2014年、夏
今年の学園祭は7月20日と21日の2日間にわたり開催され、多数のクラブ企画や水着コンテストなどで、とても盛り上がった。
しかしもう夕刻。楽しい時間はまたたく間に過ぎ、学園祭は終わりを迎えてしまった。
本当に?
夜はまだ始まったばかり――後夜祭はこれからだ。
みんなで楽しく打ち上げといこう!
今夜は特別に、プールが開放されているようだ。
水着コンテストの会場となったプール。用意した水着で遊ぶもよし、その水着を鑑賞するもよし。
いつもと違う雰囲気のプールを、思いっきり楽しもう!
プールサイドに企画で余った食べ物もあるので飲食は可能、だけど!
汚さないようにね! プールは綺麗に使いましょう。
きっとプールはひんやり、涼しい。
今年の夏も暑くて、学園祭は熱かった。プールで楽しく、その余韻に浸ってみませんか?
●
今日は特別解放されたプール。後夜祭のひとときを過ごせるよう、プールサイドの一角には学園祭の料理が持ち寄られ、複数人で食べる場所も用意してあった。
【夢幻回廊】では人からゲーム宣言だ。
「これより『ドキッ☆魔法少女だらけの大後夜祭(椅子乗りゲームでポロリもあるよ!)』を始めるよ!」
水上のビート板に椅子を載せ、うまく座れたら優勝。
水着か魔法少女コス限定。ポロリ等は私刑(ケツバール。部長持参)。
優勝かポロリまで全員帰れない。
「ァーっ!」手本を示そうとした人が水没する。
(つか魔法少女だらけって詐欺じゃね?)
最後の魔法少女となった紫廉が笑う。
「こんなの、マジカルしれんのミラクルマホウで楽勝なんだよっ♪」
左右の足を沈む前に蹴立て、空気椅子する魔法!
「フンヌゥぶくぶく……」
魔法少女は絶えた。
「魔法少女は、ない」
アヅマは断言する。挑戦したがムリゲーだ。
「あえてもう一度言うが、ない」
「うん。俺が着るとか、ありえん」
死愚魔も頷く。二人は学校指定の水着だった。
ここはもう女性陣の見識に任せるしか――
「うひょおおおお、プールだーっ!!」
わっしょい、わっしょい! オリキアは踊り狂う。
「しっぱいしちゃいましたね、すべっちゃいました。とってもざんねんです」
アイスバーンはプールサイドから、椅子を蹴ってわざと失敗、棒読みで報告する。濡れる気はゼロだ。
「早く帰れるように頑張ってくださいね?」
「ボクにまかせろーっ!」
オリキアがビート板と椅子を流し、華麗にジャンプ。パラソルを使って……
「あ、やっぱり沈んだ」
「ってか、いつ終わるんだこれ」
「拙者に任せるでござる」
死愚魔とアヅマが木菟を見る。ビート板で箱を作り、そこに椅子を入れて浮かべていた。本格的だ。
「っしゃぁ! 行くでござるよ!」着地する木菟。判定は失敗。箱は分解した。
「無念!」
マジカルしれん★ブロマイドを大量にポロリし、没した。
「君の挑戦、待ってるよ☆」
カメラ目線の人が再び椅子へ跳ぶ。
ァーっ!
