学園祭2014~屋台の裏や表で、てんやわんや?

    作者:日向環

    「2日間なんて、あっと言う間だったのだ~」
     木佐貫・みもざ(高校生エクスブレイン・dn0082)は、時間ギリギリでゲットしたクレープを頬張りながら、後片付けを開始した学生たちの姿をぼんやりと眺めていた。
    「だけど、学園祭はここからが本番でもあるのだ! 別の意味でっ」
     そう、打ち上げである。
    「因みに、花火のことではないのだ」
     分かってる。
     みもざはクレープを平らげると、ポケットに突っ込んでいた炭酸飲料のペットボトルを取り出し、くるくるとぶん回した。
    「……あ」
     中身がアワアワな状態になっている。今開けたら、正に「打ち上げ」状態だ。かなり悲惨な目に遭いそうだが。
    「とにかく! みんなで楽しく打ち上げをやるのだ! ……はい先輩、景気よく頼むのだ」
    「何故俺にそのペットボトルを渡す? ってか、嫌だから」
     

     どうやら、 特設屋台通りの一画を確保することに成功したようだ。学園祭の最中は、グルメストリートとして賑わっていた場所だ。
     後片付けを始めている生徒達も見受けられるが、大量に仕入れて余ってしまった食材を持て余しているクラブもあるようだ。
     それらを持ち寄って、大勢でわいわいと打ち上げを楽しむのも良いだろう。屋台そのものの撤去は明日行われるので、持ち寄った食材を使って調理することも可能だ。
    「使ってない屋台は貸してくれるようなのだ」
     なので、グルメストリートで催し物を企画していなかったとしても、この場所で打ち上げを行うことは可能だ。
    「そして、屋台の裏に連れ出しての、こ・く・は・く・た~いむ♪ ぐふっ。ぐふふふ……なのだ」
    「木佐貫、気持ち悪いぞ」
     意中の人をこっそりと誘って、日頃の鬱憤をはら……じゃなく、想いを伝える、なんてことも可能かもしれない。野次馬が聞き耳を立てているかもしれないが。
    「そういうわけで、打ち上げは楽しんだ者勝ちなのだ!」
     クラブ企画を頑張った者同士、楽しい一時を過ごすのが良いだろう。


    ■リプレイ

    「いやはや、この光景は後夜祭ならではですねぇ…」
     ねじり鉢巻をした流希が、鉄板に油を敷く。少々気が引けたが、我流の広島焼きを振る舞うつもりだ。屋台のおじさんを経験してみるのも悪くはない。

    「わぁーい、まだまだ沢山残ってるのー。これは全部食べきるまで帰れない、ね…」
     バーベキューの残りの食材を眺めて、フィーネはぐっ、と拳を握りしめた。覚悟完了。
     だが、フィーネはあまり料理は得意でない。手伝いに回ることにする。
    「骨付き肉と魚は、シンプルにそのまま焼きましょうかー」
     流零は骨付き肉と魚を並べながら、ホイルで包んだじゃがいもを鉄板の上に転がしておく。
    「…もういいかー?」
     粛々とお手伝いをしていたものの、そろそろ我慢ならんと、リュータが強請るように尋ねてきた。
    「つまみ食いは駄目ですよー?」
     流零がさらりと注意する。
    「だ、大丈夫だ! おれ、ガマンできるぞっ!!」
     リュータは口元をゴシゴシ。仕方がないので、他所のクラブが配って回っているミニイフリート焼きを食べて我慢。
    「おなかぺこぺこで食べた方がぜったいおいしいからファイトっ、なの!」
     フィーネは笑顔で、お肉に胡椒をガバガバと振りかけている。
    「一緒に我慢…!」
     このお肉は食べない方が良いかもしれない思いつつ、和茶も摘み食いしたい心を抑え込む。
    「かっぱさんのじゃがバターもわくわくだね!」
     ホイルの隙間から溶けたバターが溢れ出してきて、程よい感じである。
     和茶が作っている焼きそばも、ちょうどよい頃合いだ。
    「えっと、たぶん味付けはこれで大丈夫なのっ」
     横からフィーネが何か足した。

