多摩川の河川敷にあるドッグランでは、今日も今日とて多くの犬が駆け回っていた。飼い主達はある者は犬と一緒に遊び、ある者はベンチに腰掛けて犬たちの駆け回る様を見守っている。
と、突如ドッグランに場違いな銃声が鳴り響き、一匹の犬が悲鳴と共に倒れた。その犬の胸には大きな穴が空き、血が止めどもなく溢れている。即死しているのは誰の目にも明らかだった。
そして、銃声は一発だけでは終わらなかった。
銃声が響くたびに、犬が一匹、また一匹と倒れ、血を流して息絶えていく。
つい先ほどまで犬たちの楽園だったドッグランが、今は犬達の狂ったような吠え声と、飼い主達の悲鳴が響き渡る阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「ふむ……。この国の狼は死滅したと聞いたので、せめて犬狩りでもと思ったが……。やはり飼い慣らされた獣を狩っても、今ひとつ面白味に欠けるな」
猟銃を構えた古風な狩猟服姿の西洋人が、逃げまどう犬や飼い主達に冷たい視線を向ける。
「もっとも、私も他人のことをどうこう言えた立場ではないのだがね」
自らの首に嵌められた忌まわしい意匠の首輪に触れながら、男は自嘲気味にそう呟いた。
「嗚呼、サイキックアブソーバーの声が聞こえる……。行方不明になったロシアンタイガーの『弱体化装置』を狙って、西洋からヴァンパイアがやってきたと」
集まった灼滅者達に、神堂・妖(目隠れエクスブレイン・dn0137)は陰気な声でそう告げた。
「……今回やってきたのは、爵位級ヴァンパイアである『絞首卿ボスコウ』の奴隷として力を奪われたヴァンパイア。本名は分からないけれど、『ウルフハンター』の二つ名で呼ばれてるみたい」
妖の言葉に、叢雲・ねね子(小学生人狼・dn0200)の頭部の大きな耳がぴくぴくと動いた。
「おら英語は苦手だけんど、それぐらいなら分かるんだべ! 『うるふはんたあ』って、『狼狩り』って意味じゃないずらか!?」
ねね子の言葉に、妖が頷く。
「……ウルフハンターは、狩猟を趣味とするヴァンパイア。特に、狼狩りを得意としていたことからその二つ名が付いたみたい」
ウルフハンターは奴隷にされて以来、長らく狩りを禁じられていたという。今回ロシアンタイガーの捜索を引き受けたのも、成功すれば奴隷から解放されるという交換条件があったからのようだ。
「……それともう一つ。その任務を受けることで、ボスコウの支配から一時的にでも解き放たれ自由に狩りが出来るようになるからといった理由もあったみたい」
彼は今は犬を狩って満足しているが、いつその銃口が人間に向けられるとも限らない。
「……だから、すぐにウルフハンターの凶行を阻止して欲しい」
「当然ずら! 遊びで狼や犬を殺すような奴は、絶対許さないんだべ!」
熱くなったねね子をなだめつつ、妖は状況の説明を始める。
「……ウルフハンターと接触できるのは、彼がドッグランに姿を現してから。ドッグランには20匹以上の犬と、15人ほどの一般人がいる」
ウルフハンターは狩り甲斐のある獲物を求めているため、灼滅者が現れればそちらにターゲットを移す可能性が高い。ただし、彼は狩りのためには手段を選ばない。場合によっては一般人や犬を盾代わりにしたり人質代わりにすることも考えられる。
「……ウルフハンターの武器は、猟銃型のバスターライフル。他にも、ダンピールと同等のサイキックを使ってくる」
ウルフハンターはボスコウの手によって能力を抑制されているが、それでも並のダークネスよりも高い戦闘能力を持っているため、注意が必要だ。
「……彼は、狩人としての高い矜恃を持ってるから、獲物を前に逃げ出すことはしないはず。だから、ここで確実に灼滅して欲しい」
「任せるずら。そいつに殺された狼たちの分まで、おら達が懲らしめてやるずら!」
既にやる気満々のねね子を落ち着かせるように頭を撫でながら、妖は
