学園祭2014~花火大会、光に染まる夜空

    作者:鏡水面

     二日間にわたり開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストで盛り上がった学園祭。
     しかし、その学園祭も、とうとう幕を下ろしつつある。だが、終幕にはまだ早い。終幕を控え、さらに盛り上がるのが祭りというもの。
    「うわあ、すごい量の花火だ……」
     校舎内の倉庫に大量に保管された花火に、ハル・ファーレン(高校生魔法使い・dn0201)は瞳を輝かせる。
     割物や型物などの打ち上げ花火、線香花火やススキ花火などの手持ち花火、その他様々な花火が、所狭しと並んでいる。
     ここにある花火はすべて、学園祭の打ち上げ用に学園側が用意したものだ。このあとグラウンドへと運ばれ、花火大会が催される。
    「楽しそうだね。僕も参加しようかな!」
     夜空できらめく花火は、まさに花のように綺麗なのだろう。学園祭最終日の夜を彩る光の花を、あなたも咲かせてみてはどうだろうか。


    ■リプレイ

    ●みんなでワイワイ
     学園祭の最終日。夜空には花火が打ち上がり、大輪の花を咲かせていた。
    「シス・テマ教団よ、永遠にぃ!」
     開幕早々、亜綾は教祖をかたどった花火を打ち上げる。
     猫帝国の面々も思い思いの格好をして、後夜祭を楽しんでいた。
    「一途、浴衣にもマントなの?」
     アロアがヨーヨーで遊びつつ、紺色の浴衣にマントを纏った一途に問う。アロアは白地にピンクの牡丹柄の浴衣姿だ。
    「浴衣用のマントなんだ。合ってるでしょ?」
     団扇を扇ぎ、一途はさらりと告げた。
    「う、うん、かわいいね」
     ヴェイグが驚きつつも言う。彼は黒に赤の流水模様の浴衣を着こなしていた。
    「に、似合っておりやすぜ! 粋でござんすね!」
     娑婆蔵も調子を合わせ、言葉を返す。 
    「マントもいいではないか。愛すべき存在である」
     語る珠梓の格好は、いつもの一張羅のスーツ。
    「いつもと違ったり違わなかったり……色々だねー」
     エルメンガルトはジャージを着こみ、皆の姿を眺めた。
     屋台で買い込んだ食べ物が、ずらりと並べられる。
    「これはにえのおごりですよ、ぱーっとやりなさい!」
     わたあめ片手に下駄を鳴らし、仁恵が皆に線香花火を手渡していく。
     花火と食べ物を楽しみつつ、皆は水着コンテストの優勝者たちを祝福した。
    「ありがとさんですよー、ワーイ」
     仁恵は無表情ながら、ぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。
    「願い事をして、最後まで落ちなかったら願いが叶うんだって」
     アロアは爆ぜる火を、真剣な表情で見やる。
    「つまり、最後まで落とさないと勝ちということですね」
     一途も線香花火を、静かに見守る。
     由乃もしゃがみ込み、小さな火を見つめた。濃いグリーンに葉模様の浴衣が風に揺れる。
     ぽてり、と落ちる火の玉。
    「いやまだいけます」
     ぼとっ。
    「もう一回!」
    「……儚すぎる……」
     ヴェイグもしゃがみ、線香花火の短い命に悲壮感を漂わせた。
     ワビサビを味わいつつ、ふと、エルメンガルトが思い付く。
    「皆でアイスも食べよう。ユノちゃんアイス買いにいーこお」
    「アイスですか。いいですね」
     立ち上がる由乃とエルメンガルトの背後で、火花の音がする。
     珠梓がロケット花火を発射したのだ。どこからか歓声が上がった。
    「ふむ、こういうのも良いものであるな」
     皆と同様に花火をすることで、一体感を得られたような気がする。
    「祭りの最中もシメも火薬尽くしってェのも、何やら不思議な心地でさァ」
     花火を見上げ、娑婆蔵は上機嫌に呟く。最後の祭りは、まだまだこれからだ。
    「みんな本当にお疲れ様。俺らの学園祭に、乾杯だ!」
     春人が乾杯の音頭を取る。藍色の甚平が何とも夏らしい。食事を広げ、Little Slayersの面々は盛り上がる。
    「ところで芸術発表会って何かあったんですか?」
     仙が問う。紺地にとんぼ柄の浴衣、帯に扇をさし風流な姿だ。
    「芸術発表会はダンスをした後最後に爆破が起こったんですよー。今回も爆破してみますか?」
