ハニートラップ!

    作者:墨谷幽

    ●甘いカンケイ
    「ケーキ、食べさせてあげるね。はいっ、響クン、あーん」
    「そんなのより、こっちのほうが美味しいわよ? ほら、あーんっ」
    「ちょっと、邪魔しないでよ! あたしが食べさせてあげるんだからー!」
    「あ、あのっ、みなさん……ケンカしないでくださーいっ……!」
     うららかな、とある日の午後の一時のことでした。
     ケーキ屋さんの店先に据えられたオープンカフェに、制服を着た一団が陣取って、きゃいきゃいと賑やかな声を上げています。
    「えっと、僕、自分で食べられますから、その、あの……」
    「うふふ、遠慮すること無いのよ~? ほらほら、お姉さんが食べさせてあげる」
    「まぁ、響クンったら、真っ赤になっちゃって」
    「もうっ、可愛いんだからー!」
     よーく眺めてみましたら、高校生くらいのたくさんのお姉さんたちに囲まれて、頬を赤く染めつつあたふたとしているのは、一人の男の子。中学生くらいでしょうか?
     どうやら響クンというらしい彼。その華奢な身体に、どこか女の子めいて可愛らしいお顔を見れば、なるほど。年上の女子たちが、あれこれと世話を焼きたがるのも、無理はないのかもしれません。
     あーんっ、と差し出されたスプーンに乗ったフルーツケーキを、響クンは控えめに、ぱくり。途端、周りを取り囲む女の子たちからは、きゃあー! と黄色い声が上がるのです。
     真面目そうな響クンも、そこまでされては、きっと満更でも無かったことでしょう。テレテレしつつ縮こまりながらも、その表情は、ちょっぴりにやけ気味。
    「……これ……何か、いいかも……♪」
     ちろり。彼の口元からは、艶かしい舌が覗いておりました。
     
    ●男子中学生のお悩み
    「ケーキ、美味しいですものね」
     なんて。五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)ちゃんの第一声は、そんな、どこかズレた感想でありました。
    「一般人の方が、お一人。淫魔へと闇堕ちしようとしているようです。皆さんには、その対処をお願いしたいのです」
     そう切り出した姫子によれば、今にも闇堕ちしかけている彼の名前は、乙川・響(おとかわ・ひびき)。思春期真っ盛りの、中学生の男の子だそうです。
     本来の彼自身の性格は、マジメで真っ直ぐな、とても良い子……だそうなのですが。
    「響さんは、その女の子のようなお顔が少しコンプレックスで、本当は、男らしくカッコイイ自分になりたい、という願望があるようなのですが……」
     今回は、その正反対。自分の持つ可愛らしさを最大限に活かして、女の子たちを手玉に取る快楽に目覚めてしまったようです。
    「けれど。響さんはまだ、完全なダークネスへと堕ちてしまったわけでは無いのです。今なら、きっと、彼を救うこともできるはず」
     人間としての意識が残っている間ならば、彼と戦ってKOしてしまえば、元に戻してあげることもできるかも知れません。そしてそれこそが、姫子の、灼滅者たちへのお願いなのです。
     そのために必要な情報を、姫子は早速、説明してくれます。
    「響さんは、とあるケーキ屋さんのオープンカフェで、たくさんのお姉さんたちに取り囲まれています。まずは、女の子たちをどうにかしなければいけませんね」
     それに、と姫子は続けます。
     響くんは本来、男らしくありたい、カッコ良くありたいという願いがあるようです。説得に臨む際は、そのあたりを意識させてあげれば、その後の戦闘での彼の力を、いくらか落としてしまうことができるかも知れない、とのことです。
    「半分淫魔へと堕ちている彼は、山羊のようなくるくるの巻き角と、小悪魔の羽、尻尾が生えています。淫魔としての力に加えて、武器として、マテリアルロッドも持っているようですね」
     場所は、午後のオープンカフェ。天気は快晴。街中で人通りも多く、取り巻きの女の子たちも含めて、何らか対処は必要になることでしょう。
     一通り、説明を終えますと。
    「淫魔の戦闘能力は、他のダークネスたちと比べれば、高くはありませんが……それでも、ダークネスはダークネス。くれぐれも、油断はしないでくださいね?」
     よろしくお願いします、と言って、姫子ちゃんはぺこり。最後にひとつ、頭を下げました。