「……強敵が相手だけど、負けられない戦い。みんななら絶対勝てるって、信じてる」
そう言って灼滅者達を見送ったのだった。
参加者 | |
---|---|
ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039) |
旅行鳩・砂蔵(桜・d01166) |
槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877) |
紅羽・流希(挑戦者・d10975) |
彩橙・眞沙希(千変万化のもふりすと・d11577) |
十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170) |
セシル・レイナード(あぶない灼滅者・d24556) |
東・喜一(走れヒーロー・d25055) |
●狼、現る
「さて、では久しぶりの狩りを楽しむとするか」
猟銃を構えた中年男が、ドッグランに姿を現す。場違いなその姿に何人かの飼い主達が目を向けるが、これから起こるであろう惨劇を予想し得る者はいなかった。
「飼い犬が相手では、一撃一殺くらいの縛りがなければ遊びにもならんな」
おもむろに猟銃を構え、狙いを定める『ウルフハンター』。
と、その眼前を、銀とグレーの体毛を持つ二匹の獣が駆け抜けていった。
「!?」
思わず目を瞠るウルフハンター。無理もない。今目の前をよぎった獣は、日本では絶滅したとされている狼に他ならなかったのだから。
人狼の存在を知らないウルフハンターには、それが彩橙・眞沙希(千変万化のもふりすと・d11577)と槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)の変身した姿だとは、気付きようもない。
「これは偶然か運命の悪戯か……。だが、狼がいるのなら飼い犬など狙う必要はない!」
歓喜を抑えきれぬように、ウルフハンターの銃口が眞沙希の変化した銀毛の狼に向けられた。即座に放たれた魔力の銃弾を、しかし康也の変化したグレーの体毛の狼が庇う。次の瞬間、グレーの狼の姿が、人間のものへと変わっていった。
「何……?」
またしても目を瞠るウルフハンター。そんなウルフハンターに対し、康也は指を突きつけて不敵に笑んで見せた。
「狼、狩りてえんだろ? 来いよ、相手してやるよ! そう簡単には狩られてやんねーけどな!」
そして再び狼の姿となり、ウルフハンターの視線を、一般人や犬達がいない一角へと誘導していく。
「成る程。人に変じ人と交わることで生き延びた狼がいたということか。獲物として不足はない!」
ウルフハンターの注意が完全に2匹の狼に向けられたのを確認し、次に動いたのは東・喜一(走れヒーロー・d25055)と紅羽・流希(挑戦者・d10975)だ。喜一は『殺界形成』を発動し、流希は『プラチナチケット』で自分を私服警官だと思いこませて、それぞれ飼い主達を避難させていく。
「さあ! 変な人が現れましたよ! 逃げて逃げて」
そう言うメイド服姿の喜一も端から見れば充分変な人なのだが、それは今は言わないでおこう。
「何もなければ、平和な光景なのですがねぇ……」
まだ状況を把握しきれていない一般人達を避難させながら、流希が呟く。
一方で、犬の避難に当たっているのは十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)と旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)だ。
「吸血鬼、また、人の、迷惑な、こと、してる」
ただならぬ気配におびえる犬達をなだめつつ、深月紅はヴァンパイアへの憎しみを抑えきれずにいた。
(「――殺そう」)
心の内で、明確な殺意が芽生えていく。
「この犬の飼い主はいないか?」
