修学旅行2014~パイナップル・パラダイス

    作者:陵かなめ

     いよいよ武蔵坂学園の修学旅行の季節がやってきました。
     今年の修学旅行は、6月24日から6月27日までの4日間。
     この日程で、小学6年生・中学2年生・高校2年生の生徒達が、一斉に旅立つのです。
     また、大学に進学したばかりの大学1年生が、同じ学部の仲間などと親睦を深める為の親睦旅行も、同じ日程・スケジュールで行われます。

     修学旅行の行き先は沖縄です。
     沖縄そばを食べたり、美ら海水族館を観光したり、マリンスポーツや沖縄離島巡りなど、沖縄ならではの楽しみが満載です。
     さあ、あなたも、修学旅行で楽しい思い出を作りましょう!
     
    ●パイナップルパーク
     修学旅行最終日にも自由時間が設定されています。
     空港へ向かう前に、名護パイナップルパークを見学しましょう。南国のフルーツ・パイナップルを余すところ無く堪能できます。
     まずはパイナップル号に乗ってパイナップル畑の見学。工場見学や展示を見つつ、パイナップルの試食コーナーへ。ここでパイナップルをたっぷり試食して、お土産用のスイーツを見ます。パイナップルジュースやパイナップルのソフトクリームを味わうのも良いでしょう。
     まさに、パイナップルパラダイス!!
     甘いフルーツの味わいを、修学旅行の思い出に加えましょう。
     
    「パイナップルかー♪ きっと美味しいよ、楽しいよ♪」
     普段よりもテンション高めに空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)がそう言った。その手には、修学旅行のしおりが握り締められている。
    「パイナップル号、へえ、自動運転のカートなんだ。楽しそうだね。工場って、沢山のパイナップルをカットしたりしてるんだ! 凄いね」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)も、くまのぬいぐるみを抱きしめ、しおりを覗き込んだ。
    「でしょでしょ。それに、私絶対絶対、パイナップルソフト食べるよ!!」
     紺子の言葉に、太郎が頷いた。
    「僕はお土産を選ぼうかな。カステラやパインジュースもあるみたいだね」
     2人、ニコリと笑い合う。
    「ねえ、みんな、修学旅行楽しみだね♪ 一緒にパイナップルパークに行こうよ。きっと楽しいよ♪」
     紺子は皆に向かって呼びかけた。


    ■リプレイ

    ●パイナップルパーク
     名護パイナップルパークに到着したメンバーは、パイナップル号でパイナップル畑を堪能し、工場見学を行った。
     そして、お土産コーナーに移動し、それぞれ土産を物色したりしている。
    「パイナップル畑すごかったねー」
    「いやあ、畑とか見ると面白いもんだな」
     一・真心と吉沢・昴が並んでソフトクリームを口にする。
     天気は快晴。
     じめつくことは無いけれど、とても暑いことに変わりは無い。完全に南国の気候だから、冷たいソフトクリームがことさら美味しく感じられた。
    「うん、美味しいー」
     真心が頬を緩ませクリームを舐める。
     昴は、楽しそうな真心の頭をぽふぽふ撫でてみた。
    「えへへーっ」
     嬉しくなり、真心が微笑む。
     そこへ、土産を見て回っていた集団が通りかかった。
    「はー。試食のパイナップルすっごく甘かったよねー」
    「空色は相変わらず食べるのが好きそうだな」
     紺子のうっとりしたような声に、昴が気がついた。
    「まあねーって、ソフトクリーム美味しそう!」
    「ま、その辺は俺もだけど」
     互いに軽く挨拶を交わす。紺子たちは今から土産を探すようだ。手を振り集団が去っていく。
     仲間に挨拶をしただけだが、真心の心は何となくざわついた。昴が他の女子に優しくしているのを見たら、少し気になるのだ。
    「むぅ……むぅ?」
     何が気になるのだろう?
     優しい昴が好きなはずなのに。
    「……って、どうしたニノマエ?」
    「なんでもないもーん」
     様子のおかしい真心を、昴が不思議そうに覗き込んだ。
     さて、お土産コーナーの入り口から明るい声が聞こえてきた。
    「パイナップルソフトにジュースに、え、カステラ? 美味しそう!」
     独り占めしたいわ! と、アルメリア・ユーパトリウム。
     その後ろから、
    「僕は見学が楽しみだったんだけど……アルは当然食べる方なんだよね……うん、知ってた」
     ジリアス・レスアートの小声がする。
     パイナップルソフトクリームを発見し、アルメリアがジリアスを手招きした。
    「ジルくん、もちろん、ソフトクリームおごってくれるのよね? ね!」
     曰く、工場見学の時は「あんなにあるんだから一個くらい」って言ったら止められたし、つまみ出されてソフトクリームを食べられなくなるのも困るから諦めたのだ。
     確かに、「勝手に取って食べちゃダメだよ」とも、「即つまみ出されて、ソフトクリーム食べられなくなるけど……それでもいいなら止めないよ?」とも言った、けれども……。
     ジリアスは言う。
    「つまみ食いしなかったらソフトクリーム奢るとは言ってないってば」
     そもそも、昨日までに小遣いを使いすぎだと思う。
    「だって食べたい物とか買いたい物とかいっぱいあるんだもの。あたしは悪くないわ!」
     その件に関して、アルメリアはしっかりと胸を張った。
    「まぁ、僕もソフトクリームは食べて見たかったし、今回だけだよ?」
     軽いため息を漏らしながらも、ジリアスは2つパイナップルソフトを買い求めた。
    「ソフトクリームおいし~!」
    「ん、アイスの甘さとパイナップルの酸っぱさが合ってて美味しい」
     2人、舌鼓を打つ。