    参加者
    エステル・アスピヴァーラ(おふとんつむり・d00821)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    西明・叡(石蕗之媛・d08775)
    ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)
    菊水・靜(ディエスイレ・d19339)
    丸目・蔵人(兵法天下一・d19625)
    白石・作楽(櫻帰葬・d21566)
    高坂・透(だいたい寝てる・d24957)

    ■リプレイ

    ●半熟淫魔の憂鬱
    「ほーら、響クン。こっちのケーキも美味しいわよ~? あーん」
    「あ、あーん……ぱくっ」
     きゃあー! なんて。大喜びの年上のお姉さんたちに囲まれて、何だかんだでにやけ顔。な、問題の淫魔候補、乙川・響クンを、黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)はその囲みの中にひっそりと紛れ込みながら、遠巻きに眺めておりました。
    「まぁ……男の子だものね。女の子に囲まれてちやほやされるのは、楽しいわよね」
     ぽつり、つぶやいて。摩那が一人、冷めた目でその様子を見守っていたところへ。
    「……来たようね」
     一瞬、女の子たちの嬌声が、しん。と静まり返ります。見れば、予定通り。
     ずんずん、ずずん。胸を張り、傍らへとびきりの美女に美少女……白石・作楽(櫻帰葬・d21566)とエステル・アスピヴァーラ(おふとんつむり・d00821)をはべらせながら、これでもかと男っぷりをアピール! しながらやってくるのは……菊水・靜(ディエスイレ・d19339)でありました。
    「ま、まぁ、素敵……」
    「あの人、誰かしら……?」
     ぽややん、と、熱に浮かされたような顔で靜に見入るお姉さんたちに、響クンはぽかん。
    「あ、あのー、皆さん……?」
    「……すまないが」
     響クンとその取り巻きの目の前までやってくると、靜はお姉さんたちをぐるりと見回し、ささやくようなセクシーボイスで言いました。
    「今から、彼と大事な話がある。席を外してくれないか」
     お姉さんたち、思わず響クンと靜の顔へ、視線を行ったり来たり。護ってあげたくなる美少年と、大人びた魅力の美青年を天秤にかけ、迷っているようです。
     オープンテラスの奥の席、頃合と見て立ち上がったのは、あらかじめ客として紛れ、ちゃっかりケーキにコーヒー、紅茶をいただいていた、ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)と丸目・蔵人(兵法天下一・d19625)です。
    「頃合のようですわね。蔵人さん、お願いしますわ」
    「……ん」
     口数少なくうなずいて、蔵人が殺界を押し広げていきますと。
    「え、あ、ちょっと……」
     お姉さんたちは、後ろ髪を惹かれるように何度も響と靜を振り返りながらも、連れ立ってその場を立ち去っていきました。
    「むきゅぅ。男の娘なの、男の娘なの~」
    「……ふ。子供だな」
     おろおろする響クン。本来は男らしさに憧れているという彼に、エステルのセリフは、グサリ。靜へ熱っぽい視線を投げかけて、比べるように言った作楽の言葉には、さすがの彼も、ちょっぴりむっとした様子で、
    「な、なんなんですかー。どうして邪魔するんですかー!」
     くるくるの巻き角に、小悪魔のような小さな翼、尖った尻尾。淫魔の特徴をあらわにしながら、きー! と憤慨しています。そんな様も、やっぱりどこか、可愛らしいのですけれど。
    「まぁ、自分の魅力を生かすっていうのも、アリだとは思うけど」
     歌舞伎の女形として修行中という西明・叡(石蕗之媛・d08775)は、響クンの内情にも、どこか心当たりがあるのかも。
    「こうありたい! って理想があるのなら……諦めるには、まだ早いんじゃない?」
    「……う、うぅっ!?」
     びしばし。とっても正論なお言葉が、容赦なく響クンの胸に突き刺さりまして。
    「僕たちは、君を助けに来たんだよ。少しだけ、話を聞いてくれないかな?」
     おっとり温厚そうな高坂・透(だいたい寝てる・d24957)も、そんな風に優しく言うのですが……。
    「しょ……しょーがないじゃないですかー! どうせ僕なんて、男らしくなんて、なれっこ無いですもん! いいじゃないですか、ちょっとくらいちやほやされたってー!」
     響クンも、色々と溜まっているものがあった様子。逆ギレ、開き直り! 彼は武器らしき杖を取り出しますと、なし崩しに戦闘開始と相成りました。

