地味な光也の誕生日の盛り上げ方を考える会

    作者:西灰三

    ●学園祭の準備で忙しい最中、皆様どうお過ごしでしょうか。
     水藤・光也(闇払い・dn0098)は地味である。そんな旨の言葉を忙しそうな様子の有明・クロエ(中学生エクスブレイン・dn0027)は言った。
     曰く、一般人と間違われる。曰く、依頼に参加しても目立たない。曰く、参加したはずなのに置いて行かれそうになるなど。
    「とまあこのまま放っておくと誕生日まで忘れそうになりそうだから誕生日パーティくらいは、と」
     忘れ去られても本人はあまり気にし無さそうな気もしないでもない。いや、どちらにせよ目立たないだけで何か思っているのかも知れないけれど。
    「ん、そういうわけで、頑張ってね。あ、場所だけは空き教室を借りておいてから」
     投げた。灼滅者達に向かって。全力で。
    「とりあえず、本人には学食に来るようにしか伝えてないから。あとはなんかイイ感じに」
     自前で料理を持ち寄ってささやかな誕生日会をするもよし、このままドッキリに嵌めるもよし。このまま教室の片隅で相談してもいいだろう。いかんせん反応が読みにくい人間ではあるけども、だいたい一般人の反応を返してくれるはずだ。灼滅者である事を除けば。
    「普通にお茶会とかもいいと思うけどね。ボクも実はよく知らないし」
     これが馴染みのエクスブレインの台詞である。
    「というわけで後はおまかせ! それじゃボクは用事があるから!」
     そう言ってクロエは去っていった。とりあえず彼の誕生日は委ねられたらしい。果たしてどうしたものか。


    ■リプレイ

    ●それは何気ない学園の一日。
     学園の構内を水藤・光也(闇払い・dn0098)は歩いていた。それは馴染みのエクスブレインがそこで依頼の説明をすると言っていたからだ。
    「ええと……」
     指定された空き教室を探す。授業後に空き教室を指定しているあたり、それほど急を要する話では無いのだろうが、エクスブレインが集める以上何らかの事件なのだろう。普段使わない廊下を巡り当該の教室の前にたどり着くと彼は扉を開けた。
    「お帰りなさいませ、水藤様♪」
     そして閉めた。光也はまず自分の目を疑った、メイドがいたからではない。そんなのはこの学校では珍しくない。なんで教室の内装がファンタジー調になりつつ、しかも自分を出迎えたのか。それが問題だ。意を決して扉を再び開けてみる。
    「水藤さん、誕生日おめでとうございます」
     今度は先程のメイド服姿のミィナ・セレイユ(夢蛍・d27975)と、永星・にあ(紫氷・d24441)が出迎える。
    「……あ」
     ここでようやっと自分の誕生日である事を思い出す。去年もそうだったんじゃないだろうか。かのエクスブレインがこの教室を指定したのを思い出す。
    「あ、ありがとうございます」
    「有明さんは、ええと、逃げちゃったんですか?」
    「……多分、ここに私を連れてくるまでが仕事だと思ってたんじゃないんでしょうか。でもまさかここまで準備しているなんて」
    「こういうのはファーストインパクトが 大事なのなぁん」
     ミィナと光也が話しているとその隣から光也に向かって体当たりする影が。
    「……ん、インパクト(物理)なぁん?」
     そのまま影に押し倒される光也、その影は狼となった宇賀神・凜太郎(我夜ヲ追ウ者ナリ・d27561)でありすぐに人の姿になる。
    「光也さん、お誕生日おめでとうございます。私からのプレゼントを受け取ってください、ねっ!」
     背中に背負っていたパイを押し付けるように光也の顔面に投げつける凛太郎、更に両手にパイを取り出して彼は続ける。
    「お気に召してくださいましたか?味付けには自信があるんですよね」
     もっともそれが投げられることはなく、彼は教室の外へと追いやられた。一方的に誰かに何かをすると言うのは別に盛り上がらない故に。

