黒装の暗殺者は『信』を得るために

    作者:叶エイジャ

     会いたい遇いたい逢いたい。
     自らの存在価値はあの方の役に立つこと――その信に背くことは許されない。
     おかっぱ髪をした、黒い和装の少女だった。その唇は動かずとも、思考は怨念執念となりて、同じ場所にわだかまる。
     信に背かないため、役に立つことを証明しなければならない。そのためには幾千、幾万の屍を積み上げて山を築き、河を染め、そして――
     あの方の信に背くことは許されない。
    『その想いが残留思念となったのですね』
    「……?」
    『私は『慈愛のコルネリウス』。大丈夫、私はあなたが見えています』
    「……」
    『私は傷つき、嘆く者を見捨てたりはしません』
     力が欲しい。力があれば信に背くことはない。
    「――わたし、は。まだだれも、殺してない」
     信に背かないためには、力を得て、
    「たくさん、たくさん、殺したい」
    「……プレスター・ジョン。この哀れな少女を、あなたの国に匿ってあげて」

    「慈愛のコルネリウスが、灼滅されたダークネスの残留思念に力を与えているみたいだね」
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は教室に灼滅者が集まった頃合いで、そう切り出した。
     力を与えられた残留思念はすぐに事件を起こすような事は無いが、放置するわけにはいかないだろう。
    「みんなには、コルネリウスが残留思念に呼びかけた時に乱入して、彼女の作戦を妨害して欲しいんだよ!」
     慈愛のコルネリウスは、強力なシャドウであるがゆえに、現実世界に出てくることは出来ない。事件現場にいるのは、幻のようなもので、戦闘力は皆無。彼女と戦うことはないだろう。
     だが、彼女から力を与えられたダークネスは別だ。灼滅者に敗れた記憶は怨讐の念となっており、戦闘は避けられない。
    「残留思念の正体はスキュラダークネス。先月灼滅された、予備八犬士の六六六人衆だよ」
     このダークネスは犬士の霊玉によって、誕生後の短い時間で膨大な力を手に入れる特性があった――が、そうなる前に灼滅できたため、残留思念も灼滅当時の戦闘力のままだ。当時の名残か犬士の霊玉のようなものが付着しているが、戦闘力はもう増えず、時間制限もない。
    「使うサイキックも同じだよ。六六六人衆のものと、鋼糸。手強いけど、十分灼滅できると思う」
     場所は山中の竹林で、夕刻に現れる。見た目は黒い和装の幼い少女だ。自己を癒すサイキックこそ持ち得ないが、それを補って余りある体力と、高度な殺人技芸を持っている点は変わらない。
     竹林の中はかなり薄暗く、光源が必要になるだろう。周囲の竹林は戦闘の支障にはならず、人も来ない場所だ。
    「コルネリウスって何を考えてるんだろうね?」
     慈愛の名の通りの行動をしているのか、それとも他に思惑があるのか。
    「厳しい戦いになるのは確実だから、気を付けてね!」
     夏は水分補給も大事だよ? と、カノンは仁左衛門から飲み物を取り出すのだった。


    参加者
    勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)
    アプリコット・ルター(甘色ドルチェ・d00579)
    アレックス・イルムイル(小学生シャドウハンター・d01916)
    一之瀬・祇鶴(リードオアダイ・d02609)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)
    豊穣・有紗(神凪・d19038)
    藤堂・恵理華(紫電灼刃・d20592)

