人かダークネスか

    作者:八雲秋

    ●夜の街
     出張中の父に母も同行していたため、狩野・サスケは現在、一人暮らしだった。
     夜になり彼は頭に生えた黒い角を隠そうと夏だというのにフードを被り、外に出る。
     シャッター街をふらふら歩きながら、ここ数日の出来事を思い出す。
     自分の覚醒を願った女は目の前で文字通り消え去った。彼女を消した連中は彼女の事をダークネスと呼んでいた。恐らく連中は正義と言う奴なのだろう。
    「それなら俺は悪だな、ミコトの味方だから、ダークネスだから」
     そう呟いて、口元を歪めるようにして笑う。 だが、まだ自分が完全ではないのは分かっていた。自身の中にまだ人が残っている。そのせいだろうか胸に妙ないらいらが募る。
     ドン。
    「んだよ、痛ってーなー、うぜーフード野郎が!」
     通りすがりの3人組の高校生の不良共が彼の肩にわざとぶつかってきて、彼に絡んできた。
    「……うるさいな」
     高校生の顎を無造作に掴み、空き缶でも捨てるように軽く手首を返せば男はたやすく道路に仰向けになるように投げ出された。
    「てめー、何しやが……く……」
     他の仲間らがいきり立つのをサスケは目で制した。猛獣の一睨みと言ったところか。
    「お前らがいくら来ても相手にならないのぐらいわかるだろ」
    「……」
     言葉に詰まる彼らを見やりながらサスケは言う。
    「弱いのが悔しいのかよ……なら、力を与えてやれるぜ、一緒に来るか」
     何かに魅入られたように男たちは無言のままに頷き、そして彼の後をついてきた。
     サスケは少し気分がよくなった気がした。もっと暴れたら、例えば人を殺しでもしたら、もっと気は晴れるのだろうか。
    ●依頼
    「狩野・サスケという男子中学生が闇堕ちしダークネスに姿を変えようとしている」
     エクスブレインが灼滅者たちに説明を始める。
     先日ミコトと名乗っていた淫魔が彼の闇堕ちを狙い付きまとっていた事件があった。その淫魔の灼滅は成功したのだが、サスケの闇堕ちを阻止する事は出来なかった。彼は羅刹の力を手に入れ、更に心までもダークネスになろうとしている。
    「けれど完全じゃない。彼はまだ人の心を残している本当にギリギリの所で。皆に今回頼みたいのは彼を灼滅者として救う事、あるいはそれが無理ならば彼をダークネスとして扱い確実に灼滅する事、判断は現場に行く君たちに任せたいと思う」

     サスケは高校生ぐらいの男らを3人連れて夜のシャッター街をふらふらと歩いている。この辺りは人通りが少ない。皆が現場に行っても戦闘時に人が来るかを気にする必要はない。いざ戦闘となっても特に場所を変えなくても問題は無い。
     彼が本当に人を殺めてしまう前に止めてほしい。それには彼を一度倒す必要がある。さっきも言ったが、たとえ彼を灼滅者として迎え入れるにしても、ダークネスとして灼滅するにしてもだ。
     彼にはまだ人の心、人格が残っている。説得次第によっては彼を灼滅者側に引き寄せたり、戦闘力を下げる事もできるだろうな。
     戦闘能力についてだけど、配下の3人は大して強くはない、解体ナイフ を近接攻撃で使ってくるのが精いっぱいだ。が、サスケはバトルオーラを纏った羅刹としてバトルオーラの能力と神薙使いと同等の能力が使える。十分に用心して欲しい。

     
    「彼をどうするかの判断は全て皆に委ねる。簡単な任務ではないと思うけど最善を尽くしてほしい」
     最後にエクスブレインはそう付け加えた。


    参加者
    江東・桜子(蜜柑色アニマート・d01901)
    トランド・オルフェム(闇の従者・d07762)
    聖刀・忍魔(無限六爪・d11863)
    祟部・彦麻呂(破綻者・d14003)
    片倉・純也(ソウク・d16862)
    浅木・蓮(決意の刃・d18269)
    羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)
    庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982)

