臨海学校2014~天覧儀の終幕へ

    作者:真壁真人

    「武神大戦は新たなる境地へ至ろうとしている──天覧儀の終幕は近い」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)はそう話を切り出した。
     アンブレイカブル『業大老』が新たな師範代を選ぶために開始した武神大戦天覧儀。
     多数の激闘を生んだ戦いは、武蔵坂学園の灼滅者にも多くの闇堕ちを強いながら、新たな段階へ進もうとしている。
     だが、武神大戦の『新たな段階』へと進むための席は残り1つ。
    「その座を巡り、生き残りをかけた最後の闘いが、業大老の沈むオホーツク海を臨む沿岸で行われようとしている」
     天覧儀をここまで勝ち残った猛者の集まる決戦の地。
     それは、北海道興部町の沙留海水浴場だ。
    「今年の臨海学校は、天覧儀最後の戦いに訪れるダークネスを迎え撃ちながら行うことになる」
     臨海学校。ヤマトの口にした言葉の響きに、灼滅者達は激戦を予感する。

    「ここに集まってもらった者達には援護チームとして、強敵との戦いに挑む者達に加勢してもらう」
     出現するダークネスに対しては、1チーム8名を当てての迎撃が予定されている。
     今回の闘いでは幸いにも、天覧儀特有の『ダークネスにとどめを刺した者の闇堕ち』は発生しない。
     だが、戦う相手となるダークネスは天覧儀をここまで残った者ばかり。
     8人だけでは勝利しえないような猛者が混じっている可能性も高い。
    「そうした強敵と戦う者達を援護するのが皆の役割だ」
     1チームだけでは苦戦を強いられる相手であっても、さらに8人を加えれば、勝利の可能性は生ずるだろう。
     時間帯を問わず行われる戦いの現場に救援として参戦し、勝利を収められるように援護することが、このチームの役割となる。
     一泊二日の臨海学校の全ての戦いが終わるまで、昼夜を問わず連絡を受けては戦場に駆け付け、戦闘を繰り返すことになるだろう。
    「そのため、このチームに参加する灼滅者には、海水浴やキャンプなどを楽しむ時間はおそらく与えられない。その点には留意して欲しい」
     他のチームとの救援の間は、いつでも戦場に駆け付けるための待機時間だ。
     ヒールサイキックだけでは回復しきれない傷を癒すための心霊手術なども、この時間に行うことになる。
    「勝利を掴むため、天覧儀の終焉まで戦い続ける……。厳しい役回りとなるが、お前達なら役割を全うできると信じているぞ」
     ヤマトの激励を受け、灼滅者達は作戦会議を始めるのだった。


    参加者
    巴里・飴(砂糖漬けの禁断少女・d00471)
    棲天・チセ(ハルニレ・d01450)
    一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)
    高村・葵(桜花爛漫・d04105)
    十七条・法権(戦闘風紀委員長・d12153)
    朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)
    蔵守・華乃(レッドアイ・d22909)
    雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)

