暑い。都市のうだるような夏、外はどこに行っても暑気から逃れられない。
どこか涼しい所に避難したい。そんな都会人のオアシス。それはコンビニ。
冷えた空気を吸い込み、ジュースやアイスをたしなむ、やすらぎの楽園、コンビニ。
そのコンビニのひとつが、今、危機にさらされていた……!
「ンッホホ!」
「ンホホ!」
そこは、コンビニとは思えない熱気に満ちていた。
陳列棚はジュースの冷蔵庫のある四隅に追いやられ、真ん中にできた空間には、なんと焚火が燃えている。暑すぎる。
焚火を取り囲むのは7人の人影。6人が男で、1人が女。
彼らは一様に現代的な洋服を脱ぎ去り、「おにぎり100円」などと描かれた布で腰を覆っている。紅一点の若い女性は、スナック菓子やクッキーの包装紙をつなげたモノで胸を隠し、激しいダンスを踊っていた。
「ンッホホ!」
「ンホホ!!」
既に言語をなくした彼らは、破けたビニール傘を突き上げて、焚火のまわりを踊り狂う。
彼らは崇め、たたえているのだ。
焚火の炎の中に鎮座する、巨大な緋色のトカゲ……イフリートを。
●武蔵坂学園
「謎のイフリートが現れました……」
園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)が、灼滅者たちに告げた。
「イフリートは本来猛獣の姿をしたダークネスですが、今回現れたイフリートは大型爬虫類、あるいは恐竜のような姿をしているのが特徴です。今までの私たちの認識とは違っていますね。そして、その能力や行動も、これまでのイフリートとは全く違っています……」
槙奈は困惑気味に眉を寄せた。
「この謎のイフリートは厄介な能力を持っています。それは、自分の周囲の気温を上昇させ、範囲内にいる一般人を原始人化するという能力で……。最初は狭い範囲ですが、その範囲は徐々に広がっていき、最終的には都市ひとつを原始時代のようにしてしまうことでしょう……」
「今回対象となるイフリートがいるのは、ある地域のコンビニです。広さはこの教室くらいですね。
コンビニの店員とサラリーマン客7名が原始人化しています。スプリンクラーを壊して屋内で焚火をしているようです。すごい暑さだと思いますよ……」
その温度は50度超えか。想像するだけで辟易する。
功刀・真夏(肝っ玉お姉さん・dn0132)が、下敷きをパタパタさせている。彼女は襟元に風を送り込みながら、槙奈の説明を補足した。
「イフリートは緋色の大きなトカゲの姿をしているわ。知性を嫌って人の姿もとらないようね。戦法はイフリートらしく火攻めよ。
7名の一般人はもう、暑さで理性も何も無いわね。焚火にレジやら雑誌やらを投げ込んで、さらに火を燃えあがらせる狂乱ぶりとか。イフリートを神かなんかだと思ってるみたい。私たちに敵対して来るでしょうね」
槙奈も、手に持っていた缶ジュースを頬にあて、束の間の凉をとった。
「でも、うまく気を引けば傷つけることなく切り抜けられるかもしれません。たとえば、強化一般人だといえど、コンビニの中はさすがに暑いです。なにか冷たいもので気を引くとか……。
ただし、現代文明を敵だと思っているので、缶ジュースとか扇風機とかはダメかもです。いかに現代文明ぽくない贈り物にするかがポイントですね」
「……スイカとか?」
真夏が首を傾げた。
「さあ……。あと余談ですが、コンビニのエアコンは地味に生きています。そうでないととっくに70度超えでしょうしね……。
イフリートが灼滅されて焚火も消えれば、涼風とともに、強化一般人も知性を取り戻すことができます。きっと……その、自分たちの姿に多少混乱すると思うので、それなりのフォローをしてあげると……良いかもしれません」
槙奈は遠慮がちな笑みを浮かべた。
「みなさんも、脱水症状には気をつけてくださいね。……無事に、帰ってきてください」
参加者 | |