砂蔵は、はぐれてしまったらしい犬を抱えて、逃げている飼い主達に声を掛けていった。途中で、3匹の犬を連れて難儀している飼い主の避難にも手を貸していく。願わくば、飼い主も犬も全て無事逃がしたい。そのために今は全力を尽くすのみだ。
「それじゃねね子さん、みんなと協力して避難誘導よろしくっす」
ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は、共に待機していた叢雲・ねね子(小学生人狼・dn0200)に犬の避難誘導を任せると、ウルフハンター目掛けて掛けだしていった。そのまま無敵斬艦刀『剥守割砕』を、勢いに任せてウルフハンター目掛け振り下ろす。
「むう!?」
狼に完全に気を取られていたため、ウルフハンターはその攻撃に反応しきれず、肩口を強打され顔をしかめる。
「ハンティングは、動物愛護団体が今はうるさいっす。確かこの間退位したスペイン王も、象狩りを批判されてたんじゃなかったっすか?」
剥守割砕を肩に担いだギィの言葉に、ウルフハンターは不快そうに眉をひそめた。
「人間風情に、我が高尚な趣味をどうこう言われる筋合いはないな。しかしその力、貴様灼滅者か」
「その通り。そんなわけで、時代遅れのシャスール・ド・ルゥ、お前を灼滅する」
ギィの剥守割砕が黒い炎をまとう。ウルフハンターは間合いを取るべく後方へ跳ぼうとするが、いつの間にか影で出来た触手が彼の足を絡め取っており、動きが封じられていた。
「!? これは……」
「何がハンターだ、笑わせるぜ。要するにてめぇより弱いヤツのケツを追い回してペロペロ舐めることでしか勝ち誇れないんだろ?」
影を放ったセシル・レイナード(あぶない灼滅者・d24556)が、冷笑を浮かべる。
「安い挑発だが……、いささか言葉が過ぎるのではないかな?」
必死に冷静さを保とうとするウルフハンターだが、その表情が怒りに歪むのは抑えきれない。
「なるほど。あの狼も貴様らの仲間か。とすると、私は罠に嵌められたと、そういうことかな」
行く手を遮るように立ちはだかる灼滅者達、距離を取ってこちらの動向をうかがう2匹の狼、そして手際よく犬やその飼い主の避難を進めていく者達。
「……面白い。狩りというのは困難な状況ほど、やりがいがあるというものだ」
怒りに引きつっていたウルフハンターの表情は、いつしか愉悦の笑みへと変化していた。
●狩人の流儀
「さて、シャスール・ド・ルゥ。お前の蛮行、俺たち灼滅者が止めてやるっすよ。今からは――お前が狩られる番だ」
ギィの無敵斬艦刀『剥守割砕』の斬撃を、しかしウルフハンターはわずかに身をひねって回避する。その瞳は素早く周囲の状況を捉え、最適な一手を高速演算で弾き出していった。
「では改めて、狩りを始めようか」
ウルフハンターが猟銃を構え、狼姿の眞沙希と康也が身構える。だが、ウルフハンターが撃ったのは二人ではなかった。彼が狙ったのは、飼い犬と共に避難している一般人の一人。
「くっ!」
予想外の攻撃に反応できたのは、避難誘導を行いながらも常にウルフハンターの動向に気をかけていた流希だけだった。咄嗟に身を盾に一般人を庇おうと試みるが、距離が離れすぎている。銃弾よりも早く動いて庇うのは、不可能だった。
「ぎゃああっ!」
撃たれた初老の男が、足を押さえて倒れ込む。
「なんの真似だ、てめぇ!」
セシルが反射的に制約の弾丸を撃ち出したが、、ウルフハンターは冷笑を浮かべて弾丸を猟銃の背で受け止めた。
「私は狩りには常に全力を尽くす主義でね。君達は人間や犬に被害を出さないように戦っているのだろう? ならば、この手が最適だろう」
「何が最適だ! 獲物は俺達狼だろう。関係ねぇ奴に手ぇ出すな!」
人間の姿に戻って康也が叫ぶ。
「私が狼しか狙わないなら、狙いを読むのは容易い。だが、私が誰を狙うか分からないとしたら? 君達はあらゆる可能性を想定して動かざるを得なくなる。あの男を殺さなかったのもわざとだよ。殺してしまえばそれはただの物だが、生きている以上、君達は彼の救助と治療を優先せざるを得ない。その分、君達の行動は制約されるわけだ」
