黒装の暗殺者は糸刃を振るう

    作者:叶エイジャ

     ある所に、ダークネスの残骸と、犬士の霊玉がありました。
     残骸は山の竹林の中。すぐ近くには川がありました。
     ある日、川の上流から、肉塊となった犬士の霊玉が流れてきました。
     ゆらゆらと揺れながら、岸辺へとたどり着いた肉塊は、そのまま転がり竹林へ。その場にあった残骸を取り込み始めました。
     やがてすべてを吸収した肉塊は、変形を始めました。
    「……」
     しばらくしてそこにいたのは、大きな黒い瞳と、同じ色のおかっぱ髪をした少女でした。首元に、『信』の霊玉が輝いていました。
     死体のように白い肢体を、暗闇のように黒いクロースがくるんでいきました。
     掲げた十の指。その間で、竹林に差し込む陽光を受けて、張り巡らされた鋼の糸がキラキラと輝きました。
     忠誠を捧げるスキュラから呼びかけが無くとも、彼女は気にしません。
     だって彼女は六六六人衆――呼びかけがあるまで殺人を重ね、技巧を積み上げれば、信頼に背くことはないのですから。


    「忠誠を誓うダークネスの創造……厄介な仕掛けは、灼滅されても大淫魔、といったところでしょうか」
     園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は顔を曇らせる。予備の犬士を創り出すための犬士の霊玉。それによるダークネスの誕生を、彼女は捉えたようだ。
    「報告が幾つかあがっているようですが、このダークネスは誕生後から時間が経過するにつれ、予備の犬士に相応しい能力を得ていきます」
     予知の行われた段階では「大きな肉塊」となっている霊玉だが、この段階で倒せば霊玉が無事なまま飛び去ってしまうという。十分な力を得れば少人数では対抗しきれない。よって、生まれた直後の短時間で決着を着ける手段が、最も有効だ。
    「その戦い方でさえ、長引けば闇堕ちでもしないと勝利はできなくなります」
     戦闘開始から十五分。そこが境目だ。それ以降戦闘を続けて勝つには、誰かの闇堕ちが必定となってしまう。
     敵は『信』の霊玉から生まれた六六六人衆だ。序列こそないが、その潜在能力を考えればどれほどの高位に匹敵するのか、想像もつかない。
    「使うサイキックは六六六人衆のものと、鋼糸のものに近似しています。生まれたばかりでも戦闘能力は高いです」
     ある山中の竹林に現れる。見た目は黒い和装の幼い少女だが、その行動原理はスキュラへの忠誠と、六六六人衆としてのものしかない。また、自己を癒すサイキックこそ持ち得ないが、それを補って余りある体力と、高度な殺人技芸を持っているので、注意が必要だ。
     感情の起伏に乏しいようで、コミュニケーションも取れないだろうと槙奈は続ける。
    「竹林は周囲に竹こそ生えてますが、戦闘行動自体に支障はありません。人も来ない場所のようですし、ちょうど日光が差し込むみたいで、戦いのみに集中できると思います」
     このダークネスはスキュラが八犬士の空位を埋めるべく創った存在だ。逃せばどれほどの被害を生み出すか分かったものではない。
    「厳しい戦いになると思いますが、皆さんの無事と、勝利を信じてますね」
     槙奈はそう言うと、微笑んだ。


    参加者
    御子柴・天嶺(碧き蝶を求めし者・d00919)
    九条・雷(蒼雷・d01046)
    普・通(正義を探求する凡人・d02987)
    音鳴・昴(ダウンビート・d03592)
    海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)
    柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)
    銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)
    外道・黒武(外神の憑代・d13527)

