顔に紅葉饅頭散らす!? 広島もみじピロシキ怪人の巻

     広島駅の前では、訪れる観光客を相手に、様々な名産品が売られている。無論その中には、広島の銘菓もみじ饅頭もあった。
     そんな店先に、奇妙な男が現れる。梅雨の蒸し暑さをものともしない真っ白な外套もさることながら、目を惹くのが男の頭部である。――それは、巨大なもみじの葉を模した何か、と表すほかなかった。
     そのもみじ男は柔和そうな笑みで、饅頭を売る店員へと語り掛ける。
    「もみじ饅頭……、確かに愛嬌と風情を兼ね備えた素晴しいデザインだ。しかし、口にした者は誰もがこう思う、『これはもみじの形をしただけのただの饅頭だ』と!」
     困惑する店員へと、男は懐から取り出した何かを差し出す。それは、もみじの形に整えられたパンであった。
    「そのうえ当の広島県民はほとんど食べないではないか! そこで我らが祖国ロシアの伝統料理ピロシキの登場である! ピロシキの力を借りれば、観光客はもとより地元民にもバンバン売れること間違いなし!」
     笑顔を崩すことなく、しかし男は有無を言わせぬ強引さで、ピロシキを売り出すよう店員へと詰め寄るのだった。

    「諸君、広島にロシアンご当地怪人が出現するぞ」
     教室へとやってきた宮本・軍(高校生エクスブレイン・dn0176)は、居合せた灼滅者たちへと告げる。
    「黒蜜あんず氏の報告により判明したのだが、ロシアンタイガーはどうやら日露姉妹都市を転々としているらしい。奴の現在地は不明だが、立ち寄った都市は出現するロシアン怪人によって、ご当地パワーのロシア化が進行しているようなのだ」
     これを放置すれば、いずれロシアンタイガーが力を蓄えて復権する可能性がある、と軍は告げる。
    「ロシアンタイガーの復活、そして各地のロシア化を防ぐためにも、この怪人をなんとしても灼滅してきてほしいのだ」
     そして軍は、広島に現れるとされる怪人についての説明を始めた。
    「今回出現するのは、広島のもみじ饅頭をピロシキに変えて売り出し、広島市のロシア化を企むもみじピロシキ怪人、クリョーンメンだ。
     広島市内のもみじ饅頭売り場を訪れて、強引にピロシキを押し付けて回るつもりらしい。かなり馬鹿げた方法だが、相手はダークネス。いずれはその力で人心を掌握し、本当に広島中のもみじ饅頭をピロシキにしてしまうやもしれん」
     広島のもみじ饅頭を守るためにも、早急にこの怪人を灼滅しなければならなかった。
    「それで、敵に接触する方法についてだな。奴は昼間に、広島駅前のもみじ饅頭の出店に出現するので、そこに赴いて接触すればいい。広島駅周辺はそれほど建物も乱立していないので、暴れ過ぎなければ戦闘に支障はないはずだ。
     ただし周囲は駅の利用客が大勢いるので、一般人を巻き込まないための工夫が必要になる。ちなみに一般人の避難についてだが、敵と接触をしてから行う必要があるので注意してくれ」
     次に軍は、怪人の能力について説明を始めた。
    「敵はご当地ヒーローのサイキックに加えて、もみじ型の手裏剣を駆使して手裏剣甲のサイキックを使ってくることが予測されている。しっかり対策を行ってくれ」
     教室を出ようとする灼滅者たちへと、軍は言葉をかける。
    「一見馬鹿馬鹿しくも見えるが、怪人は本気で世界征服を企てているのだ。油断せず、無事灼滅してきてくれよ」
     軍の激励を背に、灼滅者たちは行動を開始した。


    参加者
    柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)
    御子柴・天嶺(碧き蝶を求めし者・d00919)
    水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)
    野乃・御伽(アクロファイア・d15646)
    吉野・六義(桜火怒涛・d17609)
    韜狐・彩蝶(白銀の狐・d23555)
    莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)
    榎木津・貴一(絵のない絵本・d24487)

