二日間にわたり開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストで盛り上がった学園祭。
しかし、その学園祭も、とうとう幕を下ろしつつある。だが、終幕にはまだ早い。終幕を控え、さらに盛り上がるのが祭りというもの。
「うわあ、すごい量の花火だ……」
校舎内の倉庫に大量に保管された花火に、ハル・ファーレン(高校生魔法使い・dn0201)は瞳を輝かせる。
割物や型物などの打ち上げ花火、線香花火やススキ花火などの手持ち花火、その他様々な花火が、所狭しと並んでいる。
ここにある花火はすべて、学園祭の打ち上げ用に学園側が用意したものだ。このあとグラウンドへと運ばれ、花火大会が催される。
「楽しそうだね。僕も参加しようかな!」
夜空できらめく花火は、まさに花のように綺麗なのだろう。学園祭最終日の夜を彩る光の花を、あなたも咲かせてみてはどうだろうか。
●みんなでワイワイ
学園祭の最終日。夜空には花火が打ち上がり、大輪の花を咲かせていた。
「シス・テマ教団よ、永遠にぃ!」
開幕早々、亜綾は教祖をかたどった花火を打ち上げる。
猫帝国の面々も思い思いの格好をして、後夜祭を楽しんでいた。
「一途、浴衣にもマントなの?」
アロアがヨーヨーで遊びつつ、紺色の浴衣にマントを纏った一途に問う。アロアは白地にピンクの牡丹柄の浴衣姿だ。
「浴衣用のマントなんだ。合ってるでしょ?」
団扇を扇ぎ、一途はさらりと告げた。
「う、うん、かわいいね」
ヴェイグが驚きつつも言う。彼は黒に赤の流水模様の浴衣を着こなしていた。
「に、似合っておりやすぜ! 粋でござんすね!」
娑婆蔵も調子を合わせ、言葉を返す。
「マントもいいではないか。愛すべき存在である」
語る珠梓の格好は、いつもの一張羅のスーツ。
「いつもと違ったり違わなかったり……色々だねー」
エルメンガルトはジャージを着こみ、皆の姿を眺めた。
屋台で買い込んだ食べ物が、ずらりと並べられる。
「これはにえのおごりですよ、ぱーっとやりなさい!」
わたあめ片手に下駄を鳴らし、仁恵が皆に線香花火を手渡していく。
花火と食べ物を楽しみつつ、皆は水着コンテストの優勝者たちを祝福した。
「ありがとさんですよー、ワーイ」
仁恵は無表情ながら、ぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。
「願い事をして、最後まで落ちなかったら願いが叶うんだって」
アロアは爆ぜる火を、真剣な表情で見やる。
「つまり、最後まで落とさないと勝ちということですね」
一途も線香花火を、静かに見守る。
由乃もしゃがみ込み、小さな火を見つめた。濃いグリーンに葉模様の浴衣が風に揺れる。
ぽてり、と落ちる火の玉。
「いやまだいけます」
ぼとっ。
「もう一回!」
「……儚すぎる……」
ヴェイグもしゃがみ、線香花火の短い命に悲壮感を漂わせた。
ワビサビを味わいつつ、ふと、エルメンガルトが思い付く。
「皆でアイスも食べよう。ユノちゃんアイス買いにいーこお」
「アイスですか。いいですね」
立ち上がる由乃とエルメンガルトの背後で、火花の音がする。
珠梓がロケット花火を発射したのだ。どこからか歓声が上がった。
「ふむ、こういうのも良いものであるな」
皆と同様に花火をすることで、一体感を得られたような気がする。
「祭りの最中もシメも火薬尽くしってェのも、何やら不思議な心地でさァ」
花火を見上げ、娑婆蔵は上機嫌に呟く。最後の祭りは、まだまだこれからだ。
「みんな本当にお疲れ様。俺らの学園祭に、乾杯だ!」
春人が乾杯の音頭を取る。藍色の甚平が何とも夏らしい。食事を広げ、Little Slayersの面々は盛り上がる。
「ところで芸術発表会って何かあったんですか?」
仙が問う。紺地にとんぼ柄の浴衣、帯に扇をさし風流な姿だ。
「芸術発表会はダンスをした後最後に爆破が起こったんですよー。今回も爆破してみますか?」
