ゆるキャラじゃないもん。しろくまだモン

    作者:池田コント

     鹿児島のある山中に巨大な肉塊があった。
     肉塊の表面は脈動している。誕生を予感させる力強さだ。
     肉塊を遠くより監視するバニースーツを着た女性の姿がある。
     彼女はスマホの通話を切るなりため息をついた。
    「なんでこんなの見つけちゃったんだろー」
     浮かぶのは後悔と困惑の表情。
     やる気のない様子で両手のひらをあげる。
     お手上げだ、とでも言わんばかりに。
     実際、肉塊から発せられる気配は、彼女一人で到底どうにかできるとは思えない程禍々しく強大である。
     やがて、状況に変化。
     肉の壁を突き破り、内より生まれ出づる異形は、ずんぐりむっくりなひょうきんな顔。
     色は白だが、熊本出身の有名なクマのキャラクターそっくりの姿。
     名付けるならば、しろくまだモン。
    「なんか取り扱い厄介そうなのでてきたー!」
     彼女の驚愕をよそに、しろくまはなにかを求めて辺りを見回し、吠える。
     おそらく主を探しているのだろう。既にこの世にない主を。
     しろくまは動きだし、自らの進む道を妨げる岩を砕き、木々を倒し始めた。
    「うわぁ、下手にふれるとやけどしそうだし、とにかく厄介。やだぁ。これ暴れ出しても私のせいじゃないよね? ああ、頼むからうちの縄張りには入ってこないで! 神様、悪魔様-!」
     バニー姿の女性は祈るように手を合わせた。
     
     灼滅された大淫魔スキュラは、やっかいな仕掛けを遺していたらしい。
     それは、八犬士が集結しなかった場合に備えて生前の彼女が用意していた、予備の犬士を創りだす仕掛け。彼女の放った数十個の犬士の霊玉は、人間やダークネスの残骸を少しづつ集め、新たなるスキュラのダークネスを産み出すものらしい。
     予知が行われた段階では、この霊玉は大きな肉塊となっているが、この段階で倒してしまうと、霊玉はどこかに飛び去ってしまう。
     また、このダークネスは誕生後しばらくは力も弱いままだが、時間が経つにつれ、予備の犬士に相応しい能力を得ることになる。
     なので、肉塊から生まれた瞬間のダークネスを待ち構え、短期決戦で灼滅するしかないだろう。
     もし戦いが長引いてしまったら、闇堕ちでもしない限り勝利することはできなくなる。
     素早く、確実に、この敵を灼滅してきて欲しい。
     
     場所は岩や繁茂した木々がここそこにある山中。
     灼滅者はダークネスの誕生とほぼ同時に戦闘を開始できる。
     現場近くには非一般人らしいバニー姿の女性が一人いるが、彼女は戦闘に関わってこない。
     ダークネス、しろくまだモンはご当地怪人に属する。
     デフォルメされた白熊のキャラクターの姿で、体にアズキ、イチゴ、キウイ、パイン、ミカン、モモの模様がある。
     対応する霊玉は仁。バトルオーラと縛霊手と同等の武器を有している。
     特にオーラはかき氷状になったり、棒アイス状になったりと巧みな変化をするようだ。
     あとちょっと甘い匂いがする。
     このダークネスは、スキュラによって「八犬士の空位を埋めるべく創られた存在」だ。
     仮に力で八犬士に及ばなかったとしても、野に放てばどれ程の被害を生み出すか、想像もできない。

    「かわいらしい外見に惑わされずにがんばってきてくださいね」


    参加者
    百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)
    日向・和志(ファイデス・d01496)
    白鐘・睡蓮(奔る白くまさんの護り手・d01628)
    一蝶・信志(シンディ・d03095)
    守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)
    蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)
    ラックス・ノウン(バイゼルカイゼル・d11624)
    天原・京香(孤独を貫き通す少女の心・d24476)