【八幡町2-6】の鉄次は、姫月が視界に入ると、
「散々自分は男だと言っておいて、それはないだろ!」半ギレでツッコんだ。
「我とて好きで着てるわけでは!」
忽然と女子用水着が鞄に現れるのだ。着た時点で底なし沼だが、詮ないと姫月は首を振る。
「いざ水の楽園へ――ブフハァ!?」
血火が水に消火された気もする。
「あ、あまり見ないで下さい……ね?」
緋月が少し過激かしらと、己の水着を見る。大胆。ローアングルからは凶器だ。
「高坂さん、溺れてしまわないでしょうか……?」
彼女の視界に入った透は、浮き輪に乗っかってゆらゆら漂流中。疲れてうとうと。
「冷たっ!」
透が頬に当たる感触に目覚めると、皆無が缶を揺らして笑っていた。
「炭酸飲料で良かったですか?」
貧血で浮かぶ姫月を介抱し、皆無は緋月を見る。
「祀乃咲さん、お綺麗ですよ――プールサイドに飲みに行きません?」
「ええ、私は構いません、けど……」
「ふ、ふふ。よし、男の水着を見れば解決じゃ!」
「倉丈さん、は男の方……でしたよね?」
「脱いでも女にしか見えぬとかどうなっているのだ!」
水面を蹴立て走る鉄次。
「来年も、またこうして遊びに来れたらいいなぁ」
透がしんみり、呟いた。
【宵空】の一行は、遊泳中。
一浄や櫂、要はプールサイドに腰掛け、足で水を蹴る。空は薄暗い。泳ぐメンバーを見て一浄はふと、
「鯨の群れみたいやねえ」
ただ冬崖は猛獣に見えたが。
「マナはん焼きソバ欲しー」
「任せるですねい!」
マナが、麦わら帽子を揺らして用意を始めた。その時、
「くらえ! ナイアガラの滝!」
朔之助が洗礼と、水を掛け始めた!
「わっ」
葵が驚いて沈み、被弾し水没した一浄が反撃に移る。
「華厳の滝攻撃ー」だが水は明後日の方向へ。
「はっはっは、甘いっすね一浄先輩!」
笑った朔之助が気付く。何人か見当たらない。
前後に波が飛沫いた。
「何がナイアガラの滝だ!」
「お仕置きだ」
「うおっ!」
葵の後撃と冬崖の潜水攻撃に体勢が揺らいだところで、
「それっ」由愛が隙を見て氷を一粒。
「必殺・キューブアイスアタックIN背中☆」
(まさかの連携プレイ……だと!)
悲鳴を上げて朔之助が没す。
だが既に、時代は戦国だ。
「葵クン、一浄先輩、覚悟!」
「あたしもーっ」
シャチの如く迫る冬崖が水鉄砲を放ち、七と櫂、瑠音が参戦してはしゃぐ。
「あはは、隙ありっ!」
七に氷をインされそうな由愛。
「よーっし、私もかけちゃうよー! えーいっ☆」
瑠音の第三の滝攻撃。乱戦に全方位が水飛沫と悲鳴、そして笑い声に染まる。
「こんな所に大量の氷が……えと、フローズンデスっ!」
「わっ冷たいっ」
要がかき氷に使う氷を降らせる。
「女子同士の戦いも熾烈だな」ラムネを手に葵が笑う。近くを櫂が、のんびり流されていった。
戦をしたら、腹が減る。
「夜のプールって幻想的」
乱世を終え、今はプールサイド。瑠音がかき氷を食べ、頭を押さえた。きーん。
「暑い日にゃちょうどいい刺激かもな」
同じく頭を押さえ、冬崖は宇治金時をかきこむ。
「美味しい物たっくさんなの。お好きなものをどーぞ!」
マナの快活な声に、要が挙手。
「たこ焼きと大判焼きと……お勧めある?」
「オススメはリンゴ飴よう!」
「あたしにもたこ焼きくださいな」
遅れて上がってきた七たち。「お腹すいちゃった」と香ばしい匂いに櫂が幸せそうな顔をする。
「かき氷ー!」復活した朔之助がパクついていく。
「う、うまく飲めない!」
「ラムネって難しいよねぇ」
ビー玉に手こずる要と、瑠音。
「上も下も星の海やね」
星彩る空を一浄は見上げた。
