●
「くそっ。こいつ、すばしっこいっっっ」
渾身の一撃を躱された男は、バランスを崩して蹈鞴を踏んだ。
「しまった!! くっ!!」
一瞬だけ目を離した隙に、相手は自分の死角に回り込んでいた。慌てて回避行動に移るが間に合わない。
「ごろにゃん♪」
何とも間の抜けた声と共に、鋭い一撃が男の脇腹を斬り裂く。
「まだ、このくらいでっ」
男は身を翻し、相手の体を掴もうとする。しかし、相手はその手をするりと躱し、逆に男の右肩を掴むと、勢いよく放り投げた。
男の体はきりもみ状態で吹っ飛び、ゴツゴツした岩肌に激突した。
「がはっ……!」
もはや、男は戦闘続行不可能だった。
「ごろにゃん♪」
「ま、待て! ギ、ギブアップ……だ……」
相手がトドメの一撃を放とうとした刹那、男は声を絞り出してギブアップを訴えた。ギブアップさえすれば、この相手が自分にトドメを刺すことは無いと知っているからだ。
「情けないにゃー。それでもアンブレイカブルにゃのかにゃ?」
呆れたように肩を竦める。
「でもトドメを刺さないと力を得られないにゃん。ケツァールマスクからも、ギブアップは無しの許可をもらってるにゃん」
「な、なん……だと!?」
「……じゃ、そうゆうことで」
ぐわしゃっ。
「おおー。なんか、力が漲ってきたにゃん♪」
シャム猫の如きマスクを被り、手にはぷにぷにの肉球の付いた大きな手袋をし、猫の足をデザインした長靴を履いた女性レスラーは、嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
「所詮は、くうねる・にゃんだーす二世さまの敵じゃなかったにゃん。それじゃ、次の対戦相手のところに行くにゃん」
シャム猫レスラーは、悠々とその場から立ち去っていく。
「……やはり、ケツァールマスクも動き出しましたか」
岩陰に隠れ息を殺し、この戦いの一部始終を見ていたアレン・クロード(チェーンソー剣愛好家・d24508)は、ゴクリと唾を飲み込んだ。どうやら、自分の予感が的中してしまったようだ。
「急いで報告に戻らねばなりませんね」
アレンは周囲を警戒しつつ、身を翻した。
●
「アレン先輩が危惧していたことが現実になってしまったのだ」
木佐貫・みもざ(高校生エクスブレイン・dn0082)は眉間に皺を刻む。その隣に、無事に学園に戻ってきたアレンが並んでいた。
「相手は、ケツァールマスク配下のくうねる・にゃんだーす二世という女性レスラーなのだ。見た目は可愛らしいシャム猫マスクなのだけれど、侮れない相手なのだ」
彼女は既に一勝している為、武神大戦天覧儀の勝利によって得られる「力」を身に付けた状態であるからだ。
「くうねる・にゃんだーす二世が、次に現れる場所は予知できているのだ」
みもざはそう言うと、ホワイトボードに貼り付けてあった日本地図を示した。伊豆半島の一画である。
ここで待ち構えていれば、にゃんだーす二世がやってくるというわけだ。
「くうねる・にゃんだーす二世は、アンブレイカブルと殺人鬼、そして縛霊手のサイキックを使ってくるのだ。因みに、何で二世なのかはよく分からないのだ」
そもそも、一世がいるのかどうかさえ怪しい。
「いつものはギブアップ有りの試合をするケツァールマスク一派だけど、今回は武神大戦天覧儀ってこともあるので、ギブアップ無しの完全デスマッチなのだ」
なので、この戦いではくうねる・にゃんだーす二世にトドメを刺さなければならない。そして、この戦いでトドメを刺すと言うことは――。
「トドメを刺した人は、闇堕ちしてしまうことになるのだ」
みもざは、申し訳なさそうに付け加えた。事件を察知したアレンも、沈痛な面持ちになる。
だがしかし、挑まねばならない相手だ。
「武神大戦天覧儀もそろそろ大詰めみたいなのだ。頑張ってきて欲しいのだ」
みもざはそう激励し、灼滅者達を送り出すのだった。
参加者 | |
---|---|
巫・縁(アムネシアマインド・d00371) |