    ■リプレイ

    「皆、臨海学校を楽しむにしては固い表情だな」
    「春からの武神大戦天覧儀、最後の戦いですものね」
     行き交う灼滅者達を見ながら呟いた一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)に、蔵守・華乃(レッドアイ・d22909)が顔を向けた。
     華乃が『巣作り』で出来た巣の様子を2人が確認していると、巴里・飴(砂糖漬けの禁断少女・d00471)をはじめ、戦闘地域の状況を確認に向かっていた者達が戻って来る。
    「お帰り」
     『シェリー』から降りる高村・葵(桜花爛漫・d04105)を、雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)が出迎える。
    「特に周辺に異常はありませんでしたね」
    「後は敵を待つばかり、ね」
     葵の報告に、朱鷺崎・有栖(ジオラマオブアリス・d16900)がそう補足を入れる。
     時刻は夕刻。賑やかに夕食のカレーを作りはじめる他の灼滅者達の様子が棲天・チセ(ハルニレ・d01450)の目に映る。
    「もうすぐごはんやなー。巣の中にいるチー達はご飯いらへんけど」
     その時、携帯電話をチェックしていた法権が、地図にピンを刺しながら鋭く告げる。
    「敵襲……2件目もだ」
     十七条・法権(戦闘風紀委員長・d12153)の言葉を受け、煌理が地図に新たなピンを刺す。
     予め臨海学校用に設置したメーリングリストには臨海学校に参加した多くの灼滅者達が登録、情報を寄せている。報告は、夕食を作っていた灼滅者達をダークネスが襲撃したことを示していた。
    「だが今回の戦い、私達の出番はそう多くはあるまい。不測の事態でも生じれば話は別だが……」
     法権がそう呟いた時だ。
     空に花火が上がった。
     その色は青。灼滅者の劣勢による救援要請の色だ。有栖と華乃が、思わず顔を見合わせる。
    「こういうのフラグって言うの?」
    「微妙ですわね……」
    「確かなのか?」
     予測が早々に否定され、半ば疑いながらも法権はチセに視線を向ける。
    「せやね。『KREMITHS(クレミス)』が向かうって」
    「何でしたっけそれ」
    「救援のもう片方」
    「ああ、姫子組ですか。ハイカラですね……」
     煌理の指摘に、感心したように頷く飴。ちなみにこちらは『ヤマト班』である。
     ほぼ同時に、別方面から新たな花火が上がる。色はやはり青色だ。
    「出番だね……『善悪なき殲滅(ヴァイス・シュヴァルツ)』!」
     巣を飛び出し、暦は殲術道具を解放する。事ここに至り、法権も自分の見込み違いを理解していた。敵は、強い。
    「強敵との戦い……ワクワクするね!」
    「楽しい臨海学校になりそうだわ」
     笑顔を交わしながら、少女達は戦場へと走り出す。

    ●夏の北海道でキャンプを
    「あれが最初の相手か……」
     煌理の視線が蟹鋏で灼滅者を地面に引き倒そうとしいているヤーコフという名のアンブレイカブルを捉えた。即座に閃光が迸り、アンブレイカブルへと突き刺さる。
    「まだ仲間が居たかッ」
     怒声を聞き流しながら、有栖はエアシューズで砂浜を蹴った。
    「向こうが態勢を立て直すまで、私達だけで時間を稼ぐわよ!」
    「庇え、鉤爪。攻撃を通させるな」
     煌理の命を受け、敵の前に立ち塞がる。
     傍から見れば酷使とも見える使い方こそ、煌理の鉤爪への愛情の裏返しだ。
    「数だけ多くとも仕方あるまい。お前等がどれほどのものか、試してやろう!」
     雨霰と撃ち込まれて来る鉄拳が、守りを固めるサーヴァントや飴達に突き刺さる。
    「さあ、次々と参りますわよ!」
     華乃が身の丈に似合わぬ長大な斬艦刀を手に飛びかかり、それに続いて灼滅者達が連携攻撃を仕掛けていく。立て続けの攻撃に距離を取ったヤーコフが鉤爪を抑え込み、強烈な殴打を降らせる。
    「好き勝手にやらせるか!」
     暦の撃ち込んだ杭の衝撃に敵が前のめりになる。すかさず葵がギターをかき鳴らす。音波を受けたヤーコフがビハインドから飛びのいた。
     その間にチセはすぐさま仲間達の回復を行なっていく。
     前衛達が攻撃を凌ぐ間にチセも回復を飛ばし、救援先のチームが形勢を立て直す。
    「ここまで来れば、勝ったも同然やな」
    「だが、他の場所でも戦いが始まっている。……楽にはいきそうにないな」
     法権の携帯電話は、先程からメールの着信を告げている。戦闘が連続して発生しつつあるのだ。

     敵の最後の一撃を受け止めた煌のビハインドが消滅していく。チセの予想通りに戦いは終わった。だが、休息を取る時間は救援チームには無い。
    「がんばって!」
     走り出す背中に、戦いを共にした者達から応援の言葉と共に回復のサイキックが飛んで来る。
     それに背を押されるようにして、8人はいっそう足を速めた。