    ■リプレイ


     広島駅前の広場に立ち並ぶ、土産売りの出店。それらを眺めつつ、怪人の出現を待つ灼滅者たち。そうしてしばらくすると、暑苦しそうな白い外套を羽織った紅葉男がやってきた。
    「――ピロシキの力を借りれば、観光客はもとより地元民にもバンバン売れること間違いなし!」
     そう言って店員に詰め寄る怪人へと、数人の灼滅者たちが近付いていく。
    「もみじ型のパン!? ってこれピロシキなのか、すげー!」
     こいつは食のロシア革命だ――と、若干オーバーリアクション気味に褒め称える吉野・六義(桜火怒涛・d17609)。
    「ほう、私のピロシキに興味がおありかな?」
    「紅葉の形が可愛くて、ピロシキも美味しそうでいいですね。これ、おいくらなんですか?」
     そんな水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)の言葉に気をよくした怪人は、彼らへとピロシキを差し出しながら得意げに語りだした。
    「フハハ、このピロシキの良さが分かるとはお目が高い少年たちよ! 今は私の手作りゆえ少々費用はかさむが、なぁにすぐに広島中で生産される故、いずれはコンビニのおにぎりやパンのように気軽に買える価格になるだろう!」
    「そいつはいいな! じゃあそん時にはしっかり買ってやるから、ばっちり増産態勢頼むぜ? ところでピロシキって実はあんまり詳しくないんだけどよぉ――」
     六義は気安い調子で怪人と談笑しつつ、会話を途切れさせないようピロシキに関する疑問を投げ掛けていく。
    「ふーん、俺はピロシキなんてあんま食わねぇんだが……。もみじ饅頭も好きなんだけどなー、どっちが美味いんだろうなー」
     野乃・御伽(アクロファイア・d15646)は若干冷めた口調で煽りつつ、やはり怪人の意識を自分たちへと向けさせる。

     そうして六義ら三人が怪人の気を引いている間に、残りの仲間たちは周囲の一般人を避難させにかかった。
    「すみませんが、急な撮影が入ってしもうたんです。悪いんですけど、しばらくこの辺から離れていてもらえませんか?」
     笑顔で声をかけつつ、ラブフェロモンの効果を発揮させる莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)。彼女に話し掛けられた一般人は、本物の芸能人を前にしたように魅了される。
    「それで申し訳ありませんが、あのコーンの内側には入らないようにして下さい」
     想々が次々と魅了する一般人を、榎木津・貴一(絵のない絵本・d24487)が駅から遠ざけるよう誘導していく。プラチナチケットにより彼をマスコミのスタッフか何かだと勘違いした一般人たちは、素直に駅から離れていった。
     そしてある程度一般人の姿がなくなったところで、柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)はサウンドシャッターを展開する。


    「む、随分とひと気がなくなっているようだが、これは一体……?」
     避難誘導班の仲間たちが大方の一般人を遠ざけるのと同時に、怪人もまた周囲の異変に気付く。
     そして先程まで怪人と歓談していた灼滅者たちは、残りの一般人を庇うべく怪人を包囲する。
    「まさか貴様ら、この私を謀っていたというのか!?」
    「そういうことだ。広島名物をピロシキなんかに変えられてはたまらないからな」
     無関係を装って待機していた御子柴・天嶺(碧き蝶を求めし者・d00919)も、殺界を形成しつつ怪人の前に立ちはだかる。彼が放つ殺気に怯え、残る一般人たちも立ち去っていった。
    「もみじ饅頭は明治以来の伝統ある広島のお菓子です! 伝統を守るためにも、ここであなたを灼滅します!」
     毅然とした口調で告げつつ、封印を解いたクルセイドソードを構えるゆま。
    「人の身でこの私に挑むとは愚かな……。いいだろう、貴様らには直々に、我らがロシア文化を教育してやる!」
     何処かより紅葉型の手裏剣を抜き放つ怪人。ここにクリョーンメンと灼滅者たちの戦いが始まるのだった。