    ■リプレイ


     ある初夏のことだった。
     高く伸びた竹林は、木漏れ日にほんのり明るく、光の濃淡がまだらの絨毯を織り成していた。
    「ったく、迷惑な置き土産を残してくれたモンだぜ」
     柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)が、緑の天蓋を見て息を吐く。その視界を笹の葉が通り過ぎた。くるくると舞い落ちる細長の葉は、ライドキャリバーのガゼルに着地する。ガゼルは微かなエンジン音を立て、震い落とした。
     水のせせらぎが聞こえてくる。
     ――静けさは、張り詰めた緊張を孕んでいた。
    「八犬士が揃ったらスキュラが復活、とかならなければいいですけど」
     銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)がそんな想像をしてしまうほどに、スキュラの産物は得体が知れない。霊玉の目的が犬士の保険だけかと、疑心さえ抱いてしまう。
     音鳴・昴(ダウンビート・d03592)の言葉も、そうした疑念を含んでいた。
    「つか、ダークネスって人いねーと増えないんじゃなかったのか?」
     素材が死体や残骸、残留思念とはいえ、話だけ聞けば生命の創造に近い。ほいほい作られても面倒だと、彼が呟いたその時、霊犬のましろが川のある方角を向いた。続いて湿った音が聞こえてきた。肉塊だ。
    「よりにもよって六六六人衆か……」
     変形していく肉塊に、御子柴・天嶺(碧き蝶を求めし者・d00919)は表情を引き締める。戦闘経験のある屍王や炎獣を含め、実に多様なスキュラダークネスが生まれてくる。そしてそのいずれも、一時たりとも気が抜けない相手だ。
    「望んでそう生まれたとは、かぎらねェけどな」
    「……でも、災厄を生み出すのが確実な彼女を、容認することはできない」
     海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)にとって、ダークネスとはいえ『生まれたばかりの存在を討つ』という行為に思うところはある。感情を吐露した眞白に共感を抱きつつも、普・通(正義を探求する凡人・d02987)の理性は真逆の言葉を紡いでいた。相手は六六六人衆――極めて大量殺戮を犯しやすいダークネスだ。まだ見ぬ誰かを守れる……たとえ独りよがりだとしても、そう思い刃を振るうしかない。
    「殺す為に生まれるのと同時、殺されるのも必然――皮肉なモンだねェ」
     すでに臨戦態勢となった九条・雷(蒼雷・d01046)の周囲を、蒼いオーラが稲妻走った。その双眸はもう、強いエナジーを湛えた黒装の少女を捉えて離さない。灼滅者の存在に気付いた六六六人衆に、彼女は口唇を深く刻んだ。
    「それじゃあ、人殺しを覚える前に死んでもらいましょ」
     あるいはその言葉は、愛しい強敵に対する彼女なりの優しさだったかもしれない。

