出した。
    「逃げて、逃げてくださいっ」
     縁樹がパニックテレパスを発動させ、声を張り上げる。
    「きゃあ、なに?!」
    「どうしたっ!!」
     駅前が、途端騒がしくなった。
    「逃げて!」
     周囲の喧騒に負けぬよう、唐都万・蓮爾(亡郷・d16912)も割り込みヴォイスで避難を促す。
    「ヤハハ、バケモノはバケモノらしく演じマショウ」
     同時に、モーリス・ペラダン(夕闇の奇術師・d03894)が殺界形成で人払いを試みた。
    「真っ赤な染料をイタダキマス、ナンテデスネ、ケハハ」
     パニックに陥り慌てふためく一般人の真ん中で、いかにも大きな身振りでマントを靡かせる。
    「ただ地面の染みになって頂くだけデスヨ」
     モーリスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、人の波が引いていった。
    「何の真似ですか? 構いません、皆さん染料を逃がさないで」
     灼滅者の登場に一瞬怯んだ朱琥珀は、すぐに気を取り直し配下の強化一般人に指示を出した。
    「わかりました、朱琥珀様!!」
     染料――つまり、一般人を逃がすなと言う朱琥珀の命令に、強化一般人が逃げ遅れた一般人に飛びかかろうとする。
    「させないっ!!」
     そこへ、身体を滑り込ませたのは泉・星流(箒好き魔法使い・d03734)だ。
     腰が抜けて歩けそうに無い一般の人の前に立ち、強化一般人の足元から凍らせる。
    「ち……ぃ」
     舌打ちや歯軋りの音が微かに聞こえた。
    「罪人の枷よ、外れろ」
     背後でカードを開放する蔓の声。
     仲間達も、次々と戦う姿を整え、朱琥珀と配下の者の前に躍り出た。

    ●避難と、敵の引き付けと
     無敵斬艦刀『剥守割砕』を構え、ギィは素早く状況を確認した。
     逃げ遅れた一般人が4名。腰を抜かしており、歩けない様子だ。パニックを引き起こしており、声も無く震えている。朱琥珀達は包丁を構え、今だ一般人を狙っている。
    「よそ見してる暇は、ないっすよ」
     言いながら、無敵斬艦刀を大きく薙いだ。
     避難が終わるまでは、こちらに注意をひきつける算段だ。
    「ええい、鬱陶しい!!」
     ダメージを受けながらも強化一般人が、身体をギィへ向け返る。
     その隙に、蔓と昴が逃げ遅れた一般人へ近づいた。
    「くっ、小ざかしい真似をっ」
     気づいた朱琥珀が、出刃包丁を振りかざし踏み込んでくる。
     強化された目の前の人達は、もう手遅れで、もう救えない。
     だから、と。
    「せめて早く解放させてあげるしかないのかな……ごめん、ね……」
     蔓は思いを乗せた歌声を、向かってくる敵にぶつけた。
     敵が怯んだことを確認し、昴が一般人に手を差し伸べる。
    「大丈夫ですか、掴って!」
    「はい……」
     震える声で腰を抜かしていた老人は、昴にしがみ付いた。
     真摯な振る舞いは、逃げ遅れた一般人に安堵を与えたようだ。隣でへたり込んでいる子供も抱え、昴が敵と距離を取る。
     後ろから、蔓が残りの2人を誘導しているのが見えた。
     蓮爾のビハインド・ゐづみも、逃げる皆を身を挺して守っている。
    「くっ、私たちの邪魔をする? 何故?」
     包丁を構えた強化一般人が、本格的に灼滅者へと鋭い視線を向け始めた。その姿は、遠くから眺めたときに見せた柔和な表情とは程遠い。
    「この人たちも、もう元には戻せないのか。ソロモンの悪魔め……」
     対峙して、はっきりとそれが分かる。
     千尋はライドキャリバーのバーガンディと共に駆け出した。
     まずバーガンディが、1人の強化一般人めがけて突撃をかける。
     敵がよろめくのを見て取り、千尋も素早く走りこんだ。生命力を奪う赤いオーラを武器に纏わせ、斬り付ける。
    「ぐ……ぁ……」
     たまらず、敵が膝をついた。
     それを見て、残りの強化一般人2人がカバーするように前に出る。
     なかなか連携は取れている敵のようだ。
     昴は戦闘の様子を気にしながら敵の攻撃範囲を測り、蔓を見た。
