藍色のパズル

    作者:陵かなめ

    「赤、青、黄色の国が狩り競争をしました。
     各国、それぞれ違う動物を狩ります。狩る動物は鳥、猪、狐。
     赤の国は3位でした。2位の国は猪を狩りました。
     狐を狩ったのは、青の国です。
     さて、それぞれの国の順位と獲物は何でしょうか?」
     暗い公園で、男が問う。
    「と、言う事は、赤の国は鳥を狩ったのかな」
    「黄色の国は2位だったと言うことか」
    「なら、狐を狩った青の国が1位だね。簡単だよ、藍若葉さん♪」
     周りに居る男達が口々に答えた。
    「素晴らしい。やはり皆さんの頭脳は優秀だと言うことです」
     藍若葉と呼ばれた男が手を打った。そして、神妙な顔を作る。
    「皆さん聞いてください。こちらの山口君は、皆さんの大切な仲間です。彼も、優秀な頭脳の持ち主ですが、職場の理解が得られず閑職に追い込まれています。こんな酷い話があっていいのでしょうか? 遅刻、ミス、和を乱す。それが何だと言うのか。……あの職場です」
     暗い光を瞳に映しながら、皆が目の前のビルを見た。
    「私は、山口君のため、今日あの凡人共に鉄槌を下します。皆さん、ご一緒してください」
     男達はうなり声を上げる。そして、それぞれの武器を手にし、ビルへと向かっていった。

    ●ザ・ワンド
    「くすくすくす。もうちょっとマシな問題は無かったの?」
     男達を追い立てた藍若葉の背後から、愉快な声が聞こえる。全身黒ずくめの、顔を仮面で隠した男が、いつの間にかそこに立っていた。
    「これはワンド様。しかしながら、あれ以上難しい問題は、彼らには解けませんよ」
     にやり、藍若葉が口の端をゆがめる。
    「あっはっは。自分を特別だと勘違いした人間が、人間を襲う。これは面白い。僕の大好きなシチュエーションだよ」
    「有難うございます」
     恭しく、藍若葉が頭を下げた。
    「これから襲撃だよね。僕も後ろのほうで見学させてもらおうかな」
    「それは心強い。ワンド様がいらしてくださるのなら、この藍若葉、心強く思います」
     くすくす。仮面の男が笑い声を漏らした。
    (「でも、助けるなんて一言も言ってないけどねぇ」)
     ワンドの声は、誰にも聞こえない。

    ●依頼
    「ザ・ワンドの配下が起こす事件が分かったんだよ」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が説明を始めた。
     強化された幹部・藍若葉は、『高貴な頭脳の会』と言う会を主催している。
     会では簡単なパズルやクイズを出題し、配下の一般人を頭が良いとおだてて、これまでにも気に入らない人間を排除させたり、好きなように店を襲ったりしてきたようだ。
    「今回、会が襲うのは、残業をしている会社員さん達だよ。襲うビルは分かっているから、ビルの前で待ち伏せできるんだ」
     ただ、と。太郎が表情を曇らせる。
    「その集団の背後には、ザ・ワンドの姿があるんだ」
     戦いになれば、ザ・ワンドはすぐに姿を消す。もし手出しをするなら相応の代償を払うことになるだろう。一言くらい声をかける事は可能だが、声をかけている間に強化一般人に襲われる危険がある。
    「できれば、みんなには強化一般人たちに集中して欲しいんだ」
     幹部の藍若葉は魔法使い相当のサイキックを使用し、その他配下の強化一般人はナイフや警棒で攻撃を仕掛けてくる。
    「ビル内にはまだ一般の人達が居るから、敵にビルへ侵入されないように気をつけて」
     太郎は最後に皆を見回した。
    「それじゃあ、みんな。油断せず、頑張ってきてね」


    参加者
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    九曜・亜門(白夜の夢・d02806)
    更科・由良(深淵を歩む者・d03007)
    蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)
    刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)
    ヒオ・スノゥフレーク(雪のかけら・d15042)
    焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)
    雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)

