臨海学校2014~最後の空席

    作者:カンナミユ

    「雷剛さん、着きましたよ。……轟・雷剛さん」
     運転席から声をかけられ、大柄な男――雷剛はゆっくりと目を覚ます。どうやら腕を組んだまま眠っていたようだ。短く刈った髪をかきながらあくびを一つ。
     座席から鋭い眼光を外へと向けると、その先には楽しそうにはしゃぐ学生達。
    「あいつらか、対戦相手は」
     楽しそうにするその様子は、車の中にいるというのにその声が聞こえてきそうなほどだ。
     その様子を目にしながら、ドアを開け車を降りる。
    「これが最後のチャンスだというのにあの騒ぎ様……面白い、叩き潰してくれる」
     不敵な笑みを浮かべながらの言葉。
     乱暴にドアを閉め、どす黒いオーラを纏った雷剛は手にする身の丈程の大剣を軽々と持ち上げ、ぶん、と振り下ろす。そして楽しそうにはしゃぐ学生達へゆっくりと歩を進めた。
    「頑張って下さいね……応援していますよ」
     運転席の男はにやりと言い、車を――『HKT六六六』とロゴが入った黒塗りのバンを発進させた。
      
    「夏休み中にすまないが、急遽、北海道で臨海学校が行われる事になった」
     手にした資料でぱたぱた扇ぎながら神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は集まった灼滅者達へ話しかけた。
    「随分と急な話だな」
     突然の話に首をかしげた灼滅者の言葉にヤマトは、
    「武神大戦天覧儀が遂に次の段階に進もうとしているようだ」
     唐突にそう切り出すと資料を机に置き、話を続ける。
    「天覧儀を勝ちぬく最後の席を賭けたバトルロイヤルが業大老が沈むオホーツク海沿岸の海岸で行われる事が分かった。お前達には興部町の海水浴場や沙留海水浴場周辺でキャンプを行い、やって来るダークネスを迎え撃って欲しい」
    「ダークネスと戦うついでに臨海学校、か」
     その言葉にヤマトは頷く。どうやらただ楽しむだけの臨海学校とはいかないようだ。
    「日本各地で行われた武神大戦天覧儀を勝ち抜いた猛者達が、北海道興部町の海岸に集まろうとしている。敵はいつ来るか分からないが、海岸でキャンプをしていれば向こうから襲撃してくるから臨海学校を楽しみつつ、警戒も怠らないようにして欲しい」
     そう言うとヤマトは机に置いた資料を手に取った。
    「今回の臨海学校だが、少人数、つまりお前達だけでキャンプを行い、ダークネスを迎え撃ってもらう事になる」
     大人数でいては相手に警戒される。なのでヤマトが言うように少人数のグループに別れてキャンプを行う事により、警戒される事なく戦う事ができるだろう。
    「そういえば、確か止めを刺した奴は闇堕ちするんだよな?」
     説明を聞いていた灼滅者の一人がヤマトに問いかけた。
     この天覧儀ではアンブレイカブルにとどめを刺し、勝者となった灼滅者は勝者に与えられる力の影響で、確実に闇堕ちしてしまうのだが……
    「いや、今回は止めを刺す事によって闇堕ちする事はないようだ」
     資料を目にヤマトは答えた。
     また、今回は戦闘を支援するチームが編成されており、戦闘開始後にある程度持ちこたえれば支援チームが駆けつけてくる。現れる敵は強敵だが、この支援があればダークネスを圧倒する事ができる筈だ。
    「せっかくの臨海学校だというのにダークネスと戦う事になってしまうが、できるだけ楽しんで欲しい」
     灼滅者達を見渡しながらヤマトは言い、ぱたんと資料を閉じて言葉を続ける。
    「今回、集まったダークネスを全て撃破する事ができれば、天覧儀の勝者となり最後の席を得る事ができるだろう。そうなれば、武神大戦の真相を暴くチャンスになるかもしれない……頑張ってくれ」


    参加者
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    皆守・幸太郎(灰色の陽炎・d02095)
    伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)
    高遠・彼方(無銘葬・d06991)
    ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)
    皇・千李(復讐の静月・d09847)
    木元・明莉(楽天陽和・d14267)
    永星・にあ(紫氷・d24441)