    ●男らしいって、何?
     エステルの愛犬『おふとん』が、びびびっ、と古銭を発射したところへ。
    「むぅ。自分の理想どおりになれないからって、そんなの、男の子のすることじゃないと思うのね。叩き直してあげるの~」
     縛霊手を握り締めると、エステルはそれを響クンめがけて、ぐわーん! 言葉通りに叩きつけます。
    「わー!? な、何するんですかー!」
    「そのままじゃ、響さん、自分のなりたいものから、どんどん遠ざかっちゃうなの。だから、きっちり助けてあげるのですよ~」
     のんびりほわほわ、マイペースなエステルですが、彼を助けたい、という気持ちは確かなようです。武蔵坂学園へ連れ帰って、いっぱい筋トレでもさせてあげようと、おふとんと共に意気揚々といったところです。
    「そうよ。あなたの気持ちも分かるけど、ちやほやされるのが目的になってる時点で、ダメ。自分磨きが、かえっておろそかになっちゃうわよ?」
     ドリルみたいにぐりぐり回転する槍で、摩那は、響クンをびしり。
     綺麗なメガネのお姉さん、摩那も、先ほどまであの取り巻きたちの中に混ざり、彼をつぶさに観察していたのです。
    「ねえ、女の子に囲まれてへらへらしてるのって、全然カッコよくないわ。そのまま流されてしまったら、どんどん堕落してしまうわよ?」
     なんて言いつつ。内心、女顔の男子は、やっぱり可愛いですよね。なんて考えていたりする摩那でしたが、もちろん、口には出しません。
     叡は、普段とは打って変わってちょっと鋭い面持ちで腕を翻して、いくつもの光輪を放ちつつ。
    「なあ。お前さっき、あいつのことを見て、どう思った? 男らしい、とか思わなかったか?」
     目線で示したのは、靜です。響クンの理想の体現……なんて言えるのかもしれない靜の佇まいに、彼は確かに、視線を向けずにはいられません。
    「うぐっ……そ、それは……」
    「お前、男らしくなりたいんだって? 分かってるだろうが。お前が今やってることは、その真逆だぞ?」
    「ああ、まったくだな」
     叡とタイミングを合わせ、作楽は足元から伸ばした墨染めのような影の触手で、響クンの足元へと絡みつかせます。
    「あの女子たちがちやほやとしていたのは、お前が軟弱な男だからだ。それでいいのか? そんな風に好かれて、お前は嬉しいのか?」
     本末転倒も良いところだ、と、作楽の言葉は実に厳しく、鋭いのです。
     半ば嘲るようにも聞こえるそんな言葉に、
    「よ……余計なお世話ですもん! 僕、こんなだから……もうこれしか、無いじゃないですか! 自分の持ってるものって、これくらしか、無いじゃないですかー!」
     響クンは、何だかその造形も女の子のおもちゃめいたロッドから、ごおー! と竜巻を巻き起こすと、暴風は前衛の灼滅者たちを包み込み、吹き荒れます。その激しさは、彼ののっぴきならない心持ちをも表しているかのようにも、見えたり見えなかったり。
     ある意味、そのへんの女の子よりも女性らしいかもしれない、ベリザリオさん。優雅な佇まいを漂わせながらも、影の刃をするりと閃かせて切り裂きます。
    「わたくしも、女性のお友達とご一緒するのは、気分も華やぎますし好きですわ。けれど、あなたがそう思うのは……闇に堕ちかけているから。きっと本心では無いのでしょう?」
     ちょっぴりベクトルは違っても、ベリザリオには、今の響の気持ちが分かるような気がするのです。お嬢様然とした彼ですが、やっぱり男としましては、女の子に囲まれていれば、気分も浮き浮きとしようもの。
    「ですが、褒めそやされてその快感に浸っているようでは、男らしく……なんて、夢のまた夢。まずはそのコンプレックスを、見事、跳ね除けてみせて下さいな」
     きっとそれは、とても難しいことなのでしょう。でも、だからこそ。
    「もし、それができたなら。その心の強さは、男らしさへと変わるはずですわ!」