    ■リプレイ

    ●ビルの明かりに照らされて
     ビルの明かりを背に、灼滅者達は藍若葉ら『高貴な頭脳の会』のメンバーを待ち構えていた。
    「意外と明るいものじゃの」
     周辺の様子を確認しながら更科・由良(深淵を歩む者・d03007)が言った。全てとは言えないけれど、ビルの窓には各フロア煌々と明かりが灯っている。また、周辺に建つビルの明かりや街灯などで、戦うには十分な明るさがあった。
    「特別な人間などいる筈は無いというのに。悩みを持った者の心に付け入り欺くようなやり方は許せないな」
     同じく付近の様子を探っていた刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)が呟く。
     幸い、この場所に近づく一般人の姿は無かった。
     ヒオ・スノゥフレーク(雪のかけら・d15042)の殺界形成が効いているのだ。
    「人の心を弄んで、自分好みの事件を起こさせる……許す訳にゃーいかんです」
     ザ・ワンドの遠まわしなやり方には本当に腹が立つ。
     ここで尻尾を掴んでやると言いたいが、それよりもやらねばならないのは、目先の敵だ。ヒオは用意した眼鏡をかけた。
     ともかく、この場所で敵を食い止めることが出来れば良い。
    「この先、一人も通さないっすよ」
     ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は、これから対峙する相手、そして、その背後で笑うであろうザ・ワンドに考えを馳せた。
     今回も、手出しをしないつもりか。これだから、ソロモンの悪魔はと思う。
     配下の組織を作り、さぞやサイキックエナジーを溜め込んでいるのだろうとも。
     それにしても、と、彼らがやってくるであろう方向へ、雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)が冷ややかな視線を向けた。
    「高貴な頭脳、ね。……思い込みって怖いな、ソクラテスの無知の知を知らんのか」
     言ってから、ちょっとだけ首を傾げる。
    「……ソクラテスで合ってただろうか……?」
     まあ、それは兎も角、『高貴な頭脳の会』のメンバーは間もなくこの場に現れるはずだ。
    「バカだねぇ……本当に頭が良い奴は、逆恨みなんざしないでその場にうまく溶け込むか、自分を認めてくれる場所へいくもんだ」
     焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)が肩をすくめた。
     そして、彼らは現れる。
    「俺達が気分良く生きられる環境が必要だと思うね♪」
     ちゃらちゃらとナイフを鳴らす男の言葉に、どっと笑い声が沸き起こった。
    「もうね、馬鹿なヤツはこの国に要らないの」
     警棒をもった男がしたり顔で頷くと、そうだそうだと集団の男達は声を上げる。
    「……あれが所謂、『残念』というやつか?」
     まあ、そう言う評価で大体あってる。
     九曜・亜門(白夜の夢・d02806)は、げんなりした表情で、集団を見た。
     彼らの後ろには、上等なスーツを着込んだ男が見える。彼が藍若葉に違いない。そして、そのもう1つ後ろ。嫌でも目に付く、黒ずくめの大柄な男。顔を仮面で隠し、悠然と歩いてくるのはザ・ワンドだ。
     灼滅者達はザ・ワンドの存在を意識しながら、『高貴な頭脳の会』のメンバーの前に出た。
     不思議そうな表情で足を止める男たちに向かって、蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)が言葉を投げかけた。
    「自分の悪いところを省みず、それどころか他人に暴力を振るう。それが大人の行いですか!」
    「せっかくかしこい頭なら! 他人に不平を漏らすより、進んで自分が変わりましょー!」
     かけた眼鏡をくいと押し上げ、ヒオも高らかに宣言する。
    「……な、な、何だねキミたち……?」
     びくりと身体を硬直させ、1人の男が拳銃を構えた。
     不測の事態に驚き不安になっているようにも見えるが、それでも武器を構えたという事はこちらの意図が伝わったようだ。
     灼滅者達と『高貴な頭脳の会』のメンバーが、にらみ合った。

