「カルマクィーン見習い」佐藤・優子卒業LIVE!?

    作者:志稲愛海

     ある公園にぱらぱらと偶然集まっている人達。
     そんな人達を滑り台の上から一生懸命盛り上げようとしているのは――着ぐるみアイドル!?
     そう、彼女こそ、ふわりんスターこと「カルマクィーン見習い」佐藤・優子であった。
     いや……でもそれももう、過去の話。
    『皆さんに、今日は重大な発表があります!』
     優子はそうマイクをぎゅっと握り締めた後。
     ぴよー! と、着ていたひよこぐるみを脱ぎ捨てて。
    『私、佐藤・優子は……今日で『カルマクィーン見習い』を卒業しますっ!』
     そうアイドルスマイル全開で、颯爽と宣言したのである!
     ……が、知名度も低く、何のことかよく分からない偶然集まった人達の反応は、当然イマイチ。
     でも、優子はめげずに。
    『それでは、私の見習い卒業シングル『ずきゅきゅん☆ふわもこハート!』を聴いてください!』
     自作の見習い卒業シングルのお披露目をファンにするべく、ノリノリでアイドルステップを踏み始める。
     だが……いざ優子が歌い始めようとした、その時。
    「見習い卒業公演を公園でやるとは、実に良いでござるね。是非これは最前列で観たいでござるよ」
    『えっ!?』
     ゴロゴロゴロー!! とノリノリで騒音を鳴らし、どこからともなくやってきたのは――なんと、ロードローラーであった。
     いや、この場に現われたのは、ただのロードローラーではない。
     アイドルオタク……いわゆる、ドルオタ仕様の痛ロードローラーであったのだ。
     だがやはり知名度は低くても、見習いを卒業するというアイドル。
     すぐにアイドルスマイルを、やってきた痛ロードローラーにも振りまきつつ。
    『あのっ、優子の見習い卒業ライブに来ていただいたのはすっごく嬉しいんですけど……他のお客さんがビックリしていますし、このままだと集まってくれた方がみんなぺちゃんこのペラペラになっちゃうかもだから……』
     今日のところは帰ってもらえればと、やんわりと促してみるも。
    「そうはいいましても、拙者、ドルオタでござるから。卒業公演は外せないでござるよ」
     一向に退く気配のない、痛ロードローラー。
     ただでさえバベルの鎖の影響で固定ファンを獲得することが難しいのに。
     ここで貴重な観客がロードローラーにぺちゃんこにされては堪らないと。
    『えっと……ごめんなさい、残念だけど今日の見習い卒業公演は延期します!』
     苦渋の決断を下した優子であったが。
    「何があっても笑顔で歌うのがアイドルでござろう? 続けるでござる!」
     だがそれを、ドルオタであるという痛ロードローラーが許さない。
    『でも、アイドルだからこそ、お客さんを大事にしたいから……』
     優子も痛ロードローラーのブーイングに負けず、あわよくばちょっと好感度も上がればいいなーとか思いつつも、延期する意思を曲げない。
     そして――そんな優子の言葉を聞いた、痛ロードローラーは。
    「歌わぬなら殺してしまえアイドル淫魔」
    『え……きゃあっ!?』
     佐藤・優子をぺちゃんこにすべく観客を蹴散らし、彼女へと突撃するのであった。
     

