●いつもの会話
生まれた時から隣同士で、一緒に育ったせいかどんな相手よりも俊哉のことがわかっている。本当にどうしようもないと思っていても、槙が見捨てられないのはそのせいだった。
さらに理由があるとすれば、約束は必ず守る俊哉だからかもしれない。
「おまえ、またそんなこと言って……」
ため息混じりに槙が返すこともわかっていたせいか、悪びれもない明るい声が携帯から響く。結局は俊哉のためにならないと思っても、了承してしまうのだ。
来月必ず返すからと言う俊哉と待ち合わ場所を決めて携帯を切った。どうも金に縁がないのだ。
困っているひとを見ると助けずにはいられないのか、自分の財布の中身も気にせずに金を貸してしまう。それで自分に借りていては意味がないとは思うのだが……。
そんな優しいところのせいで、距離を取ることも嫌いになることもできないでいるのだった。そんなことを考えながら、携帯の目覚ましをセットして布団に入った。
仕事に行く前に俊哉と駅前で会う約束があるのだ。結局は親よりも長く一緒に過ごした俊哉を突き放すことは槙には出来ないのだった。
槙がぐっすりと眠ってしまった後、音もなく窓が開けられる。そこには一人の少年が立っていた。
宇宙服のようなものを着た少年は、ふわりと眠っている槙に近づく。そして囁いた。
「君の絆を僕にちょうだいね」
その瞬間、槙の頭の上に紫と黒の気持ち悪い卵が現れた。入ってきた時と同じ様に、音もなく不思議な少年は姿を消すのだった。
翌朝、携帯のアラームに槙は起こされた。いつもより早い起床は約束があるからだ。けれど、なぜ自分がわざわざお金を貸さなければいけないのかと首を傾げた。
俊哉に感じていた腐れ縁の感情は、全て消え去っていたのだった。
●絆を結んで……
「絆のベヘリタスの事件みたい!」
集まってくれた灼滅者(スレイヤー)たちを見渡した須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が拳を握る。ダークネスの持つバベルの鎖の力による予知をかいくぐるには、彼女たちエクスブレインの未来予測が必要になる。
強力なシャドウである絆のベヘリタスに関係が深いであろう人物が、一般人の絆を奪ってしまうらしい。そしてその相手には、絆のベヘリタスの卵が産み付けられる。
この卵から絆のベヘリタスが次々と孵化していくとなると恐ろしいことこの上ない。しかし孵化した直後を狙えば、条件によっては弱体化させて灼滅できる可能性がある。
絆のべヘリタスがソウルボートに逃げ込んでしまう前に、灼滅してもらえたらと思う。孵化してからソウルボートに逃げ込むまで、だいたい十分というところだ。
絆のベヘリタスの卵は、産み付けた相手の絆を栄養にして成長する。そして孵化した絆のベヘリタスは、産み付けた相手と絆を持っている相手には攻撃力が減少する。さらに被るダメージが増加してしまうという弱点を持っているのだ。
この条件を利用すれば、孵化直後の絆のベヘリタスを灼滅することが可能だ。そのため、卵を産み付けられた人物とどれだけ絆を結べるかが問題になってくる。
今回、腐れ縁の幼なじみとの絆を奪われた槙は二十五歳の料理人だ。常識的な人間であり、普段は金の貸し借りは一切しない。
けれど俊哉だけが例外であり、放っておけないのだが槙だった。今は絆を失ってしまったために、この例外もなくなっている。
みんなが槙と接触出来るのは、卵が孵化する前日からとなる。絆の種類だが、別にプラスではなくてもいい。マイナス方向でも構わないのだ。
好感であっても、嫌悪であっても強い絆であれば効果は一緒なのだ。そして先にも言ったが、絆のベヘリタスは強敵だ。
絆を結ばずに戦ったらまず勝てないだろう。逆に、絆が強ければ強いほど有利になる。
「槙さんは前日に料理教室を開いているみたいなんだ」