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不動・祐一(非情式・d00978) |
伐龍院・黎嚇(龍を伐る者・d01695) |
神泉・希紗(理想を胸に秘めし者・d02012) |
中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248) |
叢雲・こぶし(怪傑レッドベレー・d03613) |
楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757) |
神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731) |
十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170) |
●暑中お見舞い申し上げます。
「さあ、見せてやるぜ! 俺の水着を!」
不動・祐一(非情式・d00978)が海賊風ロングコートを翻し、羽飾りのついた海賊帽の下で会心の笑みを閃かせた。褐色の肌の下の引き締まった筋肉を惜しげもなく見せた上半身。下は金の刺繍のあるハーフパンツに金色のサッシュが陽光を受け、目にまばゆかった。
肩をそびやかす彼の上にも、真夏の陽光はさんさんと照りそそぐ。それがコンビニの駐車場ともなれば、アスファルトからの照り返しで余計に気温を高くしていた。
「連日猛暑日とか言ってる最中に何が楽しくてこないことを……」
ぼやく神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)もまた水着姿だ。
そう、灼滅者は全員水着姿での登場である。原始人化した一般人たちに姿を近づけて警戒を解こうという作戦だ。
店の前に人が来ないよう伐龍院・黎嚇(龍を伐る者・d01695)が殺界形成を張れば、十六夜・深月紅(哀しみの復讐者・d14170)がアイテムポケットからビニールプールや、果物ごと凍り付かせた氷の柱を取り出して設置してゆく。
ちなみに深月紅の水着は漆黒のビキニ。いつものマフラーと銀の十字架は外している。ビキニの紐がなんとも危ういが、あどけなくもクールな彼女の肌によく似合っていた。
楯守・盾衛(シールドスパイカ・d03757)は鬼のパンツ(虎縞模様)を穿いていた。原始人化した一般人に親近感を持たれること請け合いの格好の彼は、店の裏から持ち出してきた台車に氷柱をのせてガラガラと押していった。そして盾衛は、コンビニのドアから台車と自分の顔を出したり引っこめたり。
「ヘーイ原人ども、コレ冷たいウホ。カモンウホ。ウホサンこちらウホ」
向こうの一般人たちにチラチラと見せた。
「ウホ?」
「ンホホ?」
一般人たちが首を傾げながらわらわらと寄ってきた。その目には興味というより、まだ警戒の色の方が強かったのだが、
「へーい、そこのおにーさんおねーさん、冷たいモノ、いかが? 外にもあるよ?」 」
律がノリよく外に設置した氷やプールを指し示す。
さらに中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)が爽やかなスマイルで冷たいスイカを一般人の1人に渡した。
「コレ、あげる。俺たち、味方。トカゲの神様、崇めるの、交代。休憩しては?」
というようなことを伝えるため、ハイパーリンガルとボディランゲージを全身で駆使すると、
「ンホ!」
一般人が目を輝かせた。店の外には、喉の乾いた彼らが欲しくて堪らない冷たい水があり、凍って冷たい果物があり、そして……。
「ほらほら! これ涼しいよ~?」
神泉・希紗(理想を胸に秘めし者・d02012)が抱きついているのは、大きなマグロが丸ごと入った氷柱。希紗のシンプルな水着といい弾ける笑顔といいマグロといい、色んな意味でぴちぴち(死語)な光景。
「ンホホホホー!」
もはや、警戒心より誘惑と食欲の勝利。一般人全員が歓声をあげてコンビニの外へと飛び出してきた。
