ノーラ・モーラ(自称異世界人・d22767)は、こんな噂を耳にした。
『傘を差していないと、傘を刺してくるおっさん系都市伝説が現れた』と……。
都市伝説は雨の日を選んで現れていたが、まわりが警戒し始めたため、晴れた日でも現れるようになったようである。
その事を知っている一般人は、晴れた日でも傘を警戒しており、なるべく差すようにしているようだが、相手は神出鬼没の都市伝説。
中には、都市伝説を恐れて警察に通報した者もいるようだが、そういう時に限って決まって現れず、狂言だと思われる事も、しばしば。
とは言え、傘さえ差していなければ、都市伝説が現れる事は確実。
ただし、事情を知らない一般人が、傘を携帯していない可能性もあるため、その事を踏まえた上で、行動しておくべきだろう。
都市伝説は傘をフェンシングのようについて攻撃を仕掛けてくるため、色々な意味で注意が必要である。
参加者 | |
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黒咬・昴(叢雲・d02294) |
天峰・結城(全方位戦術師・d02939) |
日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366) |
水無瀬・楸(蒼黒の片翼・d05569) |
新堂・辰人(夜闇の魔法戦士・d07100) |
ミスト・レインハート(輝心天刃・d15170) |
夜伽・夜音(トギカセ・d22134) |
ノーラ・モーラ(自称異世界人・d22767) |
●傘を刺せ!
「なんというか、色んな都市伝説がいるなぁ……。人の想像力が創り出すものには無限の可能性があるって事かな?」
ミスト・レインハート(輝心天刃・d15170)は、事前に配られた資料に目を通しつつ、都市伝説が確認された場所に向かっていた。
都市伝説は傘を差していない相手に対して、自らの傘を刺してくるらしく、被害者が多発しているようである。
「しかも、都市伝説って、こういう親父ギャグ風味が多いわよね。まぁ、はた迷惑極まりないし、さっくり始末しちゃいましょ」
黒咬・昴(叢雲・d02294)が、答えを返す。
おそらく、親父ギャグから広まった噂。
元が親父ギャグとは言え、性格は凶悪。
危険な存在である事は、間違いないだろう。
「傘を差さないと、傘を刺すか。なんかこうお笑い芸人のコントに出てきそうなシチュエーションだけど。……まぁ、都市伝説の定義としては正しいかな。こういう言葉遊び系都市伝説の発生プロセスとサイクルは、興味深いところがあるね……」
新堂・辰人(夜闇の魔法戦士・d07100)が、険しい表情を浮かべた。
その後、延々と考察を述べていったが、既に誰も聞いていない。
「誤字なのか、オヤジギャグなのか……。オヤジギャグと信じたいですが、誤字から都市伝説が生まれているとするなら……あまりに怖くて、これからお手紙とか書けなくなっちゃうのですよ!?」
日野森・翠(緩瀬の守り巫女・d03366)が、ガタブルと体を震わせた。
ほんの少し考えるだけでも、鳥肌が立ってしまうほど。
もしかすると、既にそういった都市伝説が生まれているかも知れない。あくまで可能性の話ではあるが……。
「ひょっとして、この噂……雨の日に喧嘩、もしくは殺傷事件でもあったのかねー? なんにしても傍迷惑なコトで」
水無瀬・楸(蒼黒の片翼・d05569)が、深い溜息を漏らす。
都市伝説がどういった噂から生まれたのかわからないが、どちらにしても厄介な存在である事に違いはない。
「もう夏だし、熱中症対策さんとかに日傘さん便利なんだけどなぁ。でも、何で刺してくるんだろうねぇ? 酔ってるさんとかなのかなぁ?」
夜伽・夜音(トギカセ・d22134)が、首を傾げる。
都市伝説がどういった目的をもって行動しているのか分からないが、噂の内容から考えてそうする事が当たり前なのだと思い込んでいる可能性が高かった。
「この様子だと、何も考えていないのです」
ノーラ・モーラ(自称異世界人・d22767)が、キッパリ、バッサリ!