「私はそれより、もうちょっと控えめなのが好きかな……」
リオンの言葉に返す氷雪。白地に青い花の浴衣がよく似合う。
「こんな感じでっ」
リオンがドーン! と花火を打ち上げた。赤紫の生地に桜柄の浴衣の袖が翻る。
「うわあっ!?」
覚えのある音に驚く春人。
何だかんだ楽しみつつ、仙がパラシュートの話を持ちかけた。
「これ取れた人に何かご褒美とかやると楽しいよね」
仙の言葉に、リオンや春人が乗り気で頷く。
(「これから何度でもこんな機会があればいいな」)
パラシュートを追う皆を眺め、氷雪は思うのだった。
古本屋の面々は、人が少ない場所で花火を楽しむ。
「これが、花火、ですか……?」
蒼はレインと央に手本を見せてもらい、恐る恐る手持ち花火を持つ。
「うん、そんな感じ……て、えっ、ちょっと、央?! あち、あついって!」
央がレインの尻尾付近で火花を散らしたのだ。レインは慌て、尻尾をばたつかせる。
「ゴメンな、ちょっと間違えた☆」
央はニヤッと笑った。手持ち花火の後は、線香花火で遊ぶ。
「あっ、大きくなった」
レインが央の花火と自分の花火をくっつけると、一際激しく爆ぜた。その美しさに、蒼は笑みを浮かべる。
「……後夜祭の、お誘い、本当に、ありがとう、ございました」
「蒼、来年は学園祭も楽しもうな」
央の言葉に、蒼はこくりと頷いた。
吉祥寺1年D組の三人も、きゃいきゃいと騒ぐ。
真琴と潤子は割物花火を空に向かい打ち上げた。綺麗な星たちが空に咲く。
「たーまやー!」
ヒオが花火を見上げ合いの手を入れる。
「本当にお星さまの形だ! 綺麗!」
瞳を輝かせる潤子に、真琴も頷いた。
「ですね。まさに空に咲く花って感じです」
打ち上げ花火や手持ち花火を楽しんで、最後は線香花火でしめる。
「どれだけ長く付けていられるか、競争しましょうか」
「いざ! うおおー勝負でーす!」
ふわりと笑う真琴に、ヒオがジッと構える。瞬間、ヒオの線香花火は閃光のように爆ぜた。
「今年の学園祭も楽しかったね。来年もまた遊ぼうねっ」
潤子は明るく告げつつ、火の玉を眺めるのだった。
賑わいの中、白狼の里の面々も花火を楽しんでいる。
「お茶を用意しました。皆さん、どうぞ」
ブランシュヴァイクが皆に冷たい麦茶を配る。
「さすがブランの坊ちゃん、用意がよござんすね!」
麦茶を飲み、吹き出す火花を楽しむ名雲。一方、クロノは花火を空へと打ち上げる。
「……たーまやー」
棒読みながらお決まりの台詞。
「花火、すごくきれいね。触れないのが残念!」
打ち上がる花火を見上げ、括が歓声を上げた。
「おおっ、なんかにゅるにゅるって伸びてきましたよ~」
皓はへび花火を興味深げに見つめる。他方、UFO花火に火を付ける銀色。
「おお! ホントにUFOじゃん!」
一回転しつつ飛び上がる花火に感動する。
「へぇ、今はそんなんあるんや。俺もやる!」
柊も空にUFO花火を打ち上げる。一通り楽しんだら、最後は線香花火だ。
「花火、足りない人は仰ってください」
線香花火を配りつつ、ブランシュヴァイクも小さな火を灯す。
「玉が最後までくっついてたら、願いがかなうんだよね」
言いつつ、括は誰が長く玉をつけていられるか、勝負を持ちかける。その言葉に、銀色がニッと笑う。
「勝負? いいね、受けて立つよ」
「勝負というなら頑張るで……どう頑張ったらいいかわからんけど」
柊はとりあえず、ジッと火の玉を見つめる。
「よ~し、負けませんよ~」
来年も皆で花火ができますようにと、皓は願いを込めた。
「こうしてみんなで過ごしてると、楽しいな」
線香花火を見つめ、クロノは穏やかに呟く。
「来年も、皆と花火が見れたらよござんすねぇ」
カメラのシャッターを切り、名雲は皆との思い出を残した。
談話室の面々も集まり、花火を満喫する。
「学園祭、お疲れ様でしたっ! 最後まで楽しみましょうね♪」
水入りバケツを用意するリィザ。
「今、何て書いたか分かったー?」
千巻が花火をくるりと回した。
「くっ、何て書いてあるんだ! もう一回! もー一回っ!」
