藤本先生、こんにちは。

    作者:織田ミキ

     ――君の絆を、僕にちょうだいね。
     眠る男の枕元で、宇宙服のような不思議な格好をした少年がそう囁いたのは、昨夜のこと。
     そして次の日の朝、いつものように職場である学校へ出勤した男に、ある異変が起こっていた。
    「弘くーん、おはようさーん」
    「……。ああ……おはよう、ございます……斉藤先生」
    「あ? 何のネタだよ、その他人行儀」
     目の前の男とは、小学生の頃に出会って以来、中、高、大、果ては職場まで同じという教師仲間。三十路手前の今となっては、二十年近い付き合いだ。確かに昨日までは、「こら、学校で弘くんて言うなよ~!」的な返しをしていた記憶があるというのに、今朝は妙に気持ちが冷めている。何と言うか、彼がそもそも、親友に見えない。
    「……」
    「弘樹、やっぱ何かヘンだぞ、お前。さては教頭あたりに、俺らのラブっぷりを妬まれたかー?」
    「違いますよ」
     周りに生徒はいない。男は、彼がいざというとききちんと態度をわきまえることを知っている。それなのに今日は何故か、笑えるはずの戯れを無下にすることしかできない。そんな自分を不思議に思いながら、男は親友であるはずの彼に背を向けた。
    「いくら幼馴染だからって、学校ではちゃんと藤本先生と呼ぶべきだって、いつも言ってるじゃないですか」
    「ん、いつも言ってるけども。言い方が違いすぎだろー。……何か、怒ってんのか?」
    「別に……怒ってなんかいません……」


    「もう話に聞いてるかもしれないけど、絆のベヘリタスが動き出したよ!」
     教室に集まった灼滅者たちを振り返り、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は説明を始めた。
     強力なシャドウである『絆のベヘリタス』と深い関係であろう何者かが、一般人から絆を奪い頭上に『ベヘリタスの卵』を産み付けているらしい。黒と紫という気持ち悪い色のそれは一般人には見えないが、宿主の絆をどんどん奪いながら成長し、一週間で孵化してしまうのだという。ダークネスが次々に増えて強大化してゆくのを、放ってはおけない。
    「ベヘリタスは、かなり強いダークネスだよ。でもね、きちんと事前準備をして孵化した直後を狙えば、今のみんなでも倒せるかもしれないの! 勝つための段取りを説明するからよく聞いて!」
     まりんは皆に宿主となる男の資料を配布した。
    「簡単に言うと、宿主の藤本・弘樹さんと事前に面識を持つってことなんだけど……」
     卵は宿主と他の人間たちとの間の絆を栄養にして育つ。そうして孵化したベヘリタスは、栄養となった絆の相手に対して弱体化する性質を持っているのだ。つまり、宿主と何らかの絆を結んでおいた灼滅者には、孵化したシャドウからの攻撃力が弱くなる上、こちらからの攻撃ではより大きなダメージを与えられる、という訳だ。
    「藤本さんは中等部の国語の先生でね、こっちで制服を用意するから生徒を装って接触するのが良いと思う。んー、大学生も……ごめん、高校生のふりして頑張って? ううん、もちろん小学生の子と組んで父兄になりきっちゃうとか、何でも良いんだけどね!」
     藤本が勤めるのは小中高エスカレーター式の総合キャンパスなので、灼滅者たちの年齢なら誰が話しかけても問題はない。藤本は朝八時に出勤、昼休みは昼食後に中庭の花壇の近くで読書をして過ごし、放課後は午後七時まで職員室にいる。声をかければ職員室から連れ出すことも可能だろう。子供好きで、温厚な男だ。
     接触できるのは、ベヘリタスが孵化する二日前から。尚、灼滅者はベヘリタスの卵を目視できるものの、触ったり攻撃したりすることはできない。
    「10分以内に倒せなかったら、シャドウはソウルボードを通じて逃げるはずだよ。そうなっちゃったらもう灼滅できないから、気を付けて!」
     敵が使ってくるのはシャドウのサイキックのみで、ポジションはメディック。撃退して当面良しとすることはできるが、本来なら恐ろしく強い敵を灼滅できるこのチャンスを、是非無駄にしないで欲しい。
    「『スキ』でも『キライ』でも、結んだ絆が強ければそれだけ戦闘が有利になるから、みんな頑張って! ベヘリタスを倒して、藤本さんに親友との絆を取り戻させてあげてね!」