    ■リプレイ


     日も暮れはじめ、空の色は徐々に茜に染まりはじめる頃。
    「カレーとバーベキューの豪華二本立て……なのは良いんだけど、肉尽くしなのか?」
     夕食作りを手伝いながら迫水・優志(秋霜烈日・d01249)は思わず口にしてしまった。
     キャンプ場で仲間達と作っているのは夕食のカレーである。そして、バーベキュー。
     準備をしているのは伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)だが、用意した食材は牛、豚、鶏というバリエーション豊かな肉ばかりだ。
    「魚介と野菜も喰おうぜ?」
    「野菜……? いや、バーベキューはひたすら肉を焼いて食うものではなかったのか……?」
     優志からの言葉に蓮太郎は言いながら皇・千李(復讐の静月・d09847)とキャンプファイヤー風に大きく火を焚き、バーベキューの準備をはじめた。
     夏休み真っ只中だというのに灼滅者達は北海道興部町に訪れ、一泊二日の臨海学校を楽しんでいる。
     ――と、言いたいところだが。
    「やはり、何も知らず、楽しく”はしゃいでる”風には出来ませんね……」
     仲間達の肉への愛情を実感しつつ、永星・にあ(紫氷・d24441)は明り取りを用意しながら口にすると道産子という事もあり、持参した北海道産の食材を手に皆守・幸太郎(灰色の陽炎・d02095)も頷いた。
     この臨海学校はただ楽しむだけではない。武神大戦天覧儀の次の段階に進める最後の席を手に入れる為の戦いが控えているのだ。
    「天覧儀か……実に、興味深い……武神大戦とやらは、強者が集まるのだろう。どんな奴がいるんだろうな……」
     相手は勝ち残る事はできなかったが、それでも強敵である事は変わらない。いずれ現れる強者に千李は呟き愛刀にそっと触れた。
    「武神大戦天覧儀……強大なダークネスを生み出させるわけにはいかないよね! だから、頑張って阻止するよ!」
     打ち上げ花火を用意し、手にルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)は決意を口にするが、
    「……でも、お肉の焼ける匂いとカレーの香りには食欲を刺激されまくりなのです。なんというか野生の本能が目を覚ましそうになるのです」
     カレー作りも終盤に差し掛かっているのか、鼻腔をくすぐるスパイスのいいにおいにお腹が鳴りそうになる。
     ちらりと視線を向けると隣で高遠・彼方(無銘葬・d06991)と木元・明莉(楽天陽和・d14267)カレーを作っており、相当量のニンニクを入れた鍋を戦闘時並の緊迫感で彼方はかき混ぜ、明莉もウキウキと楽しんで作っている。どちらもとても美味しそうだ。
     そのカレーを美味しく食べる為に、美味しいご飯ができるようにルリは飯盒をじっと見つめ、火加減を確認する。
     日差しも和らぎ、時折、優しい潮風が灼滅者達の体を涼ませ、波音は昂ぶる緊張感を和らげる。
     今回は強敵が相手という事で、救援チーム――メンバーの頭文字から名付けられたという『KREMITHS(クレミス)』が駆けつけてくる事になっている。
     救援チームとは連絡先を交換し、場所も伝えてある。救援を求める際は花火を打ち上げる事になっているが、状況が不利にならない限りは自分達で決着を付けるつもりだ。
     襲撃があってもいいように警戒を怠らず、臨海学校を楽しむ事にした。
    「カレー完成っ!」
    「バーベキューも用意できたぞ」
     夕食の準備が整い、明莉と蓮太郎の言葉に仲間達は集まり食事の用意をする。
     カレーにバーベキュー。ジンギスカン鍋に焼かれているのは肉だけだ。
    「魚介と野菜も喰おうぜ?お前ら……」
    「野菜も食え、野菜も」
     さすがにバランスが悪いと思ったのか優志と彼方は言うが、肉は追加される一方である。
    「野菜? なんですかねソレ」
    「カレーも頂こう。今夜は強敵がわざわざ向こうからやってきてくれるのだからな」
     彼方の言葉に真顔で言葉を交わす明莉と蓮太郎だが、その表情が変わるのを仲間達は見逃さなかった。
     現れたのだ。天覧儀を勝ちぬく最後の席を望むダークネスが。
     気配を嗅ぎとりにあは振り向くと――武器を手にする大柄な男がこちらへ歩いてきていた。
     