蒼朱がアンコールする。再度書けば、ジュリアンが炎の軌跡を辿った。
「お・つ・か・れ……?」
「そ! みんな学祭お疲れ様、って意味!」
千巻はにっこりと笑う。
「ふふっ、皆で花火、楽しいですね♪」
結が花火をくるりと回し、大きなハートを描いた。隙を見て、蒼朱とリィザが皆の足元にねずみ花火を投げる。
「ひゃあ!?」
不意を突かれ驚いた泉は、恥ずかしさに顔を赤く染める。千巻も声を上げ、ダッシュで避難した。
「皆様良い反応で……ってきゃあああ!?」
リィザの足元にも、ねずみ花火が走ってくる。花火はさらに結の下へ。
「わっ、わっ!」
驚く面々を楽しげに見ていた結も、その場にぺたりと座り込んでしまう。
「ふふん……♪ ドッキリ大成功だね」
ブーイングに耳を塞ぎつつ、蒼朱がニヤリと笑った。オメガも瞳を輝かせ、ねずみ花火に火を付ける。
「うわわっ!?」
途端、花火はオメガの周りで暴れ出した。
「暴れ回るねずみ花火も、見ていると面白いな」
オメガの近くにさりげなくバケツを置き、ジュリアンは花火に見入る。
騒ぎつつ、最後は皆で線香花火を楽しむことにした。
「やはり、線香花火は綺麗ですね……」
儚くも力強い輝きを見つめ、泉は言葉を紡ぐ。
花火の玉が、ぽとりと落ちた。それに少しの寂しさを覚えつつ、オメガは元気に笑う。
「またみんな一緒に遊ぼうな!」
今年の学園祭は終わってしまうけれど、また来年も共に。そう言葉を交わすのだった。
●二人で
「百花、これ上手く灯らないのだけれど。作法を教えて貰えないだろうか」
線香花火をうまく灯せず、謡は教えを請う。
「謡って花火初めて? 極力揺らさなきゃ多少は長持ちするわよ」
百花が実演で教えると、謡はすぐに上達する。
「技量で長く楽しむことが出来るんだね」
風流なものだと、謡は僅かに笑みを浮かべた。
「楽しかった? なら、今度ウチでやる?」
釣られて微笑みながら百花が問う。謡は是非、と頷いた。
千結とナノナノのなっちゃん、迅は花火を合わせ、火の色彩を楽しむ。
「新しいのを持ってきたら言ってね。点けてあげるよ」
「ありがとっす」
千結は笑顔で返す。手持ち花火の後は線香花火だ。緊張に震え、千結の火はすぐに落ちる。一方、迅の灯は爆ぜ続けた。
「迅にい、すごい綺麗っすね」
「昔は大きく作ろうと必死だったなぁ。今はそう思わないけどね」
そのままで綺麗だからと笑う迅を、千結は大人だなと思いつつ眺めた。
心日は流れ落ちるように光を放つ花火を、メルにそっと見せる
「メル、見て色が変わったよ!」
「まるで虹の花、化学反応は魔法の種……」
オレンジから緑に変わる火を、メルはじっと眺める。種が弾けるような花火も楽しみ、次に灯した線香花火は、小さく儚い光が美しい。
「来年はもっと一緒に遊べると嬉しい」
「うん、来年も沢山あそぼうね」
差し出されたメルの指に、心日が指切りげんまん。それは、約束の証だ。
菊乃と葎も、様々な花火を楽しむ。
「田舎にいた頃を思い出します」
懐かしむ菊乃の横で葎が苦戦するも、しだいにコツを掴む。
「線香花火、どちらが長く保たせられるか勝負しませんか?」
「ふふ……いいですよ。勝負、です」
二人は真剣に花火を眺めた。ふいに、菊乃の頭が葎にもたれかかる。
「……はわ? 菊乃さん、押すのは駄目で、……あ」
静かな寝息に、葎は微笑を零す。もう少しだけ、こうしていようと思った。
他方、鈴親はくるりと回り、櫟に金魚と花の浴衣を見せている。
「どう、似合うー?」
「いいね、可愛い。……昼もそれで客引きでもすれば良かったのに」
櫟は少々驚きつつ、じっと眺めた。色彩豊かな花火で遊んだ後は、線香花火。
「早く落ちた方が負けね?」
「へえ。俺に勝てると思ってるんだ、生意気」
悪戯っぽく笑う鈴親に、櫟も笑い返す。ひとしきり遊んだ後、櫟が労うように鈴親の頭を撫でる。これからもよろしくねと告げられ、鈴親は嬉しそうに頷いた。
「つづりーん! これ持ち手がウミウシっぽいー!! これやろ!!」
