夕陽が、空に舞うシルエットを地面に映す。
町内の家から家へと飛び移る影は、複数の人のモノ。瓦葺きの屋根を力強く蹴り、別の家の屋根へ、あるいは塀や倉庫の上へと降り立ち、強靱な腕と脚力で障害物を乗り越え、飛び越えていく。
その動きは、知っている者ならフリーランニングや、パルクールに近いと言うかもしれない。しかし空を舞う人々の身体能力は世間一般のそれをはるかに超え――ついでに言えば、周囲をはばからぬ奇声を上げまくっていた。
「アオッ、アオッ」
「イアッ、イアッ」
家々の上で雄たけびによるコミュニケーション(?)をとる彼らは、そのすべてがターザンルックや原人ルックといった出で立ちで……そのいずれも、例えばサラリーマンがスーツを破いたたものであったり、バッグなどの小物を引き裂いた即席の被り物だったりする。
「フンゴ、オンゴ! フンゴ、オンゴ!」
「オーエッ、オーエッ」
最初は上空に舞う人影に驚いていた人々も、やがて次々に雄たけびを上げて現代の原始人へとなっていく。
同心円状に拡大していく原始人化現象。その中央に位置する広場に、巨大な四足獣がいた。
それは、全身から炎を発するトカゲであった。
●
「これまで遭遇したイフリートとは、別種族のようです」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)はそう言って、集まった灼滅者たちを見まわした。
「事件を起こしているのは、大型爬虫類或いは恐竜……つまり、竜のような姿のイフリートです。このイフリートは、知的文化や知性そのものを嫌います。そのことを体現するかのような、ある能力を持っています」
それは、自分の周囲の気温を上昇させ、範囲内の一般人を『原始人レベルに知性を劣化させ、原始人のような行動をさせる』能力。
この能力の範囲は、最初は狭いものの、徐々に広がって行く。最終的には都市丸ごと一つが、原始時代化してしまうだろう。
「原因のイフリート自体は効果範囲の中心にいるので、発見自体は簡単なのですが……」
姫子は一旦言葉を切った。
「原始人化した一般人の中には、強化一般人としてイフリートの守護につく方も出てきます。この点は注意が必要でしょう」
謎のイフリートは、事件の起こった町の広場にいる。姿は巨大な火のトカゲ、といった感じだ。
町はすでに原始人化が進んでおり、強化一般人との戦闘は避けられない。
「強化一般人はイフリートから離れているので、前哨戦といった形になります」
イフリートと連携していない分、正面から戦っても消耗は少ないだろう。また、接触時に交渉すれば戦闘をせずに済むかもしれないと、姫子は言った。
「強化一般人たちは知性が劣化しています。彼らが喜ぶことをすれば、敵とみなさないかもしれません」
ただ強化一般人たちはイフリートの性質を受け継いでいるので、知的文化や知性を感じさせることは控えた方が良いだろう。
「皆さんが遭遇するのは、普段は町内シルバー会に所属してるおじいちゃんたちですね」
町の御意見番とか、長老とか、頑固じーさんとか言われる人種である。それが四人。いずれも偉そうな原始人と化している。
彼らを突破すれば、残るは元凶のイフリートだ。
「ファイアブラッドと、長い尻尾を振ることでエアシューズに近似のサイキックを使います」
知性が低く人化もできないようだが、代わりにその戦闘能力は高い。気を付けてくださいと、姫子は念を押した。
「イフリートが灼滅されれば、原始人化していた一般人も徐々に知性を取り戻していきます。どうか皆さんの力で、イフリートの企みを阻止して下さい」
参加者 | |
---|---|
神羽・悠(炎鎖天誠・d00756) |
村上・忍(龍眼の忍び・d01475) |
伐龍院・黎嚇(龍を伐る者・d01695) |
戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549) |
アンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143) |
焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752) |
大空・焔戯(蒼焔狼牙・d23444) |
ペペタン・メユパール(悠遠帰郷・d23797) |
●
夕日をバックに、黒い影が幾つも空を舞う。
奇声を上げ屋根から屋根へと飛び移るのは、服と知性を脱ぎ捨ててしまった人々だ。
「これは……劣化したくないものね」
その光景にペペタン・メユパール(悠遠帰郷・d23797)が呟いた。声にはやや疲れた響きがある。
日射しが弱まる時刻なのに、むしろ熱さは増していた。イフリートによって町の気温が上がっている。サウナにでも入った気分だ。吹きつける風は灼滅者の体力こそ奪わないが、精神的にくるものがあった。
原始人化した者もちらほら見え、まったく遭遇せずに進むのは難しそうだ。
「来ましたね」
焔宮寺・花梨(珈琲狂・d17752)の視線の先に件の強化一般人、爺A、B、C、D(仮)が現れた!