    「みんな、『カルマクィーン見習い』佐藤・優子のこと覚えてる?」
     そんな飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)の言葉に、首を傾ける灼滅者達。
     佐藤・優子は、ラブリンスターの元で不死王戦争を戦い、その後売れっ子アイドルを目指し特訓中にソロモンの悪魔に襲われたところを武蔵坂の皆に救われ、HKT666とのアイドル対決の際は勝利を収めた、ラブリンスター一派の淫魔『ふわりんスター』である。
     アイドルもバラエティをこなす時代だとそのニーズにこたえるべく、きぐるみアイドルに路線変更したりと、試行錯誤してきた彼女であるが。ついに『見習い』を卒業するらしい。
     だが……そんな彼女の見習い卒業公演に、痛ロードローラーが現われたというのだ。
    「今回のロードローラーはね、ピンク色の車体にラブリンスターぽいイラストが描かれていて、起こす事件も今までとかなり違うんだよね。アイドル淫魔のライブに突入して淫魔が満足するまで歌を歌わないと、淫魔をペチャンと轢き殺してしまうらしくて。痛ロードローラーとの接触は、一般人が逃げ出した後から出来るよ。痛ロードローラーは最初に優子を狙うから、彼女と共闘すればかなり有利に戦う事ができるだろうけど……そうなったら、優子は殺されてしまう可能性が高いよ。あとは戦闘中、優子が歌い続けてくれた場合も、痛ロードローラーは一定の確率で攻撃を行わずに優子に声援を送るから、やはり有利に戦う事ができるんだ。でも優子に協力してもらうには、ライブを延期して帰ろうとする彼女とうまく交渉する必要があるかもしれないね。折角ソロデビューできるのに、チャンスを潰されたらたまらないって退散しようとするから」
     痛ロードローラーは戦闘になると、六六六人衆のサイキックと、ペンライトのように光るサイキックソードのサイキック、さらに飛び上がり頭上から落下して圧殺しようとする攻撃をしてくるのだという。
    「ウツロギの目的は不明だけど。その痛車ぶりを見るとさ、なんらかの彼の趣味的な要素が絡んでいるのかも……?」
     遥河はそう、首を傾けてから。
    「相手はあのロードローラー、しかも痛車仕様だから。気をつけて行ってきてね」
     灼滅者の皆を、送り出すのだった。


    参加者
    龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)
    米田・空子(ご当地メイド・d02362)
    羽守・藤乃(君影の守・d03430)
    曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    鈴木・レミ(データマイナー・d12371)
    綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)

