●正義の怪人、湖畔に憂う
滋賀県のど真ん中に存在し、県のシンボルでもある琵琶湖。
日本最大の面積と貯水量を誇る湖は、町の人々からすれば釣りやサイクリング等、町の人たちの憩いの場所である。
しかし……そんな琵琶湖の一角で。
「ヒヒヒ……オラァ、邪魔なんだよ!! ここはオレらの縄張りだぁ、ドケぇ!!」
『な、なんだよおまえ達。後から来て縄張りってよ!!』
「うるせえんだよぉ!! 殺されてえのかぁ? おぃ!」
『う……うぅ……こ、この、くそぉ!!』
「ヘヘヘ……さぁ次は、誰を餌食にするかねぇ……」
釣り人を威圧し、無理矢理その場から返す二人の男……筋骨隆々な肉体とマスク、そして……頭には、角。
そう、羅刹「慈眼衆」。彼らは、琵琶湖周辺に現れ、我が物顔で暴れ回っていた。
……が、そこに。
『おまえ達、何をやっている!!』
「あぁ……? なんだてめぇは」
ビシッ、と声を放つ男……頭に琵琶湖のペナントの琵琶湖ペナント怪人。
……そんなペナント怪人は、慈眼衆に向かい、一歩も引かぬ勢いで。
『おまえ達、一般人達に迷惑を掛けやがって……成敗してやる!!』
と、琵琶湖ペナント怪人は、シュタッとポーズを決めて、対峙するのであった。
「皆さん、お集まりいただけましたね? それでは、説明を始めますね」
と姫子は、集まった灼滅者達に軽く笑顔を向けつつも、早速説明を始める。
「今回、皆さんにはこちらに向かって頂きたいのです」
と見せた写真は、滋賀県は琵琶湖。
「滋賀県、大津市……西教寺。ここに調査に向かった灼滅者から、近江坂本に本拠地をもつ刺青羅刹、天海大僧正と、近江八幡に本拠を持つ安土城怪人が戦いの準備を進めているらしい事がわかったのです。そしてこの情報を裏付けるがごとく、琵琶湖周辺で今、慈眼衆と琵琶湖ペナント怪人とが争う事件が多発しているのです」
「これは琵琶湖周辺で破壊工作を行おうとする慈眼衆を、琵琶湖ペナント怪人が阻止しようとして争う事件です。これは一見すれば、琵琶湖ペナント怪人が正義のようにも見えるのです。ですが……事は、そう簡単では無いのです」
「安土城怪人は、琵琶湖ペナント怪人を大量生産しています。そしてその力で天海大僧正との合戦に勝利し、ゆくゆくは世界征服を企んでいるようなのです。つまり……琵琶湖周辺の破壊工作は、安土城怪人の野望を止めるための手段、という訳なのです」
「……とはいえ、罪も無い一般人に迷惑を掛けるのは許せません。慈眼衆側も、出来るだけけが人が出ないように配慮しているように見えます……これは、天海大僧正が、武蔵坂学園と共闘したい、というメッセージを出しているのでしょう」
「つまりこの事件は、場合によっては琵琶湖の戦いの流れを決めることにもなるかもしれません。そして現時点では、何が正解であるのかわかりません。なので、どういった方法でこの事件に介入するかは、皆さん、現場での判断にお任せします」
「ちなみに、戦闘能力です。まず、慈眼衆は鬼神変を主軸として神薙刃、さらに二人は、断罪輪と、影業をそれぞれ装備しているので、それらの武器を使った攻撃を仕掛けてくると思います
「対し琵琶湖ペナント怪人は、ご当地ダイナミックとご当地ビームを切り返しながら使用し、その他にロケットハンマーとバベルブレイカーをそれぞれ使用してきます」
「慈眼衆も、琵琶湖ペナント怪人の数は2対2です。戦力は互いに互角、と言えるので、どちらが勝つとも言えません……灼滅者である皆様がどう介入するかにより、戦いの結果が決まるかと思います」
「何にせよ、皆様の動きで事態は大きく変わることになります。皆様、よく相談して、作戦を考えてみてくださいね」
と姫子は最後に微笑み、そして皆を送り出すのであった。
参加者 | |
---|---|
志賀神・磯良(竜殿・d05091) |
深束・葵(ミスメイデン・d11424) |
齋藤・灯花(麒麟児・d16152) |
犬祀・美紗緒(犬神祀る巫女・d18139) |
天堂・リン(町はずれの神父さん・d21382) |