    ■リプレイ


     一蝶・信志(シンディ・d03095)と守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)は仲間達から離れた。
     エクスブレインからの情報もあって、あっさりバニーの所在を見破ったのだった。
     バニーはよほど驚いたのか、草葉の陰から、
    「激! モロバレル! タマゲタケー!」
    (「なに言ってんのかしら、この子」)
    (「ちょっと頭弱いんかな……しかし、そんくらいの方がかわいい!」)
     観念して姿を現したバニーと茂みごしに会話する。
    「ハ~イ☆ ステキなバニー服ね。アタシも着てみたいわぁ」
    「……見たくなーい」
    「あー。聞こえたわよー? でもでもぉ、アタシなら、絶対バニー服似合うと思うのよ! てゆーか着こなしてみせる! 見てよ、この美脚!」
     信志の足は言うほどのものであった。引き締まった筋肉がメリハリをつけて美しい線を描いている。惜しむらくはその付け根には神楽と同じものが鎮座していることだ。
    「あっ、でも今は立て込んでるのかしら。面倒事、引き受けてあげてもいいわよ♪ あの肉塊をどうにかできたら、お願いを聞いてほしいの」
    「……?」
     戸惑い。単純に理解が追いついていないように見える。
     信志達は何者で、なぜここへ来たのか、なぜお願いをしてくるのか。
     神楽はその辺りのことをうまく説明した。武蔵坂の名前は出さず、あくまで同じ九州は大分県別府市のご当地ヒーローとしてご当地怪人を倒しに来たのだと。
     ならば。
     バニーにとっては渡りに船。勝手に戦ってもらおう。
     そう思ったか。
    「大丈夫、ここは僕らに任せて、キミは安全なところに退いちょって」
     バニーは神楽の言葉に笑みを浮かべる。
    「いーの?」
    「可愛い子を放って置けないんはヒーローのサガやろ」
    (「英雄色の好むっちな」)
     そこへ凜々しくも可憐な声が届く。白鐘・睡蓮(奔る白くまさんの護り手・d01628)だ。電話を使う程の距離ではなかった。
    「二人とも戻ってくれ。時間だ。孵化するぞ」
     神楽と信志は颯爽と敵へと向かう。
    「出来れば後でアドレスを……!」
    「あは、ナンパモンだー。よろしくヒーロー!」
     バニーは退避していく。
    「結構かわいか子やったね」
    「え、それはアタシよりもってことかしら?」
    「いや、それは、系統が違うちゅーか」
     コメントしづらいところである。