     初撃を放つのは、前衛にて愛槍・紫蘭月姫『蒼』を手にした天嶺だった。
    「……螺旋を描き敵を貫け」
     輝き放つ槍の刃先が、怪人へと見舞われる。
    「人間にしては中々の動きを! ではその身で、我が紅葉を味わうがいい――!」
     天嶺の槍を防いだ怪人は、両手を振い無数の手裏剣を前衛の灼滅者たちへと放った。
    「――柳真夜、いざ参ります」
     言霊と共に、虹光を放つ盾『彩光六花』が展開する。旋風の如きオーラを纏った真夜が、仲間たちへと襲い掛かる手裏剣の雨を防いだのだ。そして真夜は続け様に、彩光六花で怪人を殴り付ける。
     そしてそのサイキックの力は、実際のダメージ以上の衝撃を敵に与える。己を殴打した真夜へと、怪人は憤怒の視線を向ける。
    「くっ! 貴様――」
    「余所見してる暇はないぞ」
     怪人の視界外から、獣人姿の韜狐・彩蝶(白銀の狐・d23555)が飛び掛かった。
    「――灼き尽くせ」
     呟きと共に、封印の解かれた得物を手にする彩蝶。同時に彼女の肉体が、人造灼滅者としての本来の姿へと回帰する。
     小柄な狐娘の姿から、巨大な九尾の狐と化した彩蝶。彼女はその右前足に備わったクルセイドソードを輝かせながら、怪人を斬り付ける。
    「――おのれッ! たかが人間と侮っていたが、中々教育し甲斐があるじゃないか!」
     手裏剣を手にしたクリョーンメンは、そのまま全身を回転させながら眼前の彩蝶を斬り付けようとする。そこへ、盾を手にした御伽が立ちはだかった。
    「おらよ、お前の相手はこっちだぜ!」
     怪人の斬撃を受け止めた御伽は、直後紫電を帯びた拳を渾身で握り込んだ。
    「ハッ! そんなんじゃあ、お前のピロシキ愛は届かねぇぜ?」
     まるで戦闘を楽しむが如き愉悦を浮かべながら、怪人の鳩尾へと拳を叩き込む。御伽に殴り付けられ、怪人は大きく弾き飛ばされた。
    「仲間の防御は任せたよ。傷は全部僕が癒やすから」
     黒曜石の角を生やした貴一は、前衛の灼滅者たちへと風を吹かせる。


     巧みな連携で、怪人へと着実にダメージを与えていく灼滅者たち。しかし怪人は手裏剣を駆使して灼滅者たちを蝕んでいた。
    「ほら、最初の勢いはどうした!? 私はまだまだ紅葉を馳走し足りないのだがな!」
     前衛の灼滅者たちをまとめて攻撃すべく、紅葉型の手裏剣を続け様に放つクリョーンメン。その無数の手裏剣を、手にした剣で弾き飛ばすゆま。
     彼女が手にするのは、クルセイドソード『守護聖刃』。仲間を守るという意思を込めた聖なる刃である。
    「ピロシキも捨て難いですけど、お饅頭ってスイーツなんですよ。方向性が違うんですから、甘いものを求めている人には売れないと思います!」
     弾き損じた手裏剣の傷をオーラで癒やしながら、ゆまは怪人へと不敵に告げる。
    「ええぃ、黙れ小娘が! どうやらロシアとピロシキの良さ、まだ分からんようだな!」
    「黙るのはテメェの方だ! 他所様の名物を無理矢理塗り替えようとする奴に、ご当地愛を語る資格はねぇッ!」
     更に手裏剣を放たんとする怪人へと吼えながら、愛するソメイヨシノの杖を振り被る六義。渾身の刺突と共に魔力を叩き込む。
    「そもそもそんな格好で偉そうなこと言われてもなぁ、どうにもアホらし……って、本気の本人を前にさすがに失礼でしたか?」
     でも灼滅するからいっか――と、飄々とした口調の想々。クルセイドソードの祝福を風に変え、仲間たちにかかった手裏剣の毒を癒やす。