都市伝説っぽいオッサンが、脳内で一刀両断。
その一言で瞬殺できそうな勢いである。
「小さな子供が傘でつついてくる事はありますけど、流石に刺すとなると限度を超えてますね。特に晴れている日なんて普通はささないでしょ」
天峰・結城(全方位戦術師・d02939)も、ツッコミを入れる。
だが、都市伝説にとって晴れていようが、雨が降っていようが、関係ない。
傘を差しているか、否かが、問題なのである。
「まあ、都市伝説が傘を差さない人を刺してくるなら、僕らは傘を差さないで行こう」
そう言って辰人が、堂々とした態度で歩き出す。
どちらにしても、ここは都市伝説のテリトリー内。
傘を差さずに歩いていれば、都市伝説の方から現れる事だろう。
●暑い日に傘
「こんにちは! ただいま日傘配布サービスやってます! よかったら、使ってください!」
昴が130%営業スマイルで、日傘を無料で配っていた。
だが、日傘に興味を持っている者は少なく、中には傘と勘違いして『雨も降っていないのに、いらん、いらん』と断る者もいた。
「あうぅ……直射日光さん熱いねぇ……」
夜音が日傘を差して、げんなりとする。
とにかく、暑い。シャレにならないほどに。
それが原因で水筒の中身は、ほとんど空。
しかも、傍にはコンビニも自販機もないため、待っているのは地獄である。
だからと言って、この場から離れてしまうと、都市伝説が現れた時に、対応する事が難しかった。
「ですが、このままだと都市伝説が現れませんね」
そう言って結城が、大量の日傘に視線を送る。
この日傘がある限り、都市伝説が現れる事はない。
その上、まわりの一般人が日傘を持っていかないため、都市伝説に襲われる可能性が高かった。
「キャーッ! 変質者よー!!」
昴が都市伝説の存在に気づいて、パニックテレパスを使う。
都市伝説は傘を差していないサラリーマンを蹴り倒し、心臓めがけて傘を突き刺そうとしていた。
だが、昴が大声を出した事で、都市伝説の動きが止まったため、サラリーマンが何度も転びながら逃げて行った。
「奴は傘を差している人は狙いません! 早くこれを取って遠くへ逃げてください!急いで!!」
それと同時にミストが日傘を掴み取り、一般人達に配っていく。
先程とは異なり、都市伝説が現れた事によって、緊急を要する事態。
そのため、日傘を受け取る事に、躊躇う者はいなかった。
「おいこら! こんな事をして、覚悟は出来ているんだろうなァ! お前ら、みんな傘で刺して、刺しまくってやる!」
都市伝説が不機嫌な様子で、傘をブンブンと振り回す。
怒り爆発、大爆発!
「傘をさす、と、傘でさす……ってダジャレ……いや、オヤジギャグの都市伝説さんですか!? あ、でも、おじさんですから、そこはいいのかな……? 悩みますですね」
翠が困った様子で首を傾げる。
オヤジ系都市伝説なので、一応アリ……アリな路線なのだろうか?
「そんな事はどうでもいいだろうが! 刺してやる。みんな、纏めて刺してやるゥ!」
都市伝説が殺気立った様子で傘を構えた。
「……都市伝説。俺は傘を差してないし、これ以降差す気もない。狙うなら一俺を狙うといい」
すぐさま、ミストが都市伝説の行く手を阻み、サウンドシャッターを使う。
「なるほど、覚悟は出来ているって訳か。……安心しろ。じわりじわりといたぶりながら、殺してやる!」
都市伝説が含みのある笑みを浮かべた。
「それ以前に、傘は差すものであって、刺すものじゃないわ!」
楸が都市伝説の死角に回り込む。
「俺からすれば同じようなモンだ!」
しかし、都市伝説は何も考えずに即答!