    ●晩飯前の落ちこぼれ
    「シキテ、行って!」
     チセの声と共に狼にも似た霊犬は砂浜を駆け抜けた。主の意を受け、口にくわえた刀を拳鬼へと振るう。
    「棲天か、助かるぜ!」
     チセは同じクラブの秋帆に軽く頷くと敵へと顔を向け、苦戦を強いられていた仲間達へと集気法による癒しを向ける。
    「新手だと?」
    「行きますよっ」
     拳鬼の声に微かに滲んだ動揺を飴は見逃さない。デウカリオンと共に突撃する彼女に、華乃と有栖が続いた。
    「大丈夫ですか?」
     接近戦が展開される中、葵は救援先の者達の様子を確認しながらそう声を掛ける。だが状況の悪さは先程救援したところを上回っているかも知れない。
    「割と危ないところだったかも知れませんねぇ、ありがとうございます」
    「そっちも大丈夫? 必要なら、ゆいな回復するよっ?」
    「どちらかと言えばこれから回復が必要なのはあちらの気もするがな」
     茶化された拳鬼がもの凄い表情で法権を睨んでいる。その視線を受け流し、立ち直った灼滅者達と共に戦いを挑んでいく。こうなってしまえば拳鬼が倒れるのは、時間の問題だった。
     残るサーヴァント全てと救援チームの前衛の消耗を残し、拳鬼は消滅していく。

    「戦闘がこれで終わりなら、夕食でも一緒にやってく?」
    「気持ちだけ頂いておくんよ」
     ヴィントミューレの言葉に、チセが集気法を使いながら首を横に振る。
    「なら、せめて心霊手術だけでもさせて貰えないかしら?」
    「なら、お言葉に甘えて――」
     有栖が申し出を受け容れようとしたその時、空に新たな青い花火が上がった。
    「お呼びみたいだね」
    「バーベキュー、お前らの分も取っといてやる。だから無事で帰って来いよ!」
     秋帆の言葉を受けて、灼滅者達は再び走り出した。

    ●波間に眠れ、求道者
    「通りすがりの風紀委員長だ」
     紅月という名を持つアンブレイカブルのバックステップに合わせ、黒い影がのびた。蛇が足元から絡み付くように、影は紅月の守りを引き裂いていく。
    「……風紀委員長が【服破り】ねェ」
     軽口を叩いた昶に、奏一郎がいたたまれないように目元を覆う。
     法権の一撃を皮切りに、灼滅者達は紅月との戦いへと突入した。
     だが休憩を挟む暇もない強敵との連戦は救援チームを激しく消耗させている。
     戦闘不能となったサーヴァントは復活する時間もなく、救援先の者達を庇った前衛は朽木のように倒れていく。
    「流石にこれは……厳しいな」
     煌理がジャッジメントレイを飛ばしながら1人ごちる。
     守備に転じていた華乃が倒れ、これで救援チーム側の前衛は全滅だ。敵の足元へ滑り込み、煌理は華乃を抱えて後退する。
     それを追おうとする紅月の進路へと踏み込んだ葵の拳が、敵の肌の上で快音を立てた。
     連戦は救援チームを激しく消耗させている。
     だから、本来戦うべき者達へと勝利への願いを託す。
     一方的に助けるのではなく、共に戦う。それこそが彼女達の役割だ。稼いだ時間で立ち直った救援先の灼滅者達が、紅月にとどめを刺すまでそう時間はかからなかった。

     紅月の消滅を見届けた彩雪を始め、こちらの心霊手術に取りかかってくれた。
     戻って来る鉤爪の姿に、煌理が十字を切って天に祈るような仕草を見せる。
    「おかげで助かったッス。まだ先は長いから、気をつけて」
     その言葉に送り出される形で救援班は戦っていた場所を離れた。
     まるでそのタイミングを見計らったように、さほど遠くない場所で青い花火が上がる。
    「四連戦目……?」
    「いや、位置が遠い。向こうに任せて良さそうだ」
     ようやく時間を確保した灼滅者達は、華乃が展開した巣の中で臨戦態勢のまま、心霊手術に取り掛かった。