「ここに甘い水があるぞ~」
叢雲・こぶし(怪傑レッドベレー・d03613)が一般人たちを手招きして誘う。彼女もまた、水に濡れた健康的なボディーを存分に見せつけ、凍ったリンゴを白い前歯でしゃりっと噛んでにっこりと笑った。
こぶしはそうしながらも、視界の隅ででコンビニの中の敵が動いたことを察知する。
笑顔のままサウンドシャッターを発動した瞬間、中のイフリートがバンッ! とすごい勢いで窓ガラスを叩いた。しかしその威嚇も、サウンドシャッターの効果でかき消され、一般人に届くことはない。
誘い出しは成功。「贈り物」に夢中の一般人を見やって、灼滅者たちはニヤリと笑いあった。
●インフェルノ
コンビニの店内に入った途端、暑い外よりももっと熱い風が灼滅者たちに押し寄せた。
「ウホッ、熱ィコンビニ……こいつァ正に世紀末だなオイ。さッさとトカゲをBBQにして文明復帰とイカねェと」
息苦しいほどの熱気の中、盾衛が軽口をたたく。
「北海道民だから熱帯的な暑さは苦手なんだよねぇ~」
「来るまではちょっと楽しそうかもって思ったけど……やっぱ無し。暑いって!」
顔をしかめるこぶしと希紗。
「とにかくこれ以上暑くなるのは勘弁だから、灼滅灼滅」
しかし……どうにも意図が解らんな、この竜種ってヤツは。律が内心こぼして店の奥を見やった時、イフリートと目が合った。
焚火の向こう、燃える炎を盾にするようにして、緋色のイフリートが律を睨み付けていた。獲物をじっと陰から狙う爬虫類の目。
「キシャァァァァッ……!」
イフリートが威嚇音を上げると、炎がさらに燃え上がった。
「あっちー!! お前も冬に出ろよな! 冬に!」
さらに高くなった気温の中、祐一が指を突きつけて怒鳴った。
「竜種、イフリート、ね。普通の、イフリートとは、かなり、違う? よく、わからない、けど、迷惑、だから、灼滅、しないと」
深月紅が滑るように前衛に進み出て、スレイヤーカードを示した。
「四肢を、掲げて、息、絶え、眠れ」
灼熱のなかにあって涼やかなその声の主は左目からすっと涙を流した。それが深月紅の灼滅者としての姿。彼女はイフリートとは別種の、輝く綺麗な虹色の焔を身体にまとわせ、炎を飛び越えた。脛当てに刃物の付いたエアシューズでイフリートに重力を乗せた跳び蹴りを喰らわせる。
ガキンッ! イフリートは鋭い爪を持つ前足でそれを受け止めた。爪の間から血の炎が垂れる。深月紅の技を受け止めたまま、その膂力をもって彼女の身体を投げ飛ばした。
イフリートの正面に回り込んでいた銀都が、深月紅の身体を受け止める。少女を抱き起こしたカッコいいポーズで、銀都は見栄を切った!
「例え天が見逃しても、俺達が見逃さなねぇ! 平和は乱すが正義は守るものっ。中島九十三式・銀都参上! コンビニの正しい利用方法を教えてやんよっ」
突き出した拳から風が生まれ、それが炎を巻き込んだ刃物となって緋色のトカゲを襲う。前足をざっくりと裂かれ、イフリートは摩擦音のような怒りの声を上げた。
炎が大きく燃え上がり、火の舌が天井を舐める。希紗は炎を鎮めようと、氷のつららを放った。つららから放射された気はするが、この灼熱地獄の中ではまさに焼け石に水。
「もー!なんなのこの暑さ?!さっさと倒されちゃってよね!」
あまりの暑さにキレた希紗はもう一度槍をぶんっと回転させ、怒りを込めた螺穿槍をイフリートの脇腹に突き立てた! しかし鱗に覆われた丈夫な皮膚のため、イフリートの痛覚は鈍いようだ。大トカゲは身をよじり、太い尻尾で希紗を薙ぎ払おうとしたが、希紗は床を蹴り、とんぼをうって尻尾をかわす。
盾衛が希紗にかわり躍り出た。盾衛は駆けながら自在刀「七曲」の節を外す。鎖で繋がれた七つの節は、変幻自在の動きをみせ、敵を翻弄する。やや動きの鈍いトカゲ型イフリートは、そのトリッキーな動きに対応しきれない。
盾衛は長巻の刃でイフリートの下顎を貫いた!