     紅羽・流希(挑戦者・d10975)が穏やかな音色をウクレレで響かせる。その南国の音色に呼ばれるように真土・将太(高校生ご当地ヒーロー・d28857)が声をかける。
    「水藤くん、誕生日、おめでとう。これからの一年、実り多き年でありますように!」
    「ありがとうございます。すみません気を使わせてしまったみたいで」
     将太の出すサーフボード型のクッキーやたこせんべい、海苔羊羹を開きながら話をする二人。将太が自己紹介をしつつ軽く相談をする。
    「ボクは、この学園に来て、間もないんだけどね。もしよかったら、色々教えてよ? 誕生日会をどう盛り上げるかとか」
    「多分有明さんも言っていたと思いますけど、あんまり突飛な事をする必要はないと思います。それよりはいかに相手を尊重するかとか、そう言った部分を大切にしておけば大体の相手は喜んでくれると思いますよ」
     コーヒーを飲みながらご話していると常儀・文具(バトル鉛筆・d25406)がそのマグを見ていた。
    「それ、集めているコレクションのマグカップですか?」
     光也の手にあったのは陶製の青いマグカップ。それを持ち上げて彼は返す。
    「はい、修学旅行に行った時に買ってきました。学園にいると色々な所へ行くのでコレクションが集めやすいんです」
    「そうですよね! 僕もぬいぐるみを集めているので分かります!」
     そんな風に話していると文具がひとつの質問を光也に投げかける。
    「ところで、どんな動物が好きですか? 今度コレクションを交換しませんか?」
    「ナマケモノですかね。……いいですよ。それではまた今度に」
     二人の話を隣で聞いていたにあがはっと顔を上げる。
    「プレゼント……」
     にあごそごそと荷物をあさり一つの人形を取り出す。それは赤い和服を着た少女の人形であった。
    「試作品ですけども……。あ、えっと、安全面は大丈夫、です」
    「……あ、ありがとうございます」
     試作品? 安全面? 剣呑な言葉が出た事に反応しそうになり光也はぐっと言葉を飲み込んだ。
    「そして何とこの子、目が動いて、ずっと見つめてくるんですよ。目覚まし時計機能も付いています」
    「は、はい」
     どういう目の覚まし方なのかは聞かなかった。聞いてしまったら、きっと突っ込まざるを得ないだろうから。
    「じゃあアタシからは誕生日ケーキを」
     そう言って箱を持ってきたのは川﨑・紀里恵(純真有垢・d27259)である。彼女の隣には神道・史雄(ガリ勉擬きの戦闘狂・d27217)がいた。なぜだか分からないが彼は紀里恵を警戒しているらしい。
    「ちょっと待ってね、準備をするから」
     机の上に箱を起き広げていく紀里恵、なぜか最初からロウソクが立っていたりするがそれに気づく者はいない。誰も彼も誕生日といえばそれくらいのことはあるだろうと言うことだろう。さり気なく(紀里恵に言われたように)史雄は光也に近づき、ケーキの近くへと寄る。
    「お誕生日おめでとう!」
     言いつつ紀里恵はロウソクに火をつけ始める。
    「カウントするから火を消してね!」
     光也にそう声をかけ、少しずつ離れる紀里恵。光也はカウントに合わせてケーキへと顔を近づける。
    「5ー、4ー、3ー」
     ぼかん。……ケーキが破裂した。
    「ハッピーバースディ!!!」
     哀れそこには二人のメガネがクリームまみれになっていた。

    「……とりあえず汚れた服どうしましょう」
     体に付いたクリームを拭って光也は呟いた。
    「服を着替えたらどうでしょうか」
     すっと差し出された服を光也は受け取った。
    「ありがとうございます。……って何ですかこれは」
     服を広げれば女子高高校生制服と、なぜか三つ編みをまとめたウィッグ。差し出した大山田・小太郎(はボッチ力高い人・d20172)がチープなちょんまげカツラを被って言う。
    「誕生日おめでとうございます。私の水藤さんへの第一印象は、図書委員系女装が似合いそう。なので、一応コスプレ一式用意しましたが、着ます?」
     割りとどうでも良さそうな口調で彼は言う。同時に光也の手に両手持ちの斧が現れる。流希の弾く曲がデスメタル調になり弾けるように二人は追うものと追われるものとなる。
    「これって叩き落とすことになってるのかなぁん」
    「……え?」
     ミィナの呟きに史雄は天を仰いだ。……誕生日って、大変なものらしい。周りのケーキを片付けながら追跡劇を見て彼はそう思った。
     ただ、一つだけ言えるとするのなら、光也にとってあまりない賑やかな一日であった事だろう。そんな感じで彼の誕生日は過ぎていくのであった。

    作者:西灰三 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月28日
    難度:簡単
    参加:10人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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