    ■リプレイ


     遠くから鴉の声が聞こえた。高く伸びた竹を見上げれば、オレンジの空が小さく見える。
     竹林にわだかまる薄闇に、黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)は溶け込みそうだった。衣服は黒一色で、歩みと共に揺れる長髪も漆黒だ。
    「慈愛のコル……なんとかさん、余計なことをしてくれますね」
     無表情に掲げたランタンの光に、破壊され倒れたままの竹が照らされる。ここで起きた激しい戦闘の名残だ。これを為した敵をもう一度倒す……面倒なことこの上ない。
    「残留思念から強さをそのままに復活――厄介なシャドウだねぇ」
     月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)は道化めいた仕草で苦笑した。彼もまた夜色の背広で身を包んでいるので、銀髪と仮面だけが浮き上がって見える。
    「きっちりと倒して、プレスター・ジョンの国行きは中止願うとしようか」
    「その国も、ロクでもないダークネスばかりみたいだけど」と、豊穣・有紗(神凪・d19038)は巨大ソウルボードの所感を呟いた。「そーゆーのを匿うのが慈愛? それとも、やっぱり何か企んでいるのかな」
     首をひねる有紗。霊犬の夜叉丸は『足元注意!』と言いたげに、彼女の足を尻尾でぺちぺち叩いていた。
     声は唐突に聞こえた。
    『力を与えましょう。貴女の奥底に眠る願いに、我が慈愛を』
     灼滅者たちの視線の先、コルネリウスがいた。離れていても、ぼうと光るその身体ははっきり見える。消えゆくシャドウの姿に、藤堂・恵理華(紫電灼刃・d20592)は物憂い視線を向けた。
    「いい加減アレにも大人しくして貰いたいものですね」
     それはともかく、と彼女のジト目はコルネリウスと入れ替わりに現れた幼子へと移る。黒い着物に、死体のような白肌。感情の乏しい瞳は、灼滅者を捉えた直後から雄弁な殺気を放っている。その様子に恵理華は淡く嘆息した。
    「物凄くやる気みなぎってる所申し訳ありませんが……二度目の敗北を教えてあげるとしましょうか」
    「最早仕えるべき主もいないというのに、ここまでくると哀れにも思えてくるわ」
     淡々と告げる一之瀬・祇鶴(リードオアダイ・d02609)の紫瞳に、一瞬悲哀の光が灯る。どれだけ執念が強くとも、それが実ることはないのだ。冒頭時点で結末の分かった物語に等しい。
    「いっそ、残った思念も灼滅してあげたほうが、彼女にとっても救いかもしれないわね」
     そして灼滅しなければ、相手は六六六人衆。大量殺戮を犯す可能性は否定できない。アプリコット・ルター(甘色ドルチェ・d00579)は彼女と同じか、あるいは更に幼い外見である敵を見た。戸惑いは、ある。だが譲れぬ想いがあった。
    (お兄様、守って下さいね)
     傍らのビハインド、シェリオの存在に後押しされるように、自らの胸を押さえ震える鼓動を鎮めていく。望んでしたいわけではない。だが倒さなければならないのなら――
    「がんばり、ます」
     自らへの宣言と時を同じく、ダークネスが両手を掲げた。十指の間で鋼糸がサイキックの光に煌めく。纏う空気は鬼気迫るものだった。小柄な身体から発せられる圧力に、勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)は十字剣を抜いた。設置予定の光源を足で滑らせる。目は逸らせない。露草色の瞳は、少女の黒瞳に宿る感情を見据える。
    (散った暗殺者は信頼を望む、か)
     あてどなく彷徨う、手負いの獣じみた視線――覚えがある。みをきの思考は一瞬、過去へとんだ。
    「……来い、再び葬ろう」
    「……」
     少女は無言。かわりに鋼糸が、戦意が鎌首をもたげる。呼応して、アレックス・イルムイル(小学生シャドウハンター・d01916)は槍を構えた。曇りなき銀の騎士槍に込めるのは恐怖を打ち払う勇気と、静かにくゆらせる闘志だ。
    「かならず、とめてみせます」
     短くアレックスが決意を告げる。
     そのとき偶然、頭上から笹の葉が落ちてきた。
     ダークネスと灼滅者、双方の間にくるくると舞う葉が、寸断される。