    ●試食にお土産にソフトクリームに
    「うまーーーっ! うめぇ!! パインうめぇっ!」
     試食コーナーからクレイ・モアの声が響き渡ってきた。
     沖縄に来たらパイナップルを食えと言う天の声に導かれたと言うクレイは、言葉通り試食用のパイナップルをたんまりと頬張った。
    「ん? 2人ともあんまり食ってなくないか?」
     ふと、左右に立つ2人に目をやる。
     食べていいのか戸惑うジグバールと一皿をゆっくり堪能していたシグマだった。
     遠慮しているのだろうか、なれば俺が食わしてやろうとクレイは両手で爪楊枝を持ち、パイナップルを刺す。
    「はい、一緒に『あ~ん』だぞ☆」
     ずずいと2人にパイナップルを差し出した。
    「ん、美味しい……あぁ、これはずっと食べていたくなるな」
     口に広がるパインの風味にジグバールが頷く。
    「騒がしいのに余韻を邪魔された」
     と、シグマが楽しげに笑った。
    「果物の甘い香りでいっぱいだな」
     辺りにも、甘い香りが漂っている。甘すぎるのは苦手だが、果物なら良い感じだと思う。
     パイナップルを堪能する2人を見て、ジグバールがカメラを構えた。
     先ほどお土産コーナー前でも、大きなパイナップルのオブジェをバックに写真を撮ったばかりだ。その時と同じように、3人で写るため周りの人にシャッターを頼んだ。
     そろそろ土産をと移動を始める。
    「お、パイナップルケーキうまそう」
     他のものも買う予定だがと、クレイがケーキのパッケージを眺める。
    「あっ、ジグ、パインジュースもあるぞ?」
     シグマが綺麗に並んだパインジュースのビンを指差した。
     どれにしようか迷っていたジグバールは、薦められたジュースとパイナップルに決めた。
     ふと、他の2人から熱い眼差しを感じる。
     これを使って何か作ってくれよと言う、期待の眼差しだ。
    「ん、楽しみにしてろよ?」
    「作ったら三人で食おうぜ」
     シグマの言葉に笑顔を返す。2人が笑ってくれるなら、飛び切りうまいものを作らなくてはと。
    「パイナップルチャーハン、なかったね」
     少し残念そうに牛房・桃子がソフトクリームを舐めた。
    「あの幻の料理にお目にかかれるかもと思ってたんだけどね」
     もし見つけたなら、きっちり味わって研究して帰りたかったのだが。
     海原・河音も、ソフトクリームを食べる。
    「しかたありません。大人しくソフトクリームを楽しみましょうか……」
     白牛・黒子の言葉に、一同はソフトクリームを眺めた。
     確かに、美味しい。
     ボート型に切ったパイナップルを器にチャーハンを盛り、具にもパインを使用し甘酸っぱいアクセントがあると言うパイナップルチャーハンを探しに来た3人だ。
     探したけれど見つからず、こうしてパイナップルソフトクリームを食べていると言うわけだ。
