臨海学校2014~強ければモテるのは幻想だと思う

    作者:立川司郎

     緑あふれる北の町に不釣り合いな漆黒の車体が、夕日を反射させて静かに停止した。
     車体に書かれた『HKT六六六』の文字。
     その意味を知る者であれば、彼らの到着に警戒を示しただろう。停止した車の窓がすうっと開くと、厳しい表情の男が一人顔を覗かせる。
     さわさわと海風が窓から吹き込み、髪を撫でた。
    「あいつらか」
     ここで勝てば、天覧儀最後の枠が手に入る。
     何より、ここまで来て枠が手に入らず敗退した事が悔しくてならなかった。アンブレイカブルとして、強者こそが正義だからである。
     拳を握りしめ、彼は呻いた。
    「強くなる……強くなって…女の子にモテるんだ!」
     えええ、と小さく驚きの声をあげる運転者。
     乗車しているアンブレイカブルの男に直接文句は言わないが、車内の空気が冷え込んだ事に本人が気づいているかどうか。
     なおも力説を続ける。
    「体育の時間にマラソンがケツだったのがそんなに悪いか! 柔道なんか体育の時間のオマケみたいなもんだろ、なんでぶん投げる奴だけキャーキャー言われんだよ! おかしい! 強さこそ正義なのか、お前は格闘ゲームの主人公か!」
     叫びながら、男はドアを開けた。
     あの悔しさをバネに、彼はアンブレイカブルとなって修行を続けたのである。もう体育の時間の壁の華ではない。
     自信満々の笑みを浮かべて、彼は海岸でキャッキャウフフと遊んでいる(ように見える)灼滅者たちの元へと掛けだした。
    「俺も仲間に入れてええええ!」
     仲間に入って、女の子とキャッキャウフフとビーチバレーをして、ラッキースケベとか体験してみたいんだ!
     倒れた女の子を支えて、思わず胸を掴んでごめんなさいと顔を赤らめる女の子が見たいんだ!
     ……などという供述を、口から発しつつバトルは開始するのだった。
     
     さわやかな笑顔で、相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)はそっとビーチボールを手渡した。
     渡された灼滅者がそれを両手に持つと、何故かそれはずっしりと重かった。
     ええ、それはもう何か鉄的な何かが入っているようなビーチボールである。それでダークネスにダメージを与える事は難しいだろうが…。
    「精神的に必要かと思ってな」
     当たったら痛そうな、地味にこっちも辛いボールである。
     それはさておき、どうやら臨海学校でまた一騒動であるらしい。
    「皆予想していたかもしれんが、天覧儀の最後の席を賭けて、北海道興部町近辺でバトルロイヤルが行われるらしい。日本各地から、天覧儀を勝ち抜いた猛者が集まっている。だがそれだけじゃない」
     最後の席を手に入れる為、これまで敗退したダークネス達が集まっていた。隼人は、皆にここでキャンプをしながら敗退したダークネス達を迎撃して欲しいと告げた。
    「襲撃するのは鈴木という名の、元はごく普通の高校二年生のもてない男の子だったが、モテたいが為にアンブレイカブルになった、ある意味強者だ。こいつはお前達が海岸でキャッキャウフフと楽しそうに花火や恋バナなんかしていると、怒りを込めて攻撃してくる。女の子に対する執念だけで強者になったから、何がなんでも女の子にしか攻撃しないし、割と粘り強い。武器は影技だから、後衛に居ても狙われるのは間違いないな」
     さらりと隼人はそう言った。
     ちなみに女の子が全く居なかった場合、絶望に囚われて全力で前衛からたたきつぶしてくるだろう。
     ただ、鈴木は女の子耐性が無い為、男の娘でも見分けが付かないかもしれない。
    「鈴木は馬鹿みたいにタフだが、しばらく耐えれば、支援チームが到着するはずだ」
     せっかくの臨海学校なのだから、さっさと片付けて楽しみたいもんだ。隼人はふと笑って、最後に花火を手渡したのだった。


    参加者
    巫・縁(アムネシアマインド・d00371)
    長久手・蛇目(憧憬エクストラス・d00465)
    竹宮・友梨(鳴歌巫医・d00883)
    洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)
    天咲・初季(火竜の娘・d03543)
    宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908)
    花衣・葵(桜雨詩・d20215)
    十・七(コールドハート・d22973)