「葵さん、あーん♪ 腹が減っては戦ができませんよ!」
「まだやるのか!?」由愛の言葉に葵がむせた。
祭りの熱はまだ冷めない。もう暫し大騒ぎもよいだろう。
●
頬に冷たさ。
「きゃ!?」
「羽衣、お疲れっ」PET持つ慧樹がニコリ。
「スミケイもお疲れ様!」
楽しかった学園祭。ようやく一緒の時間。
「水着、羽衣らしくて似合ってる」
「ありがとう」
(少し、男らしくなったかな)マット型の浮具に揺られ、羽衣は思う。
身長も体格も別人のよう。浮具を揺らす慧樹を見る。視界が反転した。
「う、にゃー!?」
水飛沫に驚いたのは慧樹だ。羽衣は泳げない。
互いに慌てて抱き留めて、不意に可笑しくなって笑った。
「さぁ召し上がれ、お嬢様!」
「私。お嬢さまじゃ、ないわ、よ。でも、美味しそう」
黒虎の給仕に、目を輝かせるシャルネア。水泳競争の戦利品だ。
「シャネル、ちょっと表情が硬いなー?」
ほっぺをつつく黒虎。
「表情豊かな方が可愛いと思うぜ!」
彼女はされるがまま考える。今の表情は『病院』以来だ。だが
「私、少しずつ、解して、いこう、かな」
「なら俺は、そんなシャネルを見守ろう!」
笑う黒虎につられ、彼女もまた微笑んだ。
色取りどりのカクテル。
【黄昏の屋上】メンバーによるオリジナルジュースだ。
「静香、おめでとう。水着に和装を合わせるとはね」
義和、ハヤトの祝辞に微笑む静香。
「今年の学園際はずっと記憶に残りそうです」
高校生女子部門の入賞祝いに、プールサイドで乾杯する三人。
「義和のはリンゴか?」
「ベースに梨も混ぜている。万一アレルギーが出たら困るしな」
「ハヤトさんは葡萄?」
「と、グレープフルーツ」
名前が似てるけど、案外悪くないぜ、とハヤト。静香も自作品に口をつける。
(変な味――でも美味しいと感じるのは、楽しいからね)
「こういうのも、たまには悪くない」
「えい!」
義和が言い、着物水着の静香は笑顔のまま、黄昏色の水に飛び込んだ。
「えっと、似合ってるかなぁ?」
桃香はハイビスカス鮮やかな水着姿。遊が見てると思うと頬が熱い。
「ん、勿論だ。桃香はもっと自信を持って――」そこで遊はふと黙した。
(可愛い桃香を衆目のせいで独占できないのは、なぁ)
悩める遊の男心。桃香は遊具をかかげる。
「ビーチバレー、しません?」
ボールが宙を舞い、二人を行き来する。
「って桃香、そっち行くと……」
「わわわ!」 悲鳴は水飛沫の中。遊は苦笑しつつ救助に向かった。
芹はプールの縁で、のんびりと水に足を付ける。
「水着、どう?」水に入った兵吾に聞く。
「似合ってるぜ」
水着鑑賞。兵吾の第一目的は達成だ。だが本番はここから。
水をかけられた芹は、笑い声に我に返る。
「物思いにふけるなどさせるかっ!」
「いきなり何するのよ」
反撃はしかし避けられ、被弾率だけ上がる。
「~~っ」結局入り、逃げる兵吾を追う。
(まったく、のんびりするはずだったのに)
それでも、こういうのも有りかなと、思うのだった。
今日のジヴェアは特製ビキニ。
上に黄緑と赤紫のスペード、下は銀でサイドにエメラルドが光る。大胆。
「プール気持ちいいっ」
はしゃぎつつ、すれ違ったビキニのデザインに、目を開いた。なんて大胆。
「円君妖精みたい」
六がはしゃぐ。円は緑彩る水着だ。
「ありがとな。妖精は初めてだ」
「僕は?」
六が回り、紫髪が水着の上で踊った。
「そうだな、去年より……」言葉を濁す円。42点。
「去年より?」六の頬が膨らんだ。「何?」目が不穏だ。話題を変える。
「てゆーか両手の食い物は何サ」
「む、ご飯一杯幸せ一杯だも――びゃっ」
