臨海学校2014~最後のチャンス

    ●北海道興部町
    「……俺の対戦相手は、あいつらか。あの騒ぎは、余裕のつもりか? よほど早死にしたいようだな。叩き潰してやる」
     ダークネスの視線の先には、臨海学校で興部町にやってきた学生達がおり、きゃっきゃウフフとはしゃいでいる。
     だが、ダークネスの気持ちは、学生達とは真逆。
     天覧儀を勝ち抜く事はできなかったが、ダークネスにとって、これが最後のチャンス。もう後がない。
     ダークネスにとって信頼できるのは、自らの拳と鍛え上げられた肉体のみ。
     猪突猛進タイプのため、戦いに負けてしまったが、同じ過ちを繰り返すほど、愚かな性格ではない。
     今度は相手に気づかれないように物陰に隠れて、不意打ちである!
     一方、学生達は急遽エクスブレインから連絡を受け、北海道の興部町で臨海学校を行っていた。
     エススブレインの話では、武神大戦天覧儀が、遂に、次の段階に進もうとしているらしく、天覧儀を勝ちぬく最後の席を賭けたバトルロイヤルが業大老が、沈むオホーツク海の沿岸の海岸で行われるという話であった。
     そのため、日本各地から天覧儀を勝ち抜いた猛者が、北海道興部町の海岸に集ろうとしているらしいので、興部町の海水浴場、沙留海水浴場周辺でキャンプを行い、やってくるダークネスを迎え撃って欲しいという事だ。
     ただし、敵がいつ来るかはわからないため、それまで海岸でキャンプをしてほしいという事である。
     エクスブレインの話によると、ダークネスは猪を模した鎧に身を包んでおり、問答無用で突っ込んでくるようである。
     なるべく少数に分かれてキャンプを行った方が警戒されないものの、相手は猪突猛進の脳筋タイプ。
     油断しているふりをしていれば、勝手に突っ込んでくる事だろう。
     ダークネスは強敵だが、攻撃さえ命中しなければ、問題なし。
     トドメを刺した灼滅者が闇堕ちするという事もないので、安心してほしい。
     また、臨海学校で敵を待ち受けるのとは別に、戦闘を支援するチームも編成されており、ある程度持ちこたえれば、支援チームが駆けつけて戦闘に加わってくれるので、ダークネスを圧倒する事が出来るだろう。
     楽しい臨海学校が、天覧儀に邪魔されてしまったのは悔しいが、集まったダークネスを全て撃破することができれば、武蔵坂学園は天覧儀の勝者の権利を得る事ができるだろう。そうなれば、武神大戦の真相を暴くチャンスになるかもしれないので、頑張ってほしいという事だった。


    参加者
    艶川・寵子(慾・d00025)
    羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097)
    香坂・天音(煉獄皇女・d07831)
    狩家・利戈(無領無民の王・d15666)
    神之遊・水海(うなぎパイ・d25147)
    ルーシー・ヴァレンタイン(ラブミープリーズ・d26432)
    日輪・白銀(汝は人狼なりや・d27689)
    透間・明人(カミを降ろした中学生・d28674)