     そうして手裏剣による傷を後方の仲間が回復し、前衛は攻守をきっちり分担しつつ懸命に戦線を維持し続けた。
    「ねぇ、クリョーンメン。一つの意見なんだけど、ピロシキももみじ饅頭も美味しいんだから、どっちも共存させていくってのは、どう?」
     羅刹の力で仲間の傷を癒やしつつ、貴一は敵へと語り掛ける。
    「……ふざけるなよ、小僧。我らの悲願は世界征服、つまり我らが掲げる文化は常に頂点を目指さねばならないのだ! 共存などありえんわッ!」
     怪人の言葉に、貴一は思わず嘆息する。敵の目的があくまでも侵略である以上、この場での和解は不可能であった。そのことが、彼にとって何よりも悲しかったのだ。
    「それがあなたとロシアンタイガーの目的だというなら、申し訳ないですがここで倒します。日本のロシア化を進行させるわけにはいきませんから」
     気取られぬことなく怪人の背後を取りつつ、平然とした口調で告げる真夜。
    「――ッ!? この私に気付かせず背に回るだと、すばしこい奴め!」
     振り返り様に回転斬りを見舞う怪人だが、真夜はその一撃を跳んで躱す。
    「いえそんな。私はただの一般人ですから」
     到底一般人とは思えぬ身のこなしで敵の一撃を凌いだ真夜は、そのままエアシューズによる蹴りを繰り出す。
    「――ええぃ、小癪な! 貴様といい、これほど痛め付けても立ち向かってくるとはしぶとい連中め。こうなれば一人ずつ順番に、着実に黙らせていくしかあるまい――!」
     高く飛び上がった怪人は、急降下しつつ渾身のキックを放った。
    「――クリョーン・キーック!」
     まともに食らえば到底立ち上がれぬほどの一撃を、光を放つゆまの聖刃が受け止めた。
    「広島の伝統を、ピロシキになんてさせませんよ! たとえ広島人さんが食べなくても、もみじ饅頭のお土産知名度は高いのです! ロシアンケーキに、餡子のせちゃいますよぅっ!?」
     言いつつゆまは、影の触手を放って怪人の動きを止めにかかる。
    「むぅ、影だと――!?」
     ゆまの影によって捕縛されるクリョーンメン。それを好機と、仲間たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
    「実はもみじ饅頭は結構好きなんでね。もみじピロシキのB級グルメ感は捨て難いが、やはりここで決めさせてもらう――封印されし鬼神の力よ、顕現せよ!」
     紫色の闘気を全身から放ちながら、天嶺は動きの封じられた怪人へと肉薄する。そして鬼と化した片腕を振り被り、渾身の殴打を叩き込んだ。
    「っく! 貴、様――!」
     あまりの衝撃に防御が崩される怪人。そこへ、仲間たちの攻撃が畳み掛けられる。
    「お前はピロシキ食ってもらいてぇんだろ? じゃあ俺からはコイツをプレゼントしてやるよ――そら、喰らえ」
     御伽の足元から伸びる影が、漆黒の豹と化す。黒豹は牙を剥きながら怪人へと飛び掛かると、その全身を丸呑みにしてしまった。
    「どうよ、食ってほしいってんで食ってやったぜ、紅葉男さんよぉ?」
     影に包まれながら苛まれる怪人へと、笑みを向ける御伽。
    「もみじ饅頭もピロシキも食べたことないので、最初は別々に食べたいところですね。というわけで私も一つ」
     普段の茶色とは違う紅蓮の双眸で、想々はどこまでも冷めた視線を向けている。そして御伽に続くように、彼女もまた巨大な影で敵を呑み込んだ。
    「そうだ、あとでお饅頭食べてみよう、うん」
     戦いの最中でありながら、呑気に独りごちる想々。だがその一撃は着実に怪人へとダメージを与えていた。
    「そろそろ終わりだな! 俺が、本当のご当地パワーってのを見せてやるよ!」
     目に見えて弱っている怪人へと狙いを澄して、高く飛び上がる六義。
    「ソメイヨシノ――キック!」
     そして、渾身のご当地パワーを込めた飛び蹴りを見舞った。強烈な一撃に大きく弾き飛ばされながら、しかし怪人はよろめきつつも尚立ち上がる。
    「人間、どもがぁ……。この私を、倒せるはずなど!」
     既に限界を迎えつつある体を叱咤するように、声をあげながら灼滅者たちに対峙するクリョーンメン。
     そこへ、燃える大狐――彩蝶が飛び掛かる。
     彼女の左前足に備わった、バベルブレイカーが唸る。狙い澄ました杭の一撃が、遂に怪人を絶命せしめた。
    「その人間に滅ぼされ、塵も残さず燃え尽きろ、ダークネス」
     消えゆく怪人へと、無慈悲に呟く彩蝶。
     ただ人として、仲間と共に敵を討つ――魂以外の全てをダークネスと化した彼女にとって、それこそが人であることの証明だった。