    ●攻撃の応酬
    「おやぁ、これは物騒だねー。んー困ったなあ」
     くすくすくす。嫌な笑い声が、辺りに響いた。
    「ワンド様、彼らは……」
     藍若葉が困惑気味に主を見る。
    「さあ、何だろうね? 僕、良く分からないんだけれども。まあ、キミ達の邪魔をするなら排除したら? 優秀な君達なら、安心してその役目を任せられるね」
     ザ・ワンドは、灼滅者から飛ばされる鋭い視線を無視して、とぼけたことを言うのだ。
     彼は灼滅者と戦ったことがある身。気づかないわけは無いのだが、戦闘は配下に丸投げする様子だ。
    「よし、やってやる……! やってやるさ……!」
    「お任せください、ワンド様!」
     ワンドの言葉を受け、敵は闘志をみなぎらせた。
     その姿を確認し、ワンドはマントを翻す。
     一瞬の出来事。
     相手をじっと見据えていた刃兵衛や、消える瞬間を観察していたヒオでさえ、その姿を追う事は出来なかった。
     サ・ワンドは姿を消した。
     その事実を確認し、刃兵衛が強化一般人たちへ視線を戻した。
    「お前達が相手では役不足だが仕方ない、悪いが早く決着を付けさせてもらう」
     日本刀・風桜を抜刀する。
    「――いざ、推して参る!」
    「頭の痛い話じゃが、早々に片を付けるとしようかのぅ……」
     亜門が足元の霊犬・ハクを見た。ハクは大欠伸でそれに答える。
    「蒼穹を舞え、『軍蜂』」
     敬厳が戦う姿を開放すると、仲間達も次々にスレイヤーカードを手にした。
    「構わん、やってしまえっ」
     藍若葉の声に、強化一般人達が走り出す。
     無貌の白面を被った亜門が、素早く風の刃を生み出した。
    「清浄なる風に依りて、諸々の穢れを祓い給え」
     激しく渦巻く刃が、回復の力を持つ強化一般人・宮崎に襲い掛かる。
    「うわ……、いたい、痛いよっ」
     宮崎は、激痛にのたうち回った。
    「ほれ、どうした。他人よりも優れているのじゃろう……傷など介して居らずに、立ち上がって抗うか……目的を達成するか奮ってみんか。お主の優秀さを証明してみせんか」
     にやりと口元に笑みを浮かべ、由良がマジックミサイルを撃ち込んだ。
     敵はぱくぱくと口を動かし、声にならない叫びを上げる。
    「これで仕舞いじゃ」
     その様子を見て、敬厳が走りこんで来た。両手に集中させたオーラを確実に宮崎にぶつける。
     宮崎は、何の抵抗も出来ないまま消え去った。
    「おい、気をつけろ、こいつら……そこそこやるようだ」
     開戦早々強化一般人を倒した灼滅者を見て、強化一般人・山口はそう評価した。
     それは極めて的外れの評価だというような気がしたけれど、それを教えてやる必要も無い。
     ギィは無敵斬艦刀『剥守割砕』に黒炎を乗せ、近くの敵に叩き付けた。
    「人数が多いだけのことはあるっす。きちんと、前衛・中衛・後衛が揃ってるっすね」
     一応の褒め言葉は、しかし炎に襲われた山口には届いていないようだった。山口もまた、消えた宮崎同様、身を焼かれる苦しみにうめき声を上げてデタラメに走った。
    「全く、この痴れ者共め。身近な者一つも読めずにな」
     ビハインドの祠神威・鉤爪を伴い、煌理は縛霊手を構える。内蔵した祭壇を一気に展開させ、藍若葉を囲むように結界を張った。
    「……っ、しっかりしろ!! 冷静さを取り戻せ!! キミ達の頭脳はとても高貴なものなのだから」
     攻撃を受け、藍若葉も己の武器を取り出した。
     前衛に位置する灼滅者を狙い、フリージングデスが放たれる。
    「不平不満しか言えねぇ。何でも他人のせいにしか出来ねぇ。だけど自分で改善はしようとしねぇ。ちょっと良くしてくれる奴に騙されて周りが見えねぇ」
     それを見て、秀煉は巨大なオーラの法陣を展開させた。
    「そういうのを世間様じゃオツムが足りねぇって言うんだぜ?」
     仲間の傷を癒しながら、辛らつな言葉を言い放つ。
     戦いは始まったばかり。互いに距離を取りながら、攻撃の応酬が始まった。