     刻まれた葉の向こうから疾るのは、極細の凶刃だ。
     少女が振るう鋼糸の軌跡を、光源と感覚を頼りに灼滅者たちは駆け出し――縫うように避けながら包囲網を作り上げる。先行したみをきが十字剣を薙ぎ、鋼糸を寸断、もしくは弾き返す。剣持つ手とは反対の手から障壁が形成され、盾状のエネルギーは敵の腕を掠める。少女が目を見開いた。
    「――!」
     鋼糸が縦横に疾った。
     激しく踊る指に合わせ、空気の裂けるヒュッ、という音が断続的に耳朶を打つ。周囲の竹に巻きついた糸は更に伸び、クモの巣のように少女と前衛の灼滅者たちを囲んだ。
    「なるほど、結界糸だね」
     巴が糸に触れ、切れて血のにじんだ指をみやる。まともにぶつかればタダでは済まず、得物の取り扱いも牽制された。だが仮面に隠れた巴の表情に、いささかも動じた様子はない。芝居がかった仕草で肩をすくめる。
    「さて……遊ぼう、僕と」
     地を蹴った彼の姿は、少女へと瞬時に肉薄。その槍が螺旋を紡ぎ、繰り出された刺突が暗殺者の傷を増やす。距離を取る相手に巴の槍から氷柱が投じられるが、鋼の糸に砕かれ氷塊となる。
    「……いきます」
     その氷塊の影から、アレックスが銀槍を放った。即座に糸が刃へ巻きつき絡めとられるが、アレックスはそのまま想念の力を発動。闇夜に濡れた弾丸を解き放つ。
    「……!」
     至近距離からのサイキックを、ダークネスは中空で身体をひねってかわす。アレックスは迷うことなく退いた。寸前までいた空間が引き裂かれる。左右から打ち込まれる糸刃の猛襲を、銀の槍が打ち払っていく。
     ダークネスの機動力は高かった。連携を駆使して迫ることはできるが――
    「やや攻撃があてづらいですね。ウザいです」
     そういう恵理華も、スナイパーという立ち位置でなければ苦しい命中率だった。彼女の背から、一房違う髪と同じ赤色の炎が噴出する。翼と化した炎は後衛陣に破魔の力を与え、消えていく。
    「それっ」
     加護を得た有紗が、縛霊手から霊力の縛鎖を解き放った。霊網はたちまち寸刻みにされるが、ダークネスの着物に絡み付いた部分はその動きを制限する。少女が跳び上がり、竹林に糸の梁を巡らせ着地した。その姿を有紗のライトが追う。
    「夜叉丸、お願い!」
     応じる声は暗殺者の背後。霊犬の咥えた刀は受け止めた少女を突き飛ばし、糸の足場を斬った。降り立った敵影に、祇鶴は駆け寄りながら眼鏡を外した。
    「さぁ、終わりを始めましょうか」
     懐から取り出したカードが解放の言葉に反応した時には、その腕に巨大な杭打ち機が顕現している。
    「思念のままでは感覚もなかったでしょう? 痛覚を嫌というほど味あわせてあげるわ」
     命中率、約七割。不足分の三割を確実に埋めるべく、突き出された杭は最短経路を押し通る。
     その時、祇鶴の視界に無数の糸が現れた。旋回する切っ先と鋼糸がぶつかり、火花を散らす。ダークネスに結界糸を利用され、バベルブレイカーは進路を阻まれていた。糸は祇鶴の身体をも掠め、朱に彩られる。
    「治療を!」
     糸をシェリオの剣が受け止め、祇鶴と入れ替わりに黒装の少女を追撃する。アプリコットはギターを鳴らした。旋律に宿るサイキックが傷ついた者を癒し、戦意を高めて糸の威圧をくじく。
    (私は強くなる。守るために――)
     守るべき時に護れなければ、存在する意味がない。不安を自ら払拭すべく、彼女の身から魔力が溢れだし、霧となっていった。
    「以前倒れた時の苦しみを、思い出すといいです」
     霧に気を取られたダークネスの隙を突き、璃羽が影を放った。影は目標を飲み込み、まろび出てきた少女の眉間が歪む。鋭いまなじりが璃羽を見据えた。
    「……殺す」
    「無理ですし、させません」
     少女の、もう伸びることはないだろうおかっぱ髪――二年前の彼女の髪型だ――を見ながら、璃羽は断言する。
    「スキュラさんには何の感情もありませんが、その思念、きっちり根底から消し去って終わらせます」
     舌戦とはならなかった。再び口を閉ざしたダークネスから殺意が膨れ上がり、糸が舞った。