    「うまそうじゃねえか。俺も食わせてくれよ」
     灼滅者達がバーベキューを囲む後方から大きな刀を肩に担ぎ、ダークネス――轟・雷剛は声を上げた。
    「これから食べようとって時に、来るとはな」
    「気を使ってくれても構わないのだが?」
     いつ襲撃されるかは分からないとは説明を受けていたが、まさか夕食時とは。せっかくのバーベキューを邪魔され明莉と蓮太郎は言うが、
    「生憎、そういう性格じゃねえんでな」
     そうダークネスは言い返すと灼滅者達を睨みつける。
    「ひい、ふう……8人か」
    「1対8だとか正々堂々だとかそんな御託は要らん。卑怯もラッキョウも無い、どんな手段を使ってもお前を潰す。そのつもりだ」
     自分と戦う相手の人数を数えた雷剛。その言葉に彼方は言い、妖の槍・蒼創華を手にすると朱塗り鞘の愛刀・緋桜を手にしながらも接敵を救援チームへメールする。
     救援を求める際の合図である花火の置き場所を再確認し、灼滅者達はダークネスト対峙する中、
    「粛々と参ります」
    「この手に戻れ、灼滅の力」
     にあと優志は解除コードと共に武器を手にするとルリもギガドリルランスを構えた。
    (「スゴイ気迫だけど……怖がっていられないよね!」)
     どす黒いオーラを纏うダークネスを前にルリは気迫に押されそうになる。だが、負ける訳にはいかない。
    「このキャンプの定員は8人だ。お前の席はない」
     せっかくの夕食だというのにそれを妨害されるとは。面倒くさそうに幸太郎は言いながらも武器を構えると、
    「8人? ……ならお前達全員倒せば問題ねえな!」
     にい、と笑いダークネスも刀を構えた。
     