    ■リプレイ

    ●到着
    「場所はここでいいようですね」
     静まりかえった商店街の前、トランド・オルフェム(闇の従者・d07762)が呟いた。
     浅木・蓮(決意の刃・d18269)はぎゅっと拳を固め入口のアーチを見上げ、
    「まだ間に合うなら出来る限りのことをしないとね」
     蓮の言葉に続き聖刀・忍魔(無限六爪・d11863)も続け、
    「ああ、狩野を助けたいな……もし拒否するなら……」
     灼滅する、その一言を彼女は飲み込む。
    「想いの前には正義も悪も関係無いんだよね……そのために大きな力が得られるとしたら、もしかしたら私でも」
     俯き呟く庭月野・綾音(辺獄の徒・d22982)。
    「僕にとって大事なのは人かダークネスか、ダークネスは殺す、それだけだ」
     羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)は無表情で誰に顔を向ける事もなく言う。
    「潰したいから潰すし殺したいから殺す、サスケが拘っているような大義名分なんてものの持ち合わせは無い……行こうか、もう時間だ」
     それぞれの思いを胸に灼滅者たちは商店街の中へと歩を進める。

    ●対峙 
     南北にのびた商店街を灼滅者たちは北から南からの二手に分かれ入っていった。サスケと強化一般人らを挟撃する形を狙ったからだ。タイミングも合わせ両者とも同じタイミングでサスケらと遭遇した。
    「俺を殺しに来たのか」
     彼は灼滅者らを見て呟く。
     祟部・彦麻呂(破綻者・d14003)は首を横に振り、
    「ううん、私はキミを殺したくない。人かダークネスかなんて関係ない、失わなくていい生命を、失いたくない」
     彼女は続けて、
    「狩野くんが灼滅者を憎むのはわかるよ。私たちは間違いなくミコトさんの仇だしダークネスだから、危険因子だからという理由だけで彼女を殺した。それだけじゃない、キミがこのままダークネスとして生きるなら、私たちはキミも灼滅する」
     彦麻呂の言葉に彼は肩を竦め、了承の意を示す。
    「それでも身勝手は承知で、理屈が通らないのは承知でお願いするよ……狩野くんに闇堕ちして欲しくない」
    「ふん、身勝手なのはわかっているのか」
     サスケが馬鹿にしたように返すのを、彼女は真正面から見つめ返す。
    「キミはどうしたいの? 復讐の為に私たちを殺す?」
    「そうだな、まずは」
    「それからは? 人間すべてを皆殺しにする? そんな事をしても世界は何も変わらないよ、キミはいずれ殺されて、人とダークネスは争いは続いていく」
    「かもしれないな、だがそれがどうしたって言うんだ、俺には関係ない」
    「ねぇそれなら聞くけど」
     江東・桜子(蜜柑色アニマート・d01901)が尋ねる。
    「君と似た境遇の人たちはこれからも出てくると思うの、でも、そんな人を知っても君はただ変わらず殺し続けるだけなの?」
