鬼灯屋台 ~だいだいさがし~

    作者:一縷野望

     ――下町情緒あふれる浅草。
     とてもわかりやすい『日本』があふれるコトからも、外国人観光客にも根強い人気を誇る。
     昔と外とが混在する賑やかさを抜けた先に屋台が並ぶ。
     夏告げる、鬼灯のお祭り。
     鉢植え橙。持ち帰ればあなただけにずっと灯りをくれる。うまく世話すれば次の年も。
     枝の橙。立派に実る橙は、掲げれば誇らしげな気分になれる。鈴なり降れば、しゃらりかすかに謳う。
     掌の橙。気軽に求めるならば鬼灯の実だけでも。例えばテーブルに籠に入れて飾ればぱっと晴れやか。
     
    ● 
    「夜の写真、なのに……賑やかで華やか、ですね」
     機関・永久(リメンバランス・dn0072)は夜に咲く橙屋台を前に、気を惹かれた様子。
    「灯が灯ったみたいだよね。鬼灯の鉢がそこら中にあってさ、見事なモノだよ」
     見にいくだけでも充分楽しいと、灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)は写真を回収してとんとんとまとめた。
    「もちろん普通の屋台も沢山出てるからさ、鬼灯以外は何処にでもあるお祭りだよ」
     だから誰が行っても楽しい。
     お一人でも、友達や恋人など大切な人と誘い合わせても、きっと胸に残る思い出ができるはず。
    「屋台……色々あり、ますよね。ええと……」
     射的、金魚すくい、風船すくいというオーソドックスなのから、キラキラプラスティックジュエルすくいだの、餅をソーセージにぐるぐるした食べ物だの……。
    「ボクが見たのは、中華風おやきのシャーピンとか、リッチな国産牛串焼きとかね」
     食欲も遊びたい気持ちもきっと満たさせる。
    「ま、せっかくだからさ、みんなで賑やかに繰り出さない? ってお誘い」
     鬼灯に似た瞳を楽しげに細めて、少女はそう締めくくった。
     さぁ、お祭りに出かけよう!


    ■リプレイ

    ●青雲
     蒼と橙。
     くっきり二層に分かたれた空間に、囃子文句と人々の熱気が満ちる。
     浴衣でおめかし彩雪は大人気分。
    「似合うなあ!」
     康也も祖父お勧めの浴衣姿。
    「おもしれー形だなあ」
    「迷ったときに照らしてくれるような気がして」
     康也の瞳に似た暖か色。
    「あったけー色か…へへ」
     興奮気味の千花へ笑む藤花は品定め。緑も楽しめそうと手に取る。
     蓮模様の風鈴付きの真っ赤な鉢持つ千花へ、部室用も選んでと。
    「じゃあ全部オレンジの…これがいいです!」
     火の色鬼灯お土産に、続けてお腹を満たしに。
    「んーと、ぷく! ぽわわんっだよー」
     鬼灯知らないはこへシタはまん丸をつくる。
    「ぷっくりしててかわいー、ね」
    「オレンジさん、でしょーう?」
     はしゃぐ彼女へ一枝。
    「したんの分ね」
    「いいのん? うれしい!」
     鬼灯ちゃ、思い出と一緒に大事大事。
    「鬼灯って毒があるんだっけ?」
     ころりとした見た目からは意外とにあ、実が苗になるとの母の言葉も思い出し手元へ。
     仲睦まじい家族に淡い笑み向ける乙彦は何処か異邦人のよう。屋台で灯火の子を品定め。
    「こいつにするか」
     長く楽しめるよう鉢植えで。
     祭りといえば射的!
     銃器は得意ではないと構える晃達の隣メルヒオールも遊技場へ。
     ぺちん☆
     微動だにしない。
     釘づけとの苦情に店主がぎろり、無言で指さす。
    「どうしたの、晃部長?」
     もふもふゲット、一瞬のちドヤァ!
     ぺしん☆
     店主にヒット!