    ■リプレイ

     暮れる空を眺める浜辺に、火が爆ぜる。
     嬉しそうに肉を並べる長久手・蛇目(憧憬エクストラス・d00465)の目当ては、どうやら最初から肉だけであるらしい。準備の要らないバーベキューを楽しむ八人の傍には、ちょこんと竹宮・友梨(鳴歌巫医・d00883)の霊犬が座っていた。
    「欲しいっスか?」
     蛇目が肉をちらちらさせながら、聞いてみる。
     あんまり甘やかしてくれるな、と友梨は蛇目に言うとカメラを構えた。レンズに映るのは、肉を食べている蛇目。
     そしてパレオの水着と麦わら帽子で花火を取り出している、天咲・初季(火竜の娘・d03543)。シメは焼きそばパン、と言った友梨に彼女は『焼きおにぎりでしょ!』と、バーべキューの網で焼き始めた。
    「食べ終わったら、皆で花火しようよ」
     初季は楽しそうに、友梨に言った。
     腹が減っては戦が出来ぬ、と宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908)は蛇目に負けじと肉を口に放り込んでいる。
    「しかし、あの鈴木ってアンブレイカブル。誰かが彼女になったら大人しくなったりしないッスかね」
     和巳がそう言うと、目が合った花衣・葵(桜雨詩・d20215)がふるふると首を振った。
     そりゃあ葵だって、選ぶ権利があるというものだ。
    「それは困ります」
    「ああ、やっぱりみんな好きな人とか恋人とか居るっすよね。…俺は…まぁ、いない、よ」
     ぽつりと和巳が落ち込んだ様子で、葵に言う。
     葵は顔を赤くして何か言いかけたが、ちらりと和巳を見上げて聞く。
    「和巳君は好きな人とかいるの?」
     何だか少し、恋の話になって来たようで。友梨はカメラを洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)に向けた。野菜を焼いていた静流が、カメラを友梨の手から取り上げると自分の方へと向ける。
     そっと肩を寄せて、カメラのレンズに二人を撮す。
    「ツーショットってあんまり撮った事がないような気がするな」
     静流が言うと、気付いた巫・縁(アムネシアマインド・d00371)がカメラ役をかって出た。
     葵と和巳の話を思いだしながら、友梨は静流との想い出をカメラへと納めてもらう。強い女子が好き、って言う女子は確かにいる。
     友梨は和巳の傍に座りながら、言った。
    「校長みたいなたくましくてダンディな人は憧れるな。ただ、下心全開なのはデリカシーがなさ過ぎる」
     大事なのは、一緒に居たいと思うかどうかだ。
     友梨はそう言うと、静流を振り返る。じっと夜の海を見つめている静流は、友梨の声が聞こえたのか振り返って微笑を浮かべた。
     ぽつりと恋バナをしている間に、皆食事も終わったようだ。
     縁が花火を取り出して、皆に配っていく。
    「そこの青いのと赤いのは何人かで持っていた方がいいな」
     連絡用の花火を分けて、縁は一つずつ自分が左手に持った。手渡された花火を、十・七(コールドハート・d22973)はじっと見つめて火を付ける。
     何か地味だと言っている初季は、何だかんだで楽しそうに花火を振って遊んでいるし、蛇目は両手に花火を持って自分に火の粉が掛かっている。
     静かに花火を見て目を細める葵、そして友梨は静流と笑顔で話ながら花火をしていた。
     ちらりと縁が、こちらに気付いて声を掛ける。
    「どれがいいんだ?」
    「色が変わる奴」
     そう言うと、七は変色花火を受け取った。
     色とりどりに変わる花火が、七の目に映る。
     キラキラと、暮れていく日の中で花火は鮮やかに輝き続けた。車の音が聞こえてきたのは、花火が色を失ったと同時。
     ふ、と消えた花火から七が視線を上げると、来たかと静流が呟いて携帯を取り出した。
    「俺も仲間に入れてええええ!」
     楽しそうに笑いながら駆けてくる鈴木の姿が、灼滅者達の目に止まる。
     手には影業で作り出したビーチボールを抱えて、鈴木はクラスメイトに合流したかのような様子でボールを投げた。
     むろんこれは単なるビーチボールではなく、剛速球で放り出された殺人ボールに等しいという事は言うまでもない。
    「殺界形成を行うから、連絡はお願いするわね」
     葵は静流に言うと、周囲を見まわして即座に展開した。縁や蛇目が前に立ちはだかっている間に静流が携帯電話で、仲間へ戦闘開始のメールを送る。
     支援班に助けを求める事になった場合、これが重要になる。
     鈴木はそんな男性陣は無視して、ボールキャッチの姿勢に入った七と和巳の方へとスキップまじりで走ってゆくのだった。