    ●最後に残ったのは
     敵の前衛を倒さない限り、強力な近接攻撃が届かない。
     そのため、ギィと刃兵衛は、手近な敵を狙い攻撃を繰り返した。
    「人より優越感を味わった気になって、本当にそれで満足か? 騙されているとも知らずに……哀れな連中だ」
     敵の死角に回りこみ、刃兵衛が刀を一閃させる。
    「だが同情はしない、この刃で憎悪の念を断ち斬ってみせる!」
     その的確な攻撃に、山口も崩れ去った。
     続けてギィが、警棒を構えた岡山に止めの一撃を打ち付ける。
    「さあ、あと一息で後衛とも戦えるっす」
     後衛から遠距離の攻撃をどんどん放つ藍若葉をちらりと見た。
     一方、宮崎を倒した後、他の仲間は藍若葉に攻撃を集中させていた。
    「ハクよ、合わせるぞ」
     ウロボロスブレイド・連環式七星剣・輪廻を手に、亜門がハクを呼ぶ。
     ハクは一度大きく欠伸をし、慌てた様子も無く斬魔刀を煌かせ藍若葉を斬りつけた。
    「くっ……」
     攻撃を避けようとして、体勢を崩したところを狙う。
    「己らの蒙昧ぶりには付き合いきれんわ……精々、命があることを祈っておけ」
     続けて亜門が蛇咬斬を繰り出し、容赦無く敵の身体を斬り裂いた。
    「刃兵衛、回復じゃ」
     敵の攻撃は、1つ1つは確かに弱い。だが、列攻撃を各列に繰り返し使われては、回復の手を増やし小マメに回復するしかない。由良は符を飛ばし、刃兵衛の傷を癒す。
    「ええいっ、ボクが足止めしますっ、藍若葉さんやっちゃってください!!」
     強化一般人・石川が、前衛の仲間に銃口を向けた。
    「ふっ、良い考えです。ワンド様もきっと喜んでくださる!」
     藍若葉も、連携を取る様に氷の魔法を繰り出してくる。
    「飛雄威っ」
     それを見て、秀煉がビハインドの風野・飛雄威を呼んだ。
     敵の攻撃から仲間を庇わせたのだ。
    「おっと、回復が必要だな」
     秀煉自身は、天魔光臨陣でまとめて仲間の回復をする。
    「これ以上は、やらせませんよー!」
     次に、ヒオがバベルブレイカーを抱えて敵の真ん中に飛び込んだ。石川の死の中心点めがけて杭を打ち込む。小柄な彼女は、武器の勢いに流されたように、ぐるりと身体を横に回転させた。
     本当は、ザ・ワンドを信奉する彼らに、それを否定する言葉を言ってやりたい。
    「……むー。ぅ」
     だが、上手い言葉が出るわけでもなく、困ってしまった。
    「ぐぁあああああああ。くそおっ、くそっ」
     その間にも、石川は苦痛から逃れようと、必死に暴れている。
    「続けていくぞ!」
     煌理が言うと、鉤爪が石川に霊撃を飛ばした。
     もう一撃で石川を沈めることが出来る。
     しっかりとそれを感じ取り、煌理はエアシューズを煌かせた。素早く走りこみ、強烈な飛び蹴りを浴びせる。
     ビクリと一度身体を硬直させ、石川も消え去った。
    「さて、残るは1人じゃな」
     敬厳がサイキックソードを形成させる。
     状況を確認し一歩下がった藍若葉と、一呼吸で距離を詰めた。
     そのまま、ソードを器用に動かし斬り裂く。
    「わしのような小僧に良いようにされておっては、物笑いの種じゃぞ」
     前衛、中衛の敵を撃破しつくし、藍若葉に攻撃が届くようになった。
     敬厳の言葉に、残る藍若葉は醜く舌打ちを返した。