    「あの怪人、わざわざピロシキ用にもみじ型用意したのでしょうか。だとしたら少しだけ申し訳ないことをしましたね」
     仲間と共に人払いに使ったコーンなどを片付けつつ、ふと呟く真夜。
    「もみじピロシキ……。もみじ饅頭も変わり餡があるのだから、その一種と思え……ないですよね、さすがに」
     怪人に貰ったピロシキの味が、実はそれほど悪くないと感じていたゆま。失われてしまった味を思い起こしながら、どこか名残惜しそうな表情を浮かべる。
    「人間だった時の彼がどんな人だったのかは分からないけど、きっとその思いは真摯なものだったんだろうね……」
     怪人と言えど、元は人間だったのである。そんな存在を灼滅してしまったことへの罪悪感を重く受け止める貴一。生きるために誰かの命を奪うことの意義を、彼はこれからも己に問い続けるのだろう。
    「そうは言っても、ああなっちまった奴らは確かにダークネスなんだぜ。どんなに馬鹿げた行動に見えても、いずれは人間と対立しちまうんだ」
     自身もかつてダークネスへと堕ちかけた六義にとって、それは何よりも重い事実であった。
    「ボクたち人間は、ずっと酷い目に合わされてきたんだもん。世界がダークネスに支配されてる今は、どんなに辛くても戦うしかないんだよ!」
     獣人姿に戻り、普段の明るい口調で言い放つ彩蝶。だがその心には、ダークネスへの復讐を誓う冷たい焔が燃えていた。
    「ま、あんまり気負わないこったな。どの道俺たち灼滅者は、ただ生きるためにも戦わなけりゃあならないんだからよ」
     苦笑と共に告げる御伽。その笑みは諦観によるものか、あるいはそれでも捨て切れぬ希望によるものか。
    「さて、暗い話はここまでにしましょう、皆さん! 
     せっかく広島に来たんですし、ここはやっぱりもみじ饅頭を買うしかないですよ。さーて、季節限定のもみじ饅頭はどれかなっと」
     仲間たちの間に漂う淀んだ雰囲気を吹き飛ばすように、努めて明るく振る舞う天嶺。
     戦い続ける宿命にあるからこそ、戦いから離れた日常をこそ愛する――それが、灼滅者の流儀なのだ。
    「もみじ饅頭は食べたことないんで、ちょっと楽しみですね。
     それにしても……県民は食べないご当地ものって、すごいあるあるです。身に覚えが……」
     普段は、食事にさほど拘らない想々。だが今日ばかりはちゃんと食べたいものだと、仲間と談笑しながら思うのだった。
    「ですから私たち旅行者が、しっかり買って帰りませんとね! ちなみに私はやっぱり、定番こしあん派です」
     そんな真夜の言葉に、ゆまが笑顔で続く
    「そうですね。バラ売りもしているようですし、どこが美味しいお店なのか探してみましょう」
    「よーし、じゃあ俺は桜餡のもみじ饅頭を探すぜ。こんだけ店があれば、どっかしら売ってるだろ!」
     そう言う六義が、桜餡のもみじ饅頭は春先限定の品だと知るのは、しばらく先のことである。
     こうして銘々好みのもみじ饅頭を見付けた灼滅者たちは、土産を携え学園へと帰還するのだった。

    作者:AtuyaN 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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