確かに、倒れた初老の男には喜一が駆け寄り治療に当たっているが、その分全体の避難が遅れてしまっている。
「なんてことを……。弱い者いじめは止めましょう!」
喜一が叫ぶが、それでダークネスが行動を改めるはずもない。
「さあ、次は誰が『獲物』になるかな?」
ウルフハンターが再び猟銃を構える。そこへ、狼姿の眞沙希が飛びかかった。
(「もふっとぷにっとお相手しましょう!」)
誰が撃たれるのか分からないのなら、撃つ前に潰すしかない。だが、ウルフハンターはその眞沙希の動きも織り込み済みだった。
「獲物から迂闊に近寄ってくるとは、愚かしい!」
ウルフハンターが放ったのは、銃弾ではなく、円盤状の光線だった。それが、飛びかかった眞沙希もろとも、ギィと康也をまとめて薙ぎ払う。
「てめえ!」
わずかに間合いの外にいたことで攻撃の対象にならなかったセシルが、影の触手でウルフハンターの動きを一時的に封じた。
「ねね子さん、この人の避難は任せます!」
先ほど撃たれた初老の男の避難をねね子に託した喜一が、セイクリッドウインドで眞沙希、ギィ、康也の3人を癒していく。
「絶対に、逃がさない。確実に、殺す」
深月紅はウルフハンターのやり口にこみ上げる怒りを抑えきれずにいたが、それでもまずは犬達の避難を優先させていた。一刻も早く避難を完了させ、戦線に加わりたいという、逸る気持ちを必死で押さえ込む。
「『狼狩り』……か。大層な二つ名がついている割には、やることが一々小物臭い」
砂蔵もウルフハンターのやり方に反感を覚えつつも、避難を確実に進めていく。結局、ウルフハンターのターゲットを減らすことが、最終的には勝利への近道となるからだ。
「さあ、面白い狩りになってきたな」
灼滅者達の怒りを一身に浴びながらも、ウルフハンターは不敵にそう言い放つのだった。
●狩るもの狩られるもの
ウルフハンターの猟銃の銃口が、ドッグランに残った最後の一匹の犬に向けられる。だが、引き金を引く瞬間に体が硬直し、わずかにタイミングがずれる。セシルが何度となく撃ち込んでいた制約の弾丸が、効力を発揮したのだ。結果、銃弾は庇いに入った流希に弾かれ、その隙に犬はねね子に導かれてドッグランからの避難に成功していた。
「くっ、体の自由を奪われるこの感覚、気に入らんな」
無意識の内に首輪に手を当てながら、ウルフハンターが唸る。ウルフハンターのサイキックでは、自らの傷は癒すことが出来ても不利な状態変化まで癒すことは出来ない。
「まったく。やってることはウルフハンターじゃなくワンワンハンターじゃないですか!」
流希の元に駆け寄りシールドを展開した喜一が叫ぶ。
結局、一人も、そして一匹も犠牲を出すことなく、一般人と犬の避難は完了させることができた。その分、囮となったり盾となった灼滅者達の負った傷も深いが、長期戦となったことで不利な状況となったのは、ウルフハンターも同様だ。
「むう。できれば人間や犬を利用できるうちに、お前達を一人でも仕留めておきたかったのだがな」
「仕留められるのは、お前の方。『四肢を、掲げて、息、絶え、眠れ』」
避難を終えた深月紅がスレイヤーカードの封印を解き放ち、その全身から彼女の怒りを現すかのように、虹色の焔が立ち上る。
「狩人はな、獲物には最大限の敬意を払うもんだ。もしもな、貴様が誇り高い狩人なら例えどんな仕打ちを受けようともこの状況にはならない。だから、俺は貴様を認めん。貴様は狩人じゃない、ただの負け犬ってヤツだ。飼い犬にも劣る、な」
同じく、駆けつけた流希がその勢いのまま、無駄のない動きで拳をウルフハンターに撃ち込んでいった。防御を試みるウルフハンターだったが、死角から放たれた深月紅の制約の弾丸に、動きを封じられてしまう。
「私を、飼い犬呼ばわりするかっ……!」
ウルフハンターの顔が屈辱に歪んだ。