     彼がつらそうな顔になる、あの時の事を思い出したのかもしれない。
    「それって彼女の為に君の為に何もしていないのと同じじゃないかな、自分から選択肢を捨ててしまう事、それだけは、しないで欲しいのよ……出来ればの話だけど、このままだと君は一つの考えしかできなくなる――自分の欲望のままに動く事しか」
    「それぐらいわかって……」
    「本当に?」
     サスケの呟きにトランドは問いを返す。
    「重大な判断を今の軽はずみな気持ちだけでしてしまって宜しいのですか、己の手を汚すようなことをして後悔はいたしませんか? もう一度この人の世界に、地に足を着けて考えてみませんか。己の身を堕とすのは一瞬ですよ、あっけないほどに」
     片倉・純也(ソウク・d16862)は推測と調査を重ねサスケがこの場で感情、思いを曝け出す事が肝要と考えていた。純也が彼に話しかける。
    「先に対峙した者らが何を阻止したかったかは身を以て知れたか」
     純也の問いをはぐらかすようにサスケはにやりと笑い、
    「ああ、俺は強くなったぜ。お前たちを殺せるぐらいにはな」
    「淫魔ミコトが復讐を望んだのか」
    「違う、俺が勝手にするんだ。あいつはただ俺に生きるために逃げろとだけ」
    「そうだな、そしてその願いを受け取ったのは羅刹ではない。その角を隠し、人目を避け、不良共を結局殺す事のなかった人であるお前だ、羅刹ではない。羅刹であればそんな自分であるという記憶も感情も全て消える」
    「……だから?」
    「記憶も感情も全て守り抜こうと言うのなら……まだ間に合う。お前が羅刹を解呪しようと足掻くなら手荒く援護する」
    「くっ……余計なお世話だ!」
    「ま、待って!」
     純也に食って掛かいこうとするのを蓮が間に入り止める。
    「狩野、俺を覚えているかな」
     彼と向き合って率直に伝える、蓮はそう心に誓っていた。サスケは頷く代わりに蓮を睨みつけた。
    「ミコトを灼滅したのは謝らないよ」
    「だろうな」
    「ダークネスは人の敵だ、今の君にとってもまだ敵だ、だけどそれ以上進めばもう戻れないよ。君は君じゃなくなる」
     彼らのやりとりにたまりかねてか強化一般人らが一斉に口を開く。
    「おめーら、いい加減うぜーんだが」
    「俺らはこの方から力をもらったんだ、よくわかんねーけどお前ら余計な事言ってるんだろ?」
    「さっさと散れよ……それとも死にてーか? 狩野さん、やっちまって構いませんかね」
     その様子にサスケは楽しげとも疎ましげともつかぬ笑みを見せて。
    「そうだな、じゃあ力を与えた恩返しでもしてもらおうか」
    「へへ、暴れてやるぜ!」
     強化一般人らが存分に力を振るえると吠える。
     対話でサスケの力を弱めるまでには至らなかった。だが彼の心は確かに揺れている。彼が人に戻れるか完全に闇に堕ちるかはまだわからない。