踏鞴・釼(覇気の一閃・d22555) |
ナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・d24954) |
空本・朔和(安全第一・d25344) |
●対立
滋賀県はど真ん中に位置する琵琶湖。
姫子の話……この琵琶湖の周りに現れる二つのダークネス……慈眼衆と、琵琶湖ペナント怪人。
安土城怪人が琵琶湖ペナント怪人を大量生産し、天海大僧正と対決の時を待つ。
対して慈眼衆は、安土城怪人を倒す為に、琵琶湖ペナント怪人を倒す為に、琵琶湖周辺で破壊工作を行っている……といった具合。
……つまり、琵琶湖の周りを廻って、二つの軍勢が対峙し合っている、という状況なのである。
「ふむ……ダークネス同士の争いか……悪くないな」
「えっ……?」
踏鞴・釼(覇気の一閃・d22555)の言葉に、犬祀・美紗緒(犬神祀る巫女・d18139)が驚いた声を上げる。
……それに釼は、ああ、と言いながら。
「いや、これは良き鍛錬の場となりそうだからな……三つ巴も良いが、共闘もこれはこれで良い経験だと思う。存分に戦うとしよう、という事だ」
「そういう事なんだ……うん、確かに、そうかもしれないね」
美紗緒がほっとした様に息を吐く……。
……そして二人の会話の横で、空本・朔和(安全第一・d25344)、志賀神・磯良(竜殿・d05091)、深束・葵(ミスメイデン・d11424)の三人も。
「でも、えっと……慈眼衆緒ほうが悪者に見えるんだけど、怪人も悪い事考えてて……えっと、むつかしくてよくわかんないね……」
「まぁねぇ……でも、一般人を巻き込まない姿勢は好感が持てるね。ダークネスに好感を持っても、仕方ないけれどさ」
「そうだね。釣り人を避難させる心意義や良し。大僧正はともかく、慈眼衆も酒を酌み交わして一晩付き合えば意外と気の合う連中かもしれないけどね」
……そんな仲間達の言葉に、天堂・リン(町はずれの神父さん・d21382)と齋藤・灯花(麒麟児・d16152)も。
「まぁ……正直な所、慈眼衆をあんまり信頼した、という訳ではないのですが……でも、今回の皆さんの総意として慈眼衆に付くと決めましたから、その方向で行きますよ」
「そうですね。その方向で、がんばっていきましょう」
そして、ナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・d24954)が。
「それでは……えと……いき、ましょう、か?」
「ええ……行きましょう」
リンが頷き、そして灼滅者達は、二つのダークネスの対峙する場所へと向かうのであった。
●悪はどちらか
そして灼滅者達は、琵琶湖のとあるほとりにやってくる。
時間はちょっと夜にさしかかる頃……夜釣りに腰を下ろしていた一般人達に対し。
『オラァ、邪魔なんだよ!! ここはオレらの縄張りだぁ、ドケェ、どきやがれぇ!!』
暴虐に、釣り人を威圧し、その場から一般人達を離して行く慈眼衆達。
そんな慈眼衆に対して……しばしの後。
「お前達、何をやっているんだ!」
ビシッ、と声を放ち、立ちふさがる琵琶湖ペナント怪人。
一瞬即発の対峙状況……そこに乱入する灼滅者達。
突入するなり、早速灯花が。
「怪人あるところにヒーローあり! 灯花、推参!!」
ポーズを決めて、慈眼衆側にシュタッ、と降り立つ灯花。
突然の乱入に、慈眼衆も、琵琶湖ペナント怪人も……呆気にとられた顔をする。
それにナターリヤが。
「いっぱんの、かた、おけが、しらた、タイヘン、と……のでので、こないよう、させて、いただきます」
その言葉に続けて朔和がサウンドシャッター、釼が殺界形成を使用し、一般人に対する人払い。
「これでご近所迷惑も大丈夫だね!」
と、朔和の言葉に頷き、釼が。
「慈眼衆、助太刀に来た。俺は武蔵坂学園所属、灼滅者の踏鞴釼だ。いざ尋常に……とは言えんが、手合わせ願おう、怪人よ!」
威風堂々たる釼の言葉に、灯花、美紗緒も。