    「来年の為にも! ここでウチの名前を憶えてもらう。鉄板焼き『もふリート』出張臨時営業開始だっ!」
     来年の戦いは既に始まっているのだ。
     3台のリアカーを駆使し、冷蔵庫・食材・焼き台に看板まで持ち込んだ淼が、豪快に鉄板調理を開始。
    「グルメストリート2連覇のお祝いだ! 食いたい奴はかかって来い!」
     後夜祭価格でどの商品も半額だという。
    「今年も無事に1位を獲得したもふリートだよー! 今ならイフリート焼き餃子も提供するよー!」
     着ぐるみの上半身の部分を脱いで、法子が呼び込みを始めた。
    「お金取るの?」
     匂いに釣られてやってきたみもざが、信じられないといった顔をしている。後夜祭だからサービスではないのか。
    『鉄板焼きもふリートをよろしくっ!!』のメモ書きと共に、ミニイフリート焼きをもらったみもざは、お金を払って超大盛り焼きそばを強奪して去っていく。

     巨大なかき氷を作っているのは、【Chaser】の面々だ。学園祭でも趣向を凝らしたかき氷を提供していた。
     ガリガリガリ…。
    「こ、これなら料理さっぱりな俺にも出来る、積むだけなら出来るっ」
     汗だくになりながら、要が氷を削る。
     大きな器に、ふわふわのかき氷が盛られていく。そしてトッピングされるのは謎の具材の数々。
    「わーい、すごいすごい!」
     見上げるほどのかき氷に、枢のテンションも上がっていく。嬉しそうに、心赴くままにプリンとフルーツを持って行く。
     巨大なかき氷の山肌に、小さなプリンがイボイボのように敷き詰められていて、もはや得体の知れない物体になりつつある。
    「実家の弟から送られてきた!」
     晶が蟹を丸々、テーブルの数にどーんを置く。巨大なタラバガニである。
    「カキ氷で冷やしたら美味いのではないか?」
     本人はいたって大真面目。
    「蟹やと!? うまそー」
     バキバキと足をもいでいる晶の姿を眺めつつ、悟はかき氷に、胡瓜や茄子のぬか漬けを差し込んでいく。
    「想希好きやろ?」
    「わ、悟ちゃんのぬか漬けかき氷ってザンシン!」
     ほぇぇと声を上げながら、陽桜は自分の身長より遙かに高く山盛られたかき氷を見上げる。
    「そりゃ好きですけど限度があるでしょう…全く」
     思わず苦笑する想希。ぬか漬けは好きだが、かき氷に刺されても困る。
    「それにしても、…豪快ですね」
     どうしても蟹に目が行ってしまう。枢は喜んで拍手を贈っていた。
    「クッキーにたいやきにれんにゅーがけ♪」
     陽桜が可愛らしく盛り付けする。因みに、これは自分用だ。
    「なんか色々初めてみたけど、なるほどねぇ、日本食って奥が深いねぇ…」
     要が感心している。正しい日本食かどうかは別にして。
    「ふふ、皆の個性が出て賑やかなかき氷になりましたね」
     想希が満足げに笑んだ。
    「みもざ食うてき。これがちょいさー流や」
     物陰からそっと様子を伺っていたみもざを拉致してきた悟が、どや顔で巨大な物体を紹介した。
     食べかけの焼そばをその物体に盛り付けるみもざ。ぬか漬けが刺さっているくらいだから大丈夫…なはずだ。
     晶がコソコソと何かを作っている。どうやら氷の塊のようだ。想希や要に忍び寄っている影に気付いたが、見て見ぬ振りをした。
     その後――。
     凄まじいかき氷合戦が開始された。
     氷と共に花も舞って、それはそれは風流だったとか。