転びかけた六を円が支えた。
「まずはその飯食ってからだな」
「うんっ」先程より近い距離に、六は嬉しそうに笑った。
「リオおまたせー」
サイドポニー揺らす断。エミリオは頬が熱い。
(胸もドキドキしてきた)
意識する、不思議な感覚。くすぐったくて温かい。
「リオー?」パーカーの袖を引く断に我に返る。
「ぁ、ごめん。すごく可愛いよ」水の妖精か、人魚姫みたいだ。
「リオも素敵」微笑む断。「これデートなの……誘ってよかったの」
手が繋がれる。
「プールサイドでジュース飲も……あとで泳ごうね?」
エミリオは口元を綻ばせ、断と歩き出す。
「今年も大変だったな」
「楽しくて、本当に早く感じました」悠一に、彩歌は纏う橙を見せる。
「ね、お兄様。どうでしょう、水着」
「いや、その」悠一が固まった。
「派手でしたか?」
「似合ってる、と思うぞ、うん」歯切れが悪い。「……お兄様?」彩歌が訝しむ。
「仕方ないだろ、好きな子の水着に、動揺しない方がおかしいんだよ!」
顔を背け、悠一は彩歌の手を取りプールへ。
「もう、悠一ってば」
手を引かれるまま、彩歌は破顔した。
水面を狼姿の圭司が進む。抱きつき運ばれるのはアイリだ。
「これ、楽しい」
「それは良かった。夜のプールも中々だな、うむ」
「そうだね。何と言うか、神秘的」
「アイリと同じだな。可愛く綺麗でもある」
「ありがとう」
遊泳を終えると、二人は食べ物の方へ。
「お肉、食べさせてあげようか?」
アイリが肉を持ち、圭司がかじる。
「また誘っていいかい?」その言葉にアイリは頷いた。
(たまに外に出るのもいいかも)
泳ぎ疲れたけど、凄く楽しかったから。
水に浮く、司と麒麟。
「冷たくて気持ちいい」
「熱気凄かったからね」
ぷかぷか。
「可愛いよ、きりんさん」
「!」司の直球に麒麟の表情が動く。
「え……うん、ありがと」
(嬉しいけど、恥ずかしい)
普段より露出の多い水着。つい視線を意識する。
「青や黒が映えて素敵だ」
限界だった。火照る顔を意識して、慌てて水に潜る。
「きりんさん!?」
「……!」
(司くんもきちゃった)
顔を隠すため、麒麟は司の背中から腕を回す。
その抱擁は、息の続くまでだ。
イルカ浮き輪で漂流するシェリカ。
「!?」足が水底に引っ張られた!
「むー、落ちるもんですかっ」必死にイルカに掴まるも、悲鳴と白水着は没する。
出てきた斬夜が笑った。
「大丈夫かーシェ……痛っ」
「もー! なにするんですかっ」
イルカがヒット、ポコポコ拳が抗議を始める。
「ごめん、ごめんって」
「びっくりしたじゃないですか!」
「……泳ぐの苦手?」
「完全に泳ぎませんモードだったんですー!」
更なる抗議が襲うのだった。
いぬかきならぬイフリートかきで一夜は泳ぐ。
(あんまり参加は出来なかったが、楽しかったな)
初の学園祭は上々だ。
だから、見かけた淼に感謝の声を送る。
「部長、グルメストリートおめでとうな!」
――。
「応、楽しんでけよー」顔を戻した淼はしかし、と続けた。
「知り合いに見られるとちと恥ずかしいな」
「いいじゃない。はる君お疲れ様。連覇おめでとうだね」
「ああ。手伝いあり――」
早速葵に水を掛けられ声は中断。掛け合いが始まった。
「葵?」浮かんでこない。淼が慌てた時、葵が飛び出す。
「お祝いと頑張ったご褒美、だよ」
「――ご褒美だぁ?」頬に残る感触。混乱を誤魔化すように淼は笑う。
「100年早ぇよ!」
照れ隠しに頭を撫でる彼に、葵も微笑んだ。
●
グループ【緑目トリオ】は水泳教室。
「去年は変顔勝負の横で溺れたこと、母は忘れておりませぬ」