     竹林の天井に見えていた夕空は、いつしか昏い色へと変わっていた。
     剣戟の音は、まだ鳴りやんでいない。むしろいっそう激しく響き渡る。璃羽の制約の魔法弾を、巴の閃光の拳の猛攻を、ダークネスの鋼糸が凌ぎきっていた。
    「そろそろ本気でウザくなってきましたね」
     レーヴァテインの炎を日本刀に宿し、恵理華が斬り込む。反応しようとした六六六人衆が鋼糸を放とうとして――不意に動きを止めた。麻痺したその身体に火の斬撃が叩き込まれ、アレックスが拳の接近戦を仕掛ける。打撃音とともにダークネスが吹き飛んだ。
    「貴女のその妄念、消し去らせてもらうわ」
     軽やかに揺れた祇鶴の手から、サイキックの光が爆発した。長く伸びあがった光は刃となって、迎撃に投じられた鋼糸の群れを打ち払う。祇鶴はサイキックの光刃で、黒装のダークネスを斬り下げた。
     手応えは、十分。しかし一連の行動を受けてなお、黒装の少女は疲弊した様相少なく、鋼糸を放つ。後衛を襲う糸の奔流を防ごうとして、夜叉丸とシェリオが極細刃の嵐に巻き込まれた。
    「……お兄様!」
     限界に達したビハインドが片膝をつき、消滅する。アプリコットは一瞬顔を歪め、しかしダークネスを真っ直ぐに見据える。そんな彼女に少女は糸を構え――影の触手に拘束された。有紗の影縛りが敵の機動力をさらに減じさせ、そこに流星を宿した蹴りをみをきが放つ。地面を削って後退した少女は重力に捕らわれ、その顔に苛立ちの色を見せた。
     ここに来て、メンバー全員の攻撃が当てやすくなってきた。
     鏖殺領域によるジャマー能力。これを打ち砕く術は十分な半面、鋼糸の威圧への対応が遅れた。連携や運が活きなかった面もあるが、個々のサイキックの当てやすさにばらつきが出たため、耐久力の高いダークネスに確実なダメージを与えられる者が減じてしまった。戦いは長期戦となりつつある。
     アレックスや璃羽のジャマー効果、燃焼や凍結といった効果が活きる一方、ダークネスとの一撃差は、アプリコットや個々のヒールサイキックでカバーしきれない傷を増やしていく。
     黒装の少女も灼滅者たちの防具属性上、押し切ることはできない。
     現状は明確な優劣なし。すなわち――互いに殺されうる間合いだ。