    「……」
     おかっぱ髪の少女は、感情のない黒瞳で灼滅者たちを見ていた。ぼんやりとした様だが、隙はない。その首元に輝く霊玉の文字を見て、外道・黒武(外神の憑代・d13527)は複雑な表情を浮かべた。
    「『信』の犬士で『信頼』を得るために技巧を磨くか……いいぜ、君の『信』と俺の『信』、ぶつけ合おうじゃないか」
     たとえば仲間の為に怒れる心。たとえば仲間を信ずる心。ダークネスの本質がどうであれ、その心が完全な『外道』であればどれほどやりやすいか。せめて、己の心が弱いものではないという証を見せる――普段はお調子者だろうと、矜持はある。
    「外なる世界を見て、嗤うモノ」
     静かな宣言は魔力を迸らせた。振るった手が生み出すは凍氷の魔法陣。急激な熱吸収は空間を凍結させ、周囲一帯を白き世界へと変える。
     しかし、そこに凍りついた少女の姿はなかった。
    「さすがは六六六人衆ってとこかねぇ……」
     見上げた先には宙に浮かぶ少女。高い機動力で死の魔法を脱した暗殺者は、両の腕を広げたまま空中に静止している。指から伸びる鋼糸が周囲の竹へと巻き付き、陽光を受けて煌めいていた。小柄な身体に似つかわしくない、膨大なサイキックエナジーが溢れだしている。
     総毛立つような殺意の圏内に、しかし紫桜里は臆することなく踏み入った
    「……いきます」
     自らを奮い立たせる呟きを後方に流し、銀髪の少女は駆け出している。手にした刀は刀身が身丈に迫るほど長く、魔法の残梓である冷気によって結露する。紫桜里が地面を蹴るのと、ダークネスが降下するのは同時だった。一瞬後、互いの持つ鋼の武器が交差する。
     甲高い響きの後、バランスを崩して着地したのは黒い少女だ。その瞳は、黒死斬でついた僅かな傷に見開いている。浅いが、ジャマー効果によって機動力を殺すには十分な一撃。
    「それじゃ、遊びましょ?」
     後続の雷が瞬時に間合いを詰め、繰り出した拳から炸裂音が鳴り響く。抗雷撃。空気を急速膨張させた紫電が拳に纏う。黒い少女は、まだ動かない。真正面から突撃した雷は、しかし寸前で、拳を己が右側面の虚空へ叩きこんだ。
     首を薙ごうと密やかに迫っていた鋼糸が弾かれ、消滅する。
    「子供だましね」
     雷の手首が返り、手刀が伸びる。だが攻撃の停滞は否めない。指先は残像を穿つのみで、ダークネスは間合いの外へ跳び退いていた。
     その指が軽やかに動き、幾本もの鋼糸が空を切って奔る。
    「痛い思い出とか、何もねぇかもだが……ッ!」
     Seraphim――長大な剣にも見える眞白のバスターライフルが炎を纏った。銃口から生み出された灼熱の赤は飛来する鋼糸を即座に燃やしつくし、繰り手である少女をも飲み込む。その光景に刹那、眞白が痛みを覚えたように目を細めた。
    「螺旋を描き敵を貫け……」
     炎から抜け出たダークネスへと、天嶺が蒼の組紐を握りながら螺穿槍を繰り出す。切っ先は空をねじ貫きながら突き進み――急所を目指すその過程で、甲高い悲鳴を上げた。横合いから軌道を逸らそうと、幾本もの鋼糸が刃へとぶつかる。火花と擦過音を飛び散らせながら、螺旋の刃は少女の肩を穿つのみにとどまった。反対に、空間に走る煌めきが天嶺を襲う。
     モトバイクの硬い装甲が爆音を引っ提げて割り込み、それを防ぐ。
    「時間との勝負だ、飛ばしてくぜガゼル!」
     搭乗する高明の言葉にエンジンを高鳴らせ、ガゼルが突進を開始。突き出した機銃が撃ち出す弾幕を、六六六人衆は腕を振るい鋼糸で弾いていく。火花を散らしながら後退する少女に追いつき、高明の黒死斬が奔った。影によって形成された刃が、弾幕の作る死角から到達し、機動力を更に削いでいく。
     だが、まともに入ったダメージはまだ少ない。
     黒装のダークネスが反撃に移った。指を閃かせた時には、幾重もの鋼糸が竹林の中を走っている。張り巡らせた糸の梁へ飛び乗りながら、少女は包囲を進める灼滅者たちに向かい腕を振るった。飛び出した鋼糸が、鋭い光を放つ。地面に突き立ち切り裂く極細の刃は、黒武や紫桜里から赤の飛沫を上げさせ、カバーに入った高明たちを傷つける。
    「回復は、任せて下さい!」
     通の身体から風が巻き起こった。癒しの風を招く彼に攻撃が届かないよう、眞白のバスタービームが糸の群れを薙ぎ、前衛陣を中心とした近接戦が仕掛けられる。遠距離攻撃をかわしながら糸の梁から梁へ飛び移る六六六人衆と、追いついた灼滅者たちの間で拳や剣、槍が乱舞し、激突音と火花が繰り返し生じる。
     昴が放った魔力の光線が、束ねられた鋼糸の盾を打ち破り、殺人鬼に深々と突きささった。衝撃で崩れたダークネスの隙をつき、昴が梁の上を滑るように移動しながら、その足に激しい炎を灯す。糸を焼き斬りながら放つ蹴りは敵手の胴に赤い弧を描き、黒装の少女を地面に叩きつける。遅れて降り立った昴が告げた。
    「五分だ」
     最初の攻勢は、成功だ。いくつかは外したものの、後々まで響くであろう爪跡を残し、手応えは悪くない。
     しかし、時間の経過は灼滅者たちにとって残り時間の減少をも示す。
     少女が立ち上がっていた。その身から溢れる殺意はいささかも衰えがなく――むしろ増大していた。膨大なエナジーを、今度は指先から己が武器にまで伝え、糸が生あるモノのように激しくのたうつ。
     空間に奔る鋼の煌めきの数は、それまでの三倍を超えていた。