「その通りだろ? 奴隷は狩りなんて高尚なことをやってないで、主の足の先でも舐めてな」
ギィの挑発に、ウルフハンターは激昂したのか銃を撃つことも忘れ、ギィに飛びかかり噛み付いた。鋭い牙を通じて、ギィの生命力が奪い取られていく。が、ギィもウルフハンターに『剥守割砕』を突き立て、刃を通じて生命力を奪い返していった。
「ギィ、離れろ!」
砂蔵の声に、ギィがウルフハンターを蹴り、強引に体を引き剥がす。態勢を崩したウルフハンターに、砂蔵の放ったDESアシッドが炸裂した。
「どうやら生きる『理由』すらお前にはないのだな。残念だ……本当にお前は『理由』にすらなってない。お前のように死んでるようには生きていたくない」
砂蔵から向けられる冷たい視線に、ウルフハンターが自虐的な笑みを浮かべる。
「死んでいるように生きる、か。言い得て妙だな。覚えておくがいい灼滅者共。行動の自由のみならず、生死の自由すら奪われ、奴隷として生きることがどういうことなのかを。だから私は、仮初めとはいえ手に入れたこの自由を、一刻たりとも無駄にはせん!」
次の瞬間、ウルフハンターの猟銃から円盤状の光線が発射され、彼を包囲していた灼滅者達を薙ぎ払った。
「偉そうに。オレの鎌でもしゃぶってなッ! このドグサレがッ!」
攻撃後の隙をつき、セシルが大鎌『ツェペシュ』をウルフハンターの胸に突き刺す。ツェペシュを通じて、ウルフハンターの生命力がセシルに吸収されていった。
「この程度の傷で、ヴァンパイアは死なぬ!」
ウルフハンターが腕を突き出すと、放たれた逆さ十字が、セシルを切り刻んでいく。
「くっ!」
だがそこへ、狼から人の姿に変じた康也が飛び込んできた。
「好き勝手な真似はさせねー、ぶっ飛ばす!」
康也の影が狼の姿に変じ、ウルフハンターを飲み込んでいく。影に絡め取られ、動きを封じられたウルフハンターに、オオカミの耳と尻尾をつけた人狼モードの眞沙希が、ゆっくりと歩み寄っていった。
「さて、狩る側から狩られる立場になった気分はどうですか?」
眞沙希の左手が、狼の前肢に変化していく。その鋭い爪が、ウルフハンターへ向けられ、
「貴方に狩られた同胞の恨みです!!」
思いきり、振るわれた。
度重なる攻撃に、ダメージの蓄積していたウルフハンターはその一撃に耐えきれず、遂にその場に仰向けに倒れ伏したのだった。
「フッ、フフフ……、長年獲物としてきた狼に狩られるか。私の最期としては悪くはない。よく見ておくがよい、灼滅者に狼の末裔達よ。敗者として、ヴァンパイアの誇りもハンターの矜持も真の名も奪われた者の惨めな末路を」
倒れたウルフハンターの体が、赤黒い霧と化し、溶けるように消え始める。
「勝手なこと、言ってる。狩りとか、言って、人間とか、狼とか、狩ってた吸血鬼に、ふさわしい末路。それだけ」
左目から血を流し続けながら、深月紅がウルフハンターを見下ろして、冷たく言い放った。家族を吸血鬼に殺された彼女にとって、奴隷だろうがなんだろうがヴァンパイアは憎むべき敵だ。しかし、もはやウルフハンターには、深月紅の言葉も届いていないようだった。
「ふっ、どうやら死に場所だけは、奴の言いなりにならずにすみそうだ。その点だけは、貴様らに感謝しておこう」
その言葉を残し、ウルフハンターは消滅していった。
「どんな理由があっても、この平和な光景を地獄に変えてまで、狩りがしたいなんて、許されない」
流希の言葉に、灼滅者達は頷き返す。
こうして、狼狩りを名乗っていたヴァンパイアは、狼の手により灼滅されたのだった。
作者:J九郎 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年7月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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