    ●手段と目的、悪魔は戦を求めた
     食事時だろうと、ダークネス達は遠慮なく襲来して来る。
    「こうも強敵ばかり続けて戦えるとは、臨海学校は楽しいですわね!」
     前方に見える新たな敵、ソロモンの悪魔カーネイジの姿に華乃の口から快哉が上がる。
     僅かな休憩時間に、先程1戦目2戦目で救援を行った者達が巣を訪れて差し入れと心霊手術を行ってくれていた。完調とはいかないまでも、状況は直前の戦いよりは随分マシだ。
    「新手か、面白い! さあ、最後まで死力を尽くして戦おうぞ!」
    「ええ、楽しい一時を!」
     華乃が撃ち出す制約の弾丸が、カーネイジの身を縛り動きを制限する。
    「続けて、いきます!!」
     葵が無敵斬艦刀を構え、相手の威圧に負けじと切り込んでいく。

    「お陰で助かりました♪」
    「皆様もカレーを食べて行きません? シーフードもチキンカレーも、すごく美味しいですわよ♪」
     戦いは、救援に入ってから程なくして終わった。それでもサーヴァントは何体か戦闘不能に陥り、煌理がまた天に祈っている。
    「でも段々顔色が悪くなってるような……」
     暦はそう見て取った。色々と無理があるのかも知れない。
     救援先の者達からの心霊手術を受ける中、桜花がしばしの休息を提案してくれる。
     慣れ親しんだカレーの臭いが、一心不乱にスプーンを操る靱の様子が、香りよりも、見た目よりも雄弁にその旨さを語っている。
    「ありがとなぁ。いただきます!」
     歓喜の表情で、チセはカレー皿を受け取った。

    ●路傍の花が見る夢は
     やがて五度目の救援要請が空に上がる。
     既に日は没し、キャンプファイアーが始まっていた。
     揺らめく火が戦う灼滅者達の影を砂浜に躍らせる。

     拳をりんごへと叩き込もうとしているアンブレイカブル路子の背中を、法権の放った影の刃が深々と切り裂く。
    「ホントに呼んでたとはね……!」
    「楽が出来る様に準備はきちんとしておかないと、ね」
     救援を寄越したいろはが斬りかかっている。サーヴァント達を庇いに向かわせる仲間達の指示を聞きつつ、暦が同じクラブに所属する桜夜へと言葉を向ける。
    「私たちが壁になる」
     すかさず煌理が鉤爪を向かわせる。
     こうなってしまえば、もはや路子とて押し切れる人数差ではなかった。

    「さて……急いで回復しないといけないですね」
     カノンをはじめ、救援した者達が親身になって心霊手術を行ってくれる。
     次々と救援要請が上がるのは、臨海学校に訪れている全員に戦況の厳しさを改めて突き付けていた。
    「こちらの回復、もう尽きますね」
     飴がそう指摘する。
     序盤の三連戦が大きく響き、既に灼滅者達のヒールサイキックは使い果たしつつある。
    「救援お疲れ様。しんどいだろうけど……頑張れ?」
    「ありがとうございます。皆さんのお役に立てるよう、頑張りますね」
     いろはの労いに高村・葵がそれに頷き立ち上がる。
     そして、新たな花火が上がる。次なる戦闘地点は公道沿いだ。

    ●海に叫びし最後の一つ
     砂浜を飛び出したライドキャリバー達が道路上に砂をまき散らしながら急激に方向を転換、救援要請の花火が上がった地点を目指す。
     暦は葵のシェリーの後部に飛び付いた。視界の端では蛇に変身した煌理も、飴の足元から這い上がり飴のデウカリオンに便乗している。
    「よろしく……!」
     加速と共にエアシューズの二列の車輪が、暗くなりつつある路上に火花を散らした。
     挑戦者を待ち受けるかの如く腕を広げたレスラーへの距離が急激に縮まる。
    「今だ!」
     加速のままに、暦はレスラーの胸元へと杭を撃ち出す。だが、その鋭い先端は、分厚い掌によって受け止められる。
    「おいよぉ……不意打ちたぁ、ちょっと卑怯なんじゃねぇかぁ!?」
     力任せにバベルブレイカーを捻るレスラーの力に慄然としながら、暦はバックステップで敵の掌中から杭を引き抜く。
    「すまない、待たせた」
    「やっと来てくれたか! 助かる!」
     合流した法権に、マッキが嬉しそうに声を上げる。
    「ああ……しかし、中々強力な相手の様だな」
     相手の強さを鑑みても、誰かが倒れる前に要請を寄越したマッキの判断は正しいと、5戦を経たヤマト班の者達は痛感している。強敵を8人で倒すとなれば、最初から救援を頼みにしない意志と戦術が最低限必須だ。
    「誰か1人が倒れるだけでも、残る人達への負担はどんどん大きくなるものね」
     死闘自体は有栖の望むところだが、それで敗北しては元も子も無い。

