恐怖! 奈良の鹿軍団!

     立花・銀二(黒沈む白・d08733)は、こんな噂を耳にした。
     『佐藤さんを奈良の鹿軍団から守れ!!』と……。
    「何故、奈良……。そして、鹿軍団って……」
     佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)が、唖然とした。
    「さあ、僕には、ちょっと……」
     噂を聞いた銀二も、頭の上にハテナマークを浮かべている。
     誠十郎と鹿軍団……。一体、何の関係が……。
     考えれば考えるほど、泥沼にハマッていく。
     おそらく、深い意味はない。
     もふもふだから。もしくは、何となく。
     例え、あったとしても、その程度の理由だろう。
     鹿軍団を指揮しているのは、奈良の鹿怪人!
    『人類鹿化計画を成功させるためには、誠十郎の存在が邪魔なのだァ! 誠十郎は我らの野望を阻止すべく、各地で鹿狩りを続けている。奴のせいで関東地区はおろか、関西地区の鹿も駆逐されかけている。さあ、血眼になって探せ! 自らの身を守るため!』
     どうやら、鹿怪人はこんな事を言って、鹿達を嗾けているようである。
    「ひょっとして、理由はこれか? つーか、俺……鹿狩りなんてしてねーぞ! それ以前に、巻頭にも鹿っているのか? それとも、動物園の鹿?」
     誠十郎の疑問が芋づる式に増えていく。
    「よく分かりませんが、八つ当たり? もしくは、人違い?」
     銀二も答えに困る。
     どちらにしても、誠十郎が狙われている事は事実。
     奈良の鹿怪人によって操られている鹿達は狂暴化しており、誠十郎を見つけると後先考えずに飛び掛かってくる。
     襲われたら、最後。
     服はビリビリ。全身、噛み跡だらけ。
     場合によっては、命を落とす可能性すらあるようだ。
     それを阻止するためにも、誠十郎を守りつつ、奈良の鹿怪人を倒さねばならない。
     ただし、奈良の鹿怪人は身の危険を感じると、鹿に化けて逃げようとするので要注意。
     鹿に化けた場合、見た目では判断不可能。
     何らかの方法を使って正体を暴かねば、奈良の鹿怪人に逃げられてしまうので、色々な意味で注意が必要である。


    参加者
    土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)
    花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)
    桜庭・翔琉(徒桜・d07758)
    成身院・光姫(小穿風・d15337)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)
    赤名・マコ(ナマコガーディアン・d24354)
    常儀・文具(バトル鉛筆・d25406)

    ■リプレイ

    ●奈良の鹿天国
    「誠十郎~! 鹿にいじめられそうになってるって聞いたよ! 大丈夫だよ、オレが守ったげるからね! 宮島のやる気のない鹿しか相手にしたことないけど、多分大丈夫! 友達の誠十郎をいじめる奴はオレが退治するから、ちょっと待っててね!」
     空本・朔和(安全第一・d25344)は佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)が絶体絶命のピンチに陥っているという噂を聞き、仲間達と共に奈良の鹿怪人が確認された場所に向かっていた。
     奈良の鹿怪人が現れた事によって、鹿達は殺気立っており、鼻息を荒くさせて誠十郎を捜していた。
     だが、鹿達は誠十郎がどんな姿をしているのか知らないため、とりあえずタックルしてから考える的なノリになっており、まったく無関係の一般人がばたんきゅーと伸びていた。
    「ふぉ!? またしても、狙われた佐藤さん!! 佐藤さん、どんだけダークネス共から人気なのですか!! ダークネスホイホイなのですね。佐藤さんの平穏な人生の為にも全力全壊ファイトーです」
     土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)が、気合を入れた。
     その途端、まわりにいた鹿達の瞳が、キュピィーン!