東雲・由宇(終油の秘蹟・d01218) |
鹿嵐・忍尽(現の闇霞・d01338) |
ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576) |
咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814) |
高倉・奏(神解き・d10164) |
阿久沢・木菟(灰色八門・d12081) |
ユリアーネ・ツァールマン(蒼翼のフッケバイン・d23999) |
●
梅雨の時期だが、空は晴れ渡っていた。
ただ、海から吹き付けてくる風は湿り気を帯びいて、お世辞にも心地よいとは言えなかった。
「武神大戦天覧儀…。良い加減、何かしらの進展か、事態の終息が欲しいものですけれど、そう簡単にはいかないのでしょうね…」
高倉・奏(神解き・d10164)は、打ち寄せる波に視線を向けた。ビハインドの神父様が傍らに寄り添うようにしている。
武神大戦天覧儀が開催されてから、2ヶ月が経過している。そろそろ、何らかの進展がなっても良さそうな時期だ。しかし、変化の兆候は見受けられる。自分達が挑む、今回の戦いもその新たな兆候の一つだ。ギブアップ有りの戦いを基本精神に掲げているケツァールマスクが、配下をこの武神大戦天覧儀に送り込んできたのだ。
「設置完了でござる」
戦場一帯が見渡せる位置にビデオカメラを設置して、阿久沢・木菟(灰色八門・d12081)が戻ってきた。ケツァールマスクの配下であれば、観客の目を気にして派手な技を多用したり、敢えて攻撃を受けるパフォーマンスを期待することができる。その為の小細工だ。
木菟がこんな小細工をするのも、戦いの場が彼らが好むリング上ではないからだ。辺りには人っ子一人なく、完全な野試合だ。
「お疲れさま」
労いの言葉を掛けつつ、ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)は相棒のナノナノの軍師殿と一緒に、景色を眺めながらトマトジュースで一服している。風光明媚。この後の戦闘のことを考えなければ、これ程眺めの良い場所もない。
念の為にと、東雲・由宇(終油の秘蹟・d01218)が殺界形成を展開させているが、解除しても大きな問題にはならなさそうだ。とはいえ、展開していれば一般人を気に掛けて戦う必要もない。気分的には余裕ができる。
程なくして、やけに陽気なスキップを踏みながら接近してくる人影が見えた。
シャム猫を思わせる可愛らしいマスクに、ぷにぷに肉球の巨大な手袋。猫の足のデザインの長靴。くうねる・にゃんだーす二世だ。
「にゃにゃ? 次の対戦相手は、随分と大勢だにゃあ」
待ち構えていた灼滅者達を一瞥し、にゃんだーすは不服そうにそう言った。スタイリッシュなプロポーションを見る限りでは、パワー系のキャラではないと思える。多対一という図式は、あまり好みではないらしい。
「マスク付けててさ、前見えにくくないの?」
由宇が尋ねた。確かに、視界は狭そうだ。
「心配ご無用にゃ♪」
でも、にゃんだーすは胸を張った。突き出されたお胸がキュートである。
「それにこの時期は特に蒸れそうだし、覆面レスラーも大変よね」
真冬ならいざ知らず、この時期にマスクは暑そうである。ワンピースタイプの水着を着用しているので、体は涼しいかもしれないが。
「分かってくれる?」
やっぱり暑いらしい。
「にゃ!?」
突如として、にゃんだーすの目の前に影が躍り出る。
「…やんちゃな猫退治に参ったでござる。いざ尋常に、勝負でござる」
高い岩の上から、鹿嵐・忍尽(現の闇霞・d01338)が飛び降りてきたのだ。霊犬の土筆袴が付き従っている。
「び、びっくりしたにゃ。分かったにゃ。みんな纏めて、くうねる・にゃんだーす二世が相手になるにゃ」
「なんとも、フライドチキンが食べたくなるような名前だけど」
「にゃ、にゃんで名前の元ネタが分かったにゃ!?」