     霊玉よりダークネスが誕生する。
     その姿は、最大手の週刊少年誌に無断でイラストが使われたということで騒ぎになった、アレにそっくりだ。
    (「しろくまだモン、ダークネス、でもかわいい」)
    「あれやな、名前ゴロ悪いからしろモンでええんちゃう?」
     ラックス・ノウン(バイゼルカイゼル・d11624)などはついほだされかけるが、
    (「……あかん。こいつは、こいつだけは何としてもここで灼滅しないとあかん!」)
     日向・和志(ファイデス・d01496)は気と目が遠くなりかけるのをこらえて使命感の火を点す。
    (「これを野放しにしたらえらいことになる!」)
     主に版権的な意味で。
     しかしながら件の少年誌でも二九号で和解の特集ページが公表されたからほっと一安心である。
    「チェーンジケルベロース! Style:Whitedeep!」
     神楽の声が高らかに山中に響き渡る。
     説明せねばなるまい! 大分県別府市が生んだご当地ヒーローケルベロスの身体が白いオーラに覆われるとき、そこには地獄八湯が一つ、白池地獄の力が宿るのだ!
     ちなみに敵に対抗しただけで、白池地獄は今回の対決には関係ない!
    「とてもヒーローっぽい子なんだね」
     百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)達も能力を解放し、
    「咎人に、永久の安らぎを……」
     蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)はつぶやくように言う。
     しろモンは両手両足を使って獣のように動き始めた。
     主なきゆるキャラ。ゆるゆるすることさえ忘れて一体なにをするものぞ。
    (「見た目は別として、スキュラもとんでもないモンを置いてってくれたわね……」)
     天原・京香(孤独を貫き通す少女の心・d24476)は双頭の鷲の名を冠するバスターライフルを構え、白き獣に照準を定める。
     その動きにはまだ緩慢さが大分残っており、命中させることは難しくないように思えた。
    「さぁ、肉塊から生まれたしろモンをもう一回肉塊にしちゃうぞー! ビシッと! 仕留めるよっ!」
     莉奈の声を合図とするように、一斉に行動開始。
     卑怯というなかれ、既に戦闘は始まっている。
     しろモンは、本能からか敵と認識した。とっさに防御行動をとるが、遅い。
    「可愛いけど、君は脅威だから倒させて貰うね!」
     異形化した莉奈の腕が熊の両腕の壁をぶち破り、顔面に深くめりこむ。
     強烈な一撃をくらい、肉塊の残骸をふきとばしながら地面を転がった白熊に、ラックスは高速移動で目前へ迫り、
    「どうも灼滅者様です」
     ゴガン!
     龍砕斧を頭部めがけて振り下ろした。
     睡蓮がワイドガードを前衛に展開する中、ライドキャリバー赫怒は白熊に突撃をかけ、神楽は蹂躙のバベルインパクトを放つ。
     後方から和志と結唯が同時に炎をまとった蹴りを叩きこみ、立ち上がり損ねたところへ、霊犬加是の斬魔刀が閃き、京香のブレイジングバーストと信志の閃光百裂拳が炸裂した。
     立ち上る土煙。
    「やったか……」
     が、突然凍りつく。冷気が周囲の空気を張りつめたものにしていく。
    「……ですよねー」
    「がおがお!」
     かわいらしい鳴き声と外見に反して、相当タフなようだ。この短時間で和志一人分のダメージを受けたはずなのだが……。
     しろモンは土煙の中からグン、と飛び出すとラックスの足首をつかみ、そのまま無造作に投げ飛ばす。
     くるくると宙を舞ったラックスは体勢を立て直して座るように着地。
     した瞬間。
    「げ!」
     殴られた。
     正面から突っ込んできたゆるキャラに殴られるというのはなかなかない体験だろう。
    (「子供なら泣いてるわ」)
     ラックスは苦笑した。
     霊玉のダークネスは時間経過と共に本来備えているべき力を取り戻すという。
     だから莉奈達は短期決着を望んでいた。もっとも、全員が攻撃一辺倒とはいかないのでそうではない行動をとってしまう者がいるのは仕方ない。
    「皆さんを護って下さい、蒼穹!」
     防護符を放つ結唯の耳に五分経過を告げるタイマーの音が届く。戦闘開始時にセットしておいたものだ。
    (「もう五分経ったというのか」)
     睡蓮はしろモンの爪を避けつつ、炎をまとったエアシューズで蹴りつける。
     同タイミングで放たれたキャリバー赫怒の機銃を、しろモンはとっさに振り向いて氷を盾にして防いだ。
    「動きがよくなってきた……!?」
    「とんだっ!」
