●湖畔のタッグマッチ
琵琶湖北西部の湖畔にあるキャンプ場。
釣りとバーベキューを楽しめるそこに、奇妙な面をつけた2人組の姿が現れた。
「ふむ。此処で良いか」
「うむ。派手に荒らさせて貰うとしよう」
2人組は見せ付ける様に大仰な動きで、無人のテントを槍で引き裂き、鬼の拳でテーブルを叩き壊す。
暴れる2人組に気付いた数人の客は、慌てて逃げ出していった。
「ふむ。先ずはこんな所か」
「うむ。これで心置きなくこの場を荒らせる」
「「待ーて待てい!」」
そこに颯爽と現れた2つの影が、2人組を背後から投げ飛ばした。
「見つけたぞ! 琵琶湖を荒らす慈眼衆め!」
「それ以上は、我ら琵琶湖ペナント怪人が許さん!」
爆発を背にビシッとポーズを決める『琵琶湖』と大きく書かれた三角頭。
名乗りを上げた琵琶湖ペナント怪人達へ、身を起こした2人組――慈眼衆が飛び掛った。
鬼の拳がペナントを殴り倒し、琵琶湖ペナントキックが慈眼衆を蹴り飛ばす。
「ふむ。楽には勝てんか」
「うむ。流石は安土城怪人の配下」
「そちらもやるな!」
「だが、琵琶湖は荒らさせん!」
しばしの攻防の後、慈眼衆と琵琶湖ペナント怪人達は、同時に悟った。
互いの力はほぼ互角。どちらが勝ってもおかしくないと。
●天海と怪人、それぞれの思惑
「西教寺の件の報告は皆も聞いてると思うけど、琵琶湖の近くで慈眼衆と琵琶湖ペナント怪人が争い始めてるわ」
夏月・柊子(高校生エクスブレイン・dn0090)は、その事件を灼滅者達に伝えた。
近江坂本に本拠を持つ刺青羅刹、天海大僧正が、近江八幡に本拠を持つ安土城怪人との大戦の準備を始めている。
天海自身が調査に向かった灼滅者に告げたその言葉を、裏付けるかの様なタイミング。
「最初に慈眼衆が破壊活動を始めて、琵琶湖ペナント怪人がそれを阻止しようと現れるのよ」
そして始まる戦い。
一見すると、琵琶湖ペナント怪人が正義のように見える。
「でも、そう単純な話じゃないの」
安土城怪人は、配下の琵琶湖ペナント怪人を大量生産している。
軍備を増強し、天海大僧正との合戦に勝利するつもりのようだ。その先に企んでいるのは、世界征服。
「つまり慈眼衆の行動は、安土城怪人の野望を止める為の手段って事になるのよ」
だからと言って破壊行為を見過ごせるわけではないのだが。
「慈眼衆が現れるのはキャンプ場なんだけど、施設や備品を壊すばかりで、一般人に手を出すことはないわ」
寧ろ、驚いた人々が逃げ出すのを望んでいた素振りもあったと柊子は続けた。
「武蔵坂学園と共闘したいって話も、本気なのかもしれないわね」
その辺りの敵の事情を考えれば、此方の出方によっては琵琶湖の戦いの流れを決めることになるかもしれない。
「でも、どう介入するかは皆の判断に任せるわ」
現時点では何が正解なのかは、エクスブレインでも判らない事であった。
「敵の戦力だけど、慈眼衆も琵琶湖ペナント怪人も2人ずつよ」
慈眼衆は共に神薙使いと同じ力を持ち、1人は槍を、もう1人は断罪輪を持つ。
ペナント怪人は、此方もご当地ヒーローと同じ力を持ち、1人はサイキックソード、もう1人はリングスラッシャーを持つ。
「数も戦闘能力もほぼ互角、どちらが勝ってもおかしくない状況よ。或いは纏めて倒すって言う手もあるわ」
どちらにも付かなかったからと言って、慈眼衆とペナント怪人が手を組む事はないので、三つ巴の戦いになる。
いずれにせよ、戦いの鍵は介入する灼滅者が握っていると言える。
「ややこしい状況だけど、勝手にやってて、と放っておくわけにもいかないし。どうするかは皆で決めて。その後がどうなっても、出来る限り全力でサポートするから」
いつもの様な正解は出せないが、いつも通りに信頼し、柊子は灼滅者達を見送った。
参加者 | |
---|---|
アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199) |
伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458) |
七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703) |
媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074) |
大業物・断(一刀両断・d03902) |
回道・暦(デイドリッパー・d08038) |
篠山・仁(ユウェンタスの剣・d19557) |
神郷・久遠(水晶の翅・d27970) |
●天秤は1つ傾いた
「ふむ。楽には勝てんか」
「うむ。流石は安土城怪人の配下」
「そちらもやるな!」
「だが、琵琶湖は荒らさせん!」
戦場となった琵琶湖畔のキャンプ場に灼滅者達が着いた時には、4人のダークネスが睨み合っていた。
「ふむ、今回は……付くのはあちらじゃな」
アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)が状況を確認するように周囲を一瞥して、呟く。
灼滅者達が選んだのは、慈眼衆との共闘だった。
「っしゃ、あいつらが怪人にやられる前に俺らも参戦と行きますか!」
篠山・仁(ユウェンタスの剣・d19557)が上げた声に頷き合い、灼滅者達が地を蹴り駆け出す。
「黒鷹。手筈通り頼みますよ」
自身のビハインドを先行させ、伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)は走りながらギターの弦を弾き始めた。
最初は、小さく一音。徐々に弦は激しくかき鳴らされる。
「ぶふっ!?」
その音色に気付くよりも早く、音波が光輪を持つペナント怪人を弾き飛ばし、そこに黒鷹が斬りつける。
「誰だ!?」
灼滅者達の敵意を含んだ視線を向けられて、もう1人のペナント怪人が誰何の声を上げる。
「この度はロマンと打算とその他諸々により、慈眼衆に助太刀するっ!!」
ペナント怪人だけでなく慈眼衆にも聞こえるように答えながら、七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)がペナント怪人に跳びかかり、吼える虎を象った杖を突き込む。
一瞬遅れて爆ぜる魔力。体内からの衝撃に、ペナント怪人が小さく苦悶の声を上げる。
「灼滅者? 武蔵坂のか?」
「ん……それがし達……武蔵坂学園から来たの……ゆえあって助太刀する」
慈眼衆の正面に駆けつけた大業物・断(一刀両断・d03902)は、訝しむ2人の目を見てボソボソと伝え、こくりと頷く。
すぐに身を翻し、雷を纏った拳をペナント怪人に叩き込んだ。
「ふむ。我らに手を貸すと言うのか」
「此方との共闘を望んでいるのでしょう? 宿敵と言えど、喜んでお受けしましょう」
慈眼衆の問いに、すぐ後ろから答える声。その横を、瑠璃を移す白が駆け抜ける。
媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074)の和服の袖から覗く細い腕が見る見る間に鬼を思わせるそれに変貌し、巨大な拳が叩き込まれる。
続いて、血錆のついた大剣が真横からペナント怪人に振り下ろされた。
「って事だ、慈眼衆のお二人さん。俺らも加勢するぜ!」
一撃を加えた仁は、ペナント怪人に背中を向けたまま振り向いてはっきりと告げた。
「灼滅者め。お前達の目は節穴か!」
「いいか。琵琶湖を荒らしているのは、そいつらなのだぞ!」
ようやく状況を把握したペナント怪人達が、抗議するような叫びを上げる。
「でも、君達って最終的に世界征服企んでるのでしょう?」