    ■リプレイ

    ●なんてったって、ふわりんスター!
     その少女はかつて、冴えない眼鏡と地味なおさげが特徴で。
     真面目そうだからと委員長を押し付けられるような、そんな女の子だった。
     でも、生まれ変わりたいと。
     『カルマクィーン見習い』となった彼女――佐藤・優子は、これまで一途に真面目にアイドル道を貫いてきて。
     迎えた今日、ついにこう告げるのだった。
    『私、佐藤・優子は……今日で『カルマクィーン見習い』を卒業しますっ!』
     見習いからの卒業。
     もう、委員長キャラっぽい地味な少女はそこにはいない。
     あるのは、キラキラスマイルを振りまく、正真正銘のアイドルの姿だ。
    (「見習い、を卒業なさるのですね。計らずも見守ってきた身としては感慨深いものがございます……」)
     過去に起こった彼女の危機や決闘、それをこれまで共に乗り越えてきた羽守・藤乃(君影の守・d03430)。ふわもこという属性に何気に惹かれつつも、何より、アイドルとして懸命に努力する彼女を応援したいと、これまで力を貸してきたが。そんな藤乃にとって、彼女の見習い卒業はまさに重大発表。
    (「とうとうふわりんスターも卒業LIVEっすかー何となく感慨深いっすね」)
     HKT666との決闘において彼女の手助けをした鈴木・レミ(データマイナー・d12371)も同じく、しみじみと優子を見守っている。
     だが――そんな優子のアイドル活動、いや、その命まで脅かす存在。
    「歌わぬなら殺してしまえアイドル淫魔」
     突如現われたのは、痛車仕様のロードローラーであった……!
     このままでは、彼女の夢もろとも、優子自身もぷちっと潰されてしまう!
     しかし、公園に集まった一般人達が逃げ惑う中、そうはさせないと。
     優子と痛車の間に割って入ったのは、8人の灼滅者。
    「これでもサンソルの端くれ、歌とかアイドルとかが不当に汚されるのは許さないっすよ……!」
    「危機も決闘も一緒に乗り切った身としては、記念すべき卒業LIVEも一緒に乗り切りたいと思ってますの」
     そう……ふわりんスターの非公認親衛隊として!
    「おひさしぶりです、ゆう子さま。そつぎょうおめでとうなのです」
    「! あ、武蔵坂学園のみなさん!」
     そんな藤乃やレミ達灼滅者全員に、ぺこり挨拶しつつも。以前友達になった綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)の姿も見つけ、嬉し気に笑む優子だったが。
    「ぬぬぅ、まさか拙者を差し置いて、最前列を奪うつもりでござるか? ドルオタの風上にもおけぬでござる!」
    「わ、すみませんっ。あのロードローラーさんが暴れちゃって……今日の見習い卒業ライブは中止になったんです」
     だからまたの機会に、と公園から去ろうとする優子。
     だが、そんな優子に颯爽と声を掛けたのは、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)。
    「卒業ライブは今日しかないんだ。俺たち親衛隊が見届けるっ」
    「えっ。私の親衛隊……!?」
     ファルケが用意したのは、優子LIVE用の親衛隊の法被と鉢巻、ケミカルライト。
     自分の親衛隊という言葉に、優子は一瞬ふと足を止めて。
    「今度はLIVE突入ねぇ。何を考えているのやら……いや、これが本能か。ともあれ記念すべき卒業LIVEを捨て行くわけにゃいかねぇ」
     代わりに俺の歌でも聞くか? と。
     ファルケはロードローラーを止めるべく殺界を形成し、その『音痴のスペシャリスト』ぶりを発揮した、ある意味神秘的な歌声を披露して。
    「痛ロードローラー……」
     龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)は、遊具のパンダをぺしゃんこにしつつも爆走する痛車をじっと見遣ってから。 
    「そういえば痛トラクターとか耳にした記憶がありますのでアリといえばアリなのでしょうか?」
     眩い光を放つ斬撃で己の護りを固めつつも、何気にアリかもしれない痛ロードローラーを抑えるべく斬りかかって。
    「分裂体とは言え、もとは仲間であった彼と対峙するのはなかなかに奇妙な気分だねえ」
     まあ、僕は僕のやるべきことをこなそうか、と。
     サウンドシャッターを展開した月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)が、くるりと手にした得物を構えた刹那。
    「さて。……遊ぼう、僕と」