    ●惑う半熟淫魔
     靜の繰り出す、目にも止まらぬパンチの連打が、響クンを追いたてます。
    「わっ、わっ……あ痛っ」
    「……男とは」
     脇腹へどむっと一発、拳が入ったところで。
    「男らしさとは……努力から滲む自信なのだと、私は考える」
     誰が見ても、靜のことを女々しいと思う人はいないでしょう。誰だって、男らしいと思うのに違いありません。
     彼はきっと日頃から、男らしく見られたい、格好つけたい! なんて、考えていたりはしないでしょう。いつだって自分のできることをやってきて、そのために必要な努力を常に怠らない。それだけなのでしょう。
     そこへ行くと、響クンはと言いますと。
    「……う、うぅ~っ」
     僕だって! とは、反論できない様子。
     目尻にちょっぴり涙を溜めながら、わーっ! と言葉にならない声が大きな空気の波となって、蔵人めがけて飛んでいきます……が、
    「でかした、菊!」
     叡の霊犬である『菊之助』が蔵人を庇い、がっちりガード。
    「戦線支えるのも、立派な仕事……ってね」
     お返しとばかりにか、彼の口から紡がれたメロディは、柔らかい癒しとなって仲間たちを後押ししていきます。
     ベリザリオの伸ばした影、がばっと開いて飲み込もうとするそれを、際どくかわされたところへ、
    「……最早、語るまい」
     蔵人がその隙を逃さず、魔力を内包した左手の大きな手甲を、思い切り突き入れます。
     殴打の衝撃に耐えながら、響は、蔵人を見ていました。
     蔵人もまた、女の子と見違えるほどの綺麗な面立ちに、華奢な体躯。けれど彼は、そんなことに頓着するそぶりも見せず、ただ淡々と、目の前の任務に臨んでいます。
     でも、響はそんな彼の中に、見出したかもしれません。必ず助ける、と、瞳に宿った真っ直ぐな意思や、武器へと込めたその願いを。
    「……だって、僕は……僕はっ」
     迷いの見え始めた響へ、ビハインドの『琥界』と共に踏み込んだ作楽の、抜き打ちによる一閃、霊撃の一打が重なって、彼を打ち据えます。
    「行くよ、なの」
     透は、ナノナノの『なの』と共に、シールドを押し広げて味方を護り、癒します。
     彼もまた、その心の中には、多くの想いを抱えていました。響に、言ってあげたいこと。伝えたいことが、たくさんあるのです。
     でも、まだ。彼は、自分の役割はまだ、もう少し後だと考えていました。
    「友達になれると、良いんだけどね」
     きっとそれは、叶うはず。
     だって、彼と響クンは、何だかちょっと似ているのです。

