生クリームで溺れてしまえ!

     片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)は、こんな噂を耳にした。
     『生クリームで辺りを埋め尽くそうとする都市伝説が存在する』と……。
     都市伝説が確認されたのは階段路地で、雪崩の如く生クリームが押し寄せ、一般人を飲み込んでいるようである。
     しかも、美味! とっても、美味!
     それこそ、頬っぺたが落ちてしまうのではないかと思うほどの美味しさ!
     だが、食べようとすれば、それこそ命懸け。
     あっという間に、生クリームの海に飲み込まれ、階段の下まで転がり落ちてしまう。
     そのため、階段を上る事さえ困難になっており、みんな遠回りをしているほど。
     しかし、階段を上り切らねば、都市伝説と戦う事は、ほぼ不可能。
     遠回りをして、都市伝説の背後から不意打ちする事も出来るが、それは野暮。
     都市伝説は全身から生クリームが滲み出ており、とってもヌルヌルしているため、色々な意味で注意が必要である。


    参加者
    神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)
    片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    ラナーク・エンタイル(アウトロー・d14814)
    唯空・ミユ(藍玉・d18796)
    朝霧・瑠理香(黄昏の殲滅鍛冶師・d24668)
    風間・小次郎(メタリックソウル・d25192)
    天城・カナデ(中学生人狼・d27883)

    ■リプレイ

    ●クリーム天国
    「ううっ……、なんでこんな都市伝説を見つけてしまったのでしょうか」
     片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)が困った様子で頭を抱えながら、仲間達と共に都市伝説が確認された階段路地に向かっていた。
     都市伝説が現れてからというもの、この階段路地では雪崩の如く生クリームが流れ落ちているらしく、それを恐れてみんな遠回りをしているようである。
    「また、生クリームか。食べ物で変な噂を流すのは止めて欲しいなあ。もったいないし。まあ、流した人はこんな事になるとは思ってないんだろうけど……」
     竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)が、どこか遠くを見つめた。
     もしかすると、生クリームを死ぬほど食べたい、たらふく食べたいと思う気持ちが都市伝説を生み出したのかも知れないが、まさかここまで大事になるとは、夢にも思わなかった事だろう。
    「まあ、色々な意味で美味しい存在ではあるけども、生クリームも美味しいみたいだし……、活用しない手はないね」
     朝霧・瑠理香(黄昏の殲滅鍛冶師・d24668)が、含みのある笑みを浮かべる。
     何となく、ぼろ儲けが出来そうな予感……。
    「それは……無理だな」
     そこでラナーク・エンタイル(アウトロー・d14814)が、キッパリ!
     それに、生クリームは都市伝説が、作り出したもの。
     都市伝説が倒されてしまえば、あっという間に消え去ってしまう。
     その事実に瑠理香が気づいていないため、期待に胸が膨らんでいるようである。
    「だったら、本当にクリームが美味しいのか確かめたいわね」
     神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)が、興味津々な様子で答えを返す。
     噂では、今までに食べた事がないほど美味しいようだが、ならば余計に食べてみたいのが、本音であった。
    「生クリームか……甘いものは嫌いではないがな……ううむ」
     風間・小次郎(メタリックソウル・d25192)が、険しい表情を浮かべる。
     甘いものは嫌いではないが、だからと言って、量が多ければいいという訳ではない。それ故に、色々な意味で悩みどころである。
    「でも、美味しい事は、良い事です。だからと言って、食べ物を武器にしたり、辺りに撒き散らしたりする事は許せませんが……」
     唯空・ミユ(藍玉・d18796)が階段路地に辿り着き、ゆっくりと見上げた。
     そこには都市伝説が立っており、何やら高笑いを響かせ、長々と台詞を語っていた。
     だが、遠過ぎて何を言っているのか分からない。
     都市伝説はそれを知ってか知らずか、オーバーアクションで何やら熱く語っていた。
    「生クリームなんて軟弱なもんに俺が負けるかよ。いくぜ、正面突破だ!」
     天城・カナデ(中学生人狼・d27883)が気合を入れて、階段を駆け上がっていく。
    「……ああっ! 忍の技を持ってすれば、生クリームなど恐れるに足らず! なあに、大丈夫だ。これが終わったら、皆で甘いものでも食べようじゃないか。機甲着装! 風間小次郎、推して参る!」
     小次郎もスレイヤーカードを解除して、自信満々な様子でカナデの後に続く!
     次の瞬間、地響きがするほどの勢いで、大量の生クリームが階段の上から流れ落ちてきた。