    ●戦闘
    「この戦闘が終わるまでは行方は分からぬようですね」
     トランドが鏖殺領域の殺気で強化一般人らにダメージを与え、自らの能力も上げていく。口元こそ普段と変わらぬ笑みを浮かべてはいるが、細い相貌は厳しさを増し、伊達眼鏡でも隠しきれぬほどに奥の眼光は鋭くなっている。
    「オルフェムさん!」
     すかさずシールドリングを送り、彼の防御を上げる
     他の者たちも戦闘態勢に乱れはない。まずは強化一般人らを確実に倒す、それから狩野だ。
    「狩野、お前には言っておきたい事がある!」
     忍魔はサスケの方に詰めていきながら声を上げる。
    「俺は正義の味方でも何でも無い……俺は、助けたいだけだ……お前のような奴とかな」
    「まだ、お前らごちゃごちゃと!」
     強化一般人が横合いから忍魔を襲う。彼女はそれを一瞥し、スターゲイザーをくらわす。
    「悪いが、雑魚には早々のご退場を願うぜ……」
    「ぐっ!」
     龍聖が放つ重い蹴りが強化一般人を足止めする。
     自分もサスケと変わらないというように己の手を鬼の姿に変えながら言う。
    「狩野、お前がいなくなったら、悲しむ人がいる。親や友人……それに、俺も少なからず、寂しい」
     一般強化人がトランドに目をつけて駆け寄っていく。
    「さっきからおかしな技を使いやがって、そのせいで調子が上がらないんだよ!」
     ナイフの一閃、トランドは浅からぬ傷を負う。しかし治癒の呪文は彼の口からは出ない、それは仲間に任せてある。
    「これはこれは、そちらから来てくれて好都合」
    「どういう意味だ」
    「こういう意味ですよ!」 
     ローラーダッシュ、たちまちのうちにエアシューズは炎を纏い、トランドの前にいる男の横腹を躊躇いなく激しく蹴りつけた。
    「ぐはっ!」
     男は吹っ飛び、そのまま気を失ったように倒れ伏した。
     なゆたはサスケの顔を見て心底愉快そうに笑う。
    「悪か……クク、悪っていうのは弱者を虐げる強い力に対していうもんだ、こんな風にな」
     オーラキャノンが強化一般人の腹にぶち当たり、くぐもった唸り声を上げ、倒れる。なゆたはその様子をつまらなそうに見た後、視線をサスケに向け、
    「お前は違うな。お前は正義だの悪だのに振り回されながら殺される道端の石ころだ」
    「――!」
     なゆたはサスケの憤怒の形相に臆する事もなく、むしろ口の端を歪め笑ってさえみせ、
    「断言してやる、お前の気は何人何万人殺しても晴れないさ、ダークネスの力を手にしようと結局お前は逃げているだけだからな」
    「黙れ!」
     サスケが意趣返しのように放ったオーラキャノンはなゆたの肩に直撃した。そのダメージは深く、桜子の霊犬、ぴー助の浄霊眼をもってしても完治までには至らなかった。が、彼はその傷をかばいもせずにサスケに問う。
    「今のはどっちだ?」
    「何がだ?」
    「俺はずっと中にいるお前に言ってるんだ、解放させるんじゃないのか? 女のことを汚した奴らから女の誇りを護るというのなら、内側にいるお前が出てこい!」
     なゆたは龍砕斧をまっすぐサスケに向け、そう叫んだ。
    「くそっなんでお前ら強いんだよ、こっちだって力貰ったってのによ!」
    「つっ!」 
     強化一般人が解体ナイフでギザギザの傷を綾音につける。
     攻撃が決まった事で男は調子にのり、ナイフを再びふりかざし、叫ぶ。
    「折角、つえー奴についたっていうのによ!」
    「そう何度もはさせない」
     綾音がクルセイドソードで男の攻撃をいなす。
    (「強さに魅かれる気持ち、わからないでもないし、私に否定はしきれないけど、それでも」)
     彼女がクルセイドソードを掲げると、それは白く輝く。
    「彼を黙ってダークネスにさせるわけにはいかないから」
     破邪の斬撃に男は魂でも抜かれたかのようにゆらりと倒れた。 
    「狩野、もうお前一人だ!」
     蓮の斬影刃がサスケの身体を切り裂く。
    「くそっ!」
     援護するものはもういない。だが、まだだ。自分の状態を確かめる。体は動く。ここは一旦退いて態勢を整えさえすれば。店の間の路地を抜け、逃げおおせれば。そう思い辺りを見回すが。
     シャッターに寄りかかる男と目が合う。
    「高校生たちを操るのは下手だったみたいだね、狩野くんが彼らを殺そうとしなかったのは幸いだったけど」
     彼は人形と鋼糸を操りながら、道を塞ぐ。ならばと逆側に顔を向ければ、 
    「駄目だよ、ここは通さない。君に逃げられると困るのだよ」
     路地にたたずむ男が影を伸ばし、行く手を遮った格好のまま、言葉を続ける。
    「手を出す気はないさ。ただ、どうであろうとこの場で結末を見せてほしいんだ」
    「逃げ道無しか」