     どうやら、『佐藤』という言葉に、反応したらしい。
    「い、いや、佐藤は佐藤でも、お砂糖の方なのです」
     これには璃理も、すっかり萎縮。
     このまま市形に対して真実を語ったとしても、誰も得をしないので、この対応がある意味、正解。
     まわりにいた鹿達も、『チィッ!』と舌打ちすると、別の場所を捜すぞと言わんばかりに、ノッシノッシとその場を後にした。
    「流石に佐藤先輩は大人気だな。まさか、ケモ方面もフォローしているとは……お見それした。選り取り見取り、酒池肉林とはこの事だろう。……まあ、鹿相手だが」
     ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)が、苦笑いを浮かべる。
    『わふっ(訳:笑い事じゃねえぞ、オイ)』
     誠十郎がもふりーと姿で涙目になった。
     出来る事なら、こんな場所には来たくなかった。
     何故なら、奈良の鹿怪人が現れたのは、奈良県のみ。
     奈良にさえ行かなければ、平穏な日々を過ごす事が出来たはず。
     だが、仲間達が奈良に行く以上、放っておく事など出来なかった。
    (「俺って自爆体質なんだろうな、きっと……」)
     そう思いつつ、誠十郎が遠くを見つめた。
    (「佐藤さんてば、渋いイケメンなのに、本来もてるはずの無い人(?)から沢山モテモテで大変ね!」)
     そんな誠十郎を中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)が、もふもふ姿で見守った。
    「……多少の抜け毛があるとはいえ大した毛並みだ……。これならば、狙われても仕方がないだろうな」
     クロード・リガルディ(眼鏡が本体・d21812)が、妙に納得した様子で誠十郎を撫でる。
     今回は闇堕ちした友人の代わりに、誠十郎の護衛をする事になったのだが、この時点で嫌な予感しかしていない。
    「何だか、災難続きですね。 今度、お祓いとかしてみます?」
     ヴァン・シュトゥルム(オプスキュリテ・d02839)が、誠十郎の後ろに陣取った。
     その途端、誠十郎が『ぜひとも頼む』と言わんばかりに、コクコクと頷いた。
    「誠十郎君……。鹿せんべい、食べます?」
     立花・銀二(黒沈む白・d08733)が、同情した様子で鹿煎餅を渡す。
     誠十郎君は鹿煎餅に食らいつくと、『打倒、鹿!』的なノリで、あっという間に平らげた。
    「あたし、知らなかったよ。誠十郎さんが鹿狩りしてたなんて……。でも、鹿肉って美味しいらしいね」
     赤名・マコ(ナマコガーディアン・d24354)が、しみじみとした表情を浮かべる。
    『わふっ!(訳:いや、そんな事しねーから!)』
     誠十郎が驚いた様子で、わふっと吠えた。
    「あははっ、うそうそ、冗談だよ!」
     マコが誠十郎の背中を、ぽふぽふと叩く。
     誠十郎は何やら納得のいかない様子であったが、考える事さえ面倒になったのか、深い溜息を漏らした。
    「……素朴な疑問なんだが、奈良の鹿怪人は実際に佐藤さんが鹿を狩っている所を見た事があるのだろうか? まあ、十中八九思い込みの可能性は高そうだが……」
     小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)が、口を開く。
     そもそも、誠十郎が鹿を狩ったところで、メリットなどないのだから……。
    「おそらく、それが奈良の鹿怪人の作戦……」
     上崎・湊(武蔵坂学園高等部二年・d28465)が、険しい表情を浮かべる。
     この様子では、鹿達に誠十郎を敵として認識させる事で士気を高め、操りやすくしているのだろう。
    「鹿を先導して悪さをするのは許せませんね。こんな迷惑なのはさっさと片付けましょう」
     花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)が、奈良の鹿怪人を捜して歩き出す。
     だが、まわりにはどこを見ても、鹿、鹿、鹿。
     感覚的には地雷原の中を歩いて行くようなもの。
     最悪の場合は、鹿達に囲まれてフルボッコ!