「芸術的ではあった……しかし娘よ」
「はい、それも今日でおしまいです! 恐れることなし!」
役は父小太郎、母希沙、娘千佳。特訓開始だ。まずはクロールで息継ぎ。
「ふがぼぼぼ!?」
「ち、父ヘルプー!」
「救助入りまーす」
そんなこんなの三十分後。
「できた! きさちゃんこたろさん、およげました!」
母は娘を抱きしめ父とハイタッチ。
「よし、もう一度やって身体に覚え込ませるんだ」
「はいです!」
希沙がアメなら小太郎はムチ。千佳も立ち向かう。
特訓が終わったらレモネードで乾杯。疲れたけど、千佳は笑顔だった。
「また一緒に泳ぎましょうね」
「いちにーいちにー」
一狼太に手引かれ、文子はバタ足で進む。
(すごい、私泳げてる♪)
最初は嫌だった文子も、今は楽しさで一杯。
なんて油断してたら、
「そろそろ手離してみるか」手が離れ、楽しい時間が終わる。
「もう! もう! せんぱいのばか!」
咽ながら涙目で睨む文子。
「ごめんごめん。もう離さないよ」
「ぜったいよ?」
「文子の手、俺が離すわけないじゃん?」
「……もう一回だけ、信じてあげる」
二人の手が、再び繋がれた。
「!」足が攣って、栞の身体は沈む。水面に手が届かない。
「大丈夫か!?」
抱きかかえ浮上したアルバートがプールサイドへ向かう。
「練習はまた今度だな」
「ありがとうございます。あの、その……」
直に触れる熱と、近い距離に上手く喋れない。
(なんだろう、この気持ち)
それでも感じた事を口にする。
「アル、また教えてくれたり、何処か出掛けたり、一緒に過ごせたら嬉しいです」
(少しずつ前進だな)
彼女の笑顔に、アルバートも安心したように笑った。
●
【忍者倶楽部】は打ち上げと水練教室。
「姉さんは力が入りすぎかな」
こぶしの手本を見るフラフィー。
「武士も教わる?」
「いつまでもカナヅチじゃないでござるよ!」
色鮮やかな水着の武士が泳ぎ出す。今年こそ50M、いざ参る!
――ぁ。
「やっぱりムリだよ助けて~!」
「大丈夫、体に掴まるといい」黒い水着。フラフィーが武士を抱きとめた。
「無事でよかった……どしたの?」
追いついたこぶしは、二人の視線に胸を見る。
天然流色気術。
「うわーん、見ないでぇ!」
大胆水着は水面に揺れていた。
「学園祭、楽しかったね」水にたゆたい、武士たちはおしゃべりする。
それは恋や夢の話。
「積極的な人かな」とフラフィー
「僕ね、この前六年後の夢を見たんだ!」
楽しい時間は終わらない。
通称【花園】は花園迷宮での三位入賞祝い。全員で掴みとった結果だ。
打ち上げは水着で遊ぼう計画。璃耶や竜胆はプールに入る予定はないが、
「きゃあ!」
「おわぁっ」
洩れなくりんごが、水中にエスコート。
「吃驚するじゃないですか!」
「オイりんご、何しやがんだ!」
璃耶の抗議。脚力で飛び出る竜胆。ドレス水着は水を吸って張り付き、涙目だ。
「まあ、竜胆さん怖い――隙あり」(え!)
「り~ん~ご~」
「せっかくのプール、水に入らないと♪――璃耶さん、素敵な水着ね」(どこ触ってるんですか!?)
「だからってなぁ……」
「♪」(ひゃああ!)
「話聞けよ!?」目が三角の竜胆。璃耶をもみくちゃにするりんごに吼えた。
少し離れたところでは、
「かーれんさんっ」
悠花が花恋に忍び寄り、橙のタンキニに手を伸ばす。
「ふにゃ!? 今セクハラしたのは誰にゃ!」
花恋が慌てた頃には、悠花は次の獲物を狙っている。
のんびり浮かび、しかし正当な過剰防衛作戦のタシュラフェルには一つの過ちが命取り。
(それでもその胸、狙います!)