     殺界形成を行う葵が影を這わせながら、鈴木の方へ静かに視線を向ける。
    「ビーチボールなんかどうですかぁぁぁ!」
    「お断りするわ」
     コンマ一秒くらいで、葵が即答する。
     鈴木の前へ回り込んだ和巳が、縛霊手を振り上げて斬りかかる。その腕をひらりと躱し、鈴木は高笑いした。
    「俺は幼女と言えど容赦はせんぞ。好き嫌いがない子だと褒められるんだ」
    「少しは好き嫌いしろ、犯罪者! それにここは関係者以外立ち入り禁止っスよ!」
     いざという時、性別を暴露すれば逃げられるかもしれないと少しだけ考えた和巳であったが、退路は断たれた感じだ。
     ……むろん、イザという時だってほんとは逃げたくないけど。
     猛暑を冷やす氷塊を放ちながら、和巳が鈴木の放つ影ボールを懸命に弾き返そうとする。だが、鈴木のボールは容赦なく和巳を叩きのめしていく。
     耐えながら、和巳は結界を張ってそれに対抗した。
    「くっ……ここで倒れたら、他の女の子が狙われるっス」
    「晴嵐、させるな!」
     友梨が霊犬に声を掛け、和巳のフォローに入らせる。
     和巳に向けられたボールを晴嵐が身をもって弾くと、振りかぶったボールを今度は縁が受け止める。
     縁の腕はビリビリと痺れ、その重さに呻き声が漏れる。
     晴嵐も、そして和巳も息が上がっているのを見ると、友梨は険しい表情を浮かべた。
    「か弱い小学生の女の子にボールを全力で投げつけるとは、優しさが全く足りないな」
    「何を言う、全力でビーチバレーをしてうっかり倒してしまって介抱するまでがテンプレだろうが」
     和巳に防護符を放つ友梨に、鈴木が言い返した。
     斬鑑刀を振り上げた縁が鈴木へと叩きつけるも、その鋼の体は揺るぎもしない。逃げも隠れもしないがこの男、無駄に堅い。
     二撃目の斬鑑刀を、鈴木はぴたりと影ボールで受け止めた。
    「男に用はない!」
    「……ですよねー」
     ……ブレないな、この男。
     縁はなんとなく、鈴木の言い分が分かる気がした。
     影ボールをしっかりと空に掲げた鈴木は、予告ホームランのようなポーズでぴたりと友梨を差した。
    「貴様にキャッキャウフフと言わせてみせる!」
     叫びつつ、鈴木は剛速球を放った。
     その変態性と裏腹に、鈴木のボールはやたらと重い。放たれたボールは友梨を直撃し、砂浜へと叩きつけ……かけた。
     体勢を崩した友梨が、とっさに静流を掴んで二人でもつれるように砂浜へと転がる。
     とっさに押し倒すような姿勢になったのは、決してわざとではない。
    「ご、ごめん友梨」
     さっと起き上がって手を差しだした静流に助け起こされながら、友梨がそっと視線を反らし顔を赤らめる。
    「大丈夫……だから」
     繰り返すが、わざとではない。
     鈴木のあずかり知らぬ所で、ターゲットのキャッキャうふふが展開されているようだ。怒りに燃えて鈴木がボールを放つと、それを和巳が阻止した。
     そのボールが友梨に向けられていたのを、見たから。
     そして、和巳は男の子だから。
     最後の力を使い果たした和巳が、砂浜に崩れ落ちる。蛇目がとっさに前に立ちはだかると、縁が彼を抱え上げた。
    「……あのなぁ、お前は分かってねぇよ」
     割とここまで、縁も斬鑑刀を食らわせてきたはずだが、和巳が倒れる所を見せられて笑ってはいられない。
     怒りに震えて、縁は言う。
    「ラッキースケベとかそういうのは、偶然起きるものであって、決して自ら起こしたいという邪念で出来るもんじゃねぇんだよ!」
    「そう、それに残念ながらラッキースケベとはリア充のみに許された伝説の隠しコマンドだ」
     縁に続いてキッパリと真面目な顔で言い放った静流を、後ろから生温い目で友梨が見守る。いつしか、縁は鈴木とガッチリと手を取り合っていた。
    「……あれ? 俺どっちの味方?」
     ……ああ、突っ込むのはそこなんスね。
     ぽつりと小さく和巳が呟いた。

