臨海学校2014~北の大地で燃える闘気

    作者:鏡水面

    ●望みをかけて
     穏やかな海の音が聞こえる。青空に舞う鳥たちの鳴き声が、海の音を彩るように木霊した。
     自然が生み出す音に割り込むように、エンジンの唸る音が響く。道路の脇に、黒塗りのバンが止まった。
     『HKT六六六』のロゴが、太陽の光を受けてきらりと輝く。車の扉がゆっくりと開き、中から黒いボディスーツに身を包んだ女が姿を現した。背はさほど高くないが、ぴったりと体にフィットしたボディスーツからは、鍛え抜かれた逞しい筋肉が見て取れる。
    「ここが興部町か」
     女は10キロメートル以上に渡る海岸線の先を見据えた。彼女の名は、舞園・キョウカ。天覧儀最後の席を勝ち取るため、興部町へと足を踏み入れたアンブレイカブルだ。
    「残った最後の席は、必ず私が手に入れる。そして、さらなる高みへ……」
     低く呟いて、キョウカは額に残る傷に触れる。それは前の戦いで負った傷だ。不覚を取った、不名誉な傷。今回の戦いで勝ち抜いた暁には、この傷を癒そうと考えていた。
     ふと風に乗って流れてくる喧騒へと耳を傾ける。臨海学校を楽しむ、武蔵坂学園の学生たちの声だ。
    「あれが私の対戦相手か? ……決戦の地に来てもなお、暢気に騒ぐか。いいだろう……私の拳と、この技の餌食にしてくれよう」
     キョウカはニヤリと口元を上げながら拳をメキメキと鳴らし、体からオーラを噴出させる。同時に足元のインラインスケートからは、ブワリと灼熱の炎が舞い上がった。

    ●激しい臨海学校 
    「今年は北海道の興部町で臨海学校を行うことになったよ! 夏場に涼しい北の大地! 最高だね……と、言いたいところなんだけど」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は、困ったように眉を寄せた。
    「武神大戦天覧儀のことは、みんな知ってるかな。柴崎・明の死後、『業大老』が新たな師範代を生み出すために、全国の海岸で行っているアンブレイカブル同士の戦いなんだけど、どうやら興部町でも行われるらしいんだ」
     武神大戦天覧儀は、次の段階へと進もうとしている。そのための過程として、日本各地から天覧儀に参加した猛者が、北海道興部町の海岸に集まるというのだ。そして、天覧儀最後の席をかけて戦うのだという。
    「みんなには、海水浴場周辺でキャンプを行ってもらって、やってくるダークネスを迎え撃って欲しいんだ」
     ダークネスがいつ来るかは定かではない。しかし、海岸でキャンプをしていれば、向こうから襲ってくるだろう。襲撃時は周囲に一般人はいないため、人払いをする必要はない。
    「敵は強力だけど、前みたいに止めを刺した誰かが闇堕ちするってことはないから、そのあたりは安心して欲しいな」
     また、今回は臨海学校で敵を待ち受けるのとは別に、学園側で戦闘を支援するチームも編成するとのことだ。戦闘開始後、一定時間持ち堪えることができれば、支援チームが駆け付ける。支援チームが戦闘に加われば、戦闘を有利に持っていくことができるだろう。
    「この作戦は、海岸の各所で行われるよ。分かれてキャンプをすることで、ダークネスを警戒させずに誘き寄せて、各個撃破する作戦なんだ。集まったダークネスを全部倒すことができれば、武蔵坂学園は天覧儀の勝者の権利を得られるだろうね。そうすれば、武神大戦の真相を暴くチャンスになるかもしれない」 
     説明を終え、まりんは一息ついた。
    「……まあ、ダークネスを倒すことも大切だけど、できるなら臨海学校も楽しんで欲しいな。せっかく北海道に行くんだしね」
     興部町には、透明度が高い綺麗な海が広がり、かつ地元の食材も肉から魚介まで豊富だ。武蔵野市では味わえないような空気を、満喫できることは間違いない。
    「ダークネスに邪魔されて面白くなくなっちゃうのも、なんだか悔しいし。任務をこなしつつ、楽しんできてくれると嬉しいな!」
     まりんはにっこりと朗らかな笑みを浮かべ、灼滅者たちを見送るのだった。


    参加者
    私市・奏(機械仕掛けの旋律・d00405)
    早乙女・ハナ(タリア・d07912)
    綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)
    翠川・朝日(ブラックライジングサン・d25148)
    街風・恭輔(翠月・d27472)
    干支那・潤(バトルマニア・d27596)
    百合ヶ丘・リィザ(不思議の国の武闘派アリス・d27789)
    ディエゴ・コルテス(黄金悪鬼エルドラード・d28617)