     【メカぴ研】の皆さんは、スイーツを堪能中だ。
    「打ち上げ的なお祭りで頑張るも減ったくれもねーデシというのはツッコミかもんデスシオスシ」
     アンジェレネは先程から常に何かを食べている。今日は、食べて食べて食べまくるつもりだった。
     沙雪は屋台を借りて、学園祭企画の『かぴばらかふぇ』で売れ残ってしまったスイーツやジュース類を並べている。ほのかがせっせとそれを手伝う。
    「他のクラブの人たちもどうぞどうぞ」
     カピバラに見立てたロールケーキ等、変わり種も残っていた。
    「ああ、ある意味スイーツバイキング状態やな」
     こんなことなら、店番をしているときにこっそり摘まみ食いすれば良かったと、智恵理。大きな独り言になっているのはお約束だ。
     肝心のカピバラ達を連れてこられなかったのは少々残念だが、それはそれで仕方が無い。
     準備が出来たので、沙雪は部員達を屋台の前に集める。
    「皆がいるから企画も成り立つ、ありがとな。ん、それじゃかんぱーい」
     部員達に感謝の言葉を贈った。
    「とと、さゆ君、改まって感謝の言葉とか。まぁお手伝いするのは当たり前やしそんな…」
     改まって言われると、照れてしまう。不意打ち禁止やでと、照れくさそうに智恵理は乾杯に応じた。
    「あ、うん。皆で助け合うのは当たり前だしね、えへへー」
     エリオも照れ笑い。
    「あちこちからも良い匂いするね」
     鼻をクンクン。あちらこちらの屋台から、美味しそうな匂いが漂ってくる。
    「突撃するデシ」
     アンジェレネは他のクラブへの突撃を敢行するらしい。
    「無駄にしちゃうのはもったいないし、食べにいこー」
     エリオが追い掛けていく。
    「太るのとか気にせず食べまくる!!」
     自分は太りにくい体質なのだと、ほのかも後を追った。
    「エリオ君もほのほのもアンジェちゃんもやんちゃやなぁ」
     と言いつつも、智恵理も3人に付いていく。
    「騒いで何ぼやけど、迷惑はかけてはあかんで」
     すっかり保護者である。

    「あっすー! 閉まってても屋台ですよ! 使い放題ですよ!」
     誰もいない屋台の前で、大層なショックを受けているのは八雲の、店の者がいない屋台は使っても良いことになっていると、仁恵が教える。
    「あっ、わたあめ機ですよ、わたあめ機ですよ!!」
    「わーわーわたあめ機だ! わたあめやろ! わたわたしよ!」
     あたふたしながら、八雲が綿あめを作り始める。焦げたお砂糖が香ばしい。
    「ふわっふわわだあああにえええええふわああふわわ」
    「あっすうううどうしましょううあっすうう。どうしてええふわふわ」
     2人とも、テンションがクライマックスだ。
    「にえちゃん水着コン優勝おめでと。一番綺麗だった!」
    「ありがとですよ。一番になれました!」
     学園祭が終わってしまったのは寂しいが、また来年がある。来年もこうやって2人で遊べたら楽しいだろう。
     来年もよろしくと、笑顔で言い合う2人だった。