    参加者
    結月・仁奈(華彩フィエリテ・d00171)
    護宮・マッキ(輝速・d00180)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    雲母・凪(魂の后・d04320)
    杠・嵐(花に嵐・d15801)
    高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)
    夜川・宗悟(詐術師・d21535)
    ペリザリス・ペリガン(氷蛇のプリベンター・d27077)

    ■リプレイ


     人と人とが共有する過去と思い出、長い年月を経て築き上げられた互いへの深い信頼。そんな親友との絆をダークネスに奪われた男を、着慣れぬ制服に身を包んだ灼滅者たちは校門の前で捕まえた。
    「「藤本先生ー、おはようございまーす」」
    「はい、おはよー」
     初対面ではあるが、既に学校という場所で出来上がっている教師と生徒の立場を利用して接近開始。自分たちは、国語の赤点に悩む友達グループという設定だ。
    「先生ー、わたし、この間から国語でわかんないとこがあって……」
    「つい先日のテストの内容が思いのほか難しく……、期末テストなどに向けて勉強会を開くことになったのですが、よろしければ藤本先生もご一緒していただけませんか?」
    「今日と明日の放課後、あいてないかなぁ?」
     先生にしか頼めないのという雰囲気を全力で出してお願いする結月・仁奈(華彩フィエリテ・d00171)と、凜と真面目な姿勢で頼むペリザリス・ペリガン(氷蛇のプリベンター・d27077)のアプローチに、藤本が立ち止まる。
    「えーと、でも君たち、ほとんどみんな高等部の子だよね?」
     確かに、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)以外は皆、高等部の制服だ。
    「勉強をみてあげられないわけじゃないけど、本当に僕でいいの?」
     いいのいいの! と高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)がすかさず笑顔でフォローする。
    「友達から、国語なら中等部に優しい先生がいるって聞いたから、お願いできないかなーって」
    「他のセンセじゃなくて、藤本に見てもらいてーんだよ」 
     杠・嵐(花に嵐・d15801)からもストレートな一言を添えられ、いよいよ照れ顔を晒した藤本は、無事こちらの希望を呑んでくれた。第一段階クリア。今一緒に来ていない仲間のために、一葉が訊ねる。
    「他にも国語の赤点で困ってる友達がいるから、連れてきても良いですか?」
    「うん、もちろんいいよ。一緒においで」
    「わー、ありがとうございます!」
    「じゃぁ放課後、わたしが職員室に迎えにいくね!」
     笑顔で手を振る仁奈とその場を後にする灼滅者たちに、藤本も笑顔を返してきた。