    「悪いけど……お前らの好き勝手させる気はないんでね」
    「ほざけガキが!!」
     構える優志の言葉に雷剛は吼え、手にする刀を軽々と振り上げるとぶん、と力任せに凪いだ。
    「させるか!」
     声を上げ、蓮太郎は千李と共に重い一撃を防ぐと、その痛みに相手の実力が伺えた。この男、かなりの強敵だ。
    「大丈夫か?」
     優志がシンプルな指輪・月虹緋華から制約の弾丸を放つ中、受けたダメージを癒した幸太郎から声をかけられ蓮太郎は礼を言うと盾を構え雷剛めがけ叩き付ける。
    「お前の相手は俺だ!」
    「ほう? 面白い」
     がづん、と鈍い音を響かせ盾を腕で受けた雷剛。最初の標的を蓮太郎に定めたらしく、にやりと言い、睨みつける。
    「テメェは潰す。今日、ここでだ」
    「そうだな、ここで潰す!」
     槍を手に彼方は妖冷弾を放つと後方から桜の花弁が舞うような光の霊気を纏い、明莉は雷剛に拳を叩き付けた。砂をはね上げてからの連撃を腕で庇い、雷剛は防ぐとにあのDCPキャノンとルリの鬼神変を立て続けに受ける。
     服が裂け、傷口から血が流れるが雷剛はものともしない。千李の攻撃を受けてなお、その表情は余裕そのものだ。額から流れる血を乱暴に拭い、蓮太郎めがけ拳を振り上げる。
    「ほう、よく受けたな」
     渾身の攻撃を受け、踏みとどまる姿に感心した雷剛だが、
    「……どれだけもつか楽しみだな」
     にやりと口をゆがめ、睨みつけるとどす黒いオーラを纏う。
     灼滅者達とダークネスは戦いを続けるが、雷剛は蓮太郎を狙い続けた。幸太郎が回復を図っても間に合わない程に。
    「どうした? そろそろ限界か?」
    「……ぐ、っ!!」
     叩きつける一撃は予想を上回るものだった。それは蓮太郎の限界を越え、ふらりとよろめき、踏みとどまろうとするが――
    「死ねえ!!」
    「皆守さん!」
     再び振り上げる得物。悲鳴に近いにあの声。血を流す蓮太郎を目に、ダークネスはにい、と笑みを浮かべて再び刃を振り下ろす!
     ぎいん!
    「させない……」
     火花を散らし、愛刀を手に千李が立ち塞がり受け止めた。仕留め損ね、雷剛は眉をひそめるものの灼滅者達の攻撃を全て捌く。
     攻撃を受け、むき出しの腕を血が伝い流れるが雷剛は大したダメージを受けているようには見えなかった。痛みなど感じないかのように余裕さえ伺えた。
    「大丈夫?」
     明莉とにあが攻撃する中、ルリは呼びかけるが蓮太郎は倒れ、反応はない。だが致命傷までは至っていない事に安堵し、そして持ち堪える事ができるか思案する。
     この男――強すぎる!
    「救援要請するよ!」
     その言葉に反対する者はいなかった。打ち上げまで駆け、青の花火を打ち上げる。
    「戦ってる最中に花火か、余裕だな」
     上がる青い花火を目に千李の刃を拳で払い、雷剛は返す手で胴を打つ。刀で防ぎきれず、その一撃にうめきを上げそうになるが耐え、構えなおした。
    「弱い、弱いぞお前達!」
     優志が手にする蒼焔白騎からの攻撃を刃で打ち払い、雷剛は吼える。救援を要請して数分経ち、ダークネスと対峙する灼滅者達は幸太郎一人だけでは回復が間に合わない状態まで陥っていた。
    「……くっ」
     受けたダメージの大きさに攻撃から回復に切り替え、彼方は目の前に立つダークネスを睨み付ける。強力な相手だというのは全員分かってはいたが、ここまで強いとは。
     支援チームへ救援を要請したが、すぐに来てくれるだろうか? もし到着が遅れたら?
    「テメェは潰す。何があってもだ」
     仲間達の攻撃を目に、彼方は武器を握り締めた。
    「ここまでのようだな、ガキども」
     回復が追いつかない灼滅者達をの攻撃を難なく捌き続けた雷剛は、どす黒いオーラを纏うと巨大な刀を持ち上げ――振り上げる!
    「死ね!!」
    「させるか!」
     突然の声。それと同時に仲間達――救援チームが割り入る。砂を蹴り、武器を構え、そのまま雷剛が放つ一閃をディフェンダー3名が防いだ。
    「遅くなりました」
    「いえ、助かります」
     ソーサルガーターを使う白と共に霊犬が浄霊眼を使い、傷付いた仲間達は回復していく。にあが礼を言う中、攻撃を防いだ3名は反撃とばかりに攻撃をしかけた。
    「何人来たって同じだ! 全員まとめてブチ殺してやるわ!」
     新たに現れた灼滅者達を見渡し、雷剛は吼えた。見せつけるかのようにぶん、と武器を振り、構えるダークネスを前にしても救援者達はひるまない。
    「……言ったな」
    「後悔しても知らないからな!」
     ダークネスに優志と明莉は言い返すと武器を手に攻撃を繰り出した。
     支援チームも加わり、状況は一変する。たとえ強力なダークネスといえど、この人数ではさすがに優勢である事は難しかった。
    「隙ありだよ!」
    「生意気なガキが!」
     ルリの攻撃に腕を裂かれ、血が吹き出した。救援チームに加えて明莉とにあの攻撃をまともに受けた雷剛の体は血に染まりつつある。
     千李の攻撃をかろうじて避け、回復を図るが優志と彼方の攻撃に支援も加わり、回復よりダメージの方が上回っていった。
     戦いは続いたが、遂に雷剛の手から武器が滑り落ちる。巨大な得物を持つ力もなく、それでも構えるが、持ち堪える事はできないだろう。
    「悪いが、最後の席は俺が頂いていく……」
     軽く口元に笑みを咲かせ、愛刀を手に千李は構え、白刃を閃かせた。その一撃は身を裂き、切り捨てる。
    「……やる、な……ガキ……」
     ごぼりと口から血の塊を吐き、雷剛は言葉を吐くが、限界のようだった。がくりと膝を突き、地に倒れこむ。
     どずん、と音を立て、ダークネスの姿は灼滅者達の前で砂になり、消えていった。
     