    「私はそれより、もうちょっと控えめなのが好きかな……」
     リオンの言葉に返す氷雪。白地に青い花の浴衣がよく似合う。
    「こんな感じでっ」
     リオンがドーン! と花火を打ち上げた。赤紫の生地に桜柄の浴衣の袖が翻る。
    「うわあっ!?」
     覚えのある音に驚く春人。 
     何だかんだ楽しみつつ、仙がパラシュートの話を持ちかけた。
    「これ取れた人に何かご褒美とかやると楽しいよね」
     仙の言葉に、リオンや春人が乗り気で頷く。
    (「これから何度でもこんな機会があればいいな」)
     パラシュートを追う皆を眺め、氷雪は思うのだった。
     古本屋の面々は、人が少ない場所で花火を楽しむ。
    「これが、花火、ですか……?」
     蒼はレインと央に手本を見せてもらい、恐る恐る手持ち花火を持つ。
    「うん、そんな感じ……て、えっ、ちょっと、央?! あち、あついって!」
     央がレインの尻尾付近で火花を散らしたのだ。レインは慌て、尻尾をばたつかせる。
    「ゴメンな、ちょっと間違えた☆」
     央はニヤッと笑った。手持ち花火の後は、線香花火で遊ぶ。
    「あっ、大きくなった」
     レインが央の花火と自分の花火をくっつけると、一際激しく爆ぜた。その美しさに、蒼は笑みを浮かべる。
    「……後夜祭の、お誘い、本当に、ありがとう、ございました」
    「蒼、来年は学園祭も楽しもうな」
     央の言葉に、蒼はこくりと頷いた。
     吉祥寺1年D組の三人も、きゃいきゃいと騒ぐ。
     真琴と潤子は割物花火を空に向かい打ち上げた。綺麗な星たちが空に咲く。
    「たーまやー!」
     ヒオが花火を見上げ合いの手を入れる。
    「本当にお星さまの形だ! 綺麗!」
     瞳を輝かせる潤子に、真琴も頷いた。
    「ですね。まさに空に咲く花って感じです」
     打ち上げ花火や手持ち花火を楽しんで、最後は線香花火でしめる。
    「どれだけ長く付けていられるか、競争しましょうか」
    「いざ! うおおー勝負でーす!」
     ふわりと笑う真琴に、ヒオがジッと構える。瞬間、ヒオの線香花火は閃光のように爆ぜた。
    「今年の学園祭も楽しかったね。来年もまた遊ぼうねっ」
     潤子は明るく告げつつ、火の玉を眺めるのだった。
     賑わいの中、白狼の里の面々も花火を楽しんでいる。
    「お茶を用意しました。皆さん、どうぞ」
     ブランシュヴァイクが皆に冷たい麦茶を配る。
    「さすがブランの坊ちゃん、用意がよござんすね!」
     麦茶を飲み、吹き出す火花を楽しむ名雲。一方、クロノは花火を空へと打ち上げる。
    「……たーまやー」
     棒読みながらお決まりの台詞。
    「花火、すごくきれいね。触れないのが残念!」
     打ち上がる花火を見上げ、括が歓声を上げた。
    「おおっ、なんかにゅるにゅるって伸びてきましたよ~」
     皓はへび花火を興味深げに見つめる。他方、UFO花火に火を付ける銀色。
    「おお! ホントにUFOじゃん!」
     一回転しつつ飛び上がる花火に感動する。
    「へぇ、今はそんなんあるんや。俺もやる!」
     柊も空にUFO花火を打ち上げる。一通り楽しんだら、最後は線香花火だ。
    「花火、足りない人は仰ってください」
     線香花火を配りつつ、ブランシュヴァイクも小さな火を灯す。
    「玉が最後までくっついてたら、願いがかなうんだよね」
     言いつつ、括は誰が長く玉をつけていられるか、勝負を持ちかける。その言葉に、銀色がニッと笑う。
    「勝負? いいね、受けて立つよ」
    「勝負というなら頑張るで……どう頑張ったらいいかわからんけど」
     柊はとりあえず、ジッと火の玉を見つめる。
    「よ~し、負けませんよ~」
     来年も皆で花火ができますようにと、皓は願いを込めた。
    「こうしてみんなで過ごしてると、楽しいな」
     線香花火を見つめ、クロノは穏やかに呟く。
    「来年も、皆と花火が見れたらよござんすねぇ」
     カメラのシャッターを切り、名雲は皆との思い出を残した。
     談話室の面々も集まり、花火を満喫する。
    「学園祭、お疲れ様でしたっ! 最後まで楽しみましょうね♪」
     水入りバケツを用意するリィザ。
    「今、何て書いたか分かったー?」