    ■リプレイ

    ●8月12日:海水浴(昼)
    「海だー! 海だ、海だ、海だー! ね? ね? 何しよう? ビーチボールが良いかなっ! それとも、泳ぐ? 競争しちゃう? あははっ! 綺麗だね、海! 広いね、すごいねっ! 海に来たのなんて初めてかもっ! せっかくだから、思いっきりはしゃいで遊ぼうかなっ! 友達の水海ちゃんや皆とも一緒に楽しく遊ぼうっ!」
     ルーシー・ヴァレンタイン(ラブミープリーズ・d26432)が、ハイテンションで海に飛び込んだ。
     ここに来るまで、ずっと誰かに監視されていたが、攻撃を仕掛けてくる様子はない。
     おそらく、こちらの寝込みを狙って奇襲を仕掛けるつもりなのだろう。
     夜行性……、もしくは夜間戦闘を得意とするタイプといったところ。
    「待ってください、ルーシーさん」
     神之遊・水海(うなぎパイ・d25147)が、水着にパレオで海辺をはしゃぎまわる。
    「臨海学校なんてときめく響きね! 学園のみんなが水着でキャッキャウフフするイベントなんて素敵だわ」
     艶川・寵子(慾・d00025)が今年新調した水着姿で、ニコリと笑う。
     どちらにしても、ダークネスが襲ってくるのは、こちらが油断した時。
     そのため、油断しているフリをしつつ、警戒しておく必要があるだろう。
    「実は泳ぐのは、ちょっと苦手なのよね」
     香坂・天音(煉獄皇女・d07831)は浜辺にビーチパラソルを立て、その影でジュースでも嗜んだ。
    「私の本気を見せる時が来たようですね……!」
     日輪・白銀(汝は人狼なりや・d27689)が少し大胆な水着姿で、ビーチボールを手に取った。
     霊犬のシュトールもビーチボールを追って、嬉しそうに飛び跳ねていく。
    「ふっ……まったく、元気な奴らだぜ」
     狩家・利戈(無領無民の王・d15666)がサングラスを掛けて、ビーチチェアに座る。
     いつダークネスが襲ってくるのか分からないため、なるべく離れないようにしているが、いまのところは貸し切り状態。
     例えダークネスが襲ってきたとしても、まわりに一般人がいない分、戦いに支障が出る事もなさそうである。
    「でも、この綺麗な浜辺で気持ちよく読書できるのも、臨海学校ならではですね」
     羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097)が、パラソルの下でのんびり読書。
     ダークネスが現れるまでの一時ではあるが、ならばその限られた時間を有意義に使うべきだろう。
    「そろそろ、日が暮れますね」
     そう言って透間・明人(カミを降ろした中学生・d28674)が、ゆっくりと空を見上げた。

    ●8月12日:花火とキャンプファイヤー(夜)
    「それじゃ、ロケット花火1000本同時発射を試みるの!」
     水海が天音に協力してもらい、用意したロケット花火を束にして、その場にセットした。
    「なにそれ、スゲー! 飛・ば・せ! 飛・ば・せ!」
     利戈がハイテンションで捲し立てる。
     その間に天音が花火に火をつけると、全速力で離れていった。
     それと同時にロケット花火が唸り声をあげ、まるで蛇のようにウネりながら、四方八方に飛んでいった。
    「キャー! こっちに来ないでー!」
     天音が驚いた様子で逃げ惑う。
     だが、ロケット花火は天音達の後を追いかけ、パン、パン、パンと音を立てて弾け飛んだ。
    「神之遊さん……! ちょっと危な、わわっ!?」
     白銀が驚いた様子で、その場に伏せた。
     そのうちの何本かはそのまま空へと上がり、景気よくパァンパァンと音を立てていく。
    「たまや~」
     智恵美はそれを見上げて、大声を上げた。
    「たーまやー……でいいんだっけ、こういうときって……。なんでたまやって言うんだろうね?」
     ルーシーが不思議そうに首を傾げる。
     何か意味があったような気もするが、ど忘れしてしまったのか、思い出す事が出来なかった。
     そして、ダークネスの襲撃は、空が白み始めた早朝だった。