     鋼の糸が、走る、奔る、刃疾る。
     ダークネスが動くたび、軌跡上の竹が裁断され崩れ落ちていく。
    「十分だ」
     竹林を崩壊させながら迫る六六六人衆へと、昴が蔦の装飾がなされた和弓を向ける。霊力を宿した矢は、しかし到達する前に鋼の糸に寸断され消滅。糸はそのまま地面を穿ち、昴が立っていた場所を寸刻みにしていく。かろうじて回避した昴へと少女が更なる糸刃――を振るおうとして、飛び込んできたましろの刀を迎え撃った。霊犬がカバーに入った間に昴は立ち上がり、舌打ち。
    「めんどくさい」
     今の攻撃に掠ったのか、腕時計が切断され、腕は血を流していた。痛覚を無視し、昴は歌を紡ぎ、リズムで秒数を測りだす。伊達にサウンドソルジャーをやってはいない。
    「もう少しです、頑張りましょう!」
     十分以後の行動――それは、残り二分の間に全力攻勢の準備を整える事。通が取り出した符に力を込め、鋭く放つ。ちょうどそれは黒装の殺人鬼と戦う雷へと向かい、死角より襲撃してきた鋼糸を防護結界で防ぐ。高明もまた、同様に天嶺へと符を投げる。前衛が二人掛かりかつ、補助を加えても、なおダークネスの方が優勢だ。
     縦横無尽に走る糸が雷の足を裂き、天嶺の鬼腕を絡めとる。ダークネスは追い撃ちをかけず、首を傾げて死角からの斬撃を回避した。かわされた紫桜里が二の太刀を放つより速く足に糸が巻き付き、紫桜里の心臓へ少女が貫き手を繰り出す。
    「させねぇよっと」
     抜き手を炎の旋風が打ち払った。黒武の蹴りに少女は飛び退く。ダークネスが攻撃に移るのを眞白は許さなかった。翻ったチェーンソー剣が鋼糸を断ち切る。より合わさった鋼と回転する刃とがぶつかり合い、耳障りな擦過音を撒き散らした。
    「……」
    「……っ」
     細い糸刃とチェーンソーの刃は拮抗するも、小柄なダークネスの表情は変わらず、眞白は徐々に押されていく。
     最後の攻勢の合図が聞こえたのは、その時だった。
    「テメェはここで仕留める!」
     激しいモーター音とともに、瀑布のような斬撃が降ろされる。
     全力をこめた高明の動力剣の一撃は、地面に亀裂を刻んだ。
     黒装の少女は飛び退き――しかし、その右腕は斬り飛ばされ、後方へと舞っている。
     左手を動かし鋼糸を操るも、半減した脅威に高明は全身に傷が増えるのもいとわず剣を振って追いすがる。主人のない忠犬は狂犬に等しい。六六六人衆を逃せば確実に出る犠牲を、絶対に食い止めないといけない。好機は今だ。
     襲い来る鋼糸を斬り飛ばし進んでいた高明が、目を僅かに見開く。
     地面に落ちようとしていた右腕に鋼糸が巻き付き、少女の元へと引き戻していた。切断面にくっついた腕を、和服の上から鋼糸が縛りつけていく。
     右手が動いた。指先から伸びる鋼の糸が、至近距離から高明を襲う。
     高明が深手を覚悟したその時、巨大な腕が糸の刃を薙ぎ払った。
    「私の手が届く、その中の誰一人として、殺らせはしません!」
     通が魔杖を構えた。血飛沫く鬼神の腕を戻し、刃の渦中を進む。取り出した符の結界が展開するそばから破壊されながらも、通の突き出した杖の先はダークネスを捉え、内に秘めた魔力を爆発させる。
     吹き飛んだ六六六人衆を追って、天嶺のオーラが紫から紅蓮へと変わった。
    「炎よ――浄化の力をもって、焼き尽くせ!」
     レーヴァテインの炎に、眉一つ動かさず少女は指をくねらせた。天嶺の首に後ろから糸が巻き付き、同時に斬弦の糸が前から襲う。
     炎が到達するのが先か、致命傷を負うのが先か。
    「そのまま進んでください!」