「エーマヤーウ! エーマヤーウ!」
「ジャ!」
「ジャア!」
「じゃああ!?」
灼滅者たちの方針は、戦闘回避である。
知性を嫌う性質を考え、衣装に注意を払った者は多い。
「く……目的の為とはいえこんな姿をせねばならんとは」
「まあ、少しの辛抱でしょう」
腰にボロ布を纏っただけの伐龍院・黎嚇(龍を伐る者・d01695)の嘆きに、上着を腰巻にした戒道・蔵乃祐(グリーディロアー・d06549)が抑えた口調で返した。敵の実力は未知数だ。万全を期すため避けられる戦いは避ける――とはいえ、割り切り具合には差が出たようだ。
「っし! 全力のおもてなし精神で退いてもらうぜ!」
灼滅者を認めて止まった爺カルテットに、神羽・悠(炎鎖天誠・d00756)が勇んで前に出る。こちらは約二年前のハロウィンで着た、竜人を模した野性味溢れる服だ。その横を大空・焔戯(蒼焔狼牙・d23444)がイフリート姿――黒き狼となって進む。姿の意図は狩猟犬と見せるためだ。
「ジャ?」
「じゃじゃじゃ!?」
接近する彼らに原始人たちは身構え、ついで差し出されたスイカなどの果物と肉類に顔を見合わせた。
「コレ、サシアゲル」
「!?」
黎嚇の片言が通じたかはさておき、悠や黎嚇の見せる態度からもその意を汲み取ったのだろう。驚きつつもどこか嬉しげである。
「三大欲求や、原始的な感情が強いですね……」
テレパスを試し、アンジェリカ・トライアングル(天使の楽器・d17143)はそう判断した。知性劣化のせいかあまりに単純で、逆に漠然としている。少なくとも不快感は無いように思えた。
問題なしと、アンジェリカはシャーマン服をひるがえし情熱的な踊りを披露する。その手拍子に合わせ、花梨も歓待のダンスを舞った。蔵乃祐が手拍子に乗り、つられてじーさんたちも手を叩き始める。何故か一人が号泣した。
「エーマヤーウゥ!」
「どうしたの? 話を聞かせてくれる?」
「ジャジャ。ジャジュジャク、ジャハシーワ!」
「そう。長生き、すごいわ。とてもすごい」
訳を聞くペペタンに、何事かのたまう爺A。ペペタンは用意した花束を渡して慰める。
村上・忍(龍眼の忍び・d01475)も花飾りを作っていたが、こちらは水着姿の忍にええとこ見せようと、爺様方にハプニング。
「ジャ!」
「ジャア!」
「じゃああ!」
ありったけの筋肉をパンプさせて見せつけるお爺さんズ。不毛な争いの審判を委ねられ、忍は、
「まあ、これはこれは」
笑顔で流した。
結果、花飾りを最初に受け取った爺Cが雄叫びを、残る二人が哀しげな声を出す。
「ウホウホ、ウホホ」
そんな二人に、蔵乃祐は適当にウホウホ言いながら、優しく孫の手を渡した。
用途が分らず爺Cのでんぶに突き立てようとする二人に蔵乃祐は丁寧にレクチャーし、これがなかなか好評を得るのだった。
●
灼滅者たちの「おもてなし」におじいさんたちは満足したようで、イフリート戦前の懸念は大事なくクリアだ。
広場へと進む彼らの視界に、やがて巨大な炎影――謎のイフリートが見えてくる。
「大きいのね」
ぺペタンが言う様に、佇むイフリートは遠目にも大きく、家屋がひとつ炎上している様にも見える。
「知性を劣化し局地的な原始時代を作り上げる……何とも妙な真似を」
スサノオの「古の畏れ」といい、この幻獣種も『過去』と強い関係があるのかと、忍はサウンドシャッターを発動する。
「アイツ、何考えてんだろうな? 普通の奴より古いのか、頭が」
意図の詳細は、不明。それでも焔戯は獣で良かったと、周囲の光景を見てそう感じていた。
