禁断のおしゃれ魔法!

     瞹昧・模糊(ダンボール老師・d23065)は、こんな噂を耳にした。
     『無理やりおしゃれに着飾らせようとする都市伝説が現れた』と……。
     都市伝説は筋骨質のオカマで、とあるブティック周辺に現れ、地味な女の子を見つけると、手当たり次第に声をかけているようだ。
     もちろん、女の子達はあからさまに警戒心を抱いて、その場から逃げ出そうとするのだが、都市伝説は気にせず女の子を担いでブティックに連れ込み、まるで魔法をかけるようにして、おしゃれに着飾らせてしまうようである。
     それがキッカケになって女の子達が美に目覚め、自分が可愛いと思い始めるのだが、おしゃれに着飾る事が出来るのは、都市伝説のテリトリー内のみ。
     そこから出てしまうと、あっという間に効果がなくなってしまう、期間限定もの。
     そのため、都市伝説のテリトリーから出た途端、『うわっ、何アレ』、『服を着ているというよりも、服に着られているわよ、あの子』と陰口を叩かれてしまうほどの変わりっぷり。
     ただし、都市伝説のテリトリー内にいる間は、アイドル並のオーラとキラキラ感を手に入れる事が出来るらしく、ブティックに住み込む女の子達までいるほど。
     どちらにしても、ブティックにいる女の子達を避難させる必要があるため、囮などを使って都市伝説を誘き寄せるのではなく、直接ブティックに乗り込んで、女の子達の安全を確保するべきだろう。


    参加者
    九条・雷(蒼雷・d01046)
    三条院・榛(猿猴捉月・d14583)
    葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)
    瞹昧・模糊(ダンボール老師・d23065)
    翠川・朝日(ライジングブラックサン・d25148)
    弓束・小兎(兎起鶻落・d25316)
    スティーブン・ゲルベル(怪人バーガーヘッド・d25355)
    桜井・華穂(悪魔と呼ばれた少女・d26611)

    ■リプレイ

    ●ブティック前
    「おしゃれに着飾らせる都市伝説と聞いてやってきましたっ!」
     桜井・華穂(悪魔と呼ばれた少女・d26611)は元気よく声をあげ、都市伝説の確認されたブティックにやってきた。
     ブティックには沢山の女性が居座っており、何故か閉店の札が掛けられていた。
    「オカマさんってお洒落にこだわってるイメージ多いよね! 実際、怪我するとかの被害がないなら、このままでもいいんじゃないかなーなんて思っちゃうんだけど……」
     弓束・小兎(兎起鶻落・d25316)が、事前に配られた資料に目を通す。
     都市伝説はオシレなオカマで、強力な催眠によって、どんなに地味な女性であっても、可愛らしく変身させてしまうようである。
     それは催眠の力によるものだが、それでも女性達にとっては、魔法そのもの。
     都市伝説を慕って、離れないのも無理はない。
    「別に何着ようが個人の自由だし、なんだって良いと思うけどねェ。服に着られても良いじゃない、その子が満足してるんならね」
     九条・雷(蒼雷・d01046)が、自分の考えを述べる。
     だが、まわりから見れば、明らかに浮いている格好。
     そのため、コソコソと周囲に陰口を叩かれ、人間不信になる事も。
     そう言った意味でブティックは、聖地。
     誰にも文句を言われる事なく、オシャレが出来るのだから、居座ってしまっても仕方のない事なのかも知れない。
    「これであるいはドン引きされない女装が出来るヤモ……」
     スティーブン・ゲルベル(怪人バーガーヘッド・d25355)が、目一杯オシャレ(女装)して、キラキラ状態のまま平然と入店した。
     入口に閉店の札が掛けられているものの、店には普通に入る事が出来た。
     何分経っても、何十分経っても……。
    「一見、無害そうな都市伝説ですが、この様子では何か裏がありそうですね。ブティックに住み着いてしまった女の子のご家族が心配されているでしょうから、速やかに灼滅しましょう」
     葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)が、険しい表情を浮かべる。
     だが、スティーブンが帰ってこない以上、迂闊な行動は自殺行為。
     故に、通常の手段とは異なる方法を用いて、ブティックに入る必要があった。
    「任せろ、模糊にいい案がある!」
     瞹昧・模糊(ダンボール老師・d23065)が、シュタッとダンボールの中に入る。
     こうやってダンボール箱の中に潜んでおれば、仲間達がピンチに陥ったとしても、すぐに助け出す事が出来る……はず。
    「……なるほど、ダンボールを被って潜入するのでございますね。隅の方にダンボールでいれば、きっと見つからないのでございます」
     翠川・朝日(ライジングブラックサン・d25148)が、納得した様子でダンボールの箱を被る。
     これでバッチリ、安心。絶対に見つからない。
     そのダンボールを三条院・榛(猿猴捉月・d14583)が意味もなくダンボールの封を硬めにしつつ台車に積み込んだ
    「どうもー、お荷物お届けに参りましたー、この辺でいいですかね?」
     そして、榛は台車を押しつつ、ブティックに入っていった。