     跳躍したしろモンは空中から氷塊型オーラを投げてくる。
     莉奈や神楽はそれを砕き、ラックスや睡蓮は隙間を縫うように避けるが、
    「く、避けきれない。なら……!」
     守護の力を宿す護符が結唯の前面に展開する。護符による防御。衝撃に備えるが……。
    (「軽い……? ということは、もしかして」)
     結唯が意図に気づくと同時に、睡蓮が警告を発していた。
    「京香、上だ!」
    「え……?」
     オーラを下にかざしたしろもんが京香に襲いかかる。
     ズドン!
     京香の姿がかき氷の下に消えた。
    「京香さんっ!?」
     悲鳴じみた声が上がる。
    「やったな!」
     神楽の拳が音速を超え、しろモンをふきとばす。
     心配して駆け寄った仲間達の前で、京香は氷の中から顔を出した。
    「よかった。無事か……」
     安堵すると同時に猛烈に甘ったるい匂いが鼻をつく。
    「甘い良い匂い……うー、アイス食べたくなってきちゃった」
    「なんだか食欲がそそられ……わ、私ったら戦いの最中になにを!?」
     莉奈、結唯達女子の食欲を刺激するスウィーティ。
    「なによこれ、ベトベトするー」
     散開しながら顔をしかめる京香に、
    「練乳だな」
    「練乳?」
     睡蓮はギリッと唇をかむ。九州名物しろくまは練乳を多く含むのだ。
    「おのれ、そこまで真似してくるとは我が愛しのアムリタであるしろくまさんをどこまで冒涜する気だ!」
    「いやそこまで怒らんでも」
    「甘い!」
    「甘いか。練乳やもんな」
     周りにはわからないが、睡蓮には許しがたきことらしい。
    「普通にかわええのになぁ、あの眉毛とか……眉毛?」
    「ちゅーか。熊本のパクリやん! と思っとったけど、しろくまとくまモン、どっちや、どっちなんや」
     神楽の惑いにしろモンは答える。
    「がおがお」
     わからなかった。
     昔流行したサザエボンのような節操のなさを感じながらも戦いは続く。
     ラックスは氷塊を避けつつDCPキャノンを放つ。
    「こっちやで」
     挑発され、しろモンがラックスへ。外見は相変わらずだが、動きはますます鋭敏さを増していた。
     逃れられない。
     しかし慌てず騒がずラックスは蟹を投げる。
     蟹だ。
     しろモンはそれを避けようともせず弾き、
    「……うん。まぁせやろな」
     ラックスはふっとばされた。
    「なんだったんだ蟹ー!?」
    「いや、ダメやろなーとは思っとったんやけどね。まぁ、ダメやね……ガク」
    「ノウンー!?」
     まぁ、ラックスまだ全然戦えるけど。
    「風よ、皆さんを癒して下さい!」
     結唯は剣に刻まれた祝福の言葉を風に変換し仲間達の傷を癒す。
    「正念場だ。踏ん張ってくれよ!」
     癒やしの矢を生成しながら、しろモンを睨みつける和志。その目がキョトンとなる。
     その視線の先をたどれば、しろモンの頭上に悠然と立つ莉奈の姿。
    「そおーれっ!」
     マテリアルロッド星の囀りを天を突くように掲げ。
     しろモンの頭上に振り下ろす。
     ドダンッ!
     しろモンの頭が溶けかけのアイスのように変形した。
     莉奈は地面に降り立ち、
    「みんなもっと積極的に狙ってこ-? 大丈夫。スナイパー当たるよ!」
     莉奈が積極的に声を出し、それに応えるように信志も京香も確実に攻撃を当てていく。
    (「縛霊撃は外れる目があるわね……パターンは単調になるけど、早さで押し切る……」)
     信志のジグザグスラッシュ。
    (「弾を外さない自信はある。けど、少しでも精度が欲しいから」)
     京香の高速演算モード。
     しろモンは身を震わせると標準の姿に戻る。
     だが、確実に手傷は増えている。
     しろモンはオーラを棒アイスのようにして放つ。睡蓮はまるで列車の通る線路の横を過ぎるように、それをかわして炎をまとった蹴りをしろモンの側頭部へ叩きこんだ。
    「どべっ!?」
     かわした棒アイスは和志に命中して彼を雪だるまにしたが仕方ない。ワイドガードをかけてあるから麻痺はしづらいはずだ。
     タイマーは十分経過を告げ、十四分に近づいている。
     しろモンの攻撃は苛烈さを増し、京香の避ける先を読んで左へ。
    「正面!?」
     ガッ!
     オーラをまとった突進を受け、ふっとぶ京香。
     だが。
     衝撃は思ったよりも弱く、まるでなにかがクッションになってくれたかのようだ。
    「え……?」
     見上げれば、仮面。
     京香はラックスに抱きとめられたのだった。
    「た、助けてなんて言ってないんだけど!」