    「ご、ごめんなさい!」
     林檎の香りなユァトム、ぺこぺこ。
    「花畑に植えられるかな?」
     お財布軽くもまぁ必然。

    ●茜空
     夏らしい赤がそこかしこ、陽が傾きますます賑やかさ増す屋台。
    「…って、すげーな」
    「昼間とは全く表情が変わるんだな」
     夕映え鬼灯。
    「鬼橙、金灯、錦灯籠」
     昔人がつけた名を舜は口ずさむ。
    「舜の髪も」
     アスールは茜髪の煌めきにおっとりと。
    「夜まで居ようぜ!」
    「…楽しみだな!」
     実は暗所恐怖症。カンテラは何処?
    「紅い鬼灯どこですかー?」
    「うふふ、先輩はあかいものがお好きですものね」
     紅、一際濃く彩づき。
     見つけたなこたとイコはハイタッチ☆
    「次は…」
    「好いの」
     その破顔が探し物。
     ならばイコさんに一粒灯しましょう。
     たまの首にも結わえれば枝に残る灯籠一粒。掲げた画はカメラの中へ。
    「もうそんな季節なんですね…」
     暑さにかき氷を求めた流希の眼差しは鬼灯へ。
    「寮の玄関に」
     鑑賞に良さそうだから。
    「やっぱり花より団子?」
     瞳の声に弾ける笑い。
    「ベビーカステラ大好き!」
     お留守番テツ君想いつつ矢宵。
     いつもより美味しいのは、
    「お祭りの魔法なのかな?」
    「見てるだけでわくわくしちゃう」
     碧月と和奏、チョコバナナと苺飴を皆にシェア。
    「お札がかなり、消えました」
     永久はもんじゃあげをどぞ。
     皆と一緒だから美味しいに、瞳はこくり。
    「どんぐり飴をお裾分け♪」
     さて、食べられる鬼灯探し…。
    「お、永久モテモテじゃん」
     フランクフルトを振る誠、標もにまー。
    「はい、標ちゃん」
     鬼灯簪は碧月から。
    「お返し」
     星飾り。
    「永久! バトルしようぜ!」
     誠が指さすのはかき氷。
    「永久くん頑張れー」
    「負けられないねっ」
    「E組代表!」
    「そんだけ言われたら受けねーわけいかねーよな!」
     受けて立つも頭キーンで転がる二人。
     活気に【古書環礁】の皆は胸躍らせる。
    「草の実に灯りの字を当てるなんて、洒落たことを考えたね」
     彩づく屋台を指さすティオ。
     鬼灯と夕日/朱と赤。
    「どちらも綺麗」
     粒をつまむ隼世。
    「鬼灯は死者を導くと言われていますが…」
     死者ならずとも誘われそうと海碧と風鈴つつき。
    「なら、帰りの灯りはこれで…なんて、ね」
     ティオが掲げた鈴なり鬼灯、火のようにゆらり。
     モダンな和を着こなす亮は、尾咲を消した記憶へ。振り切り天見上げればさざめく橙。
     祖父と手にした枝から逡巡、指先は鉢植えへ。
     ――暇ならちょっと付き合え。
     琉生の誘いに勇は隣、水飴甘露に舌鼓。
    「…ほらよ」
     南土産のお返し鈴なり鬼灯。手にした一粒より遙かに多く勇は瞠目。
    「少々頂き過ぎかと存じまする」
     掌に落とした一粒。
    「…貰った礼に又貰ったら意味ねぇだろうが」
     されど綻ぶ口元…靜かな時を享受する。
     男勝りが着飾ってもとしょげていた鈴へ咲かせたのは朝顔。贈主は芍薬依子。
     可愛いに鈴が照れ、お揃いに依子も頬が林檎。
     涼やか風鈴、つられ鬼灯笛…そして。
    「リンゴと並べたら赤と橙でキレイだよ」
    「確かに」
     さぁてお次は甘味へ。
