生死の狭間こそ戦の妙

    作者:飛翔優

    ●死合を求めし狂者の戯れ
     地方都市の空手道場にて、一人の男がボコボコにされていた。
     名を、輝石。
     看板を求めてやって来た旅の武闘家。
     道場一番の段持ちが相手取り、瞬く間に一発入れた。されど輝石は倒れることなく、戦う意思を見せていく。
     後も、輝石は一度足りとも反撃することはなかった。全て、一番の段持ちが攻撃するのみだった。
     周囲は思う。段持ちの方が圧倒的に上、諦めたら良いのに……と。
     段持ちは只々攻撃していた。何かに取りつかれたかのように、輝石を打ちのめし続けていた。
     あるいは、そう。そうしなければ、いつ来るかわからない反撃によって命を奪われてしまうかもしれない。そう、思っているかのように……。
    「っ!?」
    「……なるほど」
     不意に、輝石が手のひらで段持ちの拳を受け止めた。
     口の端から流れる血を拭いつつ、楽しげな瞳で見つめていく。
    「これが、お主とわしの死線か。……次で、勝負じゃ」
     言葉を切ると共に、輝石は一歩踏み込んだ。
     鳩尾へと蹴りを叩き込み、壁までふっ飛ばしていく。
    「が……」
    「……言ったじゃろう、勝負じゃ、と」
     姿勢を正し、輝石は呼吸を整える。
     驚愕に染まる周囲に視線を向けていく。
    「ずいぶんと時間がかかった……お前たちではこの程度、と言ったところじゃろう。どれ、一つ教えを授けよう。武の真髄とは死線にあり、とな」
     ――十数分後、道場内に立つ者は輝石のみと成り果てた。
     幸か不幸か、死した者はいない。しかし、武芸者としての心を折られてしまった者は多く……。

    ●夕暮れ時の教室にて
     灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は、静かな面持ちのまま口を開いた。
    「とある空手道場に、輝石と言う名のアンブレイカブルがやって来る事が判明しました」
     本来、ダークネスはバベルの鎖による予知能力を持つため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
    「もっとも、それでなおダークネスは強敵。武に生きるアンブレイカブルならばなおさら……ですのでどうか、全力での戦いをお願いします」
     続いて、葉月は地図を広げていく。
    「当日の夕方。輝石はこの空手道場へとやって来ます。戦いを挑むために」
     その前に阻止し、灼滅者たちが戦いを挑む。それが概ねの流れとなるだろう。
     戦う相手となる輝石。生死の狭間に位置するようなギリギリの戦いを望むアンブレイカブル。相手の力量を見極めながら、段階的に本気を出していくらしい。
    「あるいは、ある程度戦わないと調子が出ない……といった所でしょうか」
     灼滅者やダークネスが相手ならば最初から反撃を行うほどにあたたまると思うが、それでも、最初から全力というわけではないらしい。
    「体があたたまるにつれて、次のように攻撃方法を追加してくるみたいですね」
     最初からある攻撃は、避けづらい軌道の拳と加護を砕く蹴り。多少削られた段階で、遠くへも届く連続指弾。半分ほど削られた段階で周囲を転ばせ足止めするストンプ。そして、追い込まれた状態では死線の中心へと拳を叩き込み、加護ごと敵を砕く死線正拳突きを放ってくる。
     特に、死線正拳突きは防衛に意識を割いたもの以外は一発KOされかねないほどの威力を誇っているため、重々注意が必要となる。
    「後は……やはり、輝石は攻撃一辺倒みたいで、防御はあまり省みないみたいですね。以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、葉月は小さく頭を下げた。
    「利用できそうな性質があるとはいえ、強敵である事に違いはありません。どうか、全力での戦いを。何よりも無事に帰って来て下さいね? 約束ですよ?」