     仄かに闇を纏う漆黒の槍の切っ先が、月光の如き閃きを孕む螺旋の軌道を描き出す。
     そして、仲間が優子を説得する時間を作る為に。曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)が悪しきマナーのドルオタを滅ぼすべく、鋭き光の衝撃を見舞えば。
    「この先は行かせないのです!」
     ね、白玉ちゃん! と、盾を構え、通せんぼする米田・空子(ご当地メイド・d02362)と。ナノ! と頷きながら懸命にシャボン玉を飛ばす、ナノナノの白玉ちゃん。
     そんな、ふわふわシャボン玉が舞う戦場で。
    「マスコットキャラがいるメイドさんも、なかなか萌えるでござるが……やはり、拙者はドルオタでござるから。まずは歌わぬアイドル淫魔を、粛清なのDEATH☆」
    「きゃっ!?」
    「!」
     ロードローラーとは思えぬそのスピードで、強引に優子を轢き殺そうとするも。
    「お出でなさい、鈴媛」
     そう解放の言の葉を紡いだ刹那、咄嗟に優子を庇ったのは、ふわりんスター親衛隊事務局長(非公認)の藤乃。
     そしてファンとして、彼女へと声を送る。
    「確かに一般人のfanは居ないやもしれません。でも私達ならば……いつでも貴女の歌を聴きに駆けつけられます。だから貴女の歌を聴かせて下さい」
    「いっぱん人のファンを思ってえんきしたのは、とてもえらいと思います」
     友達として、ファンとして。鈴乃も藤乃に続き、こうお願いを。
    「人はいなくなってしまいましたけど、すずのたちはいます。すずのたちなら、ロードローラーにつぶされません。すずのたちをしんじて、歌ってくれませんか?」
    「少なくとも私達親衛隊はここに優子さんの歌を聞きに来たっすよ。大丈夫、私達が貴女も守ってライブの最後まで付き合うっす!」
     さらにそんなレミの言葉に、優子は嬉しそうに笑むも。
    「ありがとうっ。でも大切なみなさんだからこそ、危険な目に遭わせるわけには……」
     やはり皆に怪我をさせるわけにはいかないと、迷いをみせている。
     その間にも、優子を狙う痛ロードローラー。
     柊夜は荒ぶるドルオタの暴走を食い止めながらも、彼女にも声を。
    「リハーサルのつもりで歌ってもらえませんか? 仕切り直しの本番には知り合いも誘ってみんなで聴きにいきますから」
    「聴かせてくれ、お前の歌をっ。俺も一緒に歌ってやらぁ。ステージと客席でっ」
     ファルケも同じ歌い手として、熱い気持ちを優子へぶつけて。
    「むむ、歌わぬアイドルを擁護する気でござるか!?」
    「自分の思い通りにならないからって強硬手段に出るのはどうかなあ」
     さらに猛るロードローラーのペンライト代わりらしきピンクに光り輝く斬撃を、舞うようにひらりとかわした後。  
    「いちファンなら手を挙げるよりも先にやることがあるはずだよね?」
     魔力を帯びた爆ぜる一撃をその痛車体へと繰り出し、仲間が説得する間、言葉と武力をもってロードローラーの制止を担う巴。
     空子も白玉ちゃんと連携し、ドルオタ車へとメイドビームをお見舞いして。怒りという名の萌えを付与し、彼の意識を引きつければ。
    「君の歌が励みになる」
     華琳も敵の進行を阻止しつつ、そう優子へと。
    「みなさん……」 
     顔馴染みな古参ファンの友達は勿論。
     今日初めて会ったみんなの声も、優子のアイドル心を大きく揺さぶる。
     そしてぎゅっとマイクを握り締め悩む優子に言い放つのは、レミ。
    「真のアイドルたるもの、この程度の困難を乗り切れなくてどうします? ファンと一緒に盛り上げてこそ卒業ライブにふさわしいと思わないっすか!?」
    「私達に、最後まで……貴女の歌は、私達が必ず守りますから」
    「歌っているゆう子さまはぜったいに守るのです! やくそくします」
     藤乃と鈴乃も彼女に約束する。絶対に、守ると。
     ……そして。
    「分かりました、私、歌います!! 私の歌を聴いてくれる人が、いる限り!」
     だって私、アイドルですから! と。
     優子はキレッキレのふわもこステップを披露し、キランッと決めポーズを!
     そんな彼女に、熱い声援を送る灼滅者。
    「優子さんこの卒業ライブを、一緒に成功させようじゃないっすか」
    「ライブをはじめましょう」
     いや、灼滅者だけではない。
    「ぬお、卒業LIVE再開ですと!? これは滾るでござる!」
     痛ロードローラーも、車体をノリノリに揺らし始めたのだった。
     『カルマクィーン見習い』としては最後の、佐藤・優子卒業ライブを楽しむ為に。