     紫桜里が中段の構えから、刀を奔らせた。刃の煌めきは巻きつく鋼を切断し、さらに前方からの鋼糸を斬り伏せていく。
     雲耀の一閃が、道を切り拓く。
     炎の闘気がその道を通り、ダークネスへと喰らいつく。
     そのまま炭化し尽くしてもおかしくない状況で、黒装は赤く燃えながら更に鋼の糸を振るう。剣雨のように振り立つ銀光に、灼滅者たちの赤が舞う。
    「あははっ、やっぱ六六六人衆って強ォい!」
     その赤に彩られ、むしろ雷は笑みを浮かべた。殺気とも闘気ともつかぬ気配を放散しながら、己の傷も顧みない暴風となって敵へと跳躍する。
     轟音と、爆風。
     間合いに入った瞬間、閃光となった拳が大気を破裂させた。鋼糸も空気を刻み舞う。尋常でない手数の攻防が、防御を無視して繰り広げられている。
     そしてついに、糸の防御の間隙を突いて、雷の拳が撃ち込まれた。
    「殺しきるまで遊んであげる。あと数分の人生、最後まで楽しんでいこうじゃない!」
     打撃に後退した少女にそう告げ――雷の口から血が伝い落ちた。例え掠っただけでも、鋼糸に宿ったサイキックエナジーは常軌を逸し、内臓に甚大なダメージを与えていた。戦闘続行は厳しい。
    「……」
     一方動きは鈍ったものの、ダークネスはまだ倒れない。
     耐久力はもとより、何か別の気迫がそうさせているようにも見えた。
    「それが君の『信頼』か?」
     満身創痍に近い仲間の前に立って、黒武が告げる。
    「俺は仲間を信頼して、今此処に君と対峙している。君はどうだ?」
    「……」
     少女は答えない。通じたのかさえ分からない。
     ただ『信』の宝玉が爛、と輝いた。
     抜き撃ちのように動いた両者の武器が、同時に相手を穿つ。黒武の縛霊撃によろめきながらも、ダークネスは霊網を切り裂いて上方へ跳ぶ。膝をついた黒武が上空からの攻撃に備えた。
    「違う、下だ!」
     眞白の警告。足場に注意していた彼は、いち早く仕掛けられた罠に気付いていた。地面から跳ね上がり、灼滅者たちを包み込もうとする鋼糸の檻を、眞白は長銃を叩きつけ破壊する。
     その銃口が、上空の少女へと向けられた。
    「最期まで看取ってやるから……もう、眠れ」
     大出力の光が、残る鋼の糸ごとダークネスを直撃。竹林の向こうの空へと消えていく。
    「悪い、タイムリミットだ」
     昴が、魔導書持つ手を掲げる。
     その先。竹林の天蓋で宝玉が眩く輝き、力を増大させていた。
    「お前の滅びのな」
     昴の魔力光が六六六人衆を穿ち、宝玉を貫き砕く。
     サイキックエナジーの爆散が、戦いの終わりを告げた。

    「……終わりましたね」
    「さよならね」
     紫桜里の言葉に雷が応え、眞白が瞑目する。信頼か、と黒武は空を見上げた。
    「なんでこう、気が合いそうな奴ほど敵になるんだよ……やり辛いねぇ」
    「……こんなのは、ただの自己満足だろうけど」
     黙祷を捧げた通の呟きに、高明がいいんじゃないか、と応じる。
    「それができるのは、戦った俺たちだけだ。ま、大して強くもなかったし――痛ッ!」
     軽口を叩いたところで、ガゼルの体当たりに悲鳴が上がる。技あり。
    「次は何が生まれてくる事やら」
     スキュラの置き土産がこれで終わりとは思えない。天嶺はだが、信じている――次がきても、きっと自分たち灼滅者が対処してみせると。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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