「共にねらう敵はひとつです!」
「助太刀するよ! いくよ、こま!」
と次々に、琵琶湖ペナント怪人に向けて宣戦布告をする。
……そんな灼滅者達の言葉に、琵琶湖ペナント怪人が。
「何だ、お前達は! そいつらと同様に、琵琶湖を汚すようであれば、容赦はしないぞ!」
「うん。琵琶湖綺麗だよね! 琵琶湖を守りたい気持ち、わかるよ。でもね、安土城怪人の野望は止めたいんだ、ごめんね!」
朔和は琵琶湖ペナント怪人に告げて、そして振り返りながら。
「慈眼衆の人たちも、一般人を怖がらせちゃだめだよ! ただでさえ顔、怖いんだから!」
『……』
慈眼衆達が、顔を見合わせる……まぁ、顔が怖いというのは、否定出来ない。
『……お前達、手を貸してくれるのか、それとも……敵か?』
その言葉に、リンが。
「……正直、ほとんど善意で自分のご当地怪人を守る怪人を攻撃するのは忍びなく思います。ですが……」
ぐっ、と拳を握りしめ、そして。
「ごめんなさい……貴方達の琵琶湖は、きっと僕らが守ります。だから……ここは、敵となります!」
少し戸惑いながらも、琵琶湖ご当地怪人達への宣戦布告……。
「……それでは、始めようか……阿曇は仲間を守ってくれるかい?」
「ワゥ!」
磯良の言葉に、彼の霊犬は吠えて頷く……そして磯良は一歩後ろに下がり、阿曇が前へ。
……そして、一ターン目。
「……行きます!」
リンが先陣を切って、抗雷撃の一撃を、琵琶湖ペナント怪人の片方へと攻撃をけしかけると、釼、灯花も動く。
「その断罪輪……いいものだな。俺も、それにあわせさせてもらうおう」
『……』
ちょっと訝しげな、慈眼衆の視線……だが、否定する事は無く、灼滅者クラッシャー陣と一緒に動き、攻撃。
「この槍で、あなたたちのやぼーも穿ちましょう!!」
と、灯花の螺旋槍に、釼は断罪転輪斬。慈眼衆も九眼天呪法と影縛りで縛り上げる。
……そして、縛り上げた後。
「続けていくよ」
磯良が頷き、そして磯良は霊犬の阿雲に続く形で攻撃を叩き込む……そして、葵がバレットストーム、ナターリヤが除霊結界……次々と、バッドステータスを更に重ねる。
琵琶湖ペナント怪人が2人に対して、慈眼衆を含めてこちらは住人……琵琶湖ペナント怪人が強力だとしても、圧倒的な戦力差の前に、琵琶湖ペナント怪人は唇を噛みしめながら。
『お前ら……本当に慈眼衆につくのか? それでいいのか!?』
「……良くは、無い……だが……」
リンは誰にも聞こえない位の小声で呟く……対し、磯良は、慈眼衆に対して振り返り。
「私達はもう仲間、だろう? 安心してくれ」
にっこり、笑顔と共に告げる。
……そんな灼滅者達の動静に、信頼してくれたかどうかは判らないが……少なくとも、共に戦う事は問題無い、と考えた様で。
『……分かった』
その一言だけ呟き、そして美紗緒と朔和もメディックではあるが、回復不要と認識して、縛霊撃を連打。更に。
「いくよ、すわん!」
ライドキャリバーのブラックスワンに指示し、ブラックスワンは機銃掃射で攻撃。
琵琶湖ペナント怪人の周囲を機銃掃射で撃ち抜き、その動きを大きく制限させていく。
そして、二、三、四ターン……バッドステータスの蓄積と共に、ダメージも積み重なっていく。
「そちらが琵琶湖パワーなら、灯花は会津が猪苗代湖パワー!! 灯花キックあらため、五色沼キック!!」
灯花の渾身のご当地キックが琵琶湖ペナント怪人一匹を灼滅すれば、残された琵琶湖ペナント怪人は。
『ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……!!』
顔を真っ赤に紅潮さ、拳を握りしめる彼。
「……ごめんね」
そう、ぽつり謝罪の言葉を呟きながら、リンの撃ち放った閃光百裂拳。
それが琵琶湖ペナント怪人の胸元を貫き、二人目も、倒れるのであった。
●湖畔にて
「……ふぅ」
琵琶湖ペナント怪人が倒れ、息を吐き、武器を下ろす灼滅者達……朔和も。
「お疲れ様! 怪我は大丈夫? あ、慈眼衆の人たちも大丈夫かな?」
