7月20日と21日の2日間にわたって開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストなどで、とても盛り上がった学園祭。
しかし、その学園祭も、とうとう終わりを迎えてしまった。
だが、学園祭の夜はこれから。
最後にみんなで楽しく打ち上げをしよう!
祭りの名残を残すような喧騒に包まれた校舎の廊下で、あなたは宮乃・戒(高校生エクスブレイン・dn0178)が1人歩いていくところに出会った。
話を聞いてみると、なんでも学園のプールが特別に解放されているらしい。
「……で、僕はせっかくだから監視員を引き受けたんだ。とはいえ、皆の方が身体能力も高いし、念のために見守るだけなんだけど」
武蔵坂学園のプールは天候に左右されない完全な屋内型だ。天井は一面のガラス張りで、空がよく見える。
暮れていく空の下、祭りの余韻を浮かべたプールは、学生達のどんな表情を見せてくれるだろう?
コンテスト用の水着の感想を言い合ったり、誰かを誘って思いっきり遊んで騒いだり。
水に浮かんで静かに空を眺める……なんていうのも、きっと昼間の暑さに疲れた体を癒してくれる。
「あ、プールサイドで食べるのであれば、飲食物の持ち込みも可能だよ。ただし、ゴミはきちんと持ち帰ってね」
手元の書類をぱらぱらめくりながら、戒はそう教えてくれた。
「それじゃ、僕はもう行くね。……よかったら、君も来ないかい?」
軽く手を振って、戒はプールの方向へと消えていく。
どうしようか、と。あなたは少しだけ考える。
学園祭は終わってしまったけれど――夜は、まだこれからだから。
●
祭りの熱気冷めやらず、プールは大勢の生徒達で賑わっていた。
「……剣冶くんー?」
呼ぶ声で目を覚ませば、ガラス越しに見える空は赤く。
学園祭をすっぽかし、ずっとプールサイドで眠っていたらしい。
傍らには、しょんぼりした顔のなお。きっと、剣冶を探していたのだ。
青ざめた顔で狸寝入りを決め込むも。
「お疲れですかねぇ……?」
優しく頭を撫でてくれるなおを、剣冶は堪らず抱きしめ。
「ごめんね。……今日は、ずっとそばに居ようね」
「今からの時間を一緒にいていただければ、それでじゅうぶん嬉しいですよぉ」
ふわ、と頬赤らめ、なおはこくんと頷いた。
智優利と達郎はすっかり2人だけの世界。
「はい、店長あーん♪」
「人前ってのはなかなか……あ、あーん」
フルーツ盛りからスターフルーツを差し出す智優利へ、顔を赤らめつつも達郎はぱくり。
お返しにと差し出せば、それはもう美味しそうに、悪戯っぽく食べる智優利。
と、不意に智優利はスターフルーツを咥え。
「……ん♪」
流石に達郎も一瞬周囲を気にしたが。
顔を赤らめながらも応じた彼を、智優利はぎゅうっと抱きしめた。
括とつばさはのんびりお喋り。
「花ちゃんの水着、青いお花柄、すごく綺麗だねっ」
「ふふー、ありがと! 遊佐サンの水兵サンも、すっごくかわいいよー」
帽子も可愛いっ、と笑う括。2人で遊ぶのは初めてで、嬉しくて。
それはつばさも同じ。そわそわと足元の水を蹴り上げたら。
「ふわっ!?」
驚いた括につばさが笑って、解けた緊張。
「今度、この水着着て海行こうよー!」
「うん。海じゃなくても、お出かけしたい。……ね、つばさちゃん」
――初めて名前で呼んでくれた、と。
とびっきりの笑顔で頷くつばさに、括は思わず赤面した。
並んで座る箱庭ラボ。
翡翠の水着は緑のベアトップにデニムのショートパンツ。青いビキニに長いパレオ、まとめ髪の律花を見つめ。
「大人っぽくて素敵……今度、御揃いの水着とか着てみたいです♪」
ありがと、と律花は微笑。
「学園祭、結構暑かったわよね。色々回ったりした?」
「俺は言う程回れていないな」
と、青のトランクスに黒いシャツを羽織る春翔。
「ワタシも殆ど回れなかったわねー」
答える叡の水着は黒地に金糸の水仙柄。藍色のパーカー羽織り、ゆったり笑んで。
「来年は律花、一緒に回る? 春翔との時間は取らないようにするからさ」
「みんなでゲームに挑戦するのも楽しそうです」
お邪魔はしませんから♪ と笑う翡翠。
「え、全部まわんのか!?」
監視員の戒に笑顔で注意されつつ、良太は水面に浮き沈み。4人の話は曖昧に聞き。
「事前に作戦練らねぇと無理だな……春翔、任せた」
「まあ、次は皆で回れば楽しくなるだろう」