    参加者
    天衣・恵(無縫・d01159)
    華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)
    二夕月・海月(くらげ娘・d01805)
    那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)
    黒影・瑠威(絶対守護と絶対破壊の氷影・d23216)
    ルーシー・ヴァレンタイン(隠れ筋肉フェチ・d26432)
    百合ヶ丘・リィザ(なんちゃって武闘派お嬢様・d27789)
    ルチノーイ・プラチヴァタミヨト(バーストブルーライトニング・d28514)

    ■リプレイ

    ●昼と夜の狭間の時間
     空が群青色に、大地が茜色に染まりゆく夕刻。あるものは体を鍛えるため、あるものは武の頂を目指し、日々技を肉体を磨き続けている道場前。灼滅者たちは各々思い思いの表情を浮かべながら、入り口を塞ぐように立っていた。
     此度の相手、アンブレイカブル輝石がやって来ると思われる方角に視線を向けながら、ルーシー・ヴァレンタイン(隠れ筋肉フェチ・d26432)はひとりごちていく。
    「武を求めるだかなんだか知らないけど、人を襲うダークネスは灼滅者しなきゃね」
    (「でもアンブレイカブル、か。やっぱり筋骨隆々……なのかな」)
     内心では別の思いを巡らせていく中、黒影・瑠威(絶対守護と絶対破壊の氷影・d23216)は人払いのための力を……常人では抗えぬ殺気を放っていく。
    「誰かが近づいてきても、道場から出てこられても困りますしね……と、来ましたか」
     正面へと視線を向ければ、殺気など物ともせずに近づいてくる影が一つ。
     筋骨隆々の体を道着に包んだ男だ。
     男は軽快な足取りで近づいてきた後、灼滅者たちの存在に気がついたのか小首を傾げながら立ち止まる。
    「ふむ、道場に用があってやって来たのじゃが……」
     疑問を受け止め、那梨・蒼華(蒼氷之華・d19894)が返答した。
    「ここの道場の者ではないが、私達が相手をしよう」
     一礼すると共に腰を落とし、周囲に光輪を浮かべていく。
     二夕月・海月(くらげ娘・d01805)もまた剣を抜き、盾を構えながら問い返した。
    「手合わせ願おう。相手はだれでもいいんだろう?」
    「……ふっ」
     小さく頷き、輝石は笑う。
    「あいわかった! 道場に用があってきたのじゃが……いやはや、これは嬉しい誤算。若人よ、お主らの内に眠る力、存分に披露せい!」
    「宙ヨリ零レシ龍ノ涙、コノ剣ヲ以テ総テノ悲シミヲ蝕ミ、源ヲ穿テ」
     呼応し、瑠威がワードを響かせた。
     踵に刃を持つブーツを履き、偃月刀を握りしめる。氷の如き影を滾らせて、輝石を静かに見据えていく。
     闇の者であり武芸者でもあるアンブレイカブル。敵ではあるが、その心意気は理解できるところもある。
     しかし、唯自分のやりたいだけにやるのは宜しくない。だから同じ武芸者として倒すと、先ほどとはまた異質なる殺気を解き放ち……。