     薄い薄い糸の刃が、幾度目かの斬撃を巻き起こす。周囲の竹ごと、狙われた前衛が切り刻まれる
    「く……」
     体力の限界に、みをきが崩れ落ちる。彼の視界で、彼によく似たビハインドや、夜叉丸も消滅の時を迎えていた。
    (信を得られなかった者の末路、か)
     ダークネスの攻撃には狂気じみた念を感じる。消滅の危機に瀕して退こうとしないのは、ひとえに誰かを殺めるため。そうすることで『信』を得るため。
     その行為は、もはや相手が存在するか否かなど関係ないのかもしれない。
    「俺だって」
     たったひとりの信頼を 得たかった。
     爆発的な感情がみをきを立たせ、少女の前へと進ませた。振り下ろした十字剣と、より合わさった鋼糸の剣が斬り結ぶ。火花散る拮抗は一瞬、白光を纏う刃が鋼を両断し、ダークネスの身体へと吸い込まれていく。
    「させません」
     よろめきながら反撃に移ろうとした少女に恵理華が魔杖を叩きこむ。
    「……まだ、しねない」
     六六六人衆の口から、声が紡がれた。
    「まだ、だれも、殺してない」
     強迫観念にも似たその言葉が風になる。
     空を裂く音は、恵理華の装束を朱に染める。と思った時には、その黒衣はアレックスの頭上にある。
    「――!」
     息を呑む暇もなく、叩き込まれる極細の刃――アレックスの胸元にスートが輝いた。銀の槍が霞み、鋼とぶつかり合う。
    「僕も混ざろう」
     昏いオーラを纏った巴が、漆黒の槍を突き出す。悪鬼どもよ、喚き叫べ――銀と黒の奔流に、祇鶴のバベルブレイカーが混ざり、撃ち込まれる鋼糸との間に朱を添える。
     赤い色はダークネスのものだった。同時に、アレックスや巴、祇鶴のものでもある。刃の応酬に黒装が咆哮を上げた。
    「――!」
     感情を露わにしたダークネスが爆発的なサイキックを発し、翻った糸が三人へと迸る。衝撃と続く糸の斬撃に、巴を除く二人が意識を手放した。
    「皆を、ころさせは、しない……!」
     止めを刺そうとする暗殺者に、アプリコットの赤の逆十字が喰い込んだ。戦闘不能者を庇って前に出――そこで彼女は地面に倒れた。
    「……っ!」
     足に鋼糸が巻きついていた。気付いた時には少女がのしかかるようにしてアプリコットの首に手を伸ばしていた。両手の間に凶器の線が光る。顕現させた剣と糸が交差する。
    「じゃあ、お前が死ねばいい」
    「……ぁ」
     間近で発せられる殺意と狂気。ダークネスの膂力が剣を押し込み、首筋に糸が近づいていく。
     鮮血が舞った。地面まで落ちた少女の両手が赤く染まり、アプリコットの頭部は目を見開いたまま、右方向へ転がる。

    「――ぇ?」
     右を向いたアプリコットの視線の先、ダークネスは傷ついた両手をひきずる。その目は死角からリングスラッシャーを放った有紗を睨んでいた。
    「ふぅ、危なかったぁ」
     八重歯を見せて安堵する有紗の横から、璃羽が仄暗い想念を具現化させた。
    「これで、終わりです」
     無表情の宣告とともに、漆黒の弾丸は今度こそ少女を穿つ。
    「……様」
     聞こえた呟きは、なんだったのか。
    「……い」
     僅かに紡いだ声も不明瞭のまま、六六六人衆は光の粒子となって消えていった。

     重傷者こそいないが、全員が戦闘不能か数歩手前――際どい戦いだった。
    「血を、流しすぎました」
     地面でぐたーっと横たわる恵理華。コルネリウスの手掛かりがないか見回っていたアレックスは首を横に振った。幻と消え、少女も淡い光となって消えた。あるのは戦闘の名残だけだ。
    「さようなら、名も無きダークネス――というところかしらね」
     消滅した跡を見つめ、祇鶴は眼鏡をかけ直す。アプリコットがタンポポの花を添えた。
    「蘇らせて……何か、するんでしょうか」
     答える者はない。あったかもしれない目論見を防いだ。復活した相手を灼滅できた。それが事実で、それしか今は解らない。
    「――おやすみ、だね。服のセンスは悪くなかったんだが」
     巴は飄々と、どこまで本気かわからない言葉を口にする。自然と璃羽がうなずいていた。
    「疲れたので、あとで辛い物でも食べたいですね」
     璃羽の言葉に、恵理華が複雑な表情をした。のっそりと起き上がり、帰路を歩み始める。
    (もうゆっくり休め、不殺の暗殺者)
     同じく歩き出しながら、みをきは願う。せめて彼方では信を得られるように――と。
     いつの間にか、夜はその帳を深く降ろしていた。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年7月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