「幻獣種イフリートは哺乳類の種族だったはずですけど」
謎のイフリート――巨大な爬虫類あるいは恐竜といった姿に蔵乃祐は思考に沈む。目前のダークネスは人類とは別系統の進化があったことを示唆するのか。それとも別の真相があるのか。興味は尽きないが、情報は乏しい。
「どんな姿であれ敵は敵、宿敵に変わりはねーんだ」
俺の炎でぶっ倒す。そんな悠の言葉に、花梨も決意の表情で頷いた。
「なんであろうと、イフリートであることに変わりません。必ず、倒して見せます」
広場についた。近くで見れば、地を踏みしめるダークネスの足が石柱のように巨大だとわかる。立ち昇る炎の壁の向こうに、全身を覆う赤い鱗が見えた。長い尾まで含めると、もはや体長がどれほどか判別はつけづらい。
頭部は家屋の天井近い高さにあった。巨大な目が獰猛な光を放ちながら、そこだけが現れた灼滅者たちへと動く。視線が向けられた瞬間、叩きつけるような圧力と熱が襲ってきた。
「これだけ大きいと、存在感がありますね」
武器を取り出しながら、アンジェリカは腕で顔を庇う。そうしなければ喉が焼けそうだった。
「遂に、この時が来たか……」
そんな熱も圧力もまったく意に介さず、黎嚇は声を震わせる。
「待っていた待ち侘びた待ちくたびれたよくぞ出てきた! 我こそは龍殺しの伐龍院! 我が一族の悲願成就の為、貴様の肉体も魂も全て、この刃で征伐し解体してやる!」
黎嚇はすでに、この謎に満ちたイフリートを屠るべき『竜』と見なしていた。その身はもう、今回の為に一新した装束に包まれている。縦に構えた白の聖剣に黒の解体ナイフを重ね、黎嚇は断罪の十字を突きつけた。同時に、殺界が広がっていく。
折しもそれは、イフリートが灼滅者たちに向かって歩み出した瞬間。
その一歩は大きく、巨体の動きは速い。
●
太い筋肉の編み込まれた肢が、広場の石畳に亀裂を走らせた。
サラマンドラ。
伝承の中では、火の石竜子(とかげ)、又は火竜として扱われることがある。
たった数歩でその巨躯は灼滅者たちの視界の中で大きくなり、剣のように鋭い爪に大気が引き裂かれた。
「燃え咲かれ、我が焔!」
爪の射程外に逃れながら、花梨が解除コードを口にする。
緑の華が咲いた。クラシカルロリィタのフリルを揺らし、花梨は銀の煌めきを投じる。鋼糸はイフリートの身体に巻き付き、動きを封じるべく引き絞られた。糸を切ろうとするダークネスの爪を、霊犬のコナが咥えた刀で弾く。
「俺とお前、どっちの炎が強いか勝負だっ!」
鎖解く天啓の焔、怨敵を貫き焦がし虚無へと誘え――同じく力を解放した悠が、その槍に紅蓮の熱を灯した。
「炎の力は意志の強さ。本当の炎ってやつを見せてやるぜ!」
封縛糸で動きの鈍った相手に、肉迫する悠の槍が刺さった。炎は穂先から抱擁するように敵を包み込む。自らとは異質の炎に蝕まれ、巨躯から呻くような唸り声が響いた。
(どこかに監視する存在はあるでしょうか)
戦場の外へと目を向けた蔵乃祐を、横殴りの暴風が襲った。火の石竜子の尾が灼滅者たちへとしなっていた。蔵乃祐の投げた注射器が突き立つも、尾はそのまま振り抜かれる。
長大な尾は蔵乃祐や花梨を薙ぎ払い、広場にあるオブジェクトなどを次々に破壊し撒き散らしていった。糸の拘束も切れ、イフリートは自由を取り戻す。
「蜥蜴が……あまりいきがっていると噛み殺すぞ」
バスターライフルを背負い、焔戯である黒狼が駆けた。噴き上がる蒼い炎でできた翼と尾が風にたゆたう。長大な爪が行く手を塞ぐも、彼は突撃を止めず、むしろ一層足を速めた。
その前面に障壁が展開し、爪と火花を散らせてせめぎ合う。