     当初蛇目は装甲を破られる事と捕縛を避ける為にガードをメインにしていたが、和巳が倒れてなお鈴木が倒れる見込みがない事に気付いていた。
     比較的手の空いている今のうちに、と盾で身を守ると七を庇いに入った。
    「相手はこっちですぜ!」
     蛇目がバッシュで気を惹くが、気を抜くとすぐに七の方を向いている。
     ドグマスパイクで相手の手数を減らそうとしていた初季であったが、蛇目をはじめとして前衛は長期戦で疲れが見え始めていた。
    「強い……」
     初季がバベルブレイカーを構えながら、呟く。
     鈴木は相も変わらず、ビーチボールで七を狙おうとしているし、その意図が透けて見えて初季は溜息しか出ないし。
    「最低だ」
    「……どういう事ですか?」
     葵が首をかしげると、初季は指を差した。
     水着の上から上着を来ていた七が、次第に暗黒ビーチボールで破れ始めていた。事故ではなく、それは意図的であると見るべきだ。
    「強い……けど最低だ! 最低だけど強い!」
     悔しそうに初季が叫ぶ。
     ここに来た時から、七はあまり上着を脱ごうとしていなかった。何かそこには彼女なりに理由があるのだろうが、それを無視して剥ぐとは鬼畜の所行だ。
    「ここは任せといてください!」
     蛇目が前へ出るが、七は気にする様子もなく鈴木の死角へとするりと飛び込む。その動きを見つつ、影でするりと切り裂き距離をあける七。
     次第に装甲が割かれていたが、七は庇って貰おうとはしなかった。自分は相手を庇うが、自分が狙われたからといって庇ってくれとは言わない。
    「相手がタフなら、削るだけよ」
     淡々と自分の戦いを続ける、七。
     後方から葵が風を送り込んでくれたが、蛇目と七は特に疲労が溜まっていた。息が切れるのが、蛇目も悔しい。
    「これ以上……七さんの服は破らせないわ」
    「残念ながら、俺には破る服など無い!」
     葵の言葉に、鈴木が言い返す。
     それを聞いた七が、影をゆらりと動かした。
    「あるわ。……肉が」
     葵の影縛りを受けた鈴木に、初季がミサイルを叩き込む。
     仲間の援護射撃の中、七は切り裂き続けた。
     裏表なく貪欲な鈴木のような馬鹿な相手は、本当は嫌いじゃない。友好的にはなれないけど、彼は裏はかかない相手だ。
     鈴木の放ったボールが眼前に迫った七を、蛇目が割って入る。
    「……くっ、そろそろ俺もヤベェ……色々と…」
     ポロリとか、色んな意味で蛇目もヤバイ。
    「女の子なら誰でもいいの」
     七が問いかける。
    「だって…お友達にすらなってくれないじゃないですかー!!」
     鈴木の心の叫びが、七の上着を切り裂いた。
     構えて衝撃に備えた七の背に、ちらりと傷が見える。
     後ろにいた初季が、とっさにパレスを外して七を受け止めた。最後まで戦おうとしていた七は、先ほどの衝撃で意識を失っている。
    「……こんなの。強さでも何でもないよ」
     すっくと立ち上がる、初季。
     ちらりと初季が縁に視線を投げると、縁と蛇目、そして友梨の霊犬が包囲した。友梨は、手にした花火を空に向ける。
    「削りきれなかったか…」
     暮れる空に、青い花火が高く上がった。