その心配に、慈眼衆達は……。
『……灼滅者達、助かった。感謝する』
短く、ぶっきらぼうな答え……それにナターリヤ、釼が。
「えっと……ごいっしょ、たたい。ありがとでした……!」
「まず、最初に言っておきたい所がある。まず始めに、この助太刀は、学園の総意ではなく、あくまで俺達八人の内での協議の結果だ……俺個人としては、お前達とも戦ってみたかったがな。良き戦いぶりだった。血がたぎるようだ。良ければ後日にでも、手合わせ願いたいものだ」
『……確かにお前達は強いようだな。手合わせか……まぁ、いつかはそういった時も来るだろう』
「ええ……それに、いっぱんじんの、かた。ケガ、ないようの、ハイリョ、も。ですが、ターニャたちの、タイセツ。な、もの。こわすのは、やめていただけたら、うれしい、の、です」
「そう。このまま何もせずに帰って欲しいんだけど、ダメかな?」
「そうだ。代わりといっては何だが……この場での破壊活動は切り上げてもらえないか? ここを荒らされるのは、俺達としても好ましくないのでな……」
「そう。ここにとどまり続けてれば、いずれジリ貧になるよ? まぁ、兵糧攻めで戦の華と散っていく気概があるのなら、それもまた良しなんだけど……」
「とりあえずは目標達成したでしょう? 破壊工作を止めて、今日の所は引いてもらえるかな?」
ナターリヤ、美紗緒、朔和、葵らの言葉……それに。
『安土城怪人の戦略は、ペナント怪人の琵琶湖化による戦力増強だ。琵琶湖の破壊工作は継続して行う必要がある。勿論、お前達がペナント怪人の琵琶湖化を食い止めてくれるならば、このような作戦を行う必要は無くなるだろう』
「でもでも……人にやさしくしないと、えらいひとにいいつけますよ!」
灯花の言葉に、慈眼衆は。
『俺達は大僧正の命に従うまでだ。お前達の偉い人に言うなら、それでも構わんさ』
「そう……話を変えようか、安土城怪人の計画は知ってるって事かな?」
「例えば拠点のありかとか決戦場所はどこになりそうか、とか」
「……安土城怪人の勢力がどれ位あるか、も知っているのでしょうか?」
美紗緒に灯花、リンが訪ねると。
『安土城怪人の周囲にご当地怪人が集まってる可能性は高いだろう。そして、戦いの鍵を握るのは、やはり琵琶湖ペナント怪人の戦力になるはずだ。そして琵琶湖の東側こそが、彼らの拠点となるはず。そして、琵琶湖周辺が、決戦場になるだろうな』
「そうですか……そういえば、以前ブレイズゲートを廻って天海大僧正と争ったアメリカンコンドルが居ましたよね? 彼らには、何か動きが見られるのでしょうか?」
『……大方、己の戦力の立て直しを図ってるだろう』
「そうですか……となると、どうやってブレイズゲートに蓄えた兵力を戦場に出すつもりですか?」
『……』
言葉は無く、ちょっと険悪な空気が流れる。
……その空気を変えるように、灯花は。
「そう、貴方達は、何の為に戦ってるのですか?」
『安土城怪人の配下を倒す以上の目的は無い』
「そうですか……他、ダークネス勢力で安土側につきそうな勢力はありそうですか?」
『さあな……誰が敵になり、誰が味方になるかはその時々だ。昨日の敵は今日の味方、昨日の見方は、今日の敵になり得る……お前達もそうだろう?』
少し、猜疑的な視線を向ける慈眼衆。
そして……。
『……さて、長居しすぎたな。今日の所は感謝しよう……さらばだ』
と、慈眼衆はその場を跡にする。
その去り際に、リンが。
「……正直僕はまだ、貴方達を信用しきれない。だから聞きたい、貴方達は、彼らを信用出来そうですか?」
『……さぁ、な』
と言い捨てて……慈眼衆達は、その場を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年6月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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