    『これでもくらえやぁあああ!!』
     アスファルトに靴跡を残し、姿が消えたかのような高速の左ステップをレスラーが入れる。牡丹の脚が掴まれたと周囲が気付いたのは、彼女が完全にバックドロップの態勢に持ち込まれてからだ。直後、脳天が地面に叩きつけられる鈍い音が響き渡る。
    「今ですわよ!」
     だが、心配を押し殺して華乃は叫んだ。そして始まる一斉攻撃は、レスラーをようやく沈黙させた。励ましと回復を受け取って、すぐにその場を後にする。

    ●青い海に強者は来たる
     アンブレイカブルの少女、エリザの拳は、恐るべき破壊力を宿して灼滅者達へと襲い掛からんとしていた。
    「さあ、楽しい殺し合いを始めましょう!」
     有栖の声に、アンブレイカブルエリザがこちらを振り向く。
    『新手!? なんて小賢しい……! 人数で戦力差を覆せると、本気で考えているの!?』
     苛立ちを露わにするエリザへ、有栖を先頭に救援チームは一斉に突撃した。消耗し切った灼滅者達は一旦回復へと回る。
    「これもパターンやね……」
     チセは思わずごちた。仲間達が傷つき、シキテが消えても動揺しなくなってくる自分に驚く。
    「流石に七戦目ともなると慣れて来るな」
     法権が同意する。段々と敵の力量を見て、大よその戦闘の流れも掴めるようになって来ていた。
    「加勢、ありがとうございますっ! ……それにしても、同じ『有栖』さんでも、だいぶ違いますね」
     小笠の言葉を背中で聞きながら、有栖はエリザへと斬りかかっていく。

    『弱い者ほどよく群れる……あなた方にお似合いの言葉だと思わないかしら!?』
    「鉤爪ッ!」
     エリザの展開した煌めく糸が、後衛を庇った煌理のビハインドを消滅させる。シキテやデウカリオンも同様だ。
    「全然っ! まったく! 思わないしっ!!」
     繰り出された一斉攻撃が、エリザを灼滅へと追い込んでいく。

    「よろしければ、皆様の傷を回復させて頂きたく存じます。……いかがでしょう?」
    「賛成っ! となれば、早くしなきゃだね」
     救援先の者達が、ただしく回復に当たってくれる。
     既に救援チームの者達に、心霊手術に使えるような回復サイキックは尽き果てていた。
     だが1回目の心霊手術を終えるのと、遠くで次の救援要請がもたらされるのは同時だった。
    「ありがとうございました。よろしければ、差し入れを受け取って頂けますか?」
    「こちらの包みもどうぞ。保温パックに入れてあるので、まだ温かいはずですから」
     想希と有栖から、おにぎりやバーベキューの肉や野菜が綺麗に収められた包みを受け取り、法権は小さく頭を下げた。
    「栄養と気持ち、確かに受け取った。感謝する」
     手短に述べて、救援チームは花火の上がった方角へと走り出した。
    「頑張ってくださいね。応援してます!」
    「救援、ありがとうございました! とっても助かりましたっ!」
     ルクルドと小笠の声を背に受けて、夏の頂へと走り出す。