    「まぁこれはオレの勝手やね」
    「……でも、まぁ、ありがとうとは言っとくわね」
     しろモンのタックルが更なる犠牲者を生む。
     突進を受け、ふっとぶ信志。
     だが。
     衝撃弱し。
     見上げれば、和志。頭に大きなミカン。
     信志がふっとばされた先に雪だるま和志がいたのだった。
    「あらあ、まさかお姫様抱っこしてもらえるなんて思わなかったわ。ほら、アタシ、ちょっとだけ大きいし」
    「いやいやいや、たまたまだから。そういうつもりはなかったから!」
    「照れないでもシンディって呼んでくれていいのよ?」
     しろモンの成長速度に対応し、京香はライフルを瞬時に分離。
     左の銃口がしろモンを追い、影を撃ち抜いて、
    「そこね!」
    「!?」
     右のライフルから放たれた弾丸がしろモンの胸部を穿つ。
     しかし敵もさるもの、撃たれながらに攻撃を放つ。
    「きゃっ!?」
     ドガッ!
     結唯の顔面に練乳玉が直撃。
     あたかも顔だけ雪だるま。
    「……アンパ●マンになった気分です」
     結唯は雪を払ってしみじみとつぶやく。
     ここでしろモン、唐突に和志をベアハッグ。
    「ぎゃあああベトベトするー!?」
     特に意味はなかったらしく、本命のかき氷アタックを神楽へ。重量級の氷塊を、飛び出した霊犬加是が身をていして受ける。
    「これ以上は俺の体がもたない。血糖値的な意味で」
     和志はつぶやくが……。
     まだしろモンは倒れない。
     十四分のタイマーが鳴る。
     莉奈に襲いかかるしろモンの冗談のような爪。
     必殺の意志の込められた一撃は莉奈の体を血の詰まった肉袋へと変える。
     かに見えたが。
    「やらせんけん」
     神楽のバベルブレイカーが迎え撃った。
     ご当地パワーを奮い立たせ、しろもんを押し返す。
     だが、双方強力。訪れる膠着。均衡。
     大分と鹿児島の力比べ。
     ギリギリギリ……。
    「熊本のパクリに負けるっちわけにはいけんのよ」
    「……が、がお!?」
     せい!
     神楽が競り勝ち、しろもんは大きくのけぞった。
     そこへ、ラックスが今必殺のグラインドファイア。
     地面に叩きつけられたしろモンだが……。
     ビュンと飛び起きて、発したオーラでラックスをふきとばす。
     そして生まれた隙に信志が閃光百裂拳を放つ。
     常人の目には止まらぬ高速の拳の雨あられ。力の限り一発でも多く叩きこむ。京香のバスタービームが白い体に吸い込まれていき、
    「ここで断ち切ります!」
     結唯の剣が破邪の白光を放ちながらしろモンを切り裂いた。
     十五分を告げるタイマーが鳴った。
     クライマックス。ここで決着をつけなければならない。幸い倒れたのは霊犬加是だけ。
     しろモンは氷塊を周囲に浮かべ突進。
     狙いは睡蓮か。
     ギリギリまで引きつけて……。
    「今!」
     左前に跳ぶ。爪が髪を散らした。
     攻撃をかわし、間近からのレーヴァテイン!
     燃え盛る炎が白き獣の体に突き刺さる。
     絶叫。
     しろモンは傷口から練乳をまき散らしながら振るった爪で睡蓮を引き裂いた。
     睡蓮は薄らぐ意識の中でしろくまさんの為に殉じた自分を誇りに思う。
     しろモンに衝撃。
     それは和志が脇腹にレーヴァテインを突き立てたから。
    「パチモンは熊本県に怒られる前に引っ込みやがれ!」
     更に衝撃。
     神楽のバベルブレイカーが出力全開でしろモンの胴体を貫いた。
     二人という楔を打たれたしろモンは、莉奈の微笑をただ見つめるしかなく。
    「バイバイ。しろくまだモンのグッズ……帰ったら作っていいかな?」
     ロッドがしろモンの体を粉砕する瞬間、莉奈は確かに返事を聞いた気がした。
     がお、と……。


    「危ないところでしたね……」
     倒れた者は少なかったが、割とギリギリの戦いであった。
     火力勢が好調でなかったら結果は違ったものになっていたかも知れない。
     もうバニーの姿はなかった。
     信志が残念そうに、
    「もっと色々話したかったんだけど。バニーの衣装の話とか」
     それから周囲の調査を行いその場を後にする。
     甘い匂いが記憶に残っていた。

    作者:池田コント 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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