みんなにはこの料理教室に潜入してもらえたらと思う。だいたい四人前後で別れてもらっての参加がちょうどいいと思われる。
「参加の申し込みはこっちで済ませてあるよ」
当日のメニューは夏らしく冷やし中華と、シャーベットとなっている。美味しいものを作りながら、槙との絆を結ぶ。
またはとんでもなく不味いものを作りながら、最悪の形で槙の記憶に残し絆を結ぶ。他にも料理中の会話で絆を結ぶ。
方法はいろいろあると思われるので、みんながやりやすい方法で槙との絆を結んでもらえたらと思う。本格的な料理教室ではなく、アットホームな雰囲気となっている。
槙に産み付けられたベヘリタスの卵が孵化するのは、日付が変わってから二時間後……深夜二時くらいとなる。次の日が休みな槙はコンビニ出かけるようだ。
ちょうど向かっている途中で、ベヘリタスの卵が孵化する。みんなにはアパートから後を追ってもらうことになるだろう。
孵化した絆のベヘリタスはシャドウハンターのサイキックと妖の槍を使ってくる。灼滅することが叶わなくとも、撃退することが出来れば成功だ。
また灼滅が出来た時は、失われた絆が戻ることになる。その後のフォローが必要になる場合もあるだろう。しかし絆の結び方によっては、フォローすることが難しい可能性もある。
「どんな絆を結ぶかは、みんなに次第だね!」
頑張ってと言うようにまりんが頷くのだった。
参加者 | |
---|---|
幌月・藺生(葬去の白・d01473) |
金井・修李(進化した無差別改造魔・d03041) |
橘・清十郎(ピピピピピピエロ・d04169) |
小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768) |
海川・凛音(小さな鍵・d14050) |
中畑・壱琉(金色のコンフェクト・d16033) |
ルエニ・コトハ(スターダストマジシャン・d21182) |
鳥辺野・祝(架空線・d23681) |
●料理教室
「キャベツの千切りって……自分でやるとこんな大変なのな!」
包丁に苦戦しながら橘・清十郎(ピピピピピピエロ・d04169)が微かに眉を寄せた。誰かがしているのを見ると割と簡単そうに出来る気もするが、実際にやってみると違う。
「慣れですよ」
「慣れでしょうか?」
お湯を沸かすために、火をつけようとしたルエニ・コトハ(スターダストマジシャン・d21182)が槙の言葉に思わず呟いていた。包丁の扱いは慣れているルエニだが、火の扱いは少し苦手なのだ。
「どうしても慣れなかったら、今は電気もありますから」
包丁に関しても、代用となるものがいろいろ出ている。何より楽しんで料理する方がいいと槙は言う。
「まだ、ちょっとしかお料理できないのですけれど……」
火の加減を調整しながらルエニが料理教室にきた理由を口にする。
「大切なお友達のお誕生日にケーキさんを作れるようになりたいのです」
「それは素敵ですね」
ルニエに大切な友達と言われたが、槙の中には誰も浮かばなかった。
「冷やし中華はごま油多めに入れてみたら美味しいんじゃない?」
楽しそうにタレを作っていた中畑・壱琉(金色のコンフェクト・d16033)が、ひと味追加している。そして清十郎が千切りしたキャベツを摘んで、タレにつけて食べてみる。
「うん、いい味だよ!」
「私も良くつまみ食いしちゃうんですよね」
そんな壱琉を見て、槙が楽しそうに笑う。
「決め手はタレかな?」
いい味と聞こえた幌月・藺生(葬去の白・d01473)が真雪のような髪を揺らした顔を覗かせた。目指すはやはり甘すぎず酸っぱすぎずの絶妙なバランスだ。
「お金なくても冷やし中華なら安く簡単に作れますよね……」
薄く焼いた卵をフライパンから取り出しながら、藺生が呟く。黄色い綺麗な薄焼き卵をまな板に置かれた。
「いつもお金ないって言ってる友人に作ってあげようかなと思ってます」