「串刺しかーらーのー、自前の炎でセルフ蒲焼きになりやがれェ!」
ヒャッハー! と笑い声を上げると、瞬時に七つの節が組み合わされ、一本の柄の長い日本刀となる。そのままぐいっと突き上げ、敵の頭を反らせていく。
イフリートは二本の足で立つ姿勢となった。自分の顎を貫く男を圧死させてやろうと、太い前足で組み付いてきた。
その横から、祐一が流星の煌めきを宿した強烈な蹴りを食らわせ、イフリートを横倒しにした。
「でけー蜥蜴だな。でもそれだけだ、調子にのんなよ」
海賊帽の下の顔が、不敵に笑う。
「お前の中身どーなってんのか気になるわ」
祐一が真上に跳躍した。裏地に朱を刷いたロングコートが翻ったその向こうから、彼の霊犬「迦楼羅」が駆け抜けてきた。
迦楼羅はぶつかる勢いでイフリートに肉迫し、口にくわえた刀で敵の片目を切り裂く!
「ゲシャァァァァ!!!」
イフリートは身をよじって叫び声をあげた。強靭な尻尾を左右に振り回して灼滅者たちを薙ぎはらってゆく。
尾を避けそこね、頬に一筋の傷を受けた黎嚇が唇の両端をつり上げた。どこか獰猛な光を宿したその瞳が、イフリートをひたと見据える。
「貴様は我が獲物、我が得物が決して逃さん。神に代わり断罪し、伐龍院の名の元に裁断してやる。竜の解体ショーの始まりだ」
黎嚇は剣を顔の前で捧げ持つと非実体化させ、一旦右下にはらう。足音をさせずにイフリートに瞬時に接近し、下段からの神霊剣を繰り出した。刃がイフリートを切り裂いたその時、その緋色の鱗が黒と白の光に輝いた。その光は波のようにイフリートの全身を駆け巡り、波が去った時、鱗の硬度が下がったように見えた。
律はイフリートの前に歩を進める。イフリートは律の肩口を狙って大きな口をひらき、鋭い牙でその肉を噛み千切ろうと迫る。
律はその攻撃を、肩を最小限ひいただけで回避する。そして閉じきらない口の中を剣で切り裂いた。
「ガアァァァァァ!!!!」
相手が叫び暴れるのを受け流して、律は鋭角の軌跡を紡いで疾駆する。彼の刃が閃くたび、イフリートの躰から炎と鮮血が舞い散った。
「さて傍迷惑なトカゲには退場願おう。次には時間を遡って、自分に似合いの時代を選ぶ事だな」
律は黒い髪を熱風になびかせて、切っ先についた血を振り払った。
イフリートは自らの内に流れる血と炎を全身から吹き出ていた。イフリートが怒り狂うのと同時に、炎と高温が周りに渦を創っていた。
●火刑
空気が熱くて気管が焼けそうだ。
「んもー! 冬ならともかくなんで夏に出るんだよぉ! 暑いんだよぉ!」
つくしは苦しい呼吸の下から気勢を上げると、彼女は槍を高速で回転させ風を巻き起こした。扇風機のように回るこぶしの槍から、無数のつららが現れてイフリートに突き刺さる。ついでに幾ばくかの冷気が周囲に吹きわたり、灼滅者たちは正常な呼吸を取り戻した。
それを見て盾衛も妖冷弾を繰り出した。彼は火トカゲの背に飛び乗り槍を突き刺し、内部に冷気を放射した。
「ヒャッハー、燃え燃えトカゲの冷凍活造りでウホォ!!」
背で雄叫びをあげる盾衛を振り落とそうと、イフリートが前足を上げた。
その懐に、虹色に輝く深月紅が投げナイフのような俊敏さで飛び込む。深月紅の七色の炎が高速で弧を描き、イフリートの罪を、そしてその火炎を切り裂いてゆく。
銀都がイフリートの眼前に躍り出た。銀都の白い鉢巻が熱風にはためく。かれは胸のすく晴れ晴れとした笑顔で、真紅の炎を宿した無敵斬艦刀を叩き込んだ!