     サスケが呟く。気がつけば対峙していた者たち以外にも退路を防ぐ灼滅者らが彼を囲んでいた。
     ただ、彼らはあくまでも退路を防ぐこと、あるいは治癒を手伝うまでの仕事に専心していた。あるいはサスケの意思を行く末を直接対峙する灼滅者らに託し、彼らは見守る事に徹しているのだろう。
    「ちっ」
     サスケは悔しげに舌打ちすると蓮に向き直る。
    「もう戻れなくなると言ってたな。だが仮に人にとどまったとして俺に何ができるって言うんだ、ミコトを失った俺が」
    「一緒に戦って欲しい」
    「なっ」
     理不尽な言い分。その自覚はある。自分の言葉に耳を貸さず彼が自暴自棄に走るなら、容赦なく喝を入れる、その覚悟さえある。どこまで俺の言葉は届いているのだろう、蓮にも確証はない、けれど悔いは残さない。確信にも似た憶測を告げる。
    「このままだときっと一人で苦しい思いをすることになるよ」
    「苦しくなんか。この力さえあれば、俺は一人でも……」
    「欲しかったのは守る為の力じゃなかったの?」
     綾音の問いに図星をつかれたようにびくりと背を震わせた。
    「相手がダークネスだったとか、騙されていたとか、そういうのは関係無く、私はそういう風に誰かを想えることは素敵だと思うよ」
    「な、なら見逃せよ」
     彼の気弱な物言いに、彼女は『違う』と答え、
    「だからこそ、闇に堕ちないで欲しい。そのまま闇に堕ちたら、君の優しさも、ミコトさんへのその想いも失くしてしまうよ、君はそれで良いの?」
     サスケは惑う。この場から逃げてしまえば、次はもっと大きな力を持って彼らに対峙する事が出来るだろう、だが、その時は今のこの悔しさすらも失っていて……今逃げる事に何の意味がある? 羅刹と成り変わる事に何の意味が……。
     桜子が重ねて言う。
    「自分が悪でも、相手がなんであっても、抱いた感情は自分のものだし間違いではないのよ前提が違っていたのだとしてもそれは関係ないのよ、でも……いたむ心を考えないようにして気だけ晴らそうなんてそんな事ムリなのよ」
    「そんな聞いた風な事を……俺の気持なんかわかるはず」
    「わからない訳じゃないよ」
     彦麻呂が返す。
    「本当はね、灼滅者の私達だっていつ闇堕ちするとも知れない十分危険な存在だもん、だからね……」
     彼女は胸に手を当て言葉には出さず心に誓う。
    (「交渉、共存、出来る限り戦いを避ける道を選べるなら私は……矛盾してても、歪んでいても、破綻していても、この想いは貫き通していきたい」)
    「私は人もダークネスも殺さない、殺させたくない、その為に力を貸して」
    「だって、もう遅いじゃないか僕はもう人じゃない!」
    「まだ間に合うよ、でもそれには……ごめん!」
     紅天鬼神楽による螺穿槍が彼の身体を穿つ。
    「うっ……」 
     腹を押え前かがみになるサスケは前に誰かが立つ気配を感じ、目を上げる。そこには日本刀を上段に構えた純也がおり、
    (「狩野、お前が日常や淫魔ミコトとのそれを……生かすのであれば」)
    「遅くはない。言ったはずだ羅刹の一時解呪を俺たちも手荒いながらも手伝うと、いくぞ!」
     雲耀剣の重い斬撃はバトルオーラを掻き消し、彼の肩口までに達する。
    「が……」
     斬りつけられた勢いのまま、サスケは仰向けに倒れた。瞬間、彼の黒曜石の角にひびが入り、まるで砂でできていたかのようにさらさらとくずれていった。

    ●戦闘を終えて
     サスケに駆け寄る灼滅者らに背を向け、なゆたは商店街の出口に向かって歩き出す。人に戻れたサスケには何の興味もないと言わんばかりに。
    「ん……」
     小さな唸り声をあげサスケは目を覚ました。 
    「……おかえり、狩野」
     彼の顔を上から覗きむように見つめていた忍魔が真っ先に微笑みかける。
    「僕は……」
     上体を起こし立ち上がろうとするのを、蓮が手を差し出し手伝いながら言う。
    「俺たちと一緒に武蔵坂学園に来ないか」
     サスケは蓮の手を離し、俯くと小さく呟く。
    「僕にそんな資格あるのかな」
    「あるよ、キミは人である事を自分で選んだんだもん」
     彦麻呂が間をおかず答えると蓮も頷き、
    「君の力を必要としてる人は沢山いる」
     サスケは笑みを見せた。
    「ありがとう、でも、もう少し気持ちが落ち着いてからでいいかな。僕の気持ちが定まったら、皆の所にきっと行くから」
    「うん、待ってるよ」
     その場に残っていた灼熱者らは皆頷いた。

    作者:八雲秋 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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