     そこへ、紺子たちが近づいてきた。
    「空色さんはソフトクリーム楽しんでる?」
     河音が声をかける。
    「今買ってきたばっかりだよー。この甘酸っぱい香り。サイコーだよねー」
     紺子がうっとりと手にしたソフトクリームを眺めた。
     そして、一口舐め取る。
    「はー。何これ、めちゃくちゃ美味しい」
    「紺子さん、美味しいですの? わたくしも美味しいと思いますの!」
     黒子が言うと、紺子が瞳を輝かせた。
    「甘酸っぱくて美味しいね♪」
     桃子も加わり美味しい美味しいと何度も頷き合う。
    「パイナップルっていろんな食べ方があるんだね♪」
     ケーキ、かすてら、ジュースにパイナップルパイと、様々なお土産が並んでいる。
     皆、思い思いの品を手にしている様子だ。
    「パイナップルのお餅とかありませんかねぇ……?」
     黒子がきょろきょろと見回す。
     何故、お餅かと言うと。
    「いや、だってわたくし餅ヒーローですし」
     とのことだ。
     まだ色々見て回ると言う紺子たちと別れ、3人はお土産を探しに歩いた。
    「ねえ、お土産決まった? どうしようかなー」
     ソフトクリームを食べながら、紺子が稲荷・九白に問いかけた。
    「そうですね。なかなか一つに絞れません。千歳緑さんはどうされます?」
     九白が言うと太郎が首を傾げる。
    「うーん。僕はカステラがいいと思ったんだよね。決めちゃおうかな」
    「太郎ちゃん決めるの早っ。それにしても、このソフトクリーム、本当に美味しいね」
     紺子がコーンをかじりつつ、遠いところを眺めた。どうやら、甘酸っぱい南国のフルーツを思い切り堪能しているようだ。
    「本当に、美味しいです」
     九白の口の中で、クリームがトロリ溶けていく。
    「そうだ!! もう一回パイナップルを試食しようよ。ソフトクリームで冷えた舌の感覚を戻すのだ」
    「美味しいものを求めるその姿勢、私も見習わないといけません……」
     紺子に尊敬の眼差しを向ける九白の後ろで、太郎が困ったように笑った。
     その時、お土産を沢山抱えたミュリリ・ポリックが姿を現した。
    「それ、全部お土産?」
    「そう、お土産は……これだ!」
     ミュリリが購入したお土産は多い。
     マドレーヌ、ラムネ、パイン丸々一つ、キャンディ、ケーキなどなど。パイナップルを使ったそれらの土産は、どれも美味しそうだ。
    「結局、目移りしちゃった……」
    「いや、分かるよその気持ち」
     今まさに、紺子たちも土産をどれにするか悩んでいるところだった。
    「紺子ちゃん、パイナップルソフトは?」
    「今食べたよー。美味しかったあ」
     一緒に1つのソフトをぱくっと食べたかったけれど、それなら仕方が無い。
     もう一度パイナップルを食べに行く紺子たちを見送り、ミュリリが再び土産を抱えた。