ジュラルの突っ込みに、驚くにゃんだーす。「元ネタ」の部分が、「元にぇた」に聞こえた。
「いや、普通に分かるだろ」
更に突っ込むジュラルの横で、軍師殿が羽扇を口元に当てて大きく肯いている。
「ナノナノにも馬鹿にされたにゃ。ムカツク」
にゃんだーすはご機嫌斜めになった。にゃんだーす風に言えば、「ご機嫌にゃにゃめ」か。
「そろそろ始めようぜ」
業を煮やしたように、巫・縁(アムネシアマインド・d00371)が言った。
「アスカロン、アクティヴ!」
解除コードを口にし、臨戦態勢を取る。
ユリアーネ・ツァールマン(蒼翼のフッケバイン・d23999)が、静かにそれに続く。
「こういうの、闇の格闘大会っていうのか? いくぜ、猫レスラー。ダンピールのあたしが相手だ!」
ライドキャリバーのバーガンディを前線に送り出すと、咬山・千尋(中学生ダンピール・d07814)は愛用のガトリング内蔵棺桶を構えた。
「にゃらば、お相手するにゃ」
素早く布陣を整えた灼滅者達に向かって、にゃんだーすは猛スピードで突っ込んできた。
●
「ぅにゃん♪」
何とも力の抜ける掛け声だが、威力は凄まじかった。スナップを利かせた高速の猫パンチは、恐らく鋼鉄拳であろうか。
咄嗟のことに避けることは叶わなかったものの、本能的にガードは間に合った忍尽だったが、その衝撃に思わず頬を歪めた。
「おぬし、なかなかやるにゃ」
お褒めの言葉を貰ったのはいいが、にゃん♪なキャラとは初対面な為に、脳内が若干パニック気味だ。
「クールにゃんだからぁ♪ でも、そういうの、嫌いじゃにゃいにゃ♪」
クールに見えたのは思考が停止していたからなのだが、にゃんだーすは好意的に捉えてくれたようだ。
「相手さんは強敵みたいだし、油断せずに行こうか」
ジュラルはイオン砲を構え、トリガーを引き絞る。撃ち出されたのは漆黒の影だ。
「うにゃ~ん」
影に飲み込まれる寸前、あり得ない角度に体を捻り、にゃんだーすは紙一重でそれを避けた。猫っぽいだけに、体もかなり柔らかいと見える。
「いくぜ、猫レスラー。ダンピールのあたしが相手だ!」
続いて襲ってきた千尋の斬影刃も回避に成功。
「やはり、一筋縄にはいかぬでござるな」
後衛陣を夜霧で包み込みつつ、木菟は呟いた。サーヴァントも4体いるので、手数の上で言えば、こちらが圧倒的に有利なはずだった。だが、手数が多くとも、当たらなければ意味がない。
「そこだ!!」
相手の動きを良く見、縁は狙い澄まして鋼鉄の拳を叩きこむ。
「うにゃ」
土筆袴とバーガンディが牽制してくれている隙を突いたつもりだったが、またも難なく回避されてしまった。
「にゃ~」
身を翻し、にゃんだーすが反撃してきた。徐に縁の胴に両腕で抱きかかえると、勢いよくジャンプしながらぐにゃりと身を反らす。ジャンピングバックドロップだ。
脳天を地面に打ち付けられてしまった縁は、白目を剥いてしまっている。気を失ってはいないようだが、一撃でかなりのダメージを食らったらしい。軍師殿が慌ててふわふわハートを飛ばし、奏も癒しの矢を放った。
「土筆袴、ツァールマン殿をお守りするでござる」
忍尽が小声で土筆袴を出す。縁が一撃であの状態ということは、彼より体力が低めのユリアーネは一撃で落ちる可能性が高い。無論、土筆袴とて同じだ。しかし、相棒を失ってでも、この場は彼女を守らねばならない。忍尽はそう判断したのだ。
自分の傍らに土筆袴が来たことに気付かずに、ユリアーネはにゃんだーすに向かって大きく踏み込む。愛用のマジピュア・リリー☆クリスタルシャイニングハートロッドフェザーを突き出す。
無防備な背中に直撃したかに思われたが、にゃんだーすは身を捻り、するりとロッドを躱した。
「にゃん♪」
回避後、挑発するように妖しげなポーズを取るにゃんだーす。
「そろそろ本気出しちゃおうかにゃん♪」
可愛らしい猫のポーズをすると、どす黒い殺気を放出してきた。殺気は後列にいる者達に襲い掛かる。
「こっちだにゃ♪」