    ●今宵、藍には染まらない
     他の強化一般人がかなり弱かったのか、それとも、藍若葉がそれなりに体力があったからか。
     結局、最後に残ったのは藍若葉だった。
     灼滅者達は敵を囲むように展開し、攻撃のタイミングを窺う。
    「くそっ、こんな事では、ワンド様に顔向けできない!」
     藍若葉は、武器を構えなおし、後衛の仲間の足元から凍り付かせた。
    「裏で高みの見物決めて、危険があればそそくさ逃げる」
     ワンドと聞いて、秀煉が肩をすくめる。
    「自称、頭の良いあんたらが持ち上げてるヤツは、その程度の小物ってこったな!」
     断罪輪を持つ手に力を込めた。秀煉の天魔光臨陣が、傷を負った仲間を癒す。
    「ふん。そんな言葉で惑わされるほど、私は甘くないぞ」
     藍若葉は首を振り、声を張り上げた。
     だが、それが虚勢だと感じる。
     最後まで残ったが、藍若葉とて無傷ではない。むしろ、傷を癒す手が足りず、瀕死の縁に立っているはずだ。
    「ま、どんなに言っても助けは来ないようだがな」
     どんなに配下が危機だろうとも、ザ・ワンドが戦場に戻ってくる気配はまるで無かった。
     煌理は言いながらエアシューズでダッシュし、グラインドファイアを放つ。
    「続きます、これでっ」
     続けて、ヒオがクルセイドソード・待雪草で、敵の霊魂を狙い斬りつけた。
    「幕じゃな。畳み掛けるぞ」
     敬厳がリングスラッシャーを飛ばしぶつける。
     その言葉を聞いて、他の仲間やサーヴァントも一斉に動いた。
    「くっくっく。どんなに強気な言葉を出しても、ほれ、囲まれとる事に変わりは無いじゃろ」
     由良の伸ばした影が藍若葉を飲み込む。
    「ハクよ、今一度じゃ」
     霊犬の援護を受け、亜門の神薙刃が藍若葉の身体を切り刻んだ。
    「くそっ、ワンド様……ワンド様」
     藍若葉が、倒れそうになりながら空に手を伸ばす。
    「来ないっすよ。そう言うヤツだって、分からないっすか」
     斬艦刀を大きく振りぬき、ギィが藍若葉の身体を吹き飛ばした。
     空をもう一度見上げる。
     やはり、助けは来ない。
     藍若葉から、次の言葉は出てこなかった。
    「力無き弱者を拐かし、混乱を招かせる企みもこれでお終いだ」
     敵を見据え、刃兵衛が一歩前へ出る。
    「貴様が犯した罪はその命で償ってもらうぞ!」
     素早く抜刀し、藍若葉の身体を切り捨てた。
     主を呼ぶ声は、もう無い。
     ただ、空に手を伸ばし、そして力尽きる。
     藍若葉は、無言で消え去った。

     敵が見ていた空を見てみる。だがやはり、ザ・ワンドの姿はどこにも無かった。
    「ザ・ワンド! お前も首を洗って待ってろっす!」
     ギィの声も、空に消えた。
    「いつかあの仮面叩き割ってやる!」
     握り締めた拳を向けるのは、自分達が守り抜いたビル。
     ヒオはそれを示した後、きゅるりと目を回した。走り回って、武器に振り回されて、お腹がすいたのである。空腹である。
    「いやはや、何とも疲れる相手であったわ……。言葉が通じぬでは、なんともな……」
     ひたすらげんなりとする亜門の足元で、ハクが再び大きな欠伸を見せる。
     ともあれ、ビルで残業をする人々は守られた。
     それを確認し、灼滅者達は帰って行った。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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