     金魚色の少女が跳ねる、ワインの海に澄んだ波紋ができるよう。
    「やってみてもいい?」
     銃を構えるリリー当たらない。射手交代、銃使いとしては外せない。
     ぱしん☆
    「わあ! 当たった! ママすごーい!」
     リリーの破顔がヴォルペのプライズ。
     お下がり浴衣、大和男児と褒めそやし。
     錠の鉢に付く風鈴に理利は夏を感じ、出逢いからの時間を互いに辿る。
    「網ほおずき…」
     できたら差し上げますは未来への約束。
     雨の傘、嵐の避雷針…それで充分との想いだった錠、破顔。
    「サンキュ」
     嬉しさからころ詞水の下駄が風鈴に合わせ謳う。寿ぐ靱ははぐれぬように手を取った。
     かき氷で喉潤し、
    「鬼灯って笛になるんだよね」
     興味津々の瞳の前、響くは空気の抜けた音。
    「おにーさんの威厳が…」
    「戻ってからも沢山練習できますね」
     抱えた鉢はクラブへのお土産。
     兄と一緒のお祭り嬉しは隠す本音。
    「鬼灯あったらいいなって」
     母灯す灯りの代わりと、薙乃から親亡くした寂寞を蒼刃は拾う。
    「そうだな」
     寂しい訳じゃないと打ち消す妹は全て払うと財布を握る。
     兄は二人で育てるから半分ずつと宥め、ふと幼少期もこうだったかと思い出す。
    「昔はよく迷子になったよね」
     柔和な嵐に千皐が振り返れば、気怠げに袖ゆらす千皐だけ。
    「鬼灯笛しよ」
     こっちと声、手には鬼灯枝掲げ。
    「なんだそりゃ」
     一粒ずつ渡し、手本としづこは皮をぐにぐに。嵐は生徒気分で神妙に。
    「ぶえぇっふ!」
     苦い。
     咽せた所を唇歪めからかう千皐の手では鬼灯がぐしゃり。
    「笑ってんじゃねーよ」
    「吃驚しただけ、ほんと」
     片時も忘れた事ない故郷時間は宝物、再会した幼なじみ達は今を愛おしむ。
     なんでもはんぶんこ。
    「あーん」
     鋼からの焼きそばもぐ、ひらひら帯に金魚の浴衣が眩しい鷹秋。
    「マジ可愛いすぎじゃね、最高だわ」
     頬についたソースを舐めとりまた照れて。
    「あ、キラキラジュエル」
    「金魚に続いてまかせておきな!」
    「あれわけっこして食べないかい?」
     たこ焼きに尻尾ぶんぶん千代乃、ブランシュヴァイクの奢りとあらばはりきって。
    「嘉神サン、手。私でよければ、どう?」
    「花ちゃん、お願いなのです」
     皓が迷子にならぬよう括は優しく手を引く。
     細いからとたこやき二つ目差し出されブランはきょとん。
    「嘉神さん、ごめんなさい」
     射的失敗、沙耶のしっぽがしょんぼりぺたん。
    「ドンマイなのです」
    「沙耶、括、ほら食べな」
     千代乃、林檎飴じゃんけんで2本ゲット。
    「私からはわたあめ、ね」
     括のふわふわ、沙耶の瞳キラキラ。
    「ほんと、幻想的」
     異国めいた風情に賑やかな声もしばしお休み。
    「こおは実を」
     ころり、可愛や。
    「里の皆さんのお土産に」
     一際紅いの二つは千代乃の奢り、白狼の里で育てよう。
    「わぁ」
     橙一杯の籠下げた莉茉は髪色の鬼灯鉢掲げる紅葉に感嘆。
    「綺麗やね」
     微笑む友が純白から暁に染まる様に、紅葉もうっとり。
    「本当、お名前の通り…灯り、みたいですね」
     もらった言葉嬉しくて、部屋に灯そう鬼灯を――白と紅、二人の少女を暖める。

    ●黄昏
     傾いた陽に照らされて橙が頬染める。
     はぐれぬようにと伸ばした指先絡まる、人恋しい時刻。