    ●夏の頂
     揺れる炎の向こうに、巨漢の影が揺れる。こちらの増援に怯む様子もない顔つきを見て、飴はデウカリオンに命じる。
    「デウ、急いで!」
     タイヤの下で砂が噴き上がった。ユークレースの後ろ襟に手を伸ばさんとしていた巨漢へと鋼鉄の車体が突っ込んでいく。一輪バイクのタイヤが、巨漢の筋肉に轍を刻み付ける。
    「ぐ、ア……ッ!!」
     だが敵も苦痛に声を上げながら車体を無造作に蹴り倒す。
     強烈な一撃は、金属のフレームを易々と貫通した。弾けるようにデウカリオンが消滅、解放された足を砂浜に降ろし、繰り出した続けざまの攻撃は、飴が引き受ける形となった。
     キャンプファイアーの揺らめく炎が、跳ね上げられた飴の体が地に落ちるまでの間に影を乱舞させる。
    「強いアンブレイカブルとの戦い……、ご褒美、です、ね」
     血の塊を喉の奥から吐いて、飴は動きを止めた。
     助けられる形となった灼滅者が、彼女を抱えて後退する。
    「流石ですわ、飴さん!」
     役割を果たしたことへの賞賛を口にしながら、華乃が、暦が、相次いで異なる角度からの蹴撃を叩き込む。さらにそこへと態勢を立て直した救援先の灼滅者達も加わり、攻撃を加えていく。
    「ガッ……ッ!」
     両腕を顔の前に上げ、巨漢が膝をつく。
    「ここまでで、既にかなり追い詰めてはいたようですね」
     葵は敵の様子をそう見て取る。
     救援チームの後押しを受け、バベルブレイカーが巨漢を消滅させるまで、長い時間はかからなかった。

    ●北の大地で燃える闘気
    「ここまで、独力で勝利したのは1か所だけ……か」
     インソムニアを併用し、夜を徹して監視に当たっていた法権は早朝の砂浜を暴風吹き荒れる戦場へと向かいながら改めて戦いの厳しさを痛感する。
     独力での勝利を報告してくれたのは、ブレイブがいる1チームだけだ。

    「急ぎましょう!」
     葵が皆にそう促す。既に何回かの消滅と復活を経たシェリーは、主人と共に早朝の砂浜へと吹き荒れる暴風へと突入した。
     その中央にいるのは女性アンブレイカブルの舞園・キョウカ。繰り返される暴風が、戦う灼滅者達から抵抗力を奪い去っていく。
    「ここで終わるがいい!」
    「やらせんて……!」
     暴風を巻き起こさんと力を籠めるキョウカに抗するように、清らかな風が舞っている。それに助力するように、チセが唯一残したヒールサイキック、天魔光臨陣を展開した。
     キョウカと救援対象の灼滅者達が、ハッとして空を見上げる。救援先のハナが同じく放った清めの風と合わさり、傷を癒していった。
     動揺するキョウカを救援先の者達と共に包囲し、総攻撃を開始した。
    「流石に圧倒できるな。この様子なら私達は手伝うだけで十分か」
     暦はバベルブレイカーを繰り出しながらそう思考する。
     救援先の恭輔が、大きく消耗する前に救援を呼んでいた影響は大きい。
     やがて救援チームに大きなダメージを与える間もなく、キョウカの灼滅は完了した。

    ●海に荒ぶる
    「予知されているのは、残り2件ですか」
    「そしたら、チー達と向こうの班が1か所ずつ受け持てばええな」
    「じゃあ、こっちは次が最後かしらね」
     葵とチセの言葉を受けて、有栖が少々残念そうに言う。
     チセの言葉通り、戦力温存の必要は、既に無い。だから戦闘開始の連絡が入ると同時に、灼滅者達は即座に移動を開始した。

     砂浜の向こう、救援先の者達を薙ぎ払うのは禍々しい色のリングスラッシャーだった。七つに分かれたそれが、朝の海風を突き破って灼滅者達を斬り裂いていく。
    「さあ、仕上げといきましょうか!」
     飴はデウカリオンを加速させた。
     既にサーヴァント達は一撃受けたら戦闘不能になるデコイ状態だ。灼滅者達自身も、完全に回復し切れていない。
     対して、敵のチハヤは対集団にも長けている。
     戦場に突入したサーヴァントが消滅し、続いて飴と華乃が倒れ伏す。
    「けど、ここまでだね」
     暦のエアシューズがリングスラッシャーを蹴り飛ばしながら呟く。
     霧華の一刀が、チハヤの胸に袈裟懸けの斬線を刻み付け、ここに灼滅は完了した。

    「向こうの班も終わったようだ。これで任務完了だな」
    「あー……しんど……」
     法権と同じ報告をヘッドセット経由で聞いたチセは、服が汚れるのも気にする余裕なく、ずるずると砂の上にへたり込む。

    作者:真壁真人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月12日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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