    ●ずきゅきゅん☆ふわもこハート!
     灼滅者達の説得により、卒業ライブを再開した優子。
     そしてアイドル魂をかけて優子が歌うのは、見習い卒業曲『ずきゅきゅん☆ふわもこハート!』! 

    『大大大好きな マカロン プリンに チョコレートパイ☆
     でもやっぱり キミがイ・チ・バ・ン ふわりんハートの乙女ゴコロ♪』

    「とってもおいしそうな歌詞なのです」
     祖代々伝わる伝説のかわいいメイド服を、ひらり翻しながらも。
     白玉ちゃんのふわふわハートが飛ぶ中、流星の如き煌めきを宿した重い飛び蹴りを、空子はピンクの車体へと炸裂させて。
     精一杯全力で歌う優子を守るように位置を取り、その不屈の心を宿す不知火の羽衣を靡かせ藤乃が展開するのは、痺れを与える除霊の結界。
    「最前列で拙者のオタ芸を披露するでござる!」
     だが、どす黒い殺気を無尽蔵に振りまきながらも、ドルオタ根性で前へ前へ突撃しようとするロードローラー。
     そんな、アイドルライブに昂ぶる痛車のマナーの悪さに。
     地を蹴り、痛いその車体に飛び乗った拳系巫女・鈴乃の鋼鉄の拳が。
    「マナーをまもれない人は、せいざ!」
     その顔面に、ガコォッ!! 
     さらに続いた華琳の巨大な鉄の刀が豪快に振るわれて。
    「オラオラオラオラ……オラァ!!」
     なんだか星の白銀的なパワーを誇る一撃を、ドキュウーンッ!!
     だが、さすがはロードローラー。
     それでも止まる事なく、ツインテールを揺らし、ノリノリでオタ芸を繰り広げている。
    「ふわふわもこもこ、ふ・わ・り・ん!!」
     レミも優子の歌に合わせ激しくギターをかき鳴らし、音波で痛車に衝撃を与えつつも。親衛隊として優子の曲の合いの手も忘れずに。
     彼女のライドキャリバーも皆の盾となりつつ、エンジンをブォンブォン吹かしてライブを盛り上げる。
     そして。
    「うほっ、L・O・V・E、ふわりんッ☆」
     痛ロードローラーも戦闘そっちのけで、優子のライブにすっかり夢中だ!
     その間に、痛車へと集中攻撃を仕掛ける灼滅者達。
    「さぁ、俺の歌を聞きやがれっ!」
     ファルケの色々な意味で強烈な歌声が途切れず響く中。
     オタ芸を踊るピンクの車体へと、皆で総攻撃!
     ――しかし。
    「ペイントした車体傷つけちゃいましたけど怒ってこっちを狙ってくるとか――」
    「ふんぬぅーっ!! 我が一推しのラブリンに何するでござるか!!」
    「――ありましたね」
     ロードローラーとは思えぬ身体能力で飛び上がり、落下し圧殺しようとしてくる痛車の強烈な攻撃に苦笑しつつも。
     柊夜も真っ赤な輝きを湛えるフリュスケータを翳し、制約を与えし弾丸を打ち出せば。
    「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
     まるで霞む月の様に相手を翻弄する仮面の道化・巴が阿鼻せたのは、漆黒の闇の如き魔力を宿した叫喚の一撃。さらに空子のメイドビームが、ビビーッと見舞われて。
    「ぐぬぅ、古参の拙者に、こしゃくな!」
     白玉ちゃんのふわふわハートが飛ぶ中、爆ぜる衝撃やビームを受け、思わず表情を顰めた痛車に。
    「真のファンは、佐藤さんを……いえ、ふわりんスターさんを傷つけたりはしません!」
    「アイドルと一緒にステージを作るファンが暴れるなんて、言語道断っすよ!」
    「ぜったいまもるとやくそくしましたから」
     真の親衛隊であり友達である灼滅者達が、ふわりんコールを送りつつも、にわかファンをボコボコにすべく同時に攻撃を繰り出して。ライドキャリバーも突撃!
     そして華琳が再び放ったのは、時まで止めちゃうかの如く比類なき力強さの、無敵斬艦刀による超弩級の一撃。
     そして浴びた集中砲火に、ロードローラーが大きく車体を揺らした刹那。
    「歌エネルギー、チャージ完了。歌っても心に響かないのなら、直接叩き込んで響かせるまで」
     実は死ぬほど歌は下手だが、ヒーロー歌手を目指す熱い気持ちは本物。
    「刻み込め魂のビートっ、これが卒業LIVEに捧げるサウンドフォースブレイクだっ」
     同じ歌を志す者として、彼女の見習い卒業のはなむけにと。
     唸りを上げたのはファルケの、魔力と思いを込めた渾身の一撃!
     そして。
    『そう いつだって♪ キ・ミ・に ずきゅきゅん☆ハート!
     はい、みなさんもご一緒に!』
    「ハイッ! L・O・V・E、すきゅきゅん☆ハート……ぐふうッ!!」
     最期までピンクのペンライトを振り、合いの手を入れながらも。
    「―――おやすみ」
    「……そして時は動き出す」
     分裂体である痛ロードローラーは、跡形なくこの場から消滅したのだった。

    ●見習いからの卒業!
     見事、強敵・痛ロードローラーを灼滅したその後も。
    「卒業ライブの観客ならここにいる」
    「アンコールはみんなで盛り上げようぜ」
     まだまだ盛り上がる、優子の卒業LIVE!!
     そしてライブも最高潮を向かえ、アンコールを皆で一緒に歌ってから。
    『みなさん、ありがとうございましたっ!』
     ぺこりと頭を下げた優子は、アイドルスマイルで決めポーズ!
    「今日は予行練習だったっすよ」
    「つぎは、いっぱん人のファンのためにライブですね。その時も聞きにきますよ」
     そう言ったレミと鈴乃に、はいっ! と優子はとびきりのスマイルを向けて。
     淫魔の本領は、控えて頂ければ、ですけれど、と、こそり呟きつつも。
     迷惑でなければ、と刺繍を施したハンカチを彼女に贈る藤乃。
     ハンカチに刺繍された花・ペンタスの花言葉は――『希望は実現する』。
     優子は、ありがとうございます! と感激しそれを快く受け取って。
    「闇とうまくやっていく道を探りたい」
    「ええ、みんなで仲良くできればいいですよね!」
     華琳からのラブリンスターへの伝言に頷きつつ、今度お会いできたら伝えておきます、と笑む。
     そして。
    「あのっ、みなさんは私の大切なお友達で……そして私も公認の、ふわりん親衛隊です!」
     見習いは卒業しますが、これからも応援お願いします! と。
     ぺこりんっと、深く深くお辞儀をした優子は。
    「これからの路線はまだ決めてないんですけど……敏腕プロデューサーさんからプロデュースして貰えるようなトップアイドル目指して、がんばります!」
     そんな、今後の抱負を語りつつ。
     とびきりのアイドルスマイルをもう一度、灼滅者達に向けたのだった。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 7
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