ルニエに続き、藺生も友人のためと言いながら槙の様子を見る。そして槙に料理するときにどんな事を考えているか聞いてみる。
「考えると言うより、楽しく作りたいですね」
食べる相手のことや、美味しいと言ってもらえるか、そういうことを考えながら作っていると楽しくなってくる。
「誰に料理を作ってあげたいですか?」
もう少し突っ込んだことを聞いて、印象に残ればと藺生がさらに聞いてみる。ふと誰かを想像してみた槙だが、何だか空っぽで誰も浮かばない。
「料理って結構重労働だよな……」
微かに困惑していた槙が、清十郎の声にほっとしたような顔を見せた。
「そうなんですよね」
小麦粉に水、そして卵と塩と入れて混ぜている清十郎を見ながら槙が頷いた。どうやらこちらの冷やし中華の具は、千切りキャベツに錦糸卵、ハムに天かすになった様だ。
「これは……シャーベット用?」
鳥辺野・祝(架空線・d23681)が取り出した生クリームとあんこを見て、槙が首を傾げた。
「冷やし中華用です!」
これくらいカロリーないと腹持ちしませんってと言って生クリームを泡立てる祝に、心なしか槙の顔が引きつる。
「知り合いから聞いたのですが、料理は常識にとらわれてはいけないと、言ってました」
祝に対して流石ですという視線を送った海川・凛音(小さな鍵・d14050)が、ならばとどばどばと砂糖を入れる。卵の黄色がむしろ白くなっている。
というかジャリジャリ音がしてしまっている。
「それは……入れすぎじゃないかな……」
「甘いの美味しそうだねぇ」
困惑する槙の隣から、白い溶き卵を覗き込んだ小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)が無邪気に笑ってみせる。甘いなんてもんじゃないのは間違いない。
「うーん、やっぱり上手く作れない……」
シャーベットを作っていた金井・修李(進化した無差別改造魔・d03041)が不思議そうに声を出した。ひとまずいつも通りに作ってみた修李なのだが……。
「な、何で湯気が出ているんですか!?」
振り向いた槙が慌てて修李のそばに寄る。火を使ったり、温めるような手順はなかったはずだった。
「お願いします! 試しに作ってる所見せて!」
言われるがままに作り方を見せるために、槙が材料を混ぜて型に流し入れる。
「時間的に間に合わなそうなんで、皆さんには事前に作ったのを出させて頂きますね」
凍らせる時間を考えて、槙が微かに苦笑するのだった。
●試食
「美味しい食事が食べられる事にもっと感謝しないと」
俺も上手くなりたいなぁと呟く清十郎の前には、みんなで作った冷やし中華とシャーベットがある。シャーベットはすぐに溶けてしまわないよう、氷を敷き詰めた大皿に並んでいる。
「ん~どちらも美味しそうだね」
嬉しそうな声を出した壱琉が瞳を輝かせる。いつでも腹ペコな壱琉なのだ。
「美味しそうです」
ほわっとした笑顔を見せたルエニが早速というように、口に運ぶ。
「またぜひ教えてもらいたいです」
嬉しそうに笑った藺生に槙も嬉しそうな笑みを返した。そんな槙に祝が迫る。
「先生! 味見お願いして良いですか!!」
生クリームとあんこの冷やし中華。
「ど、独走的ですね……」
教室の中は涼しいはずなのに、何だか背中に冷たいものが流れていく。
「……あっ、ごめんなさい!」
突然何かに気づいたように、祝が瞳を見開く。
「やっぱり仕上げには蜂蜜ですよね!」
思わずくらっとした槙の耳に、更なる恐怖が襲う。
「アイスも果物も冷やし中華も美味しいです。だから混ぜてもきっと美味しいです」
どっちも冷やすものだから問題ないと、いそいそと混ぜてタレまでかける凛音に槙が息を飲む。
「すっごい美味しい! 槙さんお店開いたほういいよ!?」
槙のシャーベットを食べた修李が感嘆の声を上げた。お礼を言いながらも、生クリームとあんこの冷やし中華のハーモニーに全ての意識を持ってかれる槙なのだった。