    ●ギリギリの一線のみを目指して
     輝石が殺気を静かに受け止めていく中、ルチノーイ・プラチヴァタミヨト(バーストブルーライトニング・d28514)は風を纏いし光輪が両端に四つ付いているピコピコハンマーを模した杖を握りしめた。
    「初依頼ですが……頑張りますです!」
     気合を入れて跳躍し、懐へと入り込む。
     光輪をメス代わりにして脇腹を切り裂き、退いた時、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)が入れ替わるようにして懐へと潜り込んだ。
    「こんにちは!」
     間髪入れずに拳を肥大化させ、鳩尾にえぐりこんでいく。
     されど揺るがぬ輝石を見つめ、微笑みながら問いかけた。
    「一つ聞きたいのですけど、生死を賭けた死合いがしたいのなら、なんで武神大戦天覧儀に行かなかったんです?」
    「なんじゃ、そんなものがあったのか?」
    「なるほど、知らなかったんですね!」
     回答を得た後、紅緋が素早く退いていく。
     代わりに天衣・恵(無縫・d01159)が飛び込んで、刀を真っ直ぐに振り下ろした。
     太い腕に阻まれても、微笑み言葉をぶつけていく。
    「武の真髄とは死線にあり。いいね! 嫌いじゃないねそういうの! むしろ好ましいね! 私らが輝石に一生に一度の死線を見せてあげる」
    「はは、楽しみじゃ! っと」
     輝石が恵を弾いた直後、海月の盾が背中を打ち据えた。
    「さあ、力比べといこうか」
    「ああ、互いの望むまま!」
     打ち据えたまま、盾を押し付け続けた海月。
     気合一つで跳ね除けられるも、すぐさま盾を引き戻した。
     望む所、と言った趣きだろう。輝石は、盾に向かって正拳突きを放ってきた。
     硬質な音が響くと共に、海月の体が宙に浮く。
     三メートルほど後方へと吹き飛ばされ、膝を曲げて着地した。
     防いでなお、体が浮き上がるほどの一撃。小手調べの段階でこれなのだから、本気を出し始めた時の威力は如何程のものだろう?
     関係ない。
     ただ全力でやるまでだとでも言うかのように、紅緋は拳を左肩で受け止めた。
     右足を軸に回転して勢いを外へと逃がしつつ、己の拳を握りしめ肥大化させていく。
    「鬼神変に閃光百烈拳を重ねたらどうなるでしょうね! ちょっと受けてみてください!」
     回転する勢いをも拳に乗せ、一撃、二撃と輝石の体に打ち込んだ。
     肥大化した衝撃すらも、輝石を揺るがすには至らない。しかし……。
    「なるほど、確かにその力は強大。わしも少々温まってきたぞ!」
     ――少しだけ本気を出す。
     歓喜の声によってもたらされた情報を元に、動きを変えていく仲間がいる。
     変わらず攻め続ける者もいる。
     それでも概ね、彼我の状況が大きく変わらぬ形で序盤戦は終幕した。

    「なんて見事に鍛え上げられた大腿四頭筋! 強敵と見て間違いなさそうね、気を引き締めないと。……あ」
     動きを観察する中、つい口に出てしまった本音。
     こほんと咳払いをした後、指輪で輝石を指し示していく。
     刹那、百合ヶ丘・リィザ(なんちゃって武闘派お嬢様・d27789)が盾を掲げて駆け出した。
    「先に行きますわ!」
     ちらりとルーシーと視線を交わした後、顔面へと叩きつけていく。
    「私共もお互い、存分に死線を楽しみましょう……!」
    「――――後は任せてっ!」
     輝石の視界が塞がれている状況を見逃さず、ルーシーが指輪から魔力の弾丸を発射した。
     右脇腹に突き刺さるも、やはり、輝石は揺るがない。
    「はっ!」
     気合一つで両者を跳ね除け、笑い声を響かせる。
    「わっはっは、まだまだ、この程度では堪えんよ!」
    「だったら……これを!」
     すかさずルチノーイが勢いをつけて跳躍し、急角度からの飛び蹴りをかまして行く。
     右肩に突き刺し、足場代わりに退いた後、再びピコピコハンマー風の杖を握りしめていく。
     正直な話、武人の考えることはよくわからない。
     けれど、暴れるのが良くないとは思う。後、生死の狭間もあまりお近づきにはなりたくない。
    「……」
     だから、後々の仲間を支えることができるように、再びピコピコハンマー風の杖を振り回しながら飛び込んだ。
     胸元を縦横無尽に切り裂いて、新たな楔を打ち込んでいく。
     輝石は、動きを鈍らせる気配など欠片も見せない。
    「ははっ、良いぞその力。さて、こちらからも行くとしよう!」
     親指を弾き、退いていくルチノーイを追いかける形で空気の弾丸を放っていく。
     受け止めながらも壁際まで後退させられていくルチノーイを横目に、瑠威は恵に視線を送った。
    「後詰をお願いします」
    「了解!」
     瑠威は踵の刃物で地面を叩き跳び上がり、一回転。大上段から踵を落としていく。
     恵は両腕をクロスさせ防ごうとしている輝石の背後へと回り込み、刀を大上段へと持ち上げた。
    「うぇええい!」
     かかと落としがわずかに輝石の体を沈ませた時、恵の一刀が背中を大きく切り裂いた。
     更に、体勢を整える代わりに跳躍し、左肩に回し蹴りを放っていく。
    「っ!」
     揺るがす事はできずとも軸にはできると、左肩を足場代わりにして飛び退いた。
     口元に笑みを浮かべながら、再び刀に手をかける。
    「やっぱストファイだからこういう物理で殴る系の戦いは胸が熱くなるな……! みんなもきっとそうだよね。ね? ワクワクさんだよね?」
     答えは、各々の動きが教えてくれた。
     だからこそより一層の笑顔を浮かべ、恵は輝石に挑んでいく。
     一刀、二刀、三刀と、只々心を歓喜で満たしながら……。