一瞬だけ背後の仲間達の安否を気に掛けたユリアーネの隙を突いて、その死角ににゃんだーすは飛び込んでいた。ティアーズリッパーの動きだ。しかも、直撃コース。
しかし、そこに土筆袴が強引にその身を滑り込ませた。鋭い一撃にその身を斬り裂かれ、土筆袴は消滅する。
消えていく相棒の勇姿を目に焼き付け、忍尽が雷を纏った拳を突き上げる。
「にょっと♪」
にゃんだーすは両腕をクロスさせてガードし、身軽に後方に飛び退いた。
「わんちゃんの心意気見事なりにゃん。お次はキャリバーちゃんかにゃ? ビハインドちゃんかにゃ?」
軽くステップを踏みながら、にゃんだーすは茶化すように言ってきた。
「余裕のつもりか!」
さっきの仕返しとばかりに、縁がスターゲイザーを炸裂させた。残念ながらクリーンヒットには至らない。
タイヤを軋ませ、バーガンディが突撃してくる。にゃんだーすが反撃できないように、縁との間に割って入る。ナイスフォローだと千尋が肯く。
「うにゅ~。ちょろちょろと煩いにゃ。にゃんこ大結界にゃ!」
ネーミングからして除霊結界だろう。前衛陣を霊的因子を強制停止させる結界が包み込んだ。
「プロレスにそんなワザはないでござろう」
木菟が突っ込みを入れたが、
「大人数で1人をボコろうなんて考えてる、おみゃーさん達に言われたくにゃいにゃ」
「チートパワーを手に入れる為とか、相手が12人居るくらいの事でそれを捨ててしまって良いのでござるか!」
「負けたら元も子もないにゃ」
これを言われては言い返せない。
「ちっ、うっざいなあ…そのまま燃えてろ!」
由宇の放ったグラインドファイアが、にゃんだーすを飲み込む。
「あちち、あちち! 火傷するにゃー」
にゃんだーすがプンプンと怒っている。
炎上しているにゃんだーす目掛けて、七つに分裂した忍尽のリングスラッシャーが襲い掛かる。だが、これは無難に回避されてしまう。
「そんなへなちょこ攻撃じゃ当たらないにゃ。おし~り、ぺんぺん♪」
キュートなお尻を突き出して、ぺんぺんするにゃんだーす。体は炎に包まれているものの、まだまだ余裕があるようだ。完全に遊ばれている。
「上等だぁ!!」
この行動は、奏の怒りを買ってしまったらしい。普段の丁寧な口調はどこへやら、激高した奏が影を伸ばす。
「うぎゃっ。しまったにゃ♪」
影がにゃんだーすを捕らえる。神父様がタイミング良く霊障波を放ち、にゃんだーすがそれの回避に集中していた為に、迫りくる影の存在を見落としてくれたのだ。
「よそ見してていいの?」
彗星の如き勢いで突っ込んできた由宇が、力任せに飛び蹴りを放つ。
「悪いわね、レスリング知識皆無なの」
「ル、ルチャの如きキックにゃ…」
ぐぬぬと呻きながら、にゃんだーすは悔しそうに言った。
●
激しい攻防が続き、前衛として立ち続けている縁や、忍尽、ユリアーネは満身創痍だ。
先程、縁を守ったバーガンディが、抗雷撃の直撃を食らって機能を停止してしていた。神父様も危うい状況だ。
木菟や、更にその後ろにいる後衛陣の面々も無傷ではない。これが、武神大戦天覧儀に一勝した者の強さなのだ。もし仮に、二勝、三勝と勝利を重ねられてしまったとしたら、自分達では手に負えなくなる可能性がある。
だからこそ、ここで倒さなければならない。
「…五分五分? いえ、少しこちらの方が押されているかしら」
仲間達の状態を確認し、由宇が独りごちる。既にサーヴァントが2体倒れ、前に立つ者達は、誰も次の一撃に耐えられそうな状態にない。メディックの奏と軍師様も頑張ってくれているのだが、一撃一撃が重すぎて回復が追い付いていない。
それでも、こちらの攻撃も徐々にヒットしてきている。自分とジュラル、千尋の攻撃は的確に相手の体力を削り取っている。
どす黒い殺気が、再び後衛陣に襲い掛かる。無警戒だったわけではないが、不意を突かれた形になった。
「くっ…!」
激しい痛みに、ジュラルや奏、千尋、由宇の表情が歪む。
「そ、そろそろ観念するにゃ」