    「あれ、使っていいとのことですけど後片付けもですよね?」
     空いている屋台を、せりあが指差す。
    「せっかく屋台もガス火もある、使わないと損かな?」
     鐐が豪勢な厚切りステーキを投入。
     誠士郎が、刻んだベーコンとチーズを混ぜてベーコンチーズエッグを焼き始めた。どこぞのクラブのお土産のお陰で、卵だけは大量にある。
    「見た目はお好み焼きっぽいが、また異なった味が楽しめるぞ」
     ふわふわの卵焼きの中に、ベーコンととろとろに溶けたチーズが絶妙のバランスを醸し出している。
    「ターニャちゃんは学園祭では何処を回っていたの?」
     乾杯を宣言した後、月子はターニャに声を掛ける。
    「たべられ、ません、が」
     もふもふでソースの香りがする大きなたこ焼きのクッションを掲げるナターリヤ。他にも数々のお土産をゲットしてきたようだ。
     知り合いが運営する催し物も愉しかったと、頬を綻ばせる月子。その知り合いの1人は、弟のクラブの打ち上げに参加しているようだ。先程姿を見掛けたので、近くにいるらしい。
    「よかったら食べてみない? 特に学園祭限定のアイスはオススメなんだけどさ」
     優輝は、自分のクラブ企画で余ってしまったアイスを【神木霊碑】の仲間達へお裾分け。
    「???アイスは場合によって大惨事になるのが難点なんだけど…勇気のある人しかオススメしない」
     自分が食べたときは悶絶するしかなかった危険なアイスだ。
    「ぐふぉあっ!?」
     特に選定もせず、適当に手にしたアイスに悶絶する鐐。
    「どんな、おあじ…?」
     興味深げにナターリヤが尋ねるも、答えられる状態にない。
    「…無難なものがあれば、それをお願いしたく」
     敢えて地雷を踏みたくはない誠士郎だ。
    「水着来年はどういうのにしましょうか…あ、えっちなのにはしませんよ?」
     せりあが、もじもじする。自分から言い出したものの、その話題はちょっと恥ずかしいようだ。
    「秋篠君やせりあは愉しんでる? 笹銀君の料理もあるわよ」
     はい、あーんと、月子はにっこり。
     咬壱朗は仲間達にお茶を振る舞おうと、用意を始めた。葉が開くまでの間、目を閉じて歌を口ずさむ。優しげに寿ぐような歌が、お茶の香りと共に談笑する仲間達を包み込んでいた。

     様々なクラブから調達してきた料理の数々を並べ、直人は首を捻る。学園祭ではグルメストリートを制覇して、戦利品も大量だ。
    「…さすが、直人。ジェレミアに、残飯処理男といわれるだけは、ある、な」
     スヴェンニーナが感心している。彼女の方はというと、甘い物を片っ端から頬張っている。
    「ニーナも意外と沢山頼んだのね。…別腹?」
     櫻が問い掛けると、
    「ふふ、私は、あまいものでできているのだから、いいのだ、よ」
     応じるスヴェンニーナ。
    「櫻くんと日中デートしてきたけど、ぼくはこうして学園祭を回るのは初めてだから、何もかも新鮮な気分だよ。…あ、貴明くんチョコバナナ頂戴?」
     直人とスヴェンニーナをからかいつつ、ジェレミアはチョコバナナを受け取る。
    「…あれは、けして、ほめてないだろう」
     水着の話題に移ると、スヴェンニーナの視線が少々冷ややかになった。
    「…俺だって褒めただけだぞ」
     ぎくりと肩を跳ね上げる直人。
    「ぼく、お仕置きなら二人っきりの時が良いんだけど…」
     直人の拳が、ジェレミアの脇腹に突き刺さった。
     仲間達の様子に、楽しげな笑みを浮かべた櫻に余計な一言を言ってしまったジェレミアは、鳩尾に更なる一撃の裏拳を食らうこととなってしまった。

    「…デーモネのも美味しそうだな、少しくれないか? 俺のもやるから」
     屋台を巡って調達したチョコバナナに齧り付いたクロノが、隣に腰を下ろしているデーモネを見やる。
    「…別にいいぞ。私もそっちを食べてみたかったからな」
     ちょうどそっちも食べてみたいと思っていたところだと、デーモネは綿あめを差し出す。
    「…お前の作ったぬいぐるみ、本当に上手だな」
     学園祭を一緒に回り、それぞれ人形を作った。ちょっと不細工な手作り人形を見つめて、クロノが項垂れた。
    「そうか? クロノの人形もうまくできてると思うが」
     自分のぬいぐるみの出来を褒められると、デーモネは少し驚いた後、嬉しそうに微笑んだ。
     これからもずっと友達で――。
     クロノに頭を撫でられ、照れたように微笑むデーモネだった。