     灼滅者たちは二つ目の壁を突破したのだろう。
     輝石は静かな息を吐いた後、足を地面に叩きつける。
    「耐えてみよ、若人よ!」
     津波のような衝撃が波紋のように広がって、前衛陣を薙ぎ払った。
     が、海月は負けじと姿勢を整えて、即座に剣を振り上げる。
    「っ!」
     煌めき放つ鋭き一閃が、軽く左足を下げるだけで交わされた。
     だから一旦距離を取り、改めて、狙いを定め始めていく。
    「……」
     正面から行ったらかわされた。
     先程は側面から、背後から打ち込んだ事もある。
     ならば……!
    「っ!」
     再び真っ直ぐに駆け出して、剣を縦に持ち上げる。
     そのまま横を駆け抜けて、電信柱に向かって跳躍。体を反転させながら、電信柱を足場代わりにして飛びかかった。
    「これならどうだ」
     死角から、認識する暇も与えずに刃を振り下ろし、肩に深く、深く食い込ませる。
    「……二度もかわされるわけにはいかないからな」
    「しかり」
     輝石はニヤリと笑ったと親指を弾き、海月に向かって空気の弾丸を放っていく。
     再び壁際へと交代していく海月。
     次の反撃は私が受けると、リィザが盾を掲げて突貫した。
    「まだまだ、楽しみましょう……!」
    「おう!」
     腕にぶつけ、身を寄せにらみ合いへと持ち込んだ。
     力比べをしていくさなかにも仲間たちの攻撃は注がれて、輝石の肉体へと突き刺さっていく。
    「はっ!」
     輝石は気合と共に、リィザに向かって蹴りを放った。
     盾で防がんと姿勢を下げた時、間に光輪が割り込み衝撃を和らげていく。
     蒼華だ。蒼華の光輪が、リィザに守りの加護を施したのだ。
    「……ああ、理解した」
     件の蒼華は周囲に光輪を巡らせながら、小さくひとりごちていく。
    「糸と使い勝手は違うが、要領は同じ。さ、次も防ぐぞ」
     静かに微笑み、再びリィザに光輪を一枚投げ渡した。
     しばしの後、蹴りによって砕かれるも、焦ることなく続く一枚を手元に引き寄せる。
    「砕かれたか……ならば追加だ!」
    「ふっ……」
     輝石にとっては攻めても攻めきれず、常に追い込まれていっているような状況。
     あるいは、だからこそ楽しいのか、瞳を静かに閉ざしていく。
    「なるほど、確かにお主らは強い。絆も、力も、想いも、相応以上のものを持っておる。ならば!」
     腰を落とし、瞳を開き、灼滅者たちを眺め回した。
     即座に紅緋が反応し盾をぶち当てる。
    「……」
     輝石は揺るがない。
     ただ、紅緋へと視線を移し、ただ真っ直ぐに拳を突き出した!
     鳩尾を捉えられ、紅緋は体をくの字に折る。
     ブロック塀へと突き飛ばされ、空気の塊を吐いて行く。
    「……死線正拳突き。わしの持つ最大奥義……じゃが」
     静かに語る輝石の瞳の中、地面に崩れ落ちていく紅緋。
     体中が激しく痛む。
     呼吸もまともに紡げず、視界すらも霞んでいる。
     意識はある。
     指も、手足もまともに動いてくれている。
    「……大丈夫です、受け切れました」
    「……なるほど」
     紅緋がにやりと笑ったなら、輝石もまた声を上げて笑い出した。
    「気づかぬ内に、ずいぶんと重ねられたらしい。いやはや、想像以上じゃよ!」
     歓喜の言葉を響かせながら、再び腰を落としていく。
     重ねた今ならば、耐え切れる。
     少なくとも一撃のみならば。
     故に、灼滅者たちは攻め上がる。
     二撃、三撃を多くを重ねられぬ内に、この楽しき死合に決着をつけようぞ、と……。