    ■リプレイ

    ●襲撃
     十三日の早朝。興部町の海は、今朝も穏やかに凪いでいる。一日目は敵の襲撃はなく、平穏な時間が過ぎていった。だが、それは嵐の前の静けさというもの。
     唐突に、尋常ならざる闘気に満ちた気配が近付く。
     インソムニアの効果により眠気を絶ち、周囲を警戒していた私市・奏(機械仕掛けの旋律・d00405)は、その気配の正体が舞園・キョウカであることを認識する。奏は鍋をレードルで打ち鳴らし、仲間たちに襲撃を知らせる。 
    「昨日は随分とお楽しみだったようだな?」
     キョウカは武器を構える灼滅者たちを眺める。出方を窺っているのか、先手を仕掛けてはこない。
    「もっと、早く来てくれても良かったのに。それじゃ、一緒に『遊ぼう』」
     静かに呟いた刹那。綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)が素早くも重い斬撃を振り下ろす。刀の閃きが、キョウカの脚部へと放たれた。キョウカは脚を裂かれつつも、後方へと移動する。
    「風のような攻撃……だが、まだぬるい」
     キョウカの脚から炎が舞い上がり、刻音へと放たれた。
    「させませんわっ!」
     百合ヶ丘・リィザ(不思議の国の武闘派アリス・d27789)がワイドガードを展開する。
    「ほう……」
     緩む炎の熱に、キョウカは瞳を細めた。
    「今後のためにも、君を灼滅させてもらうよ」
     奏は胸元にスペードの影を出現させる。戦闘開始の知らせは、キョウカが現れた時点で送信済みだ。街風・恭輔(翠月・d27472)も、飛び蹴りをキョウカへと叩き込む。同時にビハインドも霊力の波動を打ち放った。流星と霊撃が弾けるも、揺らぐことなくキョウカは戦闘の構えを取る。
    「これはハードな臨海学校になりそうだね!」
     ビクともしないキョウカを見据え、恭輔はいつもの調子で告げた。
    「……私にできることを、全力でやらせて頂くのでございます」
     翠川・朝日(ブラックライジングサン・d25148)は黒々と沸き立つ殺気を放出し、キョウカへと差し向ける。どす黒い殺気に包まれ、キョウカは邪魔そうに眉を寄せた。
    「なんで臨海学校まで来て、ダークネスの相手なんざしてんだろうな……まァいい。さっさと片付けちまうか」
     ディエゴ・コルテス(黄金悪鬼エルドラード・d28617)も、ジャガーを模した黄金鎧に潜む瞳に、バベルの鎖を纏う。
    「さっさと片付ける、か。その言葉、そのままお前たちに返そう」
     直後、キョウカは前方へと踏み込み、干支那・潤(バトルマニア・d27596)へと拳を繰り出す。潤は槍を両手で構えることで、拳の衝撃を緩和する。
    「そのおでこの傷はチャームポイントっすかぁ? それともうちがあんたの額に肉って刻んでやるっすかね、筋肉レディ?」
     潤の剛槍とキョウカの拳が、ギリギリと音を上げた。
    「刻めるのなら刻んでみろ。もっとも、そうはさせぬがな」
     キョウカの筋肉が脈動する。直後、潤を槍ごと後方へと吹き飛ばした。地面に膝を付き、潤は転倒することなく着地する。
    「あなたが何を考えているのかとかそんなのに興味はないけれど、邪魔をするなら退いてもらうだけ、よ!」
     攻撃を受けた味方に癒しの矢を放ち、早乙女・ハナ(タリア・d07912)が宣言した。その言葉に、キョウカは静かに返す。
    「退くのはお前たちだ。お前たちには、私が強者となるための礎となってもらおう」
     