    「ああ、君は、確か今朝の……。もう具合はいいの?」
     昼休みの中庭。本を読んでいる藤本にそっと歩み寄ったのは雲母・凪(魂の后・d04320)だった。今朝、仲間たちが接触を果たした後に単独で声をかけ、保健室へ連れて行ってもらったのだ。そういう段取りで近づいたのは演技だが、心臓が弱くちょっとした気温の変化ですぐ体調を崩すのは事実。身体が動かせなくて本ばかり読んでいると話した凪の顔を、藤本は覚えていたらしい。
    「はい、大丈夫です。そこの窓から、先生が見えたから……これ。藤本先生が好きそうな本、よかったら読んでみてください」
     ふわりと微笑んで手渡した本には、自分が読んだ感想と、藤本おすすめの本を訊ねるメッセージをしたためた一筆箋が挟んである。凪はそのまま他愛のない話を続け、勉強会の予定を聞き出した。
    「勉強会って、国語の? 私も行かせてもらっていいですか?」
    「うん、友達同士の集まりみたいだったけど、あの子たちならきっと嫌な顔しないんじゃないかな」
     礼を言って凪が去ると、しばらくして今度はペリザリスが藤本に声をかける。
    「おや、藤本先生。何の本を読んでいらっしゃるのですか?」
    「あ、君は勉強会の! ついさっきまで、飛び入り参加希望の子がここに来てたんだけど、紹介し損ねたなー」
     言いながら、藤本は自分が読んでいる本の表紙をこちらに示してきた。最近大きな賞を取った作家の新作だ。
    「君も読書好き? どんなの読んでるの?」
    「私は推理小説が好きなのですが。読みながらあれこれ考えさせられる本が好みですね」
    「んー、いいねー、僕も好きだなそういうの。君みたいに本が好きな子なら、きっとすぐ国語の成績上がるよ」
     あれこれと最近読んだ本について語り合う二人の歓談は、昼休みが終わるまで続いた。


     さすが教師と言うべきか。勉強会で一人ずつ自己紹介をした灼滅者たちの名前を、藤本は一度で覚えた。それはもう、積極的に質問をする嵐から、自然体という名のもとに始終そっけない態度を取っている夜川・宗悟(詐術師・d21535)まで。
     人との馴れ合いなど何処吹く風の宗悟も、後の戦闘のことを思うと絆作りは仕事として受け入れている。しかしながら、仲間の輪に入って笑顔でアピールするなど、とてもじゃないが自分にはありえない。とっつきにくい生徒を素で演じるくらいがせいぜいだった。

     ――そうして迎えた、勉強会二日目。
    「結月さん、昨日もらったマフィン、すごく美味しかったよ!」
    「わ、本当に? 良かったー、古文訳と小論のコツを教えてもらった感謝のしるし♪」
    「お菓子作りが上手なんだねー。ラッピングも綺麗でさ、開ける前につい写真撮っちゃったよー」
     などと仁奈に向かって笑いつつ、藤本が教室の窓を閉める。夕方となり、風が冷たくなってきた。凪はそれが自分への心遣いだと気が付き、ありがと、と声を出さずに唇だけで礼を述べる。今日は朝も声をかけたし、昼も共に過ごし、肩を借りて少し休んだときは、ちょっとした兄妹気分を味わった。
     古文、漢文、現代文。長文読解のコツから小論文の書き方まで。藤本は、自分たちそれぞれの苦手項目を、一つ一つ丁寧に教えてくれた。依頼に必要な作戦とはいえ、本当に成績が上がってしまいそうな勢いだ。
     昨日に引き続き、勉強会の後は仁奈の手作りクッキーが振る舞われる。藤本へ丁寧に礼を言ってから、待ってましたとばかりに好物のクッキーを両手に取る一葉。
     と、そんな中――。
    「ところでさー先生……斉藤先生って、藤本先生といつもべったりし過ぎじゃない?」
     勉強の質問をする素振りで藤本を呼び寄せ、周りにはなるべく聞こえないよう注意しながら言ったのは護宮・マッキ(輝速・d00180)だった。それまで卒なく勉強会に参加していた自分も、満を持して特別行動開始である。
     斉藤という名に、冷めた反応しか見せない藤本。さすがに、今は絆を失った状態だ。それでもマッキは、イチかバチかさらに悪役演技に踏み込む決心をした。他に強い絆を作っている時間もない。
    「二人ともそっちのケがあるんじゃないかって噂になってるけど、実際どうなんでしょ?」
    「ど、どうって……怖いな~、高等部ではそんな風に言われてるんだ? でもまぁ、これからはそんな噂も減るんじゃないかな。あの先生とどうして仲良かったのか、自分でもわかんないくらいだしさ、最近。ははは」
     いや、これくらいでは嫌われ足りない。そう思い、苦笑いでかわした藤本を敢えて深追いする。
    「統計では国語教師の三割がホモってホントですか? 僕はノーマルなんで、そうだったら触らないでくださいね」
     さあ今度こそ、酷い事を言ってみた。言ってはみたが、早々に謝ってしまいそうになるのを堪え、努めて険しい表情で顔を固めて藤本を侮蔑する風を装う。
    「……。心外だよ……護宮くん、それ、さすがに凹むなー、先生」
    「冗談冗談、マジにとらないでよ」
     顔に色濃い影が差した藤本に、決して謝らず笑って誤魔化すマッキ。でも本気でそうだったらヤバイよね? などと止めを刺してそっぽを向いておく。
     どっと溢れる、居心地の悪い空気。
     しかしその気まずさは、ジャーンとかき鳴らされたファルケのギターに救われた。
    「わー、リフライヤくん、きょ、今日もコンサートしてくれるの?! 昨日の歌、頭から離れなくて困ってるくらいなんだけどな……!」
    「まだまだ、宇宙一の歌手になるまでは練習練習―っ! みんなも、この俺の歌を聞いてくれー!」
    「や、もう、じゅうぶん宇宙一だよ、うん!」
     藤本の微妙な説得も空しく、今日も今日とてファルケの歌声が大音量で夕方の校舎に響き渡る。一週間前その頭上の卵が産みつけられた時間帯から言って、決戦は今夜。ファルケはもちろん、戦場でも歌い通す気満々だった。