    ●生死の狭間は気づかぬ内に
     光輪を用いて紅緋を治療しながら、蒼華は告げていく。
    「傷を塞いでも、次は無理だな。しかし……」
     紅緋の笑顔を前にして、静かなため息を吐き出した。
    「止めても無駄だな。ならば、全力で支えよう!」
    「はっ!」
     肩をすくめながらも送り出した時、ルーシーに向かって放たれた死線正拳突きをリィザが庇い受け止めた。
     電信柱に叩きつけられてなお、リィザの笑顔は曇らない。
    「っ……流石ね! でも、このくらいじゃ倒れません! この楽しき戦い、存分に堪能いたしましょう!」
     逆さ十字を描き出し輝石の肉体へと刻んでいく。
     衝撃が重なり、ダメージが限度を超えたのか、始めて輝石が膝をついた。
     恐らくは、もうすぐ筋肉が失われてしまう。
     心のなかで惜しい、と思いながら、ルーシーはナイフを握り駆けて行く。
    「そこですっ!」
     左肩へと突き刺した、左肘まで引き裂いた。
     勢いのまま退けば、輝石は立ち上がろうとした姿勢のまま動きを止める。
     瑠威が踵の刃物で地面を叩き、火花を散らし始めていく。
    「今です、私に続いて下さい」
    「わかった!」
     恵もまたブレーキなきエアシューズのローラーを回転させ、足を炎熱させていく。
     更に海月とも呼吸を合わせ走り出し、三方向から炎に浴びせ蹴りをぶちかました。
     防ぐこともできず両膝をついていく輝石に、ルチアーノがピコピコハンマー風の杖で何度も、何度も殴りつけていく。
    「これで……」
    「……!」
     断続的な衝撃にさらされ、それでもなんとか立ち上がろうと体を震わせていく輝石。
     その顎を、紅緋が殴り飛ばす。
     体が浮かんだ所で胸を、腹を、脇腹を肩を顔をぶん殴り、ブロック塀へと叩きつけた。
    「はあはあ……」
     痛みもあるのだろう。
     息を切らせた紅緋が見守る中、輝石はゆっくりを口を開いた。
    「見事」
     灼滅者たちが見守る中、姿がゆっくりと薄れ始めていく。
    「いやはや、死線正拳突きが通じぬとは……まさに天晴。お主らのような若人がいるのならば、今生はもっと、もっと楽しい物になっていくのだろう。それを堪能できないことだけが、心残りじゃ……」
     言葉が終わりし頃、風に運ばれるようにして消滅した。
     安堵の息を吐いた後、灼滅者たちは各々の状態を確認する。
     概ね皆、ボロボロの状態。加護が、呪詛があるとはいえ、いつ倒れてしまってもおかしくない状態。
     戦いの熱が抑えこんでいてくれたのか、痛みも徐々に増してきた。
     もっとも、倒れたものはいない。しっかり治療すれば、明日には万全の状態となっているだろう。
     後は周囲を片付けて、あるべき場所へと帰還しよう。
     生死の狭間、灼滅者たちは生の側に留まった。ならば、これからも生き抜いていく事こそ、死へと向かった輝石に対する礼儀なのだから……。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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