     初めての鬼灯に瞳輝かせる翡翠に、迅は選んだ鉢を掲げ口元解く。
    「鬼灯はね、人の魂を導く明かりになるんだよ」
     迷わず離れず迅の浴衣を追い歩いた翡翠の口元も綻ぶ。
     屋台の綺羅に誘われるのも、魂が惹かれているからなのか…二人は喉潤す苺氷を探し歩く。
    「ふわああ、鬼灯いっぱい!」
     天も地も、橙。
     明るい声に反して茜歌は橙に誘われ落寞の中に、いる。
     だから桐人は問うた、どれにする、と。
    「え、お揃い?」
     同じ数の橙鈴なり。
    「「ありがとう」」
     一緒にいてくれて/付き合ってくれて。
    「あァ、佳い夕焼けに御座います」
     モロコシ翳し空仰ぐ九里は鬼灯へ身を寄せる。
    「…あんた、夕日が好きなのね」
     林檎飴囓る華月の紅は特に赤く色付く鬼灯へ。
    「まるで詩夜さんの瞳の様な色に御座いますよ」
     綺麗。
    「褒めた処で、これ以上何も出ないわよ」
     鬼灯奢ろうか。
     枯らすから唐揚げで。
     白波も茜に染まる頃天花はゼノスの元へ。
    「食べ歩きながら回るのが作法だって聞いたしな」
     綿飴お裾分け…囓られた所で間接キスと気づく。照れ隠しで指した射的もゼノスは真剣で、理由話しごめんなさい。
     そんな天花に緑袖に隠していた橙降らせ。
     共に育てよう、この絆のように。
     紺に桃花。
     白群に金魚。
     孤影と雛、白焔と緋頼。
    「どうして雛に惹かれた?」
    「鬼灯の花言葉は心の平安」
     ヒナそのものだとの孤影の本音に頬が鬼灯色、其れは同じと囀る。
    『不思議』無いものを沢山…緋頼に白焔は以前なら見せぬ笑みで継いだ。
    「緋頼は拠り所だな、文字通り」
     なくして残るは白焔あらず。
    「傍にいないといけない人です」
     緋頼の手を取り白焔は柔らかに。夏は此から、共に愉しも。
    「心の闇を彷徨っていた頃…」
     導いてくれた貴女。
    「貴方の存在はヒナの証…」
     導そのもの。
     ――想い人の掌、決して離さずに。

    ●誰彼
     まさに火点し頃…梛の台詞にシグマは枝を光に翳す。
    「燈籠みたいで綺麗だよな」
     鷹育は馴染んだ枝の実を突く。
    「大量にあると神秘的というか…」
     クレイも食い気ばかりではない。
    「ホント、灯りみたいだな」
     屋台の光が透けて、
    「ランプ…いや、提灯」
     らしくシグマがゆらせば破顔伝染。
    「逢魔が時、か」
    「死者を導くと言うし」
    「この灯りになら悪い物じゃねぇよ」
    「クレイが格好いい事言った」
     発起人シグマが選んだのを育てると梛。鷹育はトマトも混ぜぷち鬼灯祭開催計画。クレイは「食えんの?」と素朴な疑問。
     浅紫の夕顔が咲く、濃紺の闇で。
     浴衣が新鮮と笑む結城、通りすがりにふかっとわんこが目に止まりさっそく銃を取る。
    「コルク銃って当てるの難しいんですよね」
     指弾なら…は夕の内緒。
     ぺちん☆
     弾の当たった額を撫でる夕は次は鬼灯と口元揺るがせた。
     鬼灯の為のお祭り…その特別さが素敵と百花とエアン。
     鮮やか橙、エントランスで揺れるのはさぞ可愛かろう。大切な二人のお家、どの鉢で飾ろうか。
    「…このほおずきみたいに、幸せいっぱい実るように」
    「うん、一緒に植えようか」
     彼女の言葉は魔法――鬼灯の中、幸せが一杯に見える。
     橙の前無言の冥が口火を切るまで待つ。
    「家の庭にはな、此奴が沢山植えられておった」
    「一度見てみたいな…鬼灯一杯の庭」