    ●【テトラ】
    「紺子ちゃんも買い物? お土産のお勧めあったら教えて欲しいな!」
     土産コーナーで紺子の姿を見つけ蛍雪・要が声をかけた。
     良かったら一緒に冷やしパインをと、紺子に近づくところを蛍雪・湊に止められる。
     湊がわびる様に紺子を見ると、紺子は笑いながら手を振り去っていった。
    「湊兄、湊兄! ソフトクリーム食べていい?」
     蛍雪・透が湊の袖を引っ張った。
    「静とトコさんにもよ」
    「男前のオニーチャンが全員分奢ってくれるって、ヤッタネ★」
     首根っこをつかまれたまま、このタイミングで要が親指を立てた。
    「お前……」
     湊は一瞬鋭い視線を要に向けたが、弟妹達に何かを強請られては断ることも出来ず、財布を取り出す。
    「わあ、ありがとう! ソフトクリーム美味しいね」
     ソフトクリームを受け取り、蛍雪・静がいそいそ食べ始めた。家族旅行は初めてだし、とても楽しい。
     静はパインクッキーを見つけ、即座に手に取った。好物のクッキーにご満悦だ。
     おばあちゃん達にも食べさせてあげるんだと、笑顔で語る。
    「そふと、くりーむ? ……つめたい」
     花厳・常世も、ソフトクリームを受け取る。
    「溶けちゃう前にね」
     並んだ透がそう言った。
     ソフトクリームを溶けるとは?
     常世は首を傾げながら、ちまちまと冷たいクリームを舐める。
     溶ける……溶けるとどうしよう?
     常世は透を見て、静を見て、湊を見た。
     少し考えたが、まあいっかと言う結論に達し、ソフトクリームが溶けて染み込んでいるコーンを握った。
    「冷たくて美味しいな」
    「虎緒、早く食べないと溶けるぞ」
     湊に声をかけられ、ソフトクリームを味わっていた夜真・虎緒は、手元のコーンを見る。
     確かに、手がべたべたとしてきた。
    「忙しない食べ物なのだな」
     虎緒は湊に荷物を預けるが、端からどんどんソフトクリームは溶けて行く。
    「わ、大変だ」
     静がハンカチを渡そうとしたが、それより早く勅使河原・胡蝶がウェットティッシュを取り出した。
     胡蝶は落ち着いて、虎緒の口元や手を拭いてやる。
    「ありがとう、助かった」
    「コーンも食べられますよ、ほら」
     言いながら、横から顔を寄せ一口食べてみせる。
    「そ、その持つ部分も食べられるのか?」
     許婚のお茶目な一面を垣間見て、虎緒がドキリと赤面する。
    「……?! 湊兄、私の持ってて!」
     その横で、透も慌てた声を上げた。
     案の定、常世のソフトクリームも溶けてきて、どろどろと手を汚し始めている。
    「トコお姉ちゃんも手ベタベタ!? ハンカチ使って使って!」
     静がハンカチを渡し、透と2人で常世の洋服の上に広げた。
     だが、ソフトクリームはとても美味しい。
     常世は上機嫌だった。
     強い日差しに手をかざす。家族と食べる味は格別だ。
    「要兄、ひとくち食べる?」
     透が差し出したソフトクリームを要が美味しそうに舐めた。
     お返しは冷やしパイン。
     冷たいスイーツが、喉を通り抜けていく。
    「胡蝶さんはお土産買った?」
     そう言う透は、パインのフレーバーティを買うつもりだ。
    「パイナップルワインケーキを考えています。帰ったらお茶にしましょう」
    「そうだね、旅行楽しかったから、帰ってまたお茶しましょ」
     そこへ、パイナップルの発送手続きを終えた要が戻ってきた。
    「ほら、お土産俺が持つよ?」
     兄らしいことをたまには、と言うことらしい。
     ソフトクリームを食べ終えた常世がうとうととし始めた。見学中はしゃいだし、疲れたのだろうか。
     湊が気がつき、抱き上げてやる。常世は湊に身を任せ、すやすやと眠りについた。
     スイーツを食べ終わり、土産を買い、一同は出口へと足を向ける。
     その手前で、虎緒が胡蝶にパイナップルのぬいぐるみをプレゼントする。
    「よければ、記念に」
     売り場で、彼女がもふもふしていたのを見ていたのだ。
     胡蝶は少し驚いたけれど、すぐに微笑を虎緒に向ける。
    「ありがとうございます、大事にしますね」
     そろそろ空港へ向かう時間だ。
     武蔵坂学園の生徒達は、甘い香り溢れるパイナップルパークを後にした。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月27日
    難度:簡単
    参加:19人
    結果:成功!
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