    ●生クリームの雪崩
    「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
     その途端、カナデが大量の生クリームに飲まれて、階段の下まで転がり落ちていく。
    「ぬわああああああ!!」
     続いて小次郎が生クリームの海に飲まれて悲鳴を上げた。
     しかも、小次郎はフルメタルアーマー姿。
     鈍い音を立てつつ階段を転がり落ち、生クリームに埋もれて姿が見えなくなった。
    「俺は絶対に諦めねぇ!」
     だが、カナデ達は決して諦めようとしなかった。
     何度も生クリームの波に立ち向かい、そのたび階段の下まで流されていく。
     それでも、正々堂々とした態度で、生クリームの波に戦いを挑み、正面突破を試みた。
    「このクリーム……美味い……!?」
     華夜が生クリームを指ですくって、口に含んだ。
     予想に反して、物凄く美味い。
     利益を度外視して、味を追及しているためか、後を引くほどの美味しさだった。
     ただし、食べる事に夢中でその場に留まっていると、生クリームの波に飲み込まれてしまうため、一般人が近づかなくなってしまっているのだろう。
    「こんな軟弱なものに、むがっ、口に入っ、あ、うめぇ、うまい、うまいコレ!! ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
     カナデが生クリームを食べつつ、波に飲まれて姿を消した。
    「おのれええええ! なぜだ! なぜクリーム如きにいいいい!? あ、アーマーの隙間にクリームがっ!?」
     それを目の当たりにした小次郎が、仇討ちをするため、再び階段を上って行ったが、生クリームまみれになって、階段の下まで転がり落ちた。
    「……確かに美味い。こんなにいらねえけど」
     そんな中、ラナークが生クリームの中から顔を出す。
     念のため、水中呼吸を使ってみたが、生クリーム相手では意味がなく、息苦しくなってしまったようだ。
    「これを使えば最高のショートケーキが出来る。生クリームはとり放題だし……。放っておいてもゴミだから、有効活用しなければ……ふふ……」
     瑠理香が生クリームをビニール袋の中に詰めていく。
     しかし、瑠理香は気づいていない。
     都市伝説が倒されたのと同時に、生クリームが消え去ってしまう事を……。
    「……まったく。食べ物を粗末にするなんて、腹立たしい事この上ないですね」
     公平が激しくこめかみをピクつかせる。
     その間も都市伝説は、階段の上で高笑い。
    「とりあえず、ちょっと様子を見ようかしら。神命、先に進みなさい」
     華夜が警戒した様子で、霊犬の神命に指示を出す。
     神命は勢いよく階段を駆け上がっていったが、すぐに生クリームの波に飲まれ、あっという間に姿が見えなくなった。
    「……いい加減にしろよ、てめぇ!!」
     それと同時に公平が我慢の限界に達し、ガトリングガンを連射した。
     だが、ギリギリのところで、都市伝説に届かない。
     都市伝説はそれを知ってか知らずか、ハイテンション!
    「ううっ、これは困りましたね。でも、生クリーム、美味しい。……ん?」
     ミユが生クリームを口にしつつ、都市伝説のいる場所に視線を送る。
     その背後には遠回りをして、後ろ側に回り込んでいた登の姿が……。
    「女性用踊り子服を着て白ブリーフを愛でながら、生クリームまみれになったオレに勝てると思うな!」
     そう言って登がライドキャリバーのダルマ仮面と息を合わせて、都市伝説を蹴り落とす。
     次の瞬間、都市伝説が悲鳴を上げながら、階段の下まで転がり落ちた。

    ●呆気ない最後
    「ひょっとして、死んだか?」
     カナデが都市伝説をツンツンとつつく。
     都市伝説は動かない。
     打ち所が悪かったのか、両手両足が明後日の方向に折れ曲がっており、これが一般人であれば確実に死んでいるような状態。
     いくら生クリームがクッションになっているとは言え、致命傷である事に違いはない。

    「まあ、階段の上から転がり落ちましたからねぇ」
     ミユが気まずい様子で、苦笑いを浮かべる。
     おそらく、マトモに戦えば強敵だったはずの相手だが、一番無防備な背中を攻撃されたら、最後。
     例えるなら、変身途中のヒーローを攻撃するような禁忌。
     それ故に、ダメージが大きかったのかも知れない。
    「いや、まだ生きている……はずだ。本当に倒されたのなら、跡形もなく消滅しているはずだからな」
     ラナークが警戒した様子で身構えた。
     それでも、都市伝説は動かない。
     この様子では、死の淵を彷徨っている最中なのだろう。
     三途の川でバタフライでもしているのか、都市伝説がこっちの世界に帰ってくる気配がない。
    「行け、ダルマ仮面! ああいう色んなものを冒とくしてる奴に正義の鉄槌を!」
     次の瞬間、登がダルマ仮面と共に階段を駆け下り、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
     その一撃を食らって都市伝説が宙を舞い、グキッと鈍い音を立てて、首がへし折れた。
     それでも、こっちの世界と何となく繋がっているのか、都市伝説は消滅しなかった。
    「どうやら、あの世に逝く事すら出来ないようだな。まあ、これも食べ物を粗末にした罰だ。これでも、逝けなかった場合は、自分がやった事を悔いながら、未来永劫苦しむんだな」
     そう言って公平が都市伝説にガトリングガンを向け、肉塊になるまで乱射した。
     次の瞬間、都市伝説の体が消滅し、大量にあった生クリームも、ひとつ残らず消え去った。
    「しばらくは洋菓子を食べたくないな……」
     戦いが終わった後、小次郎がその場に座り込む。
     都市伝説が倒されたのと同時に、大量にあった生クリームも消滅したが、全身がベタベタとして、ほんのりと甘い匂いが漂っている……ような気がする。
    「でも……、あの生クリームが二度と食べれないのは、惜しいわね」
     華夜が少し残念そうにした。
     口の中にほんのわずかだけ残った生クリームの味。
     そのせいで、せめてもう一口だけ食べたい、という気持ちになった。
    「ううっ、せっかく集めたクリームが……」
     その横で瑠理香が魂の抜けた表情を浮かべる。
     どうやら頑張って集めた生クリームがゴッソリと無くなってしまったらしく、まるで一夜にして大金を溶かした株主のような顔になっていた。
     これが夢であったのなら、どんなに幸せな事か。
     いや、今までの出来事がすべて夢だったのかも知れない。
     そんな事を考えながら、瑠理香が乾いた笑いを響かせた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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