     更に知りたいと飛燕。
     どうでも良いはずが懐かしいと冥。
    「さて、俺様の買い物は終いだ」
     後は礼と瞳眇める冥に飛燕もつられ笑む。

    ●夜闇
     薄闇に沈む中煌々と点る橙は、益々人々の気持ちと足を魅了する。
     鬼灯に連れて行かれそうな銀色をふわり捕まえて。
     行くなら、一緒。
     七星の手に灯る橙ランタン、標とす儚の耳朶擽るは、
    「鈴虫」
     また歩けば横目にわたあめ。
    「七星」
     袖を引く愛らしさにどうぞと。
    「な、儚」
     ひとくち。
    「ふふ、どうぞ」
     独り占めは勿体ない、甘い幸せ。
     初めて見る橙はつつけばふるり。
    「何処かへ行かないように見ててね」
    「見てるよ?」
     肘に絡む指撫で蓮二、至近の鵺白想う。
     綿菓子一つ。
    「こうやってかぶりつくのよ!」
     気取らぬ口元に惚れ惚れ、ふわふわの髪とそっくり――どちらも大好き。
    「君も」
     鬼灯そっくり。
     その隙にまたぱくり、萎んだ綿菓子に笑み誘われ。
     人じゃない者が混じり、わくわくと人恋しさがない交ぜ――そんな千波耶に歩合わせ、葉は「イカぽっぽ奢ってやる」と口ずさむ。
     共に居る時ぐらいは寂しくないように。
    「ね、鬼灯鳴らし」
    「…なんだそれ?」
     イカぽっぽを食べきったら教えてあげる、だから一緒に鳴らそ。
     今もあたしは生きている。深淵悟られぬよう彩は林檎飴を颯人へ。いつかより甘い。
     店の彩りはどれがいい?
     答えるように彼の髪色一粒。
    「またのお越しを」
     戯けた接客、髪撫でられ剥がれ落ち。
    「あたしにとって、もうただの見知らぬ店員じゃない」
     破顔。
     特別なお客様がくれるモノ。
    「統弥さんの浴衣、日本男児だなぁって思います」
    「大和撫子という感じだ、とても可愛いよ」
     よく似た感想、安堵と幸せが二人を彩る。
    「行こうか、藍」
     掌の熱を分け合い、射的金魚すくい…藍のお気に召すまま。仕上げは鬼灯、二人住まう学生寮で大切に育もう。
     ますます熱籠もる多くの鬼灯売りに水華は吃驚。
    「鬼灯とかいてほおずきと読むのですか?」
     可愛いとフィアッセ。
     鉢植え、庭で映えるだろうと言えば破顔と共にレースがしゃらり。
     今だけは明日の授業も忘れ楽しもう、沢山の中唯一のお互いと共に。
    「郁さんは…可愛いなあ」
     花籠にリボンのような浴衣に修太郎は眼鏡越しの瞳眇め。
     黒浴衣に涼やかな縞浴衣の彼にドキドキ。
     転びそうではぐれそうで、手をつなぎゆっくり歩こう。
     テストの賭け、郁の奢りはクレープ。男一人だと食べられない、可愛い理由。
     こんな風に楽しい分け合って、此からもずっと一緒に。
     金魚すくいで勝負!
     兵吾から仕掛けられ芹は受けて立つ。
     一、二…。
    「男たるもの」
     狙いはでっかい出目金とポイと椀を水面ギリに近づけて!
     …六、七。
    「ほら、見るがいいこの巨大な金魚を!」
    「七匹」
    「なんでも好きな物奢らせていただきます」
     綿菓子手に41cm差の二人、寄り添うように歩く。
    「あ…逃げられちゃいましたね。仕方ありません…」
     二人上手かったなぁと思いつつ逃した灯魔は楽しそう。
    「キャラメルは無理でも、オモチャなら~」
     鮮やかチャイナ少年が、切れ長の瞳で銃口をアヒルへ。
     ぱしん☆
     倒れるアヒルと…スライム?