    「後の避難は任せた」
    「うん」
     手短に言葉を交わし、互いの役割を確認する。蔓は安全な場所へと一般人を誘導し始め、昴は戦場へと走った。
     一方、互いをカバーするように固まる強化一般人の前に蓮爾がふわり舞い出た。
    「飛躍し過ぎた理論を疑問に思わぬ程、心奪われてしまったのですか」
     傍らにゐづみを従え、静から動へ動から静へと優雅に舞う。
    「悲劇を増やさぬうち、終りにしませう」
     やがて、敵の肉体に原罪の紋章が刻み込まれた。
    「平和に暮らしてる一般の方々を殺させたりしませんよ、縁樹達が相手です!」
     続けて、縁樹もカオスペインを重ねた。避難誘導してくれる仲間を信じ、敵を撃つ。
     畳み掛けるように、星流とモーリスも攻撃を繰り出す。
    「あぁ、朱琥珀様……私は……」
     一般人の気配が戦場になくなった頃、強化一般人の1人が倒れ消えた。

    ●強化一般人との戦い
    「さあ、もう遠慮はいらないっすね。一人ずつ落としていくっすよ、おばさん方」
     その言葉に、敵が敵意剥き出しの瞳でギィを睨み付けた。
     一人ずつ落とすと言う言葉か、それともおばさんと言う言葉か。どちらが敵の琴線に触れたか、それは関係なかった。
     ギィは、無敵斬艦刀に纏わせた炎を勢い良く相手に叩き付ける。
     黒い火が綺麗に一筋残り、消えた。
     攻撃を受け、敵が散り散りに展開する。
    「私達の活動を邪魔するなど、愚かな」
     朱琥珀が不愉快そうな表情で灼滅者達を見据えた。
    「凍ってしまえ」
     ぞっとするような冷たい声だった。気づいた時には、前衛の仲間の足元から氷が広がる。
     ダメージを受けた前衛の仲間達の後ろから、星流がマテリアルロッドを構え叫んだ。
    「やめるんだっ!! ……心まで人間をやめる事はないんだっ!!」
     もはや救えないかもしれない、強化された敵の姿。
     だがそれでも、自分の良く知る人ならば説得しようとするだろう。ならば、自分も彼女に恥ずべき行動はしたくない。その思いから、必死に語りかけたのだ。
    「ふんっ、私は望んだのだ!! それに結果がついてきただけのことよ」
     だが、声は届かない。
     朱琥珀の言葉に、強化一般人達は心酔しきった表情で頷いた。
     敵の様子を見て、星流は一瞬目を伏せる。あれは、もはや救えない。どっぷりと悪魔の甘言に浸かり、強化された人の姿なのだと。
     再び顔を上げ、星流は激しい竜巻を巻き起こした。
     竜巻は勢いのままに敵を飲み込み、斬り刻む。
    「くそっ!」
     強化一般人2人は、吹き飛ばされ地面に身体を打ち付けた。
     まだ起き上がれない強化一般人に向け、モーリスのビハインド・バロリが鞭を繰り出す。
    「ヤハハ」
     その間に、モーリスは距離を詰めた。
    「キャッチアンドクラッシュデス」
     影を纏った黒い手を構え、縛霊撃を繰り出す。2人の息の合ったコンビネーションが、確実に敵を捕らえる。
     身動きを封じられ、敵は悶えた。
     その時、一般人を避難させていた昴が戻ってきた。
    「確実に数を減らす」
     最小の動きで毒の飛礫を放ち、あっと言う間に一人を仕留める。
    「く……朱琥珀……さ、ま」
    「何と言うことを! おのれっ」
     崩れていく強化一般人を見て、残った1人がぎりりと歯軋りをした。
     だが内心怒っているのは縁樹も同じだ。
     悪い事は、例えどんな理由があろうともしちゃ駄目だと思う。
     聞けば、彼女達は横領や窃盗、暴行事件などを引き起こしており、今回はついに包丁で一般人を襲おうとした。
    「殺人とかそんな悪い事駄目です、メッ」
    「ふん、部屋のインテリアを綺麗にするためよ? 仕方の無いことだわ」
     強化一般人最後の1人が、しゃあしゃあと語る。
     やはり、見過ごすわけには行かない。
     縁樹はマテリアルロッド・依木の杖を構えた。
    「縁樹の雷は痛いですよ!」
     言葉通り、痛烈な雷を引き起こし、敵に撃ち付ける。
    「ぎゃん」
     攻撃を受けた強化一般人はのけぞり後退した。