    「キャー! ダメもう、楽しすぎる♪ めちゃくちゃ強くなった気分―!」
     ソウルボードではなく現実世界に現れたシャドウと言えば、普通に倒すなら闇堕ち必至の超強敵。そんなダークネスの鋭い闇色の爪をひらりとバク転でかわし、一葉が嬉々とクッキーを頬張る。
     結局、孵化のタイミングを待つうち藤本の住むマンションまで上がりこむ流れとなった灼滅者たちは、ついに姿を現したベヘリタスとその場で戦いを繰り広げていた。こちらとの絆も完全にシャドウの栄養にされ最終的には冷めきった態度になっていた藤本も、今は腰を抜かし玄関ドアにはりついて戦いを凝視している。霊犬はともかく、足の無い幽霊のようなビハインドや、誰も乗っていない一輪バイクまでもが参戦しているのだから、それはもう我が目を疑うだろう。
    「僕の攻撃は……普段通り効いてるって程度か。まあ、元々期待してもいなかったけど、足を引っ張らなくて済んで何よりだよ」
     黒死斬を決めて跳び退った宗悟が、気の無い表情で呟いた。そう、べヘリタス相手に普段通りの力が振るえるのは、絆作りが成功したおかげ。ましてや他のメンバーの攻撃がこれよりさらに効くのだから、作戦は大成功と言えるだろう。
    「絆を失っても、最初からやり直せば新しい絆は生まれるカモね。……でもあたしは――」
     言いながら、嵐が巨大なシャドウの懐へ飛び込む。
    「今の絆でしか得られない、大事な奴らとの未来が見たい!」
     素早く叩きつけたロッドから流れた魔力に、ベヘリタスは地響きのような音を立てて内部爆発を起こした。
     怪しげな金色の仮面を揺らして起き上がるシャドウを、続けざまに影で斬り刻み、容赦のない拳を食らわせ、反対側からはガンナイフを突き刺す。
    「みんな、あと三分だよ! ……絶対、逃亡なんてさせないんだから!」
     残り時間をカウントダウンする何度目かの仁奈の割り込みヴォイスが、またクリアに届いた。
     それにしても、さすがに強い。開戦当初は自分たちの攻撃の手応えに楽勝かと思えたが、幾度となく回復行動を取っているシャドウは、まだ倒れようとしない。向こうが回復するたび攻撃力が上がることは承知しているが、もう、ここまで来たら何もかも忘れて攻めの一手に集中すべきだ。
    「さあ、ラストスパート、行ってみよう!」
     言った一葉の霊力が網となり、爪を振り上げたシャドウを捕える。跳んでその先へふわりと着地した凪は、身を翻しながらロッドでベヘリタスの仮面を叩いて着地した。
     一瞬遅れて、ドウという音と共にダークネスの身体が大きく変形する。続けて斬撃を浴び、槍で貫かれたその巨体に、ペリザリスは深々と断罪の刃を振り下ろした。ズズズと起き上がろうとするシャドウに、マッキがすかさず本気以上の蹴りを見舞う。禍々しい色の身体から火花を散らし、蹴りの衝撃で一瞬浮いた巨体を、仁奈はバベルブレイカーを派手に唸らせて床へ穿った。
     床に立てた爪を滑らせながらなんとか起き上がろうとする瀕死のダークネスへ、ファルケがふと歌を止め、ビシリとロッドの先を向ける。
    「お前を倒して、絆は絶対に取り戻す! 先生に届け、俺の熱い魂の叫び! 刻みこめ、魂のビートっ!! ――これが、サウンドフォースブレイクだっ!!!」
     巨大なベヘリタスの体内から溢れる閃光。大きな爆破音と共に、それはスートの三つ葉をまき散らすように消えてなくなった。