     その後、劉鞍はシャービンに舌鼓。同じ方へ歩く二人は鬼灯鉢も手に入れほくほく。
     …聞き分けられぬ声、けれど皆『愉し』
     いちばんきれいを弥彦は優しく包みこむ。浮かぶは仲間の少女の面。
     お土産にありがとう、これはおかえし。
    「はわー…ど、どうでしょう?」
     髪色浴衣にあげた髪のレイラに永久。
    「春色、似合いますね」
     照れつつ一緒に鬼灯選び。
    「機関さんは何を…はわー?!」
     枝粒鉢全部買い、さてなにをお揃にしよか?
    「標さん、偶然ね」
    「ばったりだね、アリスさん」
     縁は大事にしたい…さて、縁運命宿命とは?
    「…つまんない禅問答ふっかけちゃったわね」
    「運命信じるな」
     嫌いじゃない、こういう話。
     …見つけた橙は精霊棚へ収る予定。
    「ゆーちゃん、すっごい綺麗!」
     鬼灯・藍染め浴衣でおおはしゃぎ。
    「標ちゃん/灯道さん」
    「あ、見っかっちゃった」
     お邪魔かななんて、藤浴衣で笑う。
    「連れてくなら緑と橙、どっちがいーい?」
     陽桜がつつき鬼灯ゆらり。
    「将来性に賭けて緑」
    「オレはね、この子!」
     勇介は両親へ誕生祝い返しの名案思いつき。
     花園の名のままに華やか豊か娘達が下駄をからころ。
    「に、似合ってるかな…」
     蒼空朝顔由希奈に「ええとても」と葵。
    「りんごさんも林檎飴を如何でしょうか?」
     待雪草の葵の飴に空に咲く花りんごがぱくり。
    「あーん♪」
    「じゃ、りんごさんも、あーん」
     金魚が跳ねるよに悠花はチョコをぱくり。囓りかけも、愛…いや、け・ん・ぜ・ん、です!
    「チョコの味が濃いですね」
     純白セカイ実は甘党、カードのように甘味ずらり、講評も忘れない。
    「それがマシュマロ(胸)の秘密!」
     悠花、甘味ばっくばく!
    「霊感の強い稲荷神社の跡取りに負ける要素など…ないっ!」
     藍に朝顔大人顔朝顔奏、杏子飴を2本ゲット!
    「ふう…あ」
     クレープからあふれたクリーム、由希奈が頬を拭おうとしたら…。
     ちろり☆
    「きゃっ」
     りんご、甘いと瞳眇め。
    「ひゃあっ!」
     杏子飴の葵も悲鳴。
     …さて、一応は園芸部な『花園』です、鬼灯を前にあれこれ語る際はちょっと真顔、そして記念撮影。
     休憩所ではしゃぐ黒柴とレトリバー。つまんだ鬼灯、クロ助の頭へちょん。
    「お、すごいな」
     落とさぬようお座り。
    「加具土…」
     乗せたそうな実を誘うようにこっくり。
    「おっ、えらい」
     びしっと二匹。でも実と勇弥の頭からはころりん☆ 無理難題が破顔をもたらした。
     向日葵と鬼灯、涼子とさくらえは下駄をからころ、幻影のような橙通りを往く。
    「花には見えないんだけど」
     花言葉は『不思議』
    「確かに不思議ね」
     さくらえの視線受け慈しむ涼子は鬼灯つん。
     鬼灯も屋台もと欲張る涼子の手は一杯に。
    「荷物持ちしてあげるよ」
     姫君は何を託すか思案中。
     ――もう一つの花言葉は『偽り』
     されど人の思惑関係なく誇らしげな鈴なりの橙を、煌介は愛おしく想う。
     世界という殻の中確りと実る真実があるのだろうか? そう描けば、鬼灯と世界は存外似ているのやもしれぬ。
    (「真実も皆で一緒に愛でよう、な」)
     今も何時かの未来でも、この彩り豊かな橙を心から愛でる『誰か』でありたい――。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月12日
    難度:簡単
    参加:106人
    結果:成功!
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