教室が終わってから、灼滅者たちは槙が住むアパートに移動していた。
「きっと上手くいったよねぇ」
アパートを見上げた亜樹がみんなを振り返る。
「大丈夫だと思います」
ルエニも笑顔で頷いた。確実に槙の記憶に残る料理教室だったと言える。
しかし不味くなるとわかっていて作った四人の表情は心なしか暗い。祝から言わせれば、お残しは許されざる大罪なのだ。
責任持って全てを食べた四人には、拍手を送りたい。デザートのシャーベットが槙が作ったものであったのが幸いだったと言えようか……。
「コンビニに行くのはそろそろだよな?」
時間を確認しながら清十郎がつぶやくのと同時に、アパートの一室のドアが開いた。
「間違いなく、槙さんだね」
確かめるように見つめた修李が、街灯の明かりで確認して動き出した。音もなく後を追う灼滅者たちの足が止まった。
気持ち悪い槙の頭上の卵が割れた。そして中から絆のベヘリタスが現れる。
突然のことに腰を抜かした槙が地面に座り込んだ。いきなり自分の頭上から現れた化け物に身がすくんでしまっている。
「槙さん、こちらです」
箒に乗った凛音が、槙に手を差し伸べる。
「え!?」
先程まで教室にいた凛音の登場に、驚きの声を上げる。しかし腰が抜けて立ち上がれない。
「失礼するよ」
そんな槙を軽々と持ち上げた修李が箒に乗せる。驚きの声を上げた槙を、凛音がその場から運び去っていく。
同時に飛び出した壱琉が螺旋の如き捻りを加えた一撃で鋭く穿った。
「よし、いくぜ鯖味噌!」
さらに清十郎が霊犬に声をかけながら、ベヘリタスを斬る。それに合わせた鯖味噌が、反対側から斬り裂くのだった。
●夜道
「このまま燃えちゃえ!!」
爆炎の魔力を込めた大量の弾丸を修李が放つ。逃れるように走り出したベヘリタスを、修李の弾丸が追っていく。
合わせるように飛び出した藺生が、摩擦を利用して炎を纏って蹴りを繰り出した。槙と俊哉の絆を取り戻すために頑張ろうと決めた藺生の蹴りが決まる。
藺生にも腐れ縁な幼馴染がいる。お互いに遠慮しないからよく喧嘩にもなるが、それでも縁が切れることはない。
そして縁が切れないことを嬉しく思ったりもする。もしかすると俊哉を仕方ないと言って許してしまうのも、会いたいからなのではないかと考えて藺生の顔が一瞬だけ緩む。
なんだか可愛いと思ってしまったのだ。そんなほんわかな気持ちとは相反して、ベヘリタスに食らわせた蹴りは激しい。
修李と藺生の攻撃で、ベヘリタスの体が炎に包まれる。
「一緒に爆破なんてどうかい?」
いつの間にか駆け出していた亜樹が殴るのと同時に魔力を流し込む。身軽な動きで亜樹が離れるのと同時に、ベヘリタスの内部から爆破が起きる。
衝撃に震えたベヘリタスが、手にしていた槍を回転させる。そして前にいる灼滅者に向かって突っ込んでくる。
その威力に、仲間が蹴散らされていく。絆が結べていなかった状態を考えるとぞっとさせられる攻撃だ。
「回復します」
攻撃される仲間を見て、ルエニが優しき風を招いて癒していく。風に包まれながら、祝が地面を蹴った。
肩口でざっくり切られた黒髪が、ふわりと揺れる。金色の大きなつり目がベヘリタスをとらえた。
死角からの祝の斬撃が決まる。祝にいないわけではないが、腐れ縁と呼べる友人を大切にして欲しいと思っている。
突然いなくなってしまうことがあることも知っているからこそ、強くそう思うのだ。
「お待たせしました」
音もなく暗闇から現れた凛音が、着地する。
「今日よりもよい明日のために」
そして瞬時に力を解放して、魔法弾を放った。撃ち抜かれたベヘリタスが不気味な声を上げて、灼滅者に襲いかかってくる。
「っ……!」
槍が迫ってくるのを見て、威力と衝撃を考えながら壱琉は身構えた。しかし待っていた衝撃は来ない。
「……大丈夫だ」
壱琉の攻撃を代わりに受けた清十郎が、自らを回復する。
「ありがとね」