     それを見て、千尋はガトリング内蔵棺桶を構える。チェーンを肩にかけ、穴に指を入れて抱え込んだ。
    「行くよ、ブレイジングバースト」
     あとはただ、大量の火炎弾を撃ち出すのみ。
     激しい弾丸が命中し、強化一般人は言葉も無く崩れ落ちた。
    「お待たせ、回復するよっ」
    「お手伝いします」
     避難誘導を終えた蔓が後衛につく。蓮爾も協力して仲間の傷を癒していった。
     灼滅者達は余裕を持って戦いを進めていた。それでも、傷は蓄積し疲弊していたのも事実。
     回復を受け、仲間達は再び力強く敵を見た。

    ●ただ信じる思いは
    「信奉者が片付いたところで、朱琥珀、お相手願いやす」
     ギィが無敵斬艦刀を振り下ろす。
     幹部と言うだけの事はあり、朱琥珀はそれなりに丈夫だった。いくつかの攻撃を受けたはずだが、まだしっかりと立っている様子が見て取れる。
    「お前は一体何色だってツッコんでいいっすか?」
     朱か、それとも琥珀色か。
     朱琥珀が出刃包丁で無敵斬艦刀を受け止め、ギィの言葉に鼻を鳴らした。
    「私は私だ。あのお方の、忠実な僕よっ」
     攻撃を撥ね退けた敵が、マジックミサイルを繰り出す。魔法の弾が真っ直ぐに飛来し、ギィを襲った。
    「すぐに回復するから」
     それを見て、蔓はすぐにエンジェリックボイスで傷を癒した。
     ギィは片手を挙げ立ち上がる。
     仲間と敵のやり取りを聞き、昴はあの、人を見下し小馬鹿にするような口調を思い出す。
    (「あいつにとってお前達は手足なんかじゃない、蜥蜴の尻尾以下だ」)
     その証拠に、朱琥珀がピンチに陥ってもソロモンの悪魔は姿を見せない。
     容易に想像がつくし、目の前の敵を哀れにも思う。
     だが、容赦はしない。
    「もう一押しだ」
     仲間に確認するように言い、昴は上段から刀を振り下ろした。
    「ぐっ」
     朱琥珀が、たまらず呻く。
     この機を逃すまいと、縁樹が雷を撃ちつけた。星流、モーリスも攻撃を続ける。
    「これでっ」
     光の塊に変化させた剣で、千尋は朱琥珀の霊魂を切り裂いた。
     敵はもはや力尽き、忌まわしげに灼滅者達を睨み付けた。
    「灼滅前に一応聞いておくっす。ザ・ワンドとはどこで出会ったっすか?」
    「……」
     ギィの質問に、朱琥珀は沈黙を貫いた。
    「……ああ……、ワンド様、私はっ」
     そして、主を呼ぶ。
     だがそれに答える声は聞こえなかった。
    「ワンドという者に利用されているだけと、今更言って何になりませう」
     蓮爾はひらひらと神秘的な舞を見せた。
    「せめて希望を抱いたまま逝って欲しい」
     真実を告げることが、ワンドを妄信する彼女にとってどれほど残酷なのだろうか。
    「『蒼』この女(ひと)のいのちを、喰らっておしまいなさい」
     自らの寄生体を掲げ、最後に蓮爾がDESアシッドを繰り出すと、朱琥珀は静かに消えていった。

     敵の消えた場所には、何も残らない。
     辺りを見て、星流は口を開いた。
    「……こんなときだからこそ思う……悪魔に魂を売る……とはよく言ったものだと思う……」
     悪魔に魅入られ、払った対価はおのれの魂。
    「サテハテ、次はどんな事件を掻っ攫えばよろしいのデショウカネ、ザ・ワンド」
     この事件を、どこかで見ているのかそうでないのか。
     モーリスはまだ見ぬ敵を見据えるように、空を仰いだ。
     ――話に聞く、ザ・ワンドの道化の仮面を頂く。
     今回、配下の強化一般人を潰した事は、きっと足がかりになるはずだと。
    「さて、飯食って帰ろうぜ」
     戦いの時から一変し、昴は仲間に軽く声をかけた。
    「そうしましょう」
     縁樹がニコリと笑顔をのぞかせる。
     騒ぎになる前に撤退することに皆が同意し、灼滅者達は素早くその場を後にした。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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