「「うぐっ!?」」
縛霊手の指先に集めた癒しの力を槍を持った慈眼衆に向ける回道・暦(デイドリッパー・d08038)の指摘に、あっさりと詰まるペナント怪人達。
更に、ライドキャリバーのシャリオの弾丸が片方を撃ち抜いた。
「……折角の綺麗な湖畔なのだから、無粋なマネは控えたら?」
神郷・久遠(水晶の翅・d27970)が、破邪の光を纏った剣を手に踊り出る。
刃を振り下ろすと久遠はすぐに身を翻し、舞うようにひらりと、軽やかに慈眼衆の横に降り立った。
「ふむ。話し合いの前に邪魔者は排除するかのぅ」
呟いたアリシアがハートを象った可憐なロッドを構え、その先端から放つ圧縮した魔力の矢でペナント怪人を撃ち抜く。
「お主達の言葉、信ずるに値する」
「うむ。助太刀、感謝致す」
急な状況の変化に戸惑いを見せていた慈眼衆も、灼滅者達の行為と言葉で共闘を受け入れるのだった。
●12対2の戦い
「「琵琶湖よ、我らに力を!」」
ペナント怪人達の声と共に、ご当地の力の込められた2条の光線が放たれる。
光の向かう先は、慈眼衆。
圧倒的な数的不利に立たされたペナント怪人達は、灼滅者を無視して徹底的に慈眼衆を狙っていた。
勿論、灼滅者達も黙って慈眼衆を狙わせはしない。
「っ……ま、そう来ますよね」
「うー! ……させない」
暦と断がそれぞれ1発ずつ、その身を盾に光を遮る。
「ふむ。しばし待たれよ」
2人が代わって光に撃たれたのを見て、慈眼衆の1人が風を招こうと手を合わせ――。
「待って」
それを、久遠が遮った。
「傷は私が癒すから……敵から目を逸らさないで。前を見て」
告げながら、祝福の刻まれた剣から癒しと浄化の力を持つ風を解放し、前の仲間達へと吹かせる。
暦も後ろの慈眼衆達に頷いてみせ、久遠と同じ様に剣から風を自分を中心に吹かせた。
「先に行くぜ。良けりゃ続いてくれ!」
1つの誓いを込めて作られた剣を構え、仁が駆ける。
剣の刃を非物質に変えて振り抜き、ペナント怪人の霊魂を斬り裂いた。
「ふむ。ならば」
「うむ。我らは攻めようぞ」
灼滅者達の意図を察した慈眼衆は、その攻撃に続く。
荒ぶる風の刃と冷たく鋭い氷が、続けざまに光輪を持つペナント怪人に放たれる。
「容赦は致しません」
身体の半分程が凍りついたペナント怪人を、まほろが螺旋の捻りを加えた槍で、穿ち貫く。
「こいつで、トドメだ!」
氷に亀裂が入った所に、一気に間合いを詰めた虎鉄が地を蹴って、両足で飛び蹴りを叩き込んだ。
「ま、まさか琵琶湖ナイズされた私が琵琶湖で……!」
信じられないと言った様子で、ペナント怪人の1人が爆散する。
「うむ。見事な連携である」
「ははっ。前から思ってたけどあんたら強いよなぁ! 今だけでも味方でいてくれるのが頼もしいぜ!」
慈眼衆からの賞賛に、仁は笑みを浮かべフランクに返す。
「く、くそう! お前達ずるいぞ! 2対……えーと……兎に角多過ぎ!」
1人残されたペナント怪人は、狼狽を隠しきれない。
まあ、2対2の互角の勝負をしていたと思ったら相手側に増援がどんどん現れ、あれよあれよと言う間に相手の数が6倍にもなったのだ。
文句の1つも言いたくなっても、無理はないだろう。
「怪人に恨みは無いが、組織としての意向でのぅ」
そんな怪人を、アリシアの両手から放たれたオーラが容赦なく撃ち抜いた。
「今は琵琶湖を守っていても、最終的に迷惑行為しそうだし。琵琶湖でのキャンプに強制参加させるとか」
「あ、それ良さそう」
経験上さ、と告げた虎鉄の言葉の中にあった例えに、ぽんっと手を打つペナント怪人。
「させるわけないでしょう、そんな事」
そこに後方から間合いを詰めた征士郎が、ドリルの様に回転する杭で怪人の足を貫いた。
「世界征服は、めー! ……琵琶湖を愛する気持ちはいいけど……それがし達が倒すよ」