    ●8月13日:ダークネスの奇襲(朝)
    「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
     それはルーシー達がウトウトとし始めた時の事だった。
     大地を響かせるほどの大声をあげ、ダークネスが突っ込んできた。
     インソムニアで眠気を無効化していた智恵美が、慌てた様子で仲間達を叩き起こしていく。
    「うわっ! ダークネスだ! すっかり忘れて……じゃないっ! ついに来たわね、覚悟しなさい……!」
     ルーシーがハッとした表情を浮かべて飛び起きた。
     だが、まだ眠い。
     まるで睡魔がまわりで踊っているように、眠気が襲い掛かっている。
     だが、ここで寝る訳にはいかない。どんなに辛くとも寝るわけには……。
    「チィッ……! しくじったか!」
     ダークネスは猪を模した鎧に身を包んでおり、悔しそうに唇を噛んでいた。
     攻撃を避けられるとは、予想外であった。
     完全に相手は油断していた。油断していた……はずだった。
    (「ひょっとして、俺が大声を出したためか!?」)
     ダークネスが気まずい様子で汗を流す。
     あまりにも、奇襲までの時間が掛かってしまったため、無駄にテンションが上がっていた。
     その分、大声が出てしまい、相手に気づかれてしまったのかも知れない。
    「ふぅ、遊びの邪魔をするなんて、空気の読めない奴だったね、まったくっ!」
     ルーシーが呆れた様子で頭を抱える。
     ダークネスは自己反省モードに突入しているため、隙だらけ。
     おそらく、この欠点が災いして、今まで勝つ事が出来ないのだろう。
    「どうしましたか、豚肉さん? キャンプのおかずの提供ですか? さあ、火はそこですよ? 勝手に飛び込んで『こんがり上手に焼けました』ですか? ただし、臭いお肉はお断りですよ。もちろん、食べませんけど……」
     明人が皮肉混じりに呟いた。
    「な、な、な、なんだと、ゴラァ! 俺は猪だ! い・の・し・し!」
     ダークネスがイラついた様子で訂正をする。
     どうやら、ダークネスなりのこだわりがあるらしく、こちらが頼んでもいないのに、いかに自分の身に纏っている鎧が素晴らしいものなのか、ウンザリするほど馬鹿丁寧に説明し始めた。
    「……まったく、武蔵坂学園水着堪能委員会(非公認)の活動を阻害しないでほしいわ。とりあえず、私達の弾ける水着とキャッキャウフフの為に、正々堂々さっくりしっぽりむっちりぶん殴られちゃって欲しいの」
     寵子が上目遣いで、ダークネスに視線を送る。
    「ふ、ふざけるなァ! 俺はお前達を倒して伸し上がる! 絶対に……、絶対に、な!」
     ダークネスがキッパリと断言をした。
     ここで負けたら、後がない。
     故に、捨て身の覚悟で戦わねばならない。
     例え、この場で命を落とすような事があったとしても……。

    ●8月13日:ダークネスとの戦い(朝)
    「まったくダークネスじゃなければ、猪鍋にするのに……。これだから、ダークネスは!」
     水海が不機嫌な表情を浮かべて愚痴をこぼす。
    「だったら、どうする? 俺を殺すか! やってみろ!」
     ダークネスが興奮気味に叫び声を響かせた。
    「ちょっと待ってね。いい感じの温度になるまで、鉄板を炙るから」
     天音がダークネスに、『待った!』をかける。
    「そんなモン、待てるかああああああああああああああああああああああああ!」
     ダークネスが猪の如く勢いで、天音に突っ込んできた。
     それに気づいた天音が、華麗に回避!
     そのまま、ダークネスは勢い余って、火の中に!
    「うわっち! あちちちちちちち!」
     ダークネスが慌てた様子で飛び跳ねた。
    「わざわざ、自分から火の中に飛び込むなんて……、そんなに食べてほしいのです?」
     明人が不思議そうに首を傾げる。
    「うるせぇ、黙れ! 事故だよ、事故! 何が悲しくて、お前達に食われなきゃいけねーんだよっ!」
     ダークネスがイラついた様子で抗議した。
     こんな事だから、誰にも勝てない。
     そのせいで負け続けていたのだと自分自身を責めつつ、それでもどうしようも出来ない自分に対して憤りすら感じているようだった。
    「でも、ちょっとイイ匂いですね」
     白銀がダークネスを見て、涎を垂らす。
     見た目はアレだが、焼けた肉の匂いは猪そのもの。
     もしくは、上質な豚の匂い……。
    「……って、喰うなよ、マジで! もう許さねえ。絶対、殺す! 本気、出す!」
     ダークネスがイラついた様子で、鎧をゴトッと脱ぎ捨てた。
    「猪というよりも、中身は豚ですね」
     智恵美が苦笑いを浮かべる。
    「ふふっ……、笑っていられるのも、いまのうちだ! 鎧を脱いだ事によって、俺の速さは二倍……いや、それ以上になっているんだからな!」
     ダークネスが今までとは比べ物にならないほどのスピードで、智恵美達に突っ込んでいく。
    「私の! 水着堪能ウフフタイムを邪魔した罪は! とっても! 重いわ!!」
     それを迎え撃つようにして、寵子が螺穿槍を仕掛けた。
    「ば、馬鹿な! 俺の突進を避けない……だと!?」
     信じられない様子で目を丸くさせ、ダークネスが自らの腹を押さえる。
     調子に乗って鎧を脱ぎ捨てた事が、致命的であった。
     後先考えずに突っ込んでいったため、完全に串刺し、自殺行為!
     しかも、通常の倍以上のスピードで食らった最悪の一撃であった。
    「こんなところで……終わってたまるか! 俺は後がねえんだよおおおおおおおおおおお!」
     ダークネスが全身の筋肉を隆起させ、瞬時に自らの傷口を塞ぐ。
    「今のは油断しただけだ。行くぜ。今度は本気、本気の本気ィ!」
     それと同時にダークネスの中で、みるみるうちに殺気が膨らんでいく。
    「だったら、相手をしてやろう」
     物陰から現れた白焔が、ダークネスに強烈な一撃を放つ。
    「『KREMITHS(クレミス)』だな!」
     利戈が待ってましたとばかりに声を上げる。
     待ちに待った救援班の登場に、利戈達のテンションが一気にアップ!
    「何人増えたところで、何も変わらん! みんな、血祭りにあげてやらあ!」
     ダークネスが白焔を殺す勢いで、殴りかかってきた。
    「まさか、それで本気か?」
     白焔が呆れた様子で攻撃を避けていく。
     ダークネスの動きは単純で、攻撃を読むのは容易。
     万が一、攻撃が命中した場合は、シャレにならないほどのダメージを受けてしまうが、当たらなければいいだけの話。
    「うるせぇ、うるせぇ、うるせえええええええええええええ!」
     しかも、怒りで頭に血が上っているため、まわりがまったく見えておらず、放った拳が何度も空を切っている。
    「そんなんじゃ、俺達を傷つけるどころか、触れる事さえ出来ないよ」
     ミストが物陰から姿を現し、ダークネスに神霊剣を放つ。
     そのため、受け身を取る事さえ出来ず、ほぼ直撃。
    「お前達、絶対に許さねえからなあああああああああああ!」
     ダークネスも完全にブチ切れたらしく、全力全開でミスト達に突っ込んできた。
     もう何も考えられない。考える必要もない。
     みんな、血祭りにあげてしまえばいいのだから。