    「それに、鹿って下手に手出し出来へんから、厄介なんよー」
     成身院・光姫(小穿風・d15337)が、困った様子で頭を抱える。
     一匹、二匹ならまだしも、見渡す限り、鹿がいるような状況で、戦闘をする事自体が自殺行為。
     しかも、この辺りの鹿は、国の天然記念物。
     そう言った意味でも、迂闊に手を出す事が出来ないというのが、本音であった。
    「それ以前に、人類鹿化計画って何だ!?」
     桜庭・翔琉(徒桜・d07758)が、思わずツッコミを入れる。
     よく分からないが、名前からして危険な計画。
     文字通りの意味であれば、鹿人間的な存在が世界を支配するという事だろう。
    「仕方ないですが、鹿怪人を懲らしめちゃいましょう」
     常儀・文具(バトル鉛筆・d25406)が、気合を入れた。
     霊犬の糊も誠十郎を励ますようにして、ぽふぽふ、もふもふ。
    「ハイヨー!! リチャード・チェイス君!!」
     次の瞬間、可罰・恣欠(スリーオブインパーフェクト・d25421)が鹿に跨り、爆走しながら文具達の前を走り去っていった。

    ●鹿軍団!
    「インタラプトオォォ!!」
     再び恣欠が現れたのは、それからすぐの事だった。
     今度は鹿達の気を引くため、勢いよく鹿煎餅を掲げて、全力ダッシュ!
     それに気づいた鹿達が瞳をキュピィーンと輝かせ、飛び掛かる勢いで襲い掛かってきた。
    「リチャード君、覚悟してください!」
     その中にいる一頭の行く手を阻み、文具が叫び声を響かせた。
     だが、鹿達は気にせず文具に突っ込むと、そのまま恣欠を押し倒し、もみくちゃにしながら鹿煎餅を貪った。
    「……まあ、真面目な話人間形態になっていれば、多少は誤魔化せるんじゃないか?」
     ルフィアの言葉に、誠十郎が首を振る。
    『わふっ!(訳:いや、無理だろ)』
     誠十郎が思わずツッコミを入れた。
     気のせいか、鹿達も薄々、気づいている様子。
     おそらく、誠十郎の体から漂うフェロモン的な何かを嗅ぎつけ始めているのだろう。
    「あ、誠十郎ちゃん、コレ食う……?」
     紅虎が鹿煎餅を食べつつ、誠十郎にも食べさせる。
     その途端、二人とも微妙な反応。
     どうやら、美味しくなかったらしい。
    「あ、鹿達が気づきましたよ!」
     銀二がハッとした表情を浮かべた。
     誠十郎の存在に気付いたのか、それとも鹿煎餅を狙っているのか、どちらにしても絶体絶命のピンチである。
    「と、とにかく、逃げんと!」
     光姫が空飛ぶ箒に飛び乗り、鹿煎餅をチラつかせる。
     ナノナノの小結丸も、光姫をサポート。
    「いっそ、ばら撒いてしまった方が……」
     里桜が誠十郎を守るようにして陣取り、勢いよく鹿煎餅をばら撒いた。
     次の瞬間、鹿達が殺気立った様子で、鹿煎餅に食らいつく。
     それはまるで獲物に群がるケモノのようだった。
    「さぁ、喰らうがいい鹿共よ」
     璃理も鹿達の注意を逸らすようにして、鹿煎餅をばら撒いていく。
     紅虎もイフレート形態(紅色の虎)になって、体両側面にボディペイントで【シカの敵】と大きく書いて鹿達の注意を自分自身に向けようとした。
     だが、敵の漢字が間違っている上に、鹿達は文字が読めないため、総キョトン。
     何やら気まずい空気が漂う中、一頭だけ冷静に『いや、色々と間違っているから、それ』とツッコミを入れた。
    「あの鹿、妙じゃありませんか……?」
     それに気づいたのは、焔だった。
     すぐさま、璃理がカラーボールを投げつけ、怪しい鹿に印をつけた。
    「間違いない。あれが奈良の鹿怪人だ」
     続いて翔琉が鹿煎餅をフリスビーの如く投げて、怪しい鹿に見事命中!