苦笑しつつ春翔はガラス越しに空見上げ、頬染める律花も。
「こ、これで花火とか上がれば最高なんだけどね」
「ちらと見えたりしないかしら。あ、牛乳寒天(蜜柑入り)作ったわよ、食べる?」
「あっ、それじゃあアイスとって来ますねー!」
叡と翡翠は手際よく用意して。
「……また来年、みんなでな」
良太は、名残惜しむように呟いた。
腰掛ける逢紗はコンテスト用に新調した水着姿。
不意に射す影はレニー。はい、とソフトドリンク缶を手渡す。
冷たい感触。揺れる水面。
――学園祭中は忙しくて、話す暇もなかったから。
「きれいで、よく似合っているよ。コンテスト結果がどうあれ、僕にとっては逢紗が一位だ」
「ふふ、いくつもの投票より……その言葉が一番嬉しいものね」
屈託なく微笑む逢紗へ、レニーも微笑を返す。
足だけを水に浸し、並んで座る姫歌と蕾羅。
「えと、たまには髪型変えてみたの」
「折角ツインテールにしたのにお揃いじゃなくなっちゃいましたねぇ~」
と、姫歌はぼろぼろ泣き出して。
「冗談ですよぉ~」
蕾羅は慌てて頭をなでなで。やがて涙が止まれば、頬を優しく摘まみ。
「わたしは姫が大好きですからねぇ~」
不意にぎゅう、と抱きしめられる。
驚き頬を染めつつも、姫歌はその温もりに身を任せた。
揺らす足、揺れる水面。
ふと仁恵が振り向けば、面倒そうに恢が見下ろし。
「……どうして1人分なんですか」
「メールに書いてなかったから。飲む?」
差し出されたブラックコーヒーに手を伸ばしかけて、止める。飲めない。
「今日はおめでとうさんでしたよー、にえが選んだかいがありましたね!」
「……そこについては感謝してやってもいいけど」
互いに入賞したとはいえ、恢には微妙な想いが滲み。
「祭りが終わるのは、ほんの少し寂しいね」
再び差し出されたコーヒーには、甘く白い渦が巻く。
けれど、やっぱり少し苦い。
「そっちもおめでとう」
ちびちびと飲み始めた仁恵へ、一言だけ。
「ん、ありがとです」
仲良しクラスメイトの3人はコンテスト用に新調した水着姿。
小枝子のビーチボール片手に、人の少ない場所へ。
「じゃあいっくよー! えーい!」
「よし、女子的友情輪廻の球繋ぎアルよー!」
小枝子が元気よく飛ばしたボールを、中華風の水着でノリノリな璃依がトス、奈那へと繋ぐも。
「わぁ、二人とも上手です! ……え、ひゃっ!?」
「あれ。ちょと高すぎたアルかーって、大丈夫かナナ!?」
奈那はボールを打ち返すと共に尻餅。璃依が慌てて手を差し伸べる。
気付けば空も暗くなり始めて。
陽が沈みきるまでの楽しい時間、ずっと続いたらいいのになぁ――と、小枝子は。
「学園祭楽しかったねっ! えへへ、わたし2人に会えて本当に良かったよ!」
「はい! また一緒に遊びましょうね」
頷く奈那。楽しい時間は過ぎるのも早いけれど。
「寂しくなる必要ないよな。これからもたくさんの思い出を紡げるんだから。な♪」
璃依の言葉に、笑顔が花咲く。
真火と情は涼しくボール遊び中。
「スパイクとかキメられたらかっこいいんだけどねー」
「それは……うまく受けられるか自信ありませんが」
滑らないよう気を付けて、のんびりラリーを楽しんだら、持ち込んだ飲食物で乾杯。
真火からは葡萄ジュースを2種類、ワイングラスへ注ぎ。情の用意した軽食をつまみながら。
「楽しかったですけど、終わるのは寂しくもありますね」
「僕、去年は参加できなかったんだけど、惜しいことしたなぁ」
でも、その分は来年楽しめばいいよね、と。2人、ひとときを味わう。
差し出された手を繋ぎ。プールサイドで味わうのは、戀お手製の水まんじゅうと水羊羹。
「クラブの先輩に教わったんだ。ちゃーんと味わってよ?」
大切そうに食べる徹のツインテールを戀は優しく撫でる。
「とっても可愛いよ」
徹が満面の笑みを浮かべるのは、そのために練習したから。
と、不意に更衣室から現れる人影。
意気揚々と立つかの子とは対照的に、リュシールはもじもじと体を隠す。
「も~。水着はみんな一緒だよ☆」
「でも、やっぱり恥ずかしくて」
なので今年はコンテストにも未出場。
「それは来年、超せくしーな格好で出場するための準備でしょ☆」
「せ、せくしー!?」
赤面するリュシールは、すぐ傍に徹達を見つけ。
「あ、そのリボン、あの時の」
手を振るかの子の横、リュシールの言葉が嬉しくて徹はひと回り。