「肩で息をしている状態で、良く言う」
ジュラルが言い返す。その言葉通り、にゃんだーすは肩で大きく息をしていた。
「もう勝負は見えてるにゃ。死人が出る前に降参するにゃ」
ハッタリであろうことは分かる。降参も何も、これはギブアップ無しのデスマッチのはずだ。恐らく、次の一手を仕掛けるタイミングを計っているのだろう。
「そう簡単には殺られませんし、殺らせません。灼滅者の執念を舐めないで下さいよ」
片膝を突いていた奏が立ち上がる。
「こちとら覚悟はとっくに出来てるんです」
「諦めが悪いにゃあ」
にゃんだーすは大きく肩を竦めた。
「プロレスってつまり八百長でござろう?」
「にゃ!?」
次の行動に移ろうとしていたにゃんだーすに、木菟が破れかぶれで声を投じた。覆面の猫耳が、ピクリと動いたように見えた。
「窮地にあっても、観客へエンターテイメントを提供するのがプロレスラーというものでござろう!」
ビシッと指差したのは、自らが仕掛けたビデオカメラだ。
「にゃ、にゃんとぉ!?」
にゃんだーすが、条件反射でカメラに向かってアピールしている。
「…後は任せたでござる」
仲間達にそう告げると、忍尽が駆け出した。胸の前で印を結ぶ。リングスラッシャーを展開する。ここまでの戦闘から、自分のセブンスハイロウや抗雷撃は、余程運が良くなくては当たりそうにないと判断した。リングスラッシャーを撃ち出しても当たるかどうかは分からない。しかし、今自分が使えるサイキックの中で、一番命中する可能性が高いものを忍尽は選択した。
手裏剣の如く、リングスラッシャーを撃ち出す。
「にゃっ」
躱された。だが、それでも構わなかった。にゃんだーすの気を引くことさえできれば。
にゃんだーすは自分に向かって突っ込んできた忍尽を、次のターゲットとした。組み付き、得意のジャンピングバックドロップの体勢へ持って行く。
脳天を地面に叩き付けられ、忍尽はそのまま昏倒した。
だが、無意味なアピール後に無理な体勢で忍尽の攻撃を避け、更に強引に投げを行ったことで、体勢を大きく崩していた。
「拳で勝負だ!」
一気に懐深くに潜り込んだ千尋が、閃光百裂拳を炸裂させる。赤い闘気を纏った拳が、凄まじい勢いでにゃんだーすの腹に叩き込まれる。
「うぎゃっ」
「貴女みたいな強い相手には、剣使ったって反則じゃないわよね!」
腹を押さえて退いたにゃんだーすに対し、由宇が「Judicium Universale」を振り下ろした。
「ふぎっ!?」
体内の霊的因子に大ダメージを受け、にゃんだーすは思わず身を硬直させた。
「私、必ず戻ってくる…だから、やるよ…!」
ユリアーネが全身全霊を込めて飛び蹴りを繰り出す。流星の煌めきを帯びた蹴りが、バランスを崩したにゃんだーすの顎を蹴り上げた。
覚悟の上での一撃。止めの一撃だった。
「み、見事、にゃり…」
にゃんだーすは両膝を折り、そのまま頽れた。倒れたまま、ピクリとも動かない。
「展覧儀、確実に進んでる…こんな戦い、まだ増えてくるのかな…」
ユリアーネが自らの体の変化を感じた。心の中に、漆黒の闇が広がっていく。
縁が気を失っている忍尽を抱え上げた。
ユリアーネが肯く。
「…すまない。きっと助ける」
灼滅者達は口々にそう告げると、激闘の場を後にした。
作者:日向環 |
重傷:鹿嵐・忍尽(現の闇霞・d01338) 死亡:なし 闇堕ち:ユリアーネ・ツァールマン(ゴーストロード・d23999) |
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種類:
公開:2014年7月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 14/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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