    ●おしゃれ魔法、発動中
    「あらあら、ご苦労様。ハンコがないから、サインでいいわよね? あと荷物は倉庫に運んでおいて」
     都市伝説がクネクネしながら、榛の尻を撫でて、撫でて、撫でまわす。
     思わず声をあげて、都市伝説を殴りそうになったが、とりあえず我慢。
     表面上は笑顔を浮かべて、こめかみピクピク。
     よく見れば、まわりには可愛らしく着飾った女性達が……。
     しかも、ひとりにつき、一枚の全身鏡が置かれており、自分自身の姿を見て、ウットリとしていた。
    「皆さん、ご苦労様デスヨ」
     スティーブンが、元気よく手を振った。
     どうやら、都市伝説と優雅にティータイムを楽しんでいたようである。
    「あ、あのスカート可愛い……。やァん、あのトップスも良い感じィ。いいなァ、こういうとこ来ると買い物したくなっちゃう」
     雷が台車でダンボールを運びつつ、瞳をランランと輝かせる。
     どれもこれもオシャレで、可愛い!
     思わず試着したくなってしまうほど。
    (「……こうやってダンボールなら見つかる可能性はゼロでございますね。完璧な作戦……」)
     朝日がダンボールの中に潜んだまま息を殺す。
    (「こちらラビット、潜入に成功した。こちらラビット、指示を頼む。……なんて遊んでる場合じゃないか」)
     小兎が小さくコホンとした後、魂鎮めの風を使う。
     その途端、まわりにいた女性達が、崩れ落ちるようにして眠りについた。
    「あら、あらららら、どうして、みんな眠っちゃったの!?」
     都市伝説が驚いた様子で声を上げる。
     一体、何がどうして、こうなったのか、まったく理解する事が出来ない、分からない。
    「こんな事もあろうかと、すり替えておいたのさ!」
     榛がクールに笑って、ダンボール箱に視線を送る。
    「貴様の悪事、挫かせてもらう!」
     それに合わせて模糊が、ダンボール箱の中から颯爽と登場。
    「私こそ、わっふるの妖精! 桜井・華穂ですっ! とりあえず食えっ!」
     同じようにダンボール箱の中から現れた華穂が、都市伝説の口めがけてワッフルを叩き込む。
    「んご、んごごっ!」
     都市伝説は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
     だが、美味い。美味過ぎる!
    「とりあえず、ここで眠ってもらおうか」
     榛が眠りについた女性達を、部屋の隅まで運んでいく。
    「んまー、酷い。みんなでアタシの楽しみを邪魔しようって言うのね。だったら、イイワ。アナタ達をおしゃれにして、アタシなしでは生きられない体にしてあげる!」
     それと同時に都市伝説が魔法のステッキを振り回し、統弥達に対して魔法を掛けた。
    「こ、これは……」
     その途端、統弥の格好が少女チックに変化し、乙女要素が爆上げされた。
     しかも、統弥は元々可愛い系の童顔少年。
     そのため、『こんなに可愛い子が女の子のはずがない』状態になった。
    「可愛いですね」
     華穂もロリータ系の衣装に身を包み、全身鏡の前で可愛らしくポーズを決める。
    「ウフフ……、アタシに掛かれば、こんなモンよ。ただし、魔法の効果があるのは、この中だけ。さあ、アタシに従いなさい。だったら、永遠に美しく、可愛いままでいさせてあげる」
     都市伝説がパチンとウインクした。

    ●おしゃれなオカマ
    「……とは言え、こんな格好になってもなぁー……」
     榛が困った様子で、スカートをヒラヒラさせる。
     都市伝説の魔法(おそらく、催眠)によって、可愛らしく変身したものの、何やら違和感ありまくり。
     確かに、可愛い……。可愛いのだが、それを受け入れてしまうと、自分の中で何か大切なものが壊れてしまうような気がする。
    「それに、オカマのコーディネイターって世の中に溢れ過ぎてて、マンネリ化してるしね」
     雷が苦笑いを浮かべた。
    「ね、ねぇ、それって、どういう意味!? ま、まさか、アタシを殺すとか、そういう物騒な意味じゃない……わよね」
     都市伝説が怯えた様子で汗を流す。
    「分かっているのなら、話が早いね」
     小兎が都市伝説めがけて、光刃放出を使う。
    「うにゃーっ!?」
     続いて模糊がゴスロリドレス姿で、都市伝説に攻撃を仕掛けようとして、すってんころりん!
    「これは間違いなく、チャーンス!」
     その隙をつくようにして、都市伝説が全力ダッシュで逃げ出した。
    「逃げるやつは都市伝説だ! 逃げないやつは、よく訓練された都市伝説だ! ホントお洒落は地獄だぜー! フゥーハハハー!」
     それに気づいた華穂が高笑いを響かせ、都市伝説の逃げ道を塞ぐようにして、わっふるという名のマジックミサイルを撃ち込んだ。
    「ナルホド、でしたら、あれは間違いなく、都市伝説デスネ」
     スティーブンが妙に納得した様子で、ハンバーガービーム(ご当地ビーム)を放つ。
    「ちょ、ちょっと! それじゃ、どっちにしても、殺られるじゃない」
     都市伝説が涙目になって逃げだした。
    「これで終わりでございます」
     次の瞬間、朝日が都市伝説の行く手を阻み、黒死斬を発動させる。
     その一撃を食らった都市伝説が、全身から噴水のように大量の血を撒き散らし、断末魔をあげて消滅した。
    「やつもまた、わっふるの前に灼滅される運命だったのです……」
     都市伝説が消滅した後、華穂がどこか遠くを見つめる。
     その途端、都市伝説の催眠が解けたのか、まわりで眠っていた女性達の魔法も解けた。
    「もう少し穏やかなやり方なら、喜ぶ人が多かったのでしょうけどね」
     統弥が寂しげな表情を浮かべる。
     どちらにしても、都市伝説が使っていた魔法は、偽り。
     都合の悪い現実を上から絵具で塗りつぶしていたようなもの。
     そう言った意味でも、遅かれ早かれ、こうなる事は確実。
     だが、例え偽りであったとしても、美しく変身した自分の姿を見たのだから、それに近づく努力をする事だろう。
     そうする事で幻を現実に変える力を、彼女達は持っているのだから。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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