「俺の正義が真紅に燃えるっ、神様ごっこはこれまでだと無駄に叫ぶっ、くらいやがれ、必殺! お客様、お帰りの時間ですよっ」
銀都の真っ赤な炎が、炎の化身たるイフリートの躰を燃えあがらせた。イフリートは怒りとも苛立ちともつかぬ凄まじい叫び声を轟かせた。
その叫び声に、黎嚇の高笑いが重なった。
「裁いてやろう、捌いてやるぞ」
黎嚇は瞳に歓喜を宿してクルセイドソードを水平に薙ぐ。細身の身体から放たれたとは思えないその光速の技。
「この手で竜を何度も解体できるとは、この時代に生まれた事を神に感謝しなくてはな。そして今度こそは我が手でトドメを刺してくれる」
黎嚇の身体を銀色の鎧が覆う。聖戦士はもう一度、胸の前で剣を構えると、イフリートの心臓を貫いた!
「ギアアァアアアァァァァァ!!!」
黎嚇に貫かれた部分から、イフリートの鱗がぼろぼろとはがれ落ちてゆく。 鱗の下には炎。筋肉を模して収縮していた炎は、その姿を崩してゆき、最後には小さな竜巻となって、霧散していった。
空中に、緋色の鱗が無数の花びらの如く舞い散って、燃え尽きてゆく。
「これで二匹目、か」
その夢幻の光景の中、黎嚇は呟いた。
●涼風
エアコンの涼しい風が、灼滅者たちの頬をやさしく撫でた。改めてコンビニ内を見回すと、火事と暴動の後のように徹底的にめちゃくちゃだった。銀都が少しでも片付けようとしてみたが……。この焼跡では、彼の心遣いもなす術がなかった。
せめてもと、灼滅者たちは外にいる一般人のフォローを始めた。人間としての理性を取り戻し、コンビニの惨状と自分たちの酷い姿に呆然とする7人に、盾衛が毛布を配り歩いた。
「ハーイ、取り敢えずコイツで隠して隠してー」
「あ、大丈夫かよ? お前さんたちも火事に巻き込まれて大変だなあ」
コンビニ内で火事があったのだ、と祐一とこぶし、深月紅が説明をすれば、
「我々が助けたのですよ」
「延焼が早くて、一気に店内温度が上がったせいで意識混濁を起こしたようだな。……え、俺らの水着? プールに行く途中で着替えが面倒だから着てたんだ」
黎嚇と律が補足をした。
「大丈夫ですか~? お水どうぞ」
希紗はくるくると動き回っていた。下手な事を言ってボロが出ないように、この場を誤魔化す理由は他の人に任せて、水を配ったり、店員の女の子にタオルケットを掛けてあげたりとかいがいしい。希紗たちの気配りもあって一般人たちはだんだんと落ち着きを取り戻していった。
そして一般人たちは一応の納得をして、灼滅者たちに礼を言い……それでも自分たちの格好に悄然としつつ、ふらふらと去っていった。
「あー、クソ暑ィ時にクソ暑苦しィヤツらだッたウホ……げふンげふン」
盾衛が語尾を空咳でごまかし、さあ撤収だ、と歩き出した。
日差しは中天を過ぎてはいたが、まだまだ明るく降り注いでいる。さっきまでの灼熱地獄よりは断然マシだが、やっぱり暑いものは暑い。
「ってことで、なぁ……マジでこのままプールでも、行かね?」
律はそう言って、ぶらりと歩き出した。彼と仲間たちが歩む先には、入道雲が真っ白く立ち上る高いたかい空。
今年の夏は長そうだな。きっと、騒がしくて、暑くて、盛りだくさん。まだ若い彼らに、夏の空はそんな予感を抱かせたのだった。
作者:桐蔭衣央 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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