自分の考えに間違いはない、と言わんばかりに、堂々と胸を張っている。
「傘でちゃんばらごっこなのですか、おじさまは子供なのですねぇ」
ノーラが皮肉混じりに呟いた。
「そう言っていられるのも、いまのうちだ」
都市伝説がフンと鼻を鳴らして、攻撃を仕掛けていく。
「どうやら君は、道具の使い方を間違えているようだね。傘は本来刺すものではなく、差すものだよ。……おいで。君に、本来の『刺す』ための武器である槍の力を刻み込んであげよう」
その攻撃を素早い身のこなしでかわしつつ、ミストが都市伝説の注意を引いていく。
都市伝説はその事に全く気付かず、『な、なんで、当たらねえんだ』と叫びつつ、何度も傘を突き出してきた。
「さて、考えるのは終わり。しっかり灼滅していこうか。都市伝説だろうと傘だろうと切り裂いていくよ」
そう言って辰人がスレイヤーカードを解除した。
●傘
「へいへーい、傘を差さない事の何がいけないのですー?」
ノーラが傘をへし折りまくって、都市伝説を挑発する。
「そんな事、俺が知る訳ないだろ! 差さないから、刺すんじゃあ!」
都市伝説が逆ギレ気味に答えを返す。
噂から生まれた都市伝説にとって、理由など些細な事。
まるで食事をするかの如く、当たり前の事なのである。
強いて言えば、生きるため。
そうしなければいけないという気持ちに縛られているためである。
「訳が分かりませんね、本当に……」
結城がげんなりとした表情を浮かべて、夜霧隠れを発動させた。
その間も都市伝説が、俺様モードを全開中!
「おっさん、傘は正しく用法用量を守って使おっかー?」
それでも、楸が諭すようにして、都市伝説に語り掛けていく。
だが、都市伝説は完全に無視!
そんな事など知った事ではない、と言わんばかりに傘を突き出してきた。
「だったら、傘ごと粉砕してやるのですよー」
それと同時にマーラが都市伝説の傘を狙って、龍骨斬りを炸裂させた。
マーラの攻撃を食らって、都市伝説の傘がへし折れ、骨が剥き出し。
既に傘としての機能が失われた状態。
「ふっ……、甘いな」
しかし、都市伝説が傘を擦ると、あら不思議。
まるで形状記憶合金の如く、あっという間に傘が元通り。
「まあ、そう簡単に壊れる訳がないか」
ミストが残念そうに、都市伝説の傘に視線を送る。
おそらく、あの傘は都市伝説の命そのもの。
それ故に、通常の傘と比べて丈夫なようである。
「うわっはっはっはっ! 見たか! これが俺の力っ! 俺が存在している限り、傘は何度でも復活するのだ! しかも、この傘は俺の意思で自由自在に形を変え、容易に人を奪う事の出来る武器にもなる!」
都市伝説が高笑いを響かせ、傘についての説明をし始めた。
本来ならば、そんな事を語りつもりなどなかった。
だが、圧倒的な力の差を見せつけ、相手の戦意を根こそぎ削ぎ落とす方法としては、これが最適! 少なくとも、その時はそう思っていた。
「ちょっとうるさい。黙っていて」
夜音がドヤ顔の都市伝説にイラッとしつつ、制約の弾丸を撃ち込んだ。
「しっ、しまったあああああああああああああああ」
都市伝説はこの時ほど、自分の馬鹿さ加減を恥じた事はない。
何故、夜音達にトドメをささずに、延々と語り始めてしまったのか。
勝利を確信していたせいか。
それとも、自分の力を過信していたせいか。
どちらにしても、絶体絶命、大ピンチ!
「えーと……オラオラオラオラオラ……ダラッシャー!! ……だっけ?」
次の瞬間、スバルが一気に間合いを詰め、都市伝説に閃光百裂拳を叩き込む。
都市伝説は傘と一緒に宙を舞い、断末魔を響かせて消滅した。
「よっぽど自信があったんでしょうね、必ず自分が勝てるって」
翠が気まずい様子で汗を流す。
あの様子では、とっておきの隠し技を使うつもりでいたのだろう。
本来ならば、それを仕掛けるまで、待っているべきだったのかも知れないが、わざわざ危険であると分かっていて、放っておく事など出来ない。
「何だか都市伝説って、ホント訳が分かんないのが多いねー」
楸が疲れた様子で、溜息を漏らす。
結局、都市伝説が何をしたいのか分からなかった。
噂を流した張本人ですら、きちんと理由を考えていたのか、怪しいところ。
「とりあえず、傘とゴミを片付けてから帰ろうか」
そう言って辰人が辺りに散らばったゴミを拾うのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年7月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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