警戒しつつ仕掛ける。
「あら、悠花?」抵抗は少ない。されるがまま敢えて受け、猛反撃するつもりだ。
(肝心なのは引き際)
ギリギリを見極めようとする悠花。その時花恋が捕捉する。
「そーか悠花か。そうやって悪戯するヤツには……こうにゃ!」
「!」
飛び付かれ悠花の動きが止まる。
「あは、もっとしてもいいのに♪ それじゃ」
「反撃にゃ!」
「ちょ、このブラズレ易いのにぃぃ!?」悠花の悲鳴。
所変わって赤ビキニの奏。隣に浮かぶ葵の水色ビキニを見た。
(襲いましょう)
「奏!?」
「悪戯しろと私の中のダークネスが(だから私悪くない)!」
あ、バランスボールのCM。
「もうっそんな事しちゃう子にはお仕置き」
ノリノリで逆襲する葵。Gカップの胸をものともしない。
「ぎにゃー!」
あっ揺れるプリンのCM。
【花園】の触れ合いは騎馬戦に似ている。なんか取れる。
「皆さん大丈夫ですか? ほどほどにいたしませんと……」と言っていたセカイ。どんどん凄い事になるから、今やバスタオル手に右往左往。
(今日もスキンシップ過剰だなぁ)
騎馬戦で言うところのハチマキが舞うのを、さもありなんと桜花はプールサイドから眺める。
(流石に今回は何もない――にゃ!?)
そう考えた途端足が滑る。何かを掴んで転落を免れるが、
(柔らかい?)
「桜花、さん」セカイの大きな胸元が、歪む。
「ご、ごめん」離れようとして、桃ビキニの結び目が解けた。
(結局こうなるの!?)
水柱。今日も平常運転だった。
【露草庵】はプールサイドで打ち上げ!
「皆のおかげで大成功だ。サンキュな、乾杯!」
「乾杯!」コップが触れ合う。打ち上げだ。
「豪華な持ち寄りになったな」御伽が唐揚げを置く。
「御伽さんと唐揚げって、もう定番ですね」
「音ちゃんは梅ソーダ? 夏らしいね!」
壱琉はパンケーキを出し、ひな菊のハーブクッキーや馨のマカロンに目を輝かせる。
「嫌いなモンあったら適当に残せよ?」
馨が音雪からどら焼きを受け取る。
ひとしきり食べ終われば、次はプールだ。
「ひなくんのイルカさん可愛い!」
「実は泳ぐのは……」
イルカの上でひな菊が照れ笑い。
「それじゃあ、動かしてあげる」壱琉がイルカを掴んで泳ぎ出した。
「よーし音ちゃんと競争!」
「競争ですのよっ」
「わ、すごいです!」
ひな菊の声も驚きから、次第に笑い声に。
(少しは俺も溶け込めたんかな?)
遊ぶ三人に、馨はプールサイドから手を振り返した。
「写真くらい撮っとくか」携帯が、皆の笑顔をパシャリ。
その画面に、御伽の背。
「ま、お約束だな」
押した馨が水柱に濡れた。
「アホかっ、急に押すなっての!」
御伽は仕返しと水をかける。
「面白そう!」
壱琉も水をかけ始めた!
「一呉先輩も、泳ぎましょう!」
「うおっ!?」ひな菊に引かれ馨も水没。音雪も笑う。
残された携帯には、五人の笑顔。
水面に、花が咲いた。
見上げれば夜空。窓から花火が見えた。
今年の学園祭は、これで終わり。
本当に? 本当に。
今この瞬間、過ごす時間は、一度だけのもの。
いつか振り返って、過ぎ去ったと知る、一握の光輝。
来年また、その輝きの中で盛り上がろう!
とりあえず――明日からまた、いつもの学園生活だ。
水がぱちゃっと、鳴った。
作者:叶エイジャ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年8月5日
難度:簡単
参加:74人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 7
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