     千巻が花火をくるりと回した。
    「くっ、何て書いてあるんだ! もう一回! もー一回っ!」
     蒼朱がアンコールする。再度書けば、ジュリアンが炎の軌跡を辿った。
    「お・つ・か・れ……?」
    「そ! みんな学祭お疲れ様、って意味!」
     千巻はにっこりと笑う。
    「ふふっ、皆で花火、楽しいですね♪」
     結が花火をくるりと回し、大きなハートを描いた。隙を見て、蒼朱とリィザが皆の足元にねずみ花火を投げる。
    「ひゃあ!?」
     不意を突かれ驚いた泉は、恥ずかしさに顔を赤く染める。千巻も声を上げ、ダッシュで避難した。
    「皆様良い反応で……ってきゃあああ!?」
     リィザの足元にも、ねずみ花火が走ってくる。花火はさらに結の下へ。
    「わっ、わっ!」
     驚く面々を楽しげに見ていた結も、その場にぺたりと座り込んでしまう。
    「ふふん……♪ ドッキリ大成功だね」
     ブーイングに耳を塞ぎつつ、蒼朱がニヤリと笑った。オメガも瞳を輝かせ、ねずみ花火に火を付ける。
    「うわわっ!?」
     途端、花火はオメガの周りで暴れ出した。
    「暴れ回るねずみ花火も、見ていると面白いな」
     オメガの近くにさりげなくバケツを置き、ジュリアンは花火に見入る。
     騒ぎつつ、最後は皆で線香花火を楽しむことにした。
    「やはり、線香花火は綺麗ですね……」
     儚くも力強い輝きを見つめ、泉は言葉を紡ぐ。
     花火の玉が、ぽとりと落ちた。それに少しの寂しさを覚えつつ、オメガは元気に笑う。
    「またみんな一緒に遊ぼうな!」
     今年の学園祭は終わってしまうけれど、また来年も共に。そう言葉を交わすのだった。

    ●二人で
    「百花、これ上手く灯らないのだけれど。作法を教えて貰えないだろうか」
     線香花火をうまく灯せず、謡は教えを請う。
    「謡って花火初めて? 極力揺らさなきゃ多少は長持ちするわよ」
     百花が実演で教えると、謡はすぐに上達する。
    「技量で長く楽しむことが出来るんだね」
     風流なものだと、謡は僅かに笑みを浮かべた。
    「楽しかった? なら、今度ウチでやる?」
     釣られて微笑みながら百花が問う。謡は是非、と頷いた。
     千結とナノナノのなっちゃん、迅は花火を合わせ、火の色彩を楽しむ。
    「新しいのを持ってきたら言ってね。点けてあげるよ」
    「ありがとっす」
     千結は笑顔で返す。手持ち花火の後は線香花火だ。緊張に震え、千結の火はすぐに落ちる。一方、迅の灯は爆ぜ続けた。
    「迅にい、すごい綺麗っすね」
    「昔は大きく作ろうと必死だったなぁ。今はそう思わないけどね」
     そのままで綺麗だからと笑う迅を、千結は大人だなと思いつつ眺めた。
     心日は流れ落ちるように光を放つ花火を、メルにそっと見せる
    「メル、見て色が変わったよ!」
    「まるで虹の花、化学反応は魔法の種……」
     オレンジから緑に変わる火を、メルはじっと眺める。種が弾けるような花火も楽しみ、次に灯した線香花火は、小さく儚い光が美しい。
    「来年はもっと一緒に遊べると嬉しい」
    「うん、来年も沢山あそぼうね」
     差し出されたメルの指に、心日が指切りげんまん。それは、約束の証だ。
     菊乃と葎も、様々な花火を楽しむ。
    「田舎にいた頃を思い出します」
     懐かしむ菊乃の横で葎が苦戦するも、しだいにコツを掴む。
    「線香花火、どちらが長く保たせられるか勝負しませんか?」
    「ふふ……いいですよ。勝負、です」
     二人は真剣に花火を眺めた。ふいに、菊乃の頭が葎にもたれかかる。
    「……はわ? 菊乃さん、押すのは駄目で、……あ」
     静かな寝息に、葎は微笑を零す。もう少しだけ、こうしていようと思った。
     他方、鈴親はくるりと回り、櫟に金魚と花の浴衣を見せている。
    「どう、似合うー?」
    「いいね、可愛い。……昼もそれで客引きでもすれば良かったのに」
     櫟は少々驚きつつ、じっと眺めた。色彩豊かな花火で遊んだ後は、線香花火。
    「早く落ちた方が負けね?」
    「へえ。俺に勝てると思ってるんだ、生意気」
     悪戯っぽく笑う鈴親に、櫟も笑い返す。ひとしきり遊んだ後、櫟が労うように鈴親の頭を撫でる。これからもよろしくねと告げられ、鈴親は嬉しそうに頷いた。