爪を弾いた焔戯はシールドを攻撃に転じ、厚い胸筋へと砲弾となって喰い込んだ。鈍い音が鳴り響く。
「さあミート、一緒に頑張りましょう」
「ナノ!」
ナノナノのミートが元気に返事し、傷ついた中衛を癒すべく飛んでいく。ぺペタンもまたオーラの力を癒しの力へと変え、傷ついた味方へと放った。
その時には、アンジェリカも手にしたトライアングルを鳴らしている。
「夜闇の調べ、『影喰』」
金属棒が音を奏で、彼女の影がうねる。影は伸びあがるとダークネスを包み込むほどに広がり、巨体の大部分をすっぽりと覆おうとし――空中で砕け散った。
灼滅者たちの攻撃に火の石竜子は瞳に嚇怒をたぎらせ、広場一帯に咆哮を轟かせる。
ただの咆哮もこれだけ巨大な生物が放つと、大気の振動が衝撃波と変じるほどだった。耳を弄する音に加え突風が吹きつけ、灼滅者たちの火線が一瞬弱まる。
「その程度で、止まれるか!」
怒号とともに黎嚇は剣を振い、しかし死角からの斬撃は目標を捉える事は出来なかった。気付いた時には、石柱の如き前脚に殴打され、地面に叩きつけられている。
一瞬暗転した視界が元に戻った時には、黎嚇の目の前に巨大な足の裏があった。
「……!」
「私を忘れては困ります!」
黎嚇を踏みつぶさんとするダークネスの鼻っ柱を、忍は縛霊手で思いっきり殴りつけた。続けて顔面を覆った霊力の縛鎖に、イフリートはしわがれた声で仰け反り、後退する。
その間に灼滅者たちは素早く陣形を立て直した。黎嚇が息を吐いた。
「やれやれ。僕の屠竜技ではまだ命中に難があるようですね」
「にしては楽しそうだな、クロード」
「それは先輩もでしょう」
「今、縛霊撃を撃って思いましたが、やはりかなり硬い皮膚のようです」
「それと一撃が重いかな。長引けば治療の手が増えるかもしれませんね」
「次からは私も治療に専念します」
「よろしくね、アンジェリカさん。もちろんミートも。まだまだいけるわね?」
「ナノ!」
「花梨も大丈夫か?」
「ええ、ヒールも入ったのでもう。コナも助けてくれてますし」
短い時間で黎嚇と悠の間で戦士の笑みが刻まれ、忍と蔵乃祐が攻防の手応えを述べる。アンジェリカとペペタンは治療の融通を相談し、焔戯と花梨が言葉を交わした。
最後にコナがワフゥと応じかけて、突如警戒の唸りを上げる。
集まった視線の先で、巨大イフリートの全身からサイキックエナジーが溢れた。
量・密度ともに膨大なエネルギーはやがて収束し、形を成していく。やがてできたのは巨大な翼だった。
大質量が、空へと舞った。
●
遥か上空から、イフリートの双眸が灼滅者たちを睨む。
フェニックスドライブで身体を癒してからの、大跳躍。ダークネスの力だからこそできた一瞬の力業は、しかし見るものに「飛翔」という錯覚すら起こしかねない。
そして落下までの僅かな時間に、イフリートは炎の翼を消し、その口腔に眩い緋光を灯していた。
「――!」
誰かが言葉を発する暇もない。
降ってきた赤色の塊は、広場に突き刺さった。
衝撃に地面が揺れ、爆風が熱を連れ荒れ狂う。緑が炎に包まれ、広場は炎獄と化した。
人工密集地であれば被害は甚大だったろう。イフリートがある程度立ち回れる広い場所だった事が幸いした。
巨体が着地し、地を震わせる。砕けた石畳が舞い上がり――次の瞬間、滑らかな断面を残し寸刻みにされた。
それを為した花梨の瞳は、炎の世界を映して怒りに染まっていた。
「てめぇのようなイフリートが私や、誰かの運命を狂わせるんだ!」