星花がカラフルな花火を手に、綴に駆け寄る。水着姿が可愛らしい。
「おしっ、VSウミウシとバトル!」
両手いっぱいに花火を抱えつつ、綴も星花と花火を楽しむ。
「この方がきれー!!」
星花はナノナノの花子と共に、花火をブンブンと振り回す。
「火傷気を付けなよ!」
すかさずめっ、と叱る綴。星花は自重しつつも、綴とハイテンションで花火を満喫した。
多久等はすすき花火を両手に持ち火花を散らす。
「あまのはごろもー!」
「おお、本当だ! 羽衣、色が次々変わって綺麗だね」
火花の輝きに、一樹は見入る。多久等から火をもらい、自分の花火にも火を灯した。
「ねぇ、この秋も、冬も、来年もどこかに遊びに行きたいね」
「あはは、せっかくだし、来年の夏まで計画しちゃおっか」
そっと囁く一樹に、多久等は明るく返す。二人の線香花火は、永く爆ぜ続けた。
霞と音が学園祭の話で盛り上がる中、流星のような火花が空で散る。
「わ、わ、見た?! すっげ、キレーだなァ……」
予想以上の花火に、音は感嘆する。
「あぁ……凄い」
迫力に言葉を失い、霞は空を見つめた。花火はさらに打ち上がる。
「すっげェ……な、な!」
打ち上がる度にはしゃぎ、同意を求める音。
(「……この日を、この姿を忘れない」)
こっそりと花火から目を離し、音の姿を霞は目に焼き付けるのだった。
タージとくるみは、そっと寄り添っている。
「学園祭、一緒に回れなくてごめんね」
謝るタージに、くるみは大丈夫と告げた。タージがライブの話をすると、くるみは微笑む。
「それじゃあ、ライブの続きしようか」
二人だけのライブ後、くるみはタージにちょっとイジワルなお願いをした。
「迎えに来てほしいんだ……今夜、ボクの夢の中に……」
「それなら今夜きっと、くるみの夢に、デートに誘いにいくよ。きっとね」
光の花が天から降り注ぐように、夜空を彩った。
菜々と式は、どちらが線香花火を永く燃やせるか勝負する。
「よく燃えるっすね」
瞬く火を見つめ、菜々が呟く。
「うん……綺麗だね」
寄り添い肩を並べ、式が返した。勝負、というのは口実だ。一緒にいられる時間が増えることが嬉しかった。
「式とこうしてのんびりできる時間、おいら、好きっす」
式を見て、にこっと笑う菜々。
「僕もこうやって一緒に花火ができて、嬉しいよ」
式は菜々に優しく微笑み返した。
冬崖と櫂は、すすき花火を何本か手に取り楽しんでいた。近くでドン! と花火の大きな音が響く。櫂は驚き、思わず冬崖に引っ付いた。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫……」
頭上から掛かる優しい声に、櫂はこくりと頷く。
「……今日はありがとうな。櫂」
櫂がいるから、頑張れる。様々な想いが込められた冬崖の言葉に、櫂も言葉を返す。
「大好きよ、冬崖」
花火の音と共に紡がれた言葉は、冬崖に届いただろうか。
沙耶々とアンリは互いに寄り添い、線香花火を楽しむ。
「浴衣、綺麗ですね」
「アンリ君もかっこいいよ!」
アンリの言葉に、沙耶々はにこりと笑う。花火が燃え尽きて地面に落ちた。
「あっ……」
その儚さに思わず見入る沙耶々。刹那、アンリの顔が近付き、唇が触れ合う。
「……沙耶々」
至近距離で囁くアンリ。高鳴る鼓動に、沙耶々は顔を真っ赤に染める。二人の頭上で、花火が赤い光を散らした。
各々が様々な時間を過ごしつつ、学園祭は終わりを迎えようとしている。
「花火も見たし写真も撮ったし、おやすみなさいですぅ」
横になる亜綾。烈光が前足で叩くも、満足げに寝息を立てるのだった。
作者:鏡水面 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月5日
難度:簡単
参加:57人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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