更に、摩擦で生み出した炎を纏った断の蹴りが叩き込まれ、怪人のペナント頭を燃やしていく。
「頭がーっ! こうなったらせめて慈眼衆を1人でも!」
光剣を構え直すペナント怪人だったが、暦のシャリオや征士郎の黒鷹と言ったサーヴァントも庇い手に回っている。
ペナント怪人の攻撃が慈眼衆に届く事は殆どなくなっていた。
「お覚悟――くぅっ!?」
手足を狙って突きこまれたまほろの槍は、しかし光剣に跳ね上げられる。
無意識のうちに僅かにまほろの手が緩んだ所に見せた、それがペナント怪人の最後の意地であった。
「汝が罪、この刃で……斬る」
突き刺した光の刀を通じて流し込まれたアリシアの魔力が、怪人の内側で爆ぜる。
「それがしは……一振りの刀……覚悟する」
断が鞘から抜き放った刀を一閃。淡雪の如く流麗な刃が、深々と斬り裂いた。
「安土城怪人様ァァァ!」
その叫びを最後に、残ったペナント怪人も琵琶湖畔に散ったのだった。
●戦いの後で
「と言うわけで、慈眼衆のみなさん。交渉のお時間です」
虎鉄の言葉と、他の灼滅者達から向けられる視線に首を捻る慈眼衆の2人。
「幾つかあるのですが……まず、破壊工作を止めて頂きたく、お願いしたいのですが」
「破壊活動はめー……」
まほろと断が、琵琶湖周辺の破壊工作について口を開く。
「ふむ。それは我ら2人に対してか?」
「うむ。この場だけの事なら、お主達の協力に免じて、このまま立ち去ろう」
それが、慈眼衆の譲歩できるライン。
破壊工作がそもそもの発端とは言え、ペナント怪人の琵琶湖化による戦力増強と言う安土城怪人の戦略に対抗する為である以上、他の慈眼衆や、今後についての確約はこの場では得られなかった。
「ですが、うちは組織と言う程、断固とした1つの意志を持たないのですよ。私達は共闘しましたが、他の人もそうとは限りません。約束を取り付けた方が、無意味な衝突が避けられます」
暦の言葉に引っかかるものを覚えたのか、慈眼衆達が顔を見合わせる。
「とは言え、この場で約束をしろ、と言っても難しいでしょうから。これを僧正様に届けて貰えないでしょうか」
答えあぐねるような様子の慈眼衆達を見て、征士郎が封書を差し出した。
予定していた段取りとは少し異なるが、此処で出した方が良いと思ったのだ。
「これは?」
「学園の意思統一を図る為、共闘を望む文書か使者を正式に送ってくれないか、と言う要望書です」
「共闘関係のメリット、デメリットを此処にいる8人だけでは無く、学園全体に向けて送って欲しいのです」
「ちなみに、今現在の僕個人の感情としては共闘に前向き。組織の一員としての判断としてはまず話を聞こう。そんなイメージ」
征士郎に続いて、まほろと虎鉄も封書の意義と自分達の考えを伝える。
「ふむ。お主達の考えは判った」
「うむ。この書状は大僧正に届けよう」
この場で中を検めても良いですよ、と言う征士郎の言葉には首を横に振って、慈眼衆は封書を受け取った。
(「嘘を言っている様子はないわね……」)
久遠は仲間と慈眼衆のやり取りに耳を傾け注意深く見守っていたが、慈眼衆の素振りに不審な点もなく交渉が順調に進んでいるのに、内心で小さく安堵する。
「それと。敵対している勢力についての情報を頂けますか?」
封書を渡した征士郎は、次の話題を切り出した。
「スキュラの配下だった安土城怪人にどんな隠し球がないとも限らない。可能な限り、情報を集めておきたい……」
まだ警戒は緩めないまま、久遠も口を開いて質問の意図を伝える。
「私達には情報が足りないのですね。約束とまではいかなくても「敵」の危険性や所在さえわかれば、私達も黙ってはいませんので」 お互いの「敵」の討伐を有利に進める為、と暦が言葉を続けたのが効いた。
そう言う事ならば、と慈眼衆が口を開く。