迸る怒気は鋼糸に伝わり、斬弦の糸がダークネスの周囲で踊る。幾つかは硬い鱗に弾かれるが、分厚い肉に鋼糸は食い込み、イフリートの苦鳴があがった。
「行動を制限するわ!」
暴れる幻獣にペペタンの影が絡み付き、徐々に拘束を行う。
「折角進化したんだもの。元いたところへ返ってくれないかしらね?」
「天使の調べ、『天声』」
先程の炎は前衛を狙ったバニシングフレアだ。拘束しながらも大きなダメージを負っているペペタンに、アンジェリカは声を張り上げ力づけていった。
「貴様は決して逃がさん! 裁いてやろう、捌いてやるぞ!」
横合いから接近し振るった黎嚇の聖剣を、イフリートは首を振って牙で跳ね返す。そのまま喰らいつこうとする敵に、黒のナイフが一閃した。
「神の身許に送るまでもない。この伐龍院黎嚇が断罪する! 裁断してやる!」
奔った刃は目を切り裂き、さらに頭部に突き立つ。ダークネスは黎嚇に尻尾を巻きつけ地面へ叩きつけるが、黎嚇は今度こそ意に介した風も見せず攻撃の手を緩めない。
片目を失っても、イフリートの脅威は減らなかった。影や闘気の槍やライフルの攻撃をその身に受けながらも、質量自体を武器に灼滅者たちに負傷を重ねていく。その負傷を緩和するペペタンたちも、徐々にカバーしきれない傷に疲労の色を増していった。
「この冷気はどうだ!」
悠が今度は氷獄の妖気を纏わせ、放たれた氷柱はダークネスの首筋に突き刺さる。
イフリートは苦しそうに悶えながら、長い尾を使い悠を捕まえようとする。
その尾を、蔵乃祐が雲耀の刃で迎え撃った。速すぎる斬撃は停滞なく尾を斬り飛ばす。切られた尾は瞬時に灰となって消えた。
攻撃手段が減衰した隙を突いて、忍が首の氷柱を起点に、螺穿の槍を突き立てた。
「どんなに巨体が強力でも、支点さえ押さえてしまえば!」
暴れる幻獣種に対し、必死に槍にしがみつき、忍は何度も縛霊手で攻撃を行っていく。さらに花梨が食い込ませていた鋼糸にレーヴァテインの炎を宿し、内側から焼いていく。
上部・内部からの痛打にダークネスが再び仰け反った瞬間、その喉元に黒い狼が喰らいついた。
「冷たい炎もあるってことを教えてやるよ、蜥蜴野郎!」
焔戯の蒼い炎翼が広がり、冷たい炎となって火の石竜子を包んでいく。
その炎が止めとなった。ダメージの蓄積していた幻獣は蒼い炎に凍りつき、砕け散って消えた。
「……まさに天災、でしたね」
「ええ、いい経験になりました」
アンジェリカの言葉に黎嚇は微笑み、悠と拳を合わせた。
「ミート、ありがとう!」
ナノナノを労って、ぺペタンは周囲へ視線を投げる。まるで爆弾でも落ちたようなありさまだ。
「これで原始人化直るのかしら」
「とりあえず、事後フォローと行きますか」
爆発事故にしようかと、蔵乃祐は携帯で通報をする。
「手伝うぜ」
「女性の衣服破損もどうにかしたいですね」
人型に戻る焔戯。忍も頷いた。
「元に戻られた方々とコーヒータイムを楽しめたらいいのですが」
花梨が呟く。
もう、夜の冷たい風が吹き始めている。灼滅者たちは謎のイフリートによる影響を減らすべく、次の行動に移るのだった。
作者:叶エイジャ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年6月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 18/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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