     相変わらずの着ぐるみ率は【文月探偵倶楽部】だ。展示&体験学習部門で2連覇を達成したので、お祝いを兼ねての打ち上げだ。
    「へ~い、おうどんいっちょーっ!」
     白いどらごん着ぐるみの空が、元気な声を上げる。
     暑い日の熱い鍋焼きうどんも乙な物。
     冷やしなんて邪道だと、焼うどんを作っているのは狼の着ぐるみ姿の七波だ。
    「邪道でも美味しければ良いじゃないですか?」
     にっこりと微笑みつつ、雪女姿の藍はこっそりと冷やしうどんを用意している。
    「垰田に聞いたぜ! 2連覇おめでとさん!」
     屋台の上で招きイフリート状態の毬衣に挨拶しつつ、淼が差し入れを振る舞う。
    「さてと祝いの乾杯だ。用意はいいか?」
     部員達に労いと礼を言葉を贈った直哉は、うどんが盛られたどんぶりを掲げる。
    「「「ぅどーぉん!!」」」
     皆が一斉に声を上げた。
    「…ぷはぁ、やっぱ美味いぜ!」
     誰が言ったか「うどんは飲み物」。直哉は上機嫌である。
    「アイスやジュースで冷え切った胃袋を、うどんの温かさで癒すんだ!」
     お勧めは鍋焼きうどんだと、割烹着姿の新が湯気が出ている土鍋を運んできた。
     明らかに干すには中身がおかしいと、どんぶりを見つめるロジオン。意を決してどんぶりを傾ける。
     ごく、ごく、ご……。
    「…う゛っ、げほっ、げっほ!!」
     超噎せている。誰も助けないのはお約束。
    「…ごほっ、ちょ、ちょっと無理が…?」
     椀子そばならぬ椀子うどんだと、桐香はうどんを流し込んだがやっぱり噎せてしまった。藍が準備してくれた冷やしうどんでも、流し込むのは無理があったようだ。
    「熱っつっ!?」
     自分が猫舌だったことをすっかり忘れていたレミは、ちょっと涙目。
    「みもざもお疲れさん、飲み物飲むか?」
     どんぶりを被った咲哉が、打ち上げに招いたみもざに勧めたのは、良く冷えたうどんつゆ。不覚にも味わってしまった脱力感を、みもざにもプレゼントしてあげようという粋な心意気だ。
    「今年も遊んでくれてありがとうっす!」
     クラスメイトでもあるみもざに、レミが声を掛ける。
    「あ、木佐貫さんもお飲み物、いかがですか?」
     鬣にうどんを貼り付けたままのロジオンが、飲み物を運んできてくれた。
    「着ぐるみに鍋焼きうどんってどこの我慢大会ですかー」
     熱中症対策にと、お塩とスポーツドリンクを用意していた仲次郎は、さすがにバテ始めてきた部員達の姿に微苦笑を浮かべた。
    「今回は容疑者として参加でしたがー、次回は執筆もしたいなと思いましたよー」
     来年は自分も着ぐるみデビューかなと、仲次郎は思う。
    「はわわ、着ぐるみでうどんって…なんだか我慢大会になってきてませんか?」
     レイラもあわあわ言いながらお冷やを配り始めた。
    「みもざさんが着ぐるみを着るなら私も着ようかなって思っているんです」
     美味しそうにうどんを食べている毬衣の着ぐるみの尻尾が、パタパタと動いている様子を眺めていたみもざに、藍が言った。尻尾の動きがやけにリアルだが、気にしたら負けだ。
    「…パンダ着ぐるみとかどうでしょう?」
     空が勧める。
    「いいかも、パンダ♪」
     本人もちょっと乗り気だ。
    「それからうどんも」
     七波からの灼熱うどん地獄へのお誘いだ。
    「みもじゃ~……よ~く~も、殺~して~、くれた~なぁ~?」
    「うぎゃぁ!?」
     闇の中から出現したミカエラを見て、悲鳴を上げるみもざ。
    「お詫びに鯛焼きおごってくれたら、許してあげてもいいよっ♪」
    「お礼に鯛焼きをおごってあげるから、許してあげてもいいよ?」
     でろでろでろ…。
    「ぎゃぁ!」
     みもざ撤退。