     打ち上がった青い花火が、浜辺を明々と照らす。
     縁は後ろでぐったりとしている和巳と七を振り返り、きっと鈴木を睨み付ける。女の子二人も倒されては、冗談で澄まされない。
    「この辺に援護が居ないって事は、来るまで二~三分は掛かる。それまで耐えられなかったらオレが何とかする」
    「カッコ付けるのは止めにしましょうや。……すぐに来るっすよ、同じ浜に居るんスから」
     堕ちる覚悟を表情に滲ませる縁に、蛇目が言った。
     後方への攻撃に切り替えた鈴木は、最初から一環して女の子狙いだというのはブレない。ブレなさすぎる。
     影技ボールを狙い撃ちにされる友梨を、彼女の霊犬だけでなく縁や蛇目も必死にフォローしていた。
     フォローを二人に任せねばならない静流は、もっと辛そうにしている。
    「……援護が来るなら、もっと削っておかなきゃ……」
     初季はバベルブレイカーを構えると、炎を纏わせて突っ込んだ。縛霊手を炎で包んだ葵も、初季に続く。
     最初からこうして焼いておけば、少しはじりじり削っていたかもしれないと、ふと初季は思う。
    「何にしても、後の祭りね……!」
     バベルブレイカーの炎が顔を彩った、その時。
     葵がはっと振り返った。
     後方から、誰かが駆けてくる足音が聞こえたのだ。ここに来て仲間の到着に、葵の表情が思わず緩んだ。
    「待たせたの!」
     葵の横をすり抜け、風香が前に飛び出す。
     鈴木が放った影をキャッチすると、風香はそれをまじまじと見つめた。どうやらそれは、影で出来たビーチボールらしい。
    「なんじゃ、ビーチバレーがしたいのか」
    「くっ……援軍とは卑怯な! オレがボッチだと思って馬鹿にしやがって」
    「卑怯なのは女の子を狙う君の方だ」
     ミストがクルセイドソードで斬りかかると、鈴木の影ごと体を切り裂いた。
     初季の横でアプリコーゼがミサイルを放っているが、ちらりと初季が見るかぎり相当怪我をしている。
     ビーチバレーじゃと笑って居る風香も、攻撃を受けて即座にセトラスフィーノと交替する。
    「支援班をフォローしろ!」
     友梨が霊犬に指示し、同時に彼女達へ防護符を放つ。
     しかし既に負った傷は、深い。
     大丈夫だと言った静流の言葉に頷き、友梨は再び符を放った。
    「しっかりしろ!」
    「大丈夫。わたし達はまだ、行かなきゃいけない所があるんだから」
     凛としてそう友梨に答えるセトラスフィーノ。
     その体を、鈴木の影がじわりと食らいつく。精神に食らいつく影に、セトラスフィーノの脳裏に何かが浮かびかけた。
     その腕を、アストルが掴んだ。
    「先輩、代わるよ」
     支援組は次々前衛を替える事で、鈴木の攻撃から少しでもダメージを減らそうと努める。仲間のガードの隙から、白焔が拳を握り締めて鈴木の懐へと滑り込んだ。
     初季や葵たちの攻撃を受け、鈴木が守りに入っている。
     静流は異形化した腕を構え、振り上げた。
    「お前が強ければ、モテただろうな。……ただしイケメンに限る!」
    「ぐはっ……そ、そうか……オレが……イケ」
     メンじゃなかったから。
     という最後の言葉を言いかけたまま、鈴木は逝った。

     何だか冗談のような相手だったが、浜辺は死屍累々だった。
     ひとまず和巳と七は葵が様子を見ており、初季、静流、友梨、蛇目、そして縁が支援組へと心霊手術を試みた。
    「まだ半分残ってんのか?」
     縁はその傷を見て、不安そうに言う。
     こくりと頷き、フランキスカがちらりと顔を上げる。白焔、セトラスフィーノ、ミスト、フランキスカを除いた4名が心霊手術を受け、残り4名が傍で待機している。
     フランキスカは落ち着かない様子であったが、花火が上がったのが空に見えると体を起こそう動き出した。
    「合図です、私達はこれで……」
    「まだ動くのは無理ですぜ。俺達の力を出来るだけ分けますから、まだ寝ていてください」
     蛇目はそう言うと、彼女をそっと宥めた。
     霊犬がちょこんと、ミストを見下ろしている。その傍で、白は静かに花火を振り返り、そしてミストに視線を落とした。
    「先に行っていますから、ここでしっかりと心霊手術を受けてきてください」
     白はそう告げると、花火の上がった方へと駆け出した。

    作者:立川司郎 重傷:宮村・和巳(傷付けたくない殺人鬼・d03908) 十・七(コールドハート・d22973) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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