「一寸泳ぎませんか? お祭りの熱がまだ冷めなくて」
「うっ……泳ぎはあまり得意じゃないんだよう」
50メートル全力勝負。たちまち離されるかの子とは裏腹、リュシールは見事泳ぎ切り、見守る2人へ手を振り返す。
「せっかくだし……泳いで行こっか?」
「そうですね、僕達も!」
戀と徹も水の中。
今年の夏は一度きり。終わる寂しさが吹き飛ぶほど楽しもう。
いつもの白い帽子とパーカーを着て、下は淡い蒼のビキニ姿。
フィオレンツィアの水着を晴夜は目に焼き付けるように眺める。
誘われ、揺れるビーチボール。次に差し出されたのは水鉄砲が2丁。
「次はサバゲーよ!」
昼食賭けて勝負を挑むも、遊ぶうちにどうでもよくなり。
「俺の負けっすね。後で奢るっすよ、フィオ」
やがて決する勝敗。不意打ち気味に、微笑する晴夜に頭を撫でられて。
「……ふにゃん」
先ほどまでの強気が一転、フィオレンツィアの頬が赤く染まった。
桃琴とさちこは楽しそうに水遊び。
「さちちゃんの水着、とってもとっても可愛い! 胸のリボンいいなぁ♪」
「ももちゃんのもかわいくって、せくしー!」
みんなの水着もステキだったね! と声合わせはしゃいで。
プールサイドでごろごろする霊犬へ悪戯っぽく水を掛ければ、赤い水面が揺らめく。
「桃、夏休みはいっぱい泳ぎたいな! 拳法もちょっと上手くなりたい!」
「けんぽう! かっくいー! さちはね、海と、お祭りと~」
あ、とさちこは声を上げて。
「ももちゃんとこうやって遊んだりも、いっぱいできたらいいなあ!」
うん! と桃琴も頷き。
「二学期もまた遊ぼうねっ!」
StarGazerの4人は水中バレーの準備中。
「プールでのんびりと……って流れにはならないよね、この面子だし!」
「銀河ちゃん。あのセクハラ女が何かしでかしそうになったら、容赦なく顔面にスパイクするわよ」
物騒な会話を繰り広げる銀河と夜桜。
「結衣奈! 身長150超えのじつりきって奴を見せてやりましょう!」
凰呀から邪な気配を感じつつも、結衣奈はぶんぶん首を振り。
「まあまあ。折角みんなで来たんだし思いっきり楽しんでいこうね~!」
試合が始まるや否や、凰呀は銀河の顔面狙い。身長差もあり一方的な展開が続くが。
「銀河ちゃん! 危険を感じたら潜って~!!」
謝る結衣奈の背後、迫る凰呀。
「夜桜、お願い!」
「任せて! 脳筋の力を見せてあげるわ!」
銀河のトスから夜桜の強烈なアタックが決まり、見事勝利!
「それじゃ、勝敗も決まったことだし……」
が、真っ先に水から上がる凰呀の手にはカメラ。
結衣奈のジト目も余所に、撮影音が鳴り響く。
「暁の水着とか動悸息切れモンなんですけど……」
「……ねぇ優奈? 思ってること、ぜーんぶ口に出てるわよ」
もっと近くで見る? と苦笑する暁に、優奈は顔を赤くして水の中へ。
火照りが冷めれば悪戯っぽく見上げ、誘うフリして引き込んだ。
得意げに笑う優奈を、けれどお見通しとばかりに。
「さ、お返し」
水鉄砲の隙間を縫うように、少しずつ距離を縮める暁。
「って、あれ? 捕まった?」
潜って逃げようとしても――逃がしてあげない。
戸惑う優奈を見つめ、暁は楽しそうに笑みを零す。
四季彩の3人はプールの中で水の掛け合い。
お団子髪の輝乃は浮き輪の中、お面を付け、水鉄砲のハンドガンを放ち。
彩華も大きな水鉄砲で反撃。腰のパレオが華やかに揺らめく。
つんと見守る京香も、水が掛かれば連射式の水鉄砲で猛烈な反撃だ。
「そっちがその気なら……って、ちょ!」
「あはは、ごめんごめん!」
夢中で遊ぶうち、彩華の反撃で輝乃が落ちるも無事に水中呼吸。
「彩兄さんも京香も、水着似合っているね」
「ふふふ、この水着気に入ってるんだよ、って笑われてる!?」
浮き輪に戻った輝乃は苦笑交じり。違和感がないから仕方ない。
「京香は、大人っぽいね」
「そ、そう? ……ありがと」
ふい、と視線を逸らし、京香は頬を染めて。口元に浮かぶのは微笑。
2人を見つめ、彩華も満面の笑み。
来年も、こうして楽しく打ち上げが出来れば、と、願う。
水着姿の依子を直視できず、水へ沈む篠介。
「そういや、もう水は平気なのか?」
「ん、底が見えるぐらいのは」
あの夜から随分マシで、と頷く依子。
「それに……篠介君の手があるともっと平気」
冷たい水とは裏腹、指先は熱く。互いに微笑する頬の赤さは暮れる空のせい?