    ●僕だって!
    「靜さん、行くのですよ~」
    「ああ……こちらの番だな」
     しばらく、攻防が続いた後。エステルと靜は同時に踏み出します。
    「かわいいからって、卑怯なのです。男なら、正面からかかってくるのですよ~」
     腰が引けたのか、中距離を保っている響へ、エステルは赤い十字型の軌跡を生み出して、ざっくり。切り裂くと、
    「……喰ろうて見よ」
     靜の魔槍がうなりを上げて、回転しながら突き込まれます。
    「あなた、もっと自分を磨けば、カッコよくなれそうなのに。残念ね?」
    「え、ええっ? それって……わーっ!?」
     摩那の言葉を耳ざとく聞きつけ、ぴくり。でも、摩那の叩き込んだ一撃に遠慮は無くて、どかん! と彼は吹っ飛ばされます。
     そこへ追いすがり、蔵人は、
    「……私には、お前の悩みは、分からない。だから、せめて」
     多くは語らず。せめて、彼を早々にこちら側へと引き戻すため、必殺の霊剣で肩口から袈裟切りに斬り下ろし、致命打を打ち込みます。
     よろめく響。
     灼滅者が、一発、一撃とともに伝える想いが、そうさせたのでしょうか。その瞳に、きらり。強い光がよぎったかと思うと、
    「ううう……僕だってぇ……僕だってー!」
     乙女チックな形の杖を振りかざしつつも、少しばかり男らしく、直接攻撃を敢行するのです。
    「今です、おふとん、もこもこが~どなの~♪」
     でも、もふんっ! ベリザリオを狙った一撃は、霊犬のおふとんの身体に遮られて、届くことはありませんでした。
    「さあ……今こそ、目を覚ます時ですわ!」
     ベリザリオが言って、構えたのは……そう。最後はやっぱり、古き良き男らしさの象徴、その握り締めた拳で!
    「『男』になって、こちらへとお戻りなさいッ!!」
    「う、うわあああああ……!」
     どががががっ! まばゆいばかりの閃光と共に、撃ち込まれた無数の鉄拳が、響を浄化し……そして彼を、堕ちかけた闇の淵から、すくい上げたのでした。

     ぺたん、と床へヘタりこんだ彼の、女の子座りはまあ、さておくとしまして。
    「うっ、ひぐっ……僕、男らしく……ぐすっ。なれる、でしょうか……? ふぐうっ」
     ちょっと、無理かも……と思わせる、響クンのめそめそ泣き顔でしたが。
     彼のもとへ屈み込んで、優しく涙を拭ってあげたのは、ひときわ冷たい言葉を浴びせていた、作楽でした。
    「ああ、なれるとも。闇に魅入られ、その力を知ってもなお、こうして君は戻ってこれた。それは紛れも無く、君の心の強さ故だ。男として、人として尊い、君自身の強さだ」
     作楽は慈愛に満ちた笑みを浮かべて、
    「……先ほどは、すまなかった。君は、いい男だよ」
    「う……うわあああああん……!」
     謝罪と感嘆の念を伝えた作楽のあたたかい眼差しに、感極まったのか、響クン、号泣です。泣き虫はともかく、これで少しは、男の子としての自信がついたでしょうか?
     満を持して。透はようやくにして、その想いを伝えます。
    「僕もね……ほら、もやし体型で、筋肉がつきにくくて。男らしくなりたいって思ってて。君の気持ち、すごく分かるんだ」
     そう。透もまた、彼と同じ悩みを共有する、いわば仲間だったのでした。
     そして、全てが終わった後。彼は、どうしても伝えたかったのです。
    「だから、友達になろうよ。これから一緒に、頑張っていこう」
    「うん……うんっ……」
     こくこくとうなずきながら、二人は握手を交わし、にっこり。涙に濡れていても、響の顔には少しばかり、笑顔が灯りました。
     最後に。
    「良く持ちこたえたな。乙川」
     叡は、真っ直ぐに響の瞳を覗き込みながら、静かに言いました。
    「俺はきっと、お前の理想とは違うんだろうが……話や愚痴くらい、いくらでも聞いてやるさ。それに、俺の友達に、男前なやつがいてな。アドバイスくらいしてくれると思うぜ」
     男言葉は、叡が本当に真剣な時に見せる、真摯な思いの、その証。
    「だから……頑張ろうぜ。俺らと一緒に、さ」
    「……はいっ。僕、僕……頑張りますっ!」
     こうして、ここに。
     女の子みたいに可愛い顔、けれど真っ直ぐ男らしい男の子を目指す、一人の新しい灼滅者が誕生したのでした。

    作者:墨谷幽 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 2
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