お礼を言いながら、ふわりと飛び出した壱琉がサイキックソードでベヘリタスを斬り裂くのだった。
●こもった気持ち
ベヘリタスから放たれた漆黒の弾丸が亜樹の体を貫いた。すぐにルエニが分裂させた小光輪を向かわせる。
近づいたベヘリタスに凛音が、再び魔法弾を放っていく。
「そろそろ終わりにしたいところだね」
影を走らせながら、修李が言った。間合いを取るように離れようとするベヘリタスに影が絡みついていく。
「はいっ! ストーップ!」
ベヘリタスの下から上まで、修李が影を伸ばした。それに合わせて亜樹と壱琉が動いた。
剣を非物質化させた亜樹がベヘリタスに放つ。吹き飛ばされたベヘリタスを追って壱琉が跳躍する。
嫌でも一緒にいる人を腐れ縁なんて言ったりするが、何だかんだ言ってもやはり嫌いな人ではない。自分が相手のことをよくわかるように、相手も自分のことをよくわかってくれている。
手がかかるとある人物が壱琉の頭に浮かんだ。
「絆は、奪えるものじゃないよ」
呟いた壱琉が、再び鋭い一撃でベヘリタスを穿った。容赦のない一撃の衝撃が伝わってくる。
手に残った感触が印象に残って、壱琉は手を握っていた。灼滅者たちの攻撃に、ふらつくような動きをベヘリタスが見せる。
「そろそろ終わりだ」
言うのと同時に駆け出した清十郎に合わせて、藺生と祝が駆け出していた。まず祝が殴るのと同時に網状に霊力を放出する。
暴れるような動きを見せたベヘリタスを、清十郎が爆風を伴う強烈な回し蹴りで薙ぎ払った。飛ばされた体が地面に落ちる前に、藺生が飛び出していた。
ドリルの如く高速回転した杭が、空中でベヘリタスに突き刺さる。そしてそのまま地面に叩きつけた。
回転する力に体をねじ切られたベヘリタスが、空気を切り裂くような声を上げて闇に溶け込んでいく。そして辺りが静かになった。
「終わったんだよね」
ふぅと息を吐いた修李が、力を抜く。
「槙さんはあちらです」
安全な場所に槙を置いてきた凛音が、指で方向を指し示す。絆を取り戻した槙をフォローするために示された方向に駆けつけるのだった。
「彼と最近遊んだ?」
起こったことと、一気に戻ってきた絆に困惑している槙に壱琉が声をかける。一週間前に会ったが、お金を貸さなかったことを槙は思い出す。
「あいつ飯食えてるのか!?」
はっとした顔をして、講師ではなく槙として驚く。すぐに携帯を取り出したが、かけずに止まっている。
「僕が今までに仲良くなったお友達と過ごした時間は、1年ちょっとしかないのです」
冷たい態度を取って俊哉を裏切ったことから電話をかけられない槙に、ルエニが優しく声をかける。槙はそれよりもずっと長く、両親よりも長く俊哉と一緒に過ごしたのだ。
それはとても素敵なことだとルエニは思う。
「その長い時間をかけてできた絆、大切にしてほしいのです」
きっと今までで、一番冷たい態度を取ってしまったというのはわかる。でも諦めずに仲直りしてもらいたい。
「ご飯を作ってあげたらいいんじゃないのかい?」
槙のシャーベットを食べた亜樹だから、きっと食べたら俊哉にもその気持ちが伝わると思った。
「……そうだね。あの、よくわからないんだけど、ありがとう」
突然現れたベヘリタスや、教室に来た八人がいることに困惑しながらも槙がお礼を口にする。そして走り出した。
きっと向かったのは自分のアパートではない。
「槙先生の料理今度食べさせてね!」
その背中に壱琉が言うと、片手が挙げられるのが見える。
「いつか雪緒に手料理がご馳走できるようになったら良いな」
いつも食事やお弁当を作ってくれる彼女の存在を思って、清十郎が感謝しつつ呟くのだった。
作者:奏蛍 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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