    「甘いわよ、あたし達は一人じゃないからね。楽しい臨海学校を犠牲にしたツケ、全部払ってもらうわよ!!」
     すぐさま、天音がライドキャリバーのハンマークラヴィアと連携を取りつつ、ダークネスに攻撃を仕掛けていく。
     だが、ダークネスは避けない。
     そのまま、天音達を弾き飛ばし、さらに勢いを増して、突進!
    「さっきからワンパターンで、芸が無さ過ぎなんだよォ! テメエはここで、お終いだ! このまま、ぶち抜いてやらあ!」
     次の瞬間、利戈が叫び声を響かせ、ダークネスにデッドブラスターを撃ち込んだ。
    「そんな攻撃が……効くかあああああああああああ!」
     ダークネスが再び筋肉を隆起させ、利戈の攻撃を防ごうとする。
     しかし、ダークネスの予想に反して、先ほど塞いだはずの傷口がパックリと開き、まるで空気が抜けるようにして、大量の血が噴き出した。
     それに加えて、利戈の一撃!
     攻撃を避ける事も出来ず、モロに食らった。
     先程パックリと開いた傷口に……!
    「ば、ば、馬鹿なァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア」
     ダークネスが断末魔を響かせて、派手に吹っ飛んだ。
    「武神大戦天覧儀の優勝は、俺たち武蔵坂学園がもらった! 文句あるか!」
     利戈が勝ち誇った様子で胸を張る。
    「さあさあ、ダークネスも倒しましたし、お肉! お肉ですよ!」
     水海が瞳をキラキラさせた。
     もう待てない、我慢できない。
     早く食べたい、今すぐ食べたい。
    「確かに、今回の大きな楽しみの一つだったものね! しっかりと食べさせてもらおうかな♪」
     そう言ってルーシーが、救出にやってきたミスト達も加えて、仲間達と焼き肉を焼き始めた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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