    「助かった。ありがとう」
     戦闘不能に陥っていた蓮太郎だが、意識を取り戻すと助けてくれた仲間達に礼を言った。
     ダークネスを倒し勝利をおさめた灼滅者達だが、救援チームの戦いは続く。心霊手術を申し出たが、戦闘方針があるのだろう。
    「いや、大丈夫」
     白焔は言い、それを断ったが、せめて少しでもとサイキックでの回復を行う事にした。
     それから程なくしてひゅう、と高い音。見上げると光の尾を引き、花火が上がった。
     陽が沈みゆく茜の空に、青い花火。
    「あれは……」
    「救援要請、ですね」
     それを目にしたルリとにあは思わず口に出す。
     今この瞬間も仲間達が戦っている。そして、その仲間達の為に戦う仲間達もいる。
    「そろそろ次に行くっすよー!」
     消え行く花火を目にその場所を確認し、チームクレミスのメンバーは足早に次の場所へ向かっていく。その姿を仲間達は消えるまで見つめていた。
    「さて……無事片付いたな」
     優志は言いながら周囲を眺めると手にしていた槍を砂浜に突き立て、彼方も缶珈琲で一息する。
     他の仲間達は大丈夫だろうか? 救援チームは無事に次の場所へ辿り着いただろうか?
    「……まったく、とんだ青春だな」
     ここの学園行事は戦ってばかりだ。缶コーヒーを手に幸太郎は言うと口にし、空を眺めるとちらほらと星が瞬きだしている。
     様々な思いを胸に灼滅者達は沈み行く夕日を見つめていたが――
    「あ、バーベキュー」
     思い出したように明莉は口にした。
     これから食べようとした所の襲撃だ。焼いていた肉は焦げてしまっただろう。温かかったカレーやご飯は冷めてしまったに違いない。
    「焦げただろうな」
    「カレーもご飯も冷めたよね、きっと」
     彼方とにあは言葉を交わすが、
    「肉はたくさん持ってきたからな。戦いも終わったし、仕切り直しはどうだろう」
    「おーにくーっ!」
     蓮太郎の言葉にルリも元気に声を上げた。肉祭りの再開である。
    「ご飯もおいしく炊けたし、カレーもおいしいのです!」
     食欲をそそる香りにルリは彼方と明莉が作ったカレーを口にすると、スパイスと野菜や肉の味がご飯と絡まり、絶妙な味わいが広がる。その味に思わず笑みを浮かべてしまった。
    「カレーって色々と物議を醸し出すけど、やっぱりあれか?  卵入れるなんて! とかソース掛けるなんて! とか拘りあるクチか?」
    「追加のトッピングは各自、皿でな。鍋に直接ぶち込んだ奴はカレーの具にする所存だ」
     カレーは美味しければいいという優志ではあるが、仲間達はトッピングに拘りがある気になったようだ。鍋をかき混ぜ、すくう彼方からカレーを受け取り、仲間達がどう食べるか見てしまう。
    「から、からい…?! お、お水」
    「カレーには牛乳も合うぞ」
     普段は甘口カレーを食べるにあには辛かったようだ。水を飲み、説明しながら幸太郎が手渡す牛乳を受け取り、ゆっくりと口にする。
    「この牛乳おしいです」
    「それは良かった。この牛乳は興部名物でな……」
     その言葉に幸太郎の冷静な表情が少しだけ緩むと。
    「皆、遠慮せずに食え食え」
    「ラム肉も最高やね♪」
    「道産のラム肉は高級品だからな。特に……」
     仲間達がカレーに舌鼓を打つ中、蓮太郎は持参した肉をじゃんじゃんと焼く。ちょうどいい焼き加減のものを皿に取り、明莉は平らげると幸太郎に皿に取りつつ、ラム肉についての薀蓄を語りだす。
     見慣れないジンギスカン鍋に興味津々の千李はその形をじっと見ては焼きあがる熱々の肉を取り、冷ましてから口にした。
    「だから、魚介と野菜も喰おうぜ? お前ら……」
    「そうだな、野菜も食え、野菜も」
     そこに再び優志と彼方が言葉をかけたが、どうなる事かと思いきや、
    「道産の野菜もたくさん持ってきたからな。どんどん食べてくれ」
     食材に関する薀蓄を語りながら幸太郎は様々な野菜を焼きだした。
    「おいしいね、これ」
    「みんな野菜も食べようね!」
     焼きあがる野菜を口にしたにあとルリの言葉に千李も冷ましながら食べると仲間達も野菜に箸を伸ばした。
    「さすが道産ジャガイモだけあるな。このとうもろこしも……」
     北海道産の野菜についての薀蓄を耳に話しつつ、仲間達は幸太郎が用意した野菜を口にした。
     あれこれと話も弾み、あっという間にバーベキューとカレーはなくなっていく。
     武蔵坂は最後の空席を手に入れる事はできるだろか。それはいずれ分かる事だろう。
    「夜の警戒中に起きてる人捕まえて花火するか怪談話でもしてようかと思ってたんだけど、まさか夕方に来るとはな」
    「花火? せっかくだから皆でやらない?」
    「悪くないんじゃないか……?」
     明莉の言葉にルリと優志は言うと反対の声は上がらなかった。
     戦いに勝利した灼滅者達は夕食後、警戒中に明莉がやろうと思っていた花火と怪談話(青少年的な談話は女性がいるので自重されました)で大いに盛り上がり、一泊二日の臨海学校は無事、終了した。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