「……ね、何考えてた?」
「依子のこと」
不意の質問に口からは素直な想いが漏れて。
時間が止まるような錯覚。篠介の手を引いて、依子は。
「――」
2人だけに許された言葉を、囁く。
正流と律希は手を繋ぎ水の中へ。
ゆったり泳げば、まるで人魚のようにパレオがひらひら揺れる。
と、不意に律希の姿が消えて。
慌てて潜れば、正流の唇へ温かな感触。
「人魚からの労いのキスですよ、逞しい王子様」
驚きと共に湧き上がる喜び。顔を赤らめ逃げる律希はさながら人魚姫。
少しだけ強引に水中で抱き留め、正流はゴーグル外し、素顔で口付けて。
「律希と一緒なら……泡となって消えるのも悪くないです」
ゆっくりと浮上しつつ、甘く囁いた。
ぷかぷか、浮き輪の中で揺られる十萌。
「水着似合ってる。可愛い」
フリルの付いた白いセパレートの水着に惹かれ、零れる紗玖夜の本音。十萌の頬が朱に染まる。
「来年はコンテストに出たら良いのに」
「……くー君が、一緒なら」
「俺も? 十萌となら喜んで。……それから」
――来年は一緒に見て回りたいな。
耳元で囁けば、十萌ははにかむように笑う。
「なあ、水中から見上げる空って綺麗なんだ」
手を引いて誘えば、水中から見上げる空は揺らめき。
(「……きれい」)
うっとりと瞳閉じる十萌の唇へ、不意に柔らかな感触が触れた。
「こんなに遅い時間にプールに来るのは初めてだな……」
ぽつりと華流。隣では藍花が耳や尻尾が出ても大丈夫か、と水着を念入りに確認中。弱々しく頷いた瞬間。
「六角ー! 華流ー! 藍花ー!」
気付いた時には水の中。赤音が藍花と華流を抱き、プールに飛び込んだのだ。
プールサイドに腰掛ける螺旋までも引きずり込まれ。
「っしゃあああっ!」
「……仕方ありませんね」
勝利の(?)雄叫び上げる赤音に螺旋が苦笑。
「せっかくだし、泳ぎ勝負と行こうか? ……ビリが明日の昼食奢りで」
「いいよ! じゃあマジ勝負ってことで……不意打ちっ!」
「え、えぇっ!?」
華流の提案に突然泳ぎ始める赤音。藍花も慌てて泳ぎ出すも――犬かきだ。しかも早い。
吹き出し沈む華流。疲れの見える赤音。藍花はぐんぐん速さを増し、彼女を応援しつつ泳ぐ螺旋は。
「……あ、これ自分が昼おごりのパターンですね」
終わったら、のんびり遊んで。
監視員席に座り、ビハインドは4人を見守る。
やがて水面へ映る空は藍色に滲んでいく。
冥は貴明と2人、プールサイドに腰掛けて静かに過ごしていた。
足を動かせば、冷たい波が生まれ。
「こんな時間も……悪くは、無いかな。うん」
ぴったりと寄り添い、水面に浮かぶ命とレナータ。
離れないように互いの手を背へ回し、見上げるガラス越しの夜空。
「星、綺麗だね~」
命の言葉にこくんと頷き。
「……温かいの」
冷たい水と、互いの体温に触れて。
隣にいる時だけ、生きていると実感できる――。
「……ずっと……」
レナータの言葉はそこで途切れたけれど。
「……うん、ずっと、一緒♪」
ぺと、と頬をくっつけたレナータへ、命も笑顔でくっついた。
作者:悠久 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月5日
難度:簡単
参加:53人
結果:成功!
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