    「ぐおっ! まさか、俺の完璧な擬態を見破るとは!」
     奈良の鹿怪人が正体を現し、悔しそうに唇を噛む。
     どこからどう見ても、鹿。鹿以外には見えなかったはず。
     一体、何が原因で正体がバレてしまったのか、奈良の鹿怪人には理解する事が出来なかった。
    「鹿を嗾けて愛くるしい毛皮を襲うなんて、言いがかりもいい所ね。学園の佐藤さんファンの為にも、ここで倒してあげるわ!」
     紅葉が人間形態に戻り、奈良の鹿怪人をジロリと睨む。
    「こうなったら、作戦変更だ! 殺れ! 皆殺しだ!」
     奈良の鹿怪人が叫び声を響かせる。
     それと同時に鹿達が殺気立った様子で飛び掛かってきた。
    「悪いな……、佐藤を守れと言われているのでな……」
     クロードは躊躇う事なく、鹿達に当て身を放っていく。
    「これって色々と問題がある気もしますが……仕方ありませんね」
     湊が即座に気持ちを切り替え、飛び掛かってきた鹿達を退けた。
     幸い、辺りに人気はなく、鹿に怪我をさせているわけでもない。
     そういった意味で、大丈夫……なはず。
    「残りは鹿怪人のみ。さあ、覚悟してもらうよ!」
     そう言ってマコが霊犬の黒ダイヤと一緒に陣取り、スレイヤーカードを解除した。

    ●奈良の鹿怪人
    「さあ、もう逃げられませんよ」
     文具が霊犬の糊と連携を取りつつ、奈良の鹿怪人に攻撃を仕掛けていく。
     それに気づいた奈良の鹿怪人がぴょんと飛び跳ね、鹿の中に紛れ込もうとしたが、カラーボールを当てられたせいで、それも不可能。
     奈良の鹿怪人も半ばヤケになったのか、誠十郎めがけて突っ込んできた!
    「とりあえず、私の後ろにいてくださいね」
     それに気づいたヴァンが、誠十郎を守りつつ、奈良の鹿怪人にティアーズリッパー!
    「気合と全力で佐藤さんをガードするわよっ!」
     紅葉が鹿煎餅を投げつつ、奈良の鹿怪人を牽制。
     奈良の鹿怪人も鹿煎餅を無駄に出来ないとばかりに、ガブッと食らいついた。
    「いっそ、お姫様の格好でもしとくか? 守られてる感が出て、雰囲気出るんじゃないか」
     ルフィアが冗談混じりに呟いた。
    「わふっ!(訳:いや、無理! 浮くから! 恥さらしだから!)」
     誠十郎がブンブンと首を横に振る。
     一瞬、お姫様スタイルの自分が思い浮かんだりもしたが、全然似合っていない上、何か違う。絶対に違う!
    「それじゃ、一気に倒しちゃうよ」
     朔和が奈良の鹿怪人の逃げ道を塞ぐようにして、素早く背後に回り込む。
     奈良の鹿怪人も必死に逃げようとしたが、向かった先は焔の前。
    「この太刀から逃げられませんよ」
     それを迎え撃つようにして、焔が居合斬りを炸裂させた。
     その一撃を食らった奈良の鹿怪人が、よろりとバランスを崩す。
    「くらえ、乾しナマコキーック!」
     続いてマコが奈良の鹿怪人めがけて、ご当地キック!
     それでも、奈良の鹿怪人は、逃げ道を捜して、あたふた、あたふた。
    「鹿怪人は決して逃しません、今日が奴の灼滅日です。マジカル・クルエル・パンチング♪ 逝くよ、殴殺、マジカル・ナッコォォォォォ!!!!」
     その間に璃理が一気に間合いを詰め、奈良の鹿怪人に閃光百裂拳を叩き込む。
     次の瞬間、奈良の鹿怪人が悲鳴を上げ、大爆発を起こして消滅した。
    「これで無事、人類鹿化計画は阻止出来たってわけだな。よかった、よかった」
     翔琉が棒読み気味に呟いた。
     最後まで、人類鹿化計画の詳細は分からなかったが、奈良の鹿怪人が消滅した後なので、どうでもいい事である。
    「小結丸も、お疲れさん」
     そう言って光姫が、小結丸の頭を撫でた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月7日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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