    「ごめんなさい! 全部演技でした!」
     目いっぱい謝りダメ元で事情を説明する。そんなマッキの肩をポンポンと叩いて、藤本は朗らかに笑った。 
    「護宮くーん、僕とあいつが結婚でもすることになったら君、絶対、式にご招待の刑だからね?」
     ゲイ疑惑を堂々と冗談で片付けた彼の笑顔に、マッキは彼が一番最初に奪われた最も大きな絆まで全て取り戻したことを知った。こちらの説明をどこまで理解して受け入れてもらえたかはよくわからないが、とりあえず謝れてスッキリだ。
    「斉藤先生だっけ? 元通り二人が仲良しな姿見られたら、私も嬉しいな。もうシャドウは倒したけど、今度は先生たちのことが気になってまた覗きに来ちゃうかも」
     いつも以上に晴れやかな笑顔で言う一葉に続いて、ファルケもギターを背負い直して藤本へ手を差し出した。
    「かりそめとはいえ一時でも先生の生徒だったこと、俺は忘れないぜ」
    「ありがとう、リフライヤくん。僕も君の魂に響く歌声は一生忘れられそうにないよ。他の誰が何と言おうと、歌手になる夢、応援してるからね」
     ファルケと力強い握手を交わし、藤本が灼滅者たちの顔を見渡して微笑む。
    「うちの生徒じゃなかったとはいえ、この二日間、皆で勉強したことに変わりはない。国語が苦手な子も……あ、もしかしたら本当は得意な子もいたのかもしれないけど、次のテストで成績上がるといいね。だってほら、勉強ってさ、結局はみんな自分との勝負だから」
     灼滅者たちを外へ送り出し、夜遅いから気を付けて帰りなさい、と教師然として言った藤本の元を、一度去りかけた嵐が振り返る。
    「今回はこんな形で出会ったけど……昨日、将来の夢があるって言ったこと。あれは、嘘じゃないよ、藤本」
    「ん。そっか」
    「……。花を、作るヒトになりてーの」
     誰かの心に、残る花を。短く、しかしはっきりと具体的な夢を口にした嵐に、藤本は頷いた。
    「杠さんなら、きっと、叶えられる。……それからあの手紙も、ありがとう」
     そう言えば今朝、藤本が来る前に職員室の机の上へ置いた、「教えてくれてアリガト」の手紙。
    「演技だったかもしれないけど、あれを読んだとき、先生やってて良かったなーって……思ったよ」
     君たち皆に出会えて、嬉しかった。二日間、とても楽しかった。
     どうか、元気で――。
     マンションの入口から見えなくなるまでこちらを見守る束の間の恩師を、灼滅者たちは、もう一度だけ振り返り手を振った。

    作者:織田ミキ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