「安土城怪人の他には、恐らくシャドウのサルがおるだろう。後は賛同したご当地怪人も集まっている可能性が高い」
「だがいずれにせよ、戦いの帰趨を決めるのは琵琶湖ペナント怪人の戦力になる筈だ」
帰趨を決めると言う程に、慈眼衆は琵琶湖ペナント怪人の戦力を警戒しているようだった。
「ではもう1つじゃ。他に敵対関係の者はいるかぇ?」
続くアリシアの問いはその意図を図りかねたか、再び首を捻りながらもこんな答えを返してきた。
「誰が敵になり誰が味方になるかは、その時々による」
「昨日の敵は今日の味方。今日の味方は明日の敵。そうなり得るのだからな」
●収穫
話が終わりなら、と去ろうとする慈眼衆の袖を、断がくいくいと引いて引き止めた。
「学園に……要望や希望ある? それがし達も、持ち帰って……みんなで考えることはできるよ? メッセンジャー、してもいい」
進んで喧嘩はしたくない、と断は己の意思を伝える。
「僕もメッセンジャーになってもいいよ。其方が此方に知っておいて欲しい事とか、あったりしない?」
「大僧正の言葉以外に、我らから特に言う事はなし」
「だが、今の言葉も大僧正に伝えておこう」
虎鉄も言葉を足すも、特に新しい話はなかった。
「僧正様に、何卒宜しくお伝え下さいませ。それと、一般人には極力手を出さないようお願いします」
「ふむ。どちらも心得た」
「うむ。お主達も鍛錬に励むが良い」
征士郎の言葉に、揃って頷く慈眼衆達。この2人に限るが、灼滅者への心象は良くなっていると言えるだろう。
「あんたらであれだけ強いんなら、慈眼衆のトップのお方はかなりの実力者なんだろ? どんな人物なんだろうなぁ」
これまで黙って交渉を見守っていた仁が気さくな物言いで問いかける。
「我らの方も探ろうとするか。油断ならぬな」
「大僧正の力は、いずれ目にする機会もあろう」
裏の意図を見透かされ苦笑いを浮かべる仁。
一方の慈眼衆達は、ニヤリと笑みを浮かべている。別段、機嫌を損ねた様子はなかった。
「今後は、良き関係を結べると良いですね」
そう言って、まほろが白い手を差し出す。
「先も言ったが、今日の味方は明日の敵になり得るのだ」
敵味方はその時々次第。その考え故に、だろう。
良き関係、を否定こそしなかったが、慈眼衆達がまほろの手を取ることはなかった。
「まあ、戦国時代は、味方が敵に、敵が味方には日常茶飯事だったみたいですし。この時ばかりだったとしても。お互い、良い意味で利用しあえたらいいんですけどね」
「そう言う事だな。では、さらばだ」
「いずれ戦場で会う事もあろう」
暦の呟きに揃って頷くと、踵を返し慈眼衆達は走り去って行く。
黙って見送るアリシアの長い髪が、琵琶湖からの風に揺れる。
「本当に何もせずに行ったわね……交渉も上手く行ったと思っていいのよね」
遠ざかる背中が完全に見えなくなったところで、久遠が小さく息を吐く。
初めての実戦と言う事もありずっと気を張っていたが、ようやく少し緩められそうだ。
「険悪にならねえで済んだんだし、上手くいったと思っていいんじゃねえか?」
ポジティブさを発揮した仁の言葉に、他の者も頷く。
この場の被害はほぼ最小限に抑えられたし、報告すべき収穫もあるのだ。
「後は向こうがどう出るか……とりあえず、この辺片付けて帰るか」
「テントとか、出来る範囲で直していきましょう」
虎鉄の言葉に、暦が頷いて。
荒らされたキャンプ場を片付けた後、灼滅者達も学園に戻るのだった。
作者:泰月 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年6月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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