    「つづりーん! これ持ち手がウミウシっぽいー!! これやろ!!」
     星花がカラフルな花火を手に、綴に駆け寄る。水着姿が可愛らしい。
    「おしっ、VSウミウシとバトル!」
     両手いっぱいに花火を抱えつつ、綴も星花と花火を楽しむ。
    「この方がきれー!!」
     星花はナノナノの花子と共に、花火をブンブンと振り回す。
    「火傷気を付けなよ!」
     すかさずめっ、と叱る綴。星花は自重しつつも、綴とハイテンションで花火を満喫した。
     多久等はすすき花火を両手に持ち火花を散らす。
    「あまのはごろもー!」
    「おお、本当だ! 羽衣、色が次々変わって綺麗だね」
     火花の輝きに、一樹は見入る。多久等から火をもらい、自分の花火にも火を灯した。
    「ねぇ、この秋も、冬も、来年もどこかに遊びに行きたいね」
    「あはは、せっかくだし、来年の夏まで計画しちゃおっか」
     そっと囁く一樹に、多久等は明るく返す。二人の線香花火は、永く爆ぜ続けた。
     霞と音が学園祭の話で盛り上がる中、流星のような火花が空で散る。
    「わ、わ、見た?! すっげ、キレーだなァ……」
     予想以上の花火に、音は感嘆する。
    「あぁ……凄い」
     迫力に言葉を失い、霞は空を見つめた。花火はさらに打ち上がる。
    「すっげェ……な、な!」
     打ち上がる度にはしゃぎ、同意を求める音。
    (「……この日を、この姿を忘れない」)
     こっそりと花火から目を離し、音の姿を霞は目に焼き付けるのだった。
     タージとくるみは、そっと寄り添っている。
    「学園祭、一緒に回れなくてごめんね」
     謝るタージに、くるみは大丈夫と告げた。タージがライブの話をすると、くるみは微笑む。
    「それじゃあ、ライブの続きしようか」
     二人だけのライブ後、くるみはタージにちょっとイジワルなお願いをした。
    「迎えに来てほしいんだ……今夜、ボクの夢の中に……」
    「それなら今夜きっと、くるみの夢に、デートに誘いにいくよ。きっとね」
     光の花が天から降り注ぐように、夜空を彩った。
     菜々と式は、どちらが線香花火を永く燃やせるか勝負する。
    「よく燃えるっすね」
     瞬く火を見つめ、菜々が呟く。
    「うん……綺麗だね」
     寄り添い肩を並べ、式が返した。勝負、というのは口実だ。一緒にいられる時間が増えることが嬉しかった。
    「式とこうしてのんびりできる時間、おいら、好きっす」
     式を見て、にこっと笑う菜々。
    「僕もこうやって一緒に花火ができて、嬉しいよ」
     式は菜々に優しく微笑み返した。
     冬崖と櫂は、すすき花火を何本か手に取り楽しんでいた。近くでドン! と花火の大きな音が響く。櫂は驚き、思わず冬崖に引っ付いた。
    「大丈夫か?」
    「ええ、大丈夫……」
     頭上から掛かる優しい声に、櫂はこくりと頷く。
    「……今日はありがとうな。櫂」
     櫂がいるから、頑張れる。様々な想いが込められた冬崖の言葉に、櫂も言葉を返す。
    「大好きよ、冬崖」
     花火の音と共に紡がれた言葉は、冬崖に届いただろうか。
     沙耶々とアンリは互いに寄り添い、線香花火を楽しむ。
    「浴衣、綺麗ですね」
    「アンリ君もかっこいいよ!」
     アンリの言葉に、沙耶々はにこりと笑う。花火が燃え尽きて地面に落ちた。
    「あっ……」
     その儚さに思わず見入る沙耶々。刹那、アンリの顔が近付き、唇が触れ合う。
    「……沙耶々」
     至近距離で囁くアンリ。高鳴る鼓動に、沙耶々は顔を真っ赤に染める。二人の頭上で、花火が赤い光を散らした。
     各々が様々な時間を過ごしつつ、学園祭は終わりを迎えようとしている。
    「花火も見たし写真も撮ったし、おやすみなさいですぅ」
     横になる亜綾。烈光が前足で叩くも、満足げに寝息を立てるのだった。

    作者:鏡水面 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月5日
    難度:簡単
    参加:57人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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