    「牛肉食って育てような。どことは言わないが」
     鉄板の上で焼肉を始めた迦月。何気ないその一言に、遥香が反応する。
    「…育てる、ですか? …どこを?」
     自分の体を見下ろす遥香。視界を遮る物がないので、自分の爪先が良く見える。
    「き、木佐貫っ! 丁度良い所に。助けてはくれないだろうか」
     無駄にキリリ。身の危険を感じたらしい。
    「あ、みもじゃさん。良いところへ。…ちょっとその人、押さえててくれませんか?」
     とてもイイ笑顔を見せた後、みもざの姿を見付けて呼び止める。
    「法子ちゃん、右は任せたっ」
     野次馬としてみもざに同行していた法子と2人掛かりで、迦月を強引に抑え込む。
     その後、土下座をしている迦月の姿を見掛けた人がいたとか。

    「…を収め、ラブリンスターにその存在を知らしめる事すら出来た! しかァし!」
     大声で力説しているのは【駅番】の番長こと大文字だ。
     第三回総選挙が無事成功を収めた彼らがプロデュースするアイドル『KJJ48のCD付きオリジナルメニュー』コンペの開催を目論んでいるのだ。
    「審査員特別賞おめでとー…の打ち上げをするんじゃないのね…何故に後夜祭まで緊急任務…」
     肩を落とす舞依。
    「白虎隊が硬派で真面目で漢らしいという噂が更に広まってしまうな…」
     蓮次は真顔だ。真逆の噂が広まらないと事を願うばかりである。
    「よーっし…消し炭にしない程度にはお料理の腕が上がったはずだしオリジナルメニュー作りがんばるぞー!」
     夏蓮が元気良く拳を突き上げる。
    「ハイッ! ハイッ! ハイィィイ!! 焼きそばは粉からソォォイ!!」
     恭太朗は焼きそばを作り始めた。傍らには、謎の8種類のトッピングが準備されている。
    「貴様の想像力と料理の腕を今こそ発揮しろ! よし誰かに審査を…アッ よう、みもじゃ、暇そうだな! 」
    「ぎくぅ!」
     気づかれないように、そっと通り過ぎる予定だったようだが、無駄な努力だったらしい。
    「エキバーみんなの食べてってよ! おいしいのもあるはずだよ 」
     さあさあと、恭太朗によって上座に連行されるみもざ。
    「みもじゃ先輩食べて食べてー!」
     夏蓮がにこやかな表情で、ピンクで可愛らしい何かを運んできた。
    「お勧めは、この中身がチョコの、ポン酢かかったやつ…」
     舞依が披露しているのは、どう見てもたこ焼きだ。
    「駅番がトラウマになったらどうするの! 次から目を合わせてくれなくなるよ?」
     熾は必死にフォローしているが、もう遅いかもしんない。特に男子とは目を合わそうとはしていない。学園祭で衝撃的な場面に遭遇してしまったからだ。
     それに、プルンプルン感が最高のおっぱいプリンを手にフォローしてくれても、まるで説得力がない。
    「味は美味いよ! だってリンゴ飴だし 」
     蓮次が運んできたのは48個に切り分けられたりんご飴だ。そこにフルーツが盛りつけられ、妙なフォーメーションが表現されている。見た目は奇抜だが、食べても大丈夫だと思わせるだけの姿はしている。
    「みもじゃさん、審査よろしくねっ! 」
     謳歌は天使のように微笑む。チョコレートとコーラとメントールなお菓子のセットだ。これは普通に食べられそうだ。コーラの上に浮いていたら、ちょっと危険だったかもしれない。
    「これぞ我が魔術の粋を尽くして生み出した最高傑作! 名付けて『ドロリ濃厚KJJまるごと入りスペシャルドリンク不老不死の香り』!!」
     舌でなく脳で味わう革新的料理なのだと豪語する青士郎。不老不死どころか、即死しそうな気がしないでもない。
    「この『特製KJJ48ピザ-まさかの爆裂四散-』もおいしいはずです!」
     火華のピザには様々な具材が乗っかっていた。ピザ生地は閃光百裂拳的な連打を耐えきった強者だ。
    「味見? してるわけないない」
     全員が声を揃えてにっこり。
    (「やばい…。逃げられそうにないのだ…」)
     絶体絶命のみもざは、この窮地を突破することができるのだろうか。

    作者:日向環 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月5日
    難度:簡単
    参加:59人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 16
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