    ●激闘
     キョウカの止めどない攻勢に、灼滅者たちは耐えつつも攻撃を加えていく。序盤は拮抗、予断を許さない状況がジリジリと続いた。その均衡を破ったのは、キョウカの攻撃。
    「ふんっ!!!」
     サイキック発動後のハナの隙に、キョウカが超硬度の拳を叩き込まんとする。ハナが身構えた刹那、間に潤が割り込み槍で拳を受けた。槍を高速回転させ、キョウカの拳を弾く。
    「回復役から狙うつもりっすか? 余裕ないっすね。ま、こんな弱いパンチじゃあ、届くわけないっすけど」
    「……私が弱いなら、お前は何だ?」
     挑発する潤に対し、キョウカは前に踏み込み槍を強引に掴んだ。そのまま潤ごと掴み上げ、反対側の地面へと投げ飛ばす。
    「ッ……!」
     激しい痛みに、潤は息を詰めた。次いで繰り出された蹴りの衝撃に、意識を失ってしまう。
    「それ以上はさせないよ!」
     恭輔は狼の魂を腕に宿し、鋭い爪でキョウカを斬り裂く。腕から血が流れるも、キョウカは眉一つ寄せない。
    「私は弱い。だからこそ、この場所にいるのだ。お前たちを倒し、強さを手に入れる」
     キョウカは恭輔を蹴り飛ばす。宙に浮いた恭輔へと、彼女はさらに接近する。電撃を纏うキョウカの拳に、恭輔の脳内で警鐘が鳴り響いた。リィザの背筋にも、冷たいものが走る。
    「恭輔様っ!!!」
     気付けば、弾かれたように体が動いていた。リィザは恭輔の前へと飛び出す。衝撃がリィザの体を襲い、意識を激しく揺らした。
    「リィザ……っ!!!」
     リィザは吹き飛ばされ、恭輔に背を預けるように崩れ落ちた。
    「……一気に二人とはね」
     奏は不利に傾いた戦況を考慮し、守りを固めるように位置取る。防御の要である前衛陣が二人沈んだことで、現状動けるのは六人。その六人も戦いを経て消耗しつつある。このままでは、間もなく前衛が瓦解する。
    「援軍が来るまで何とか耐えよう」
     恭輔は青い花火を空に向かって打ち上げた。灼滅者たちは、倒れた二人を守るように位置取りつつ、できるかぎり攻勢を緩めない。
     奏はバベルブレイカーから杭を打ち出す。ドリルのごとき高速回転が、キョウカの体へと捻じ込まれた。
    「力を手にして、どうするつもりだい」
     荒々しい力を手にしたその先には、何があるのか。天覧儀の正体を探るように、奏は問いかけた。
    「話すつもりはない」
     鋭いキョウカの拳を、奏は腕をクロスさせて受け止める。奏に注意を向けるキョウカ目がけ、ディエゴが眩いビームを放った。黄金に輝く光線は、キョウカの横腹に命中する。
    「不利だろうとやることは変わらねェ。戦う……それだけだ」
     ディエゴは落ち着いた口調で言い放ち、キョウカをまっすぐに見据えた。
    「……邪魔だ」
     ディエゴへと目標を変更し、キョウカが地面を蹴る。脚を振り上げるキョウカに刻音が急速に迫り、斬撃を繰り出した。
     刻音の刃は、とっさに受け身を取るキョウカの体を深く斬り裂き、赤い線を宙に散らしていく。
    「速い、心の音。私にも、聞かせて?」
     キョウカの心音を聞きとるように、刻音は神経を研ぎ澄ます。急所を切り刻む刻音の一撃は、着実にキョウカの体力を削り取った。
    「もっと、切り刻んであげる、よ」
     続く戦闘の中で傷付き血を流しつつも、刻音は無表情にキョウカを見つめる。キョウカも刻音を見つめ返し、面白そうに口元を上げた。
    「さっきは風と称したが、違うな……お前は刃。血の付いた刃そのもの。ならばその刃、折ってくれよう」
    「折られるのは、そちらでございます」
     刹那、キョウカの背を狙い、朝日の妖冷弾が襲う。朝日が生み出した妖気は氷の刃となり、目標へと迷いなく飛んでいく。ズブリと鈍い音を立てながら、それはキョウカの背中へと深く突き刺さった。
    「……背後を取られたか」
    「今のは、少々痛かったでございましょう?」
     僅かに息を詰めるキョウカに、朝日は淡々と言葉を返した。
    「……思うようにいかぬか。だが、それも一興!」
     氷の刃を背に受けながらも、キョウカは足元にエネルギーを集中させた。直後、暴風を伴った回し蹴りを前衛陣へと繰り出す。
    「そう言っていられるのも、今のうちよ!」
     即座にハナが、清めの風を展開する。暴風を穏やかなものに変えるように、優しい風が灼滅者たちを包み込んだ。
    「拳で戦わぬ軟弱者が、この状況においても諦めぬか」
    「馬鹿にしないで。みんなで無事に帰るために、わたしはわたしなりの戦い方が、あるんだから!」
     全員の傷を癒しきることはできなかった。それでも。
    (「今やれることをやるわ!」)
     ハナはキョウカを鋭く睨み付ける。
    「ならば足掻いてみせろ。そして、ここで終わるがいい!」
     キョウカは再び暴風を巻き起こさんと力を溜めた……瞬間。
     瞬いた激しい光に、思わず動きを止めた。
     灼滅者たちもハッとして空を見上げる。その光は、天魔光臨陣により生み出された巨大なオーラの法陣……そう。救援隊が、到着したのだ。
     光は降り注ぎ、ハナの回復と相まって傷付いた仲間たちを一気に癒していく。これにより、潤やリィザも戦う気力を取り戻した。
    「二人とも大丈夫かい?」
    「大丈夫っす。守ってもらった分、しっかり返さないとっすね」
     恭輔の言葉に頷き、潤は『牙槍・日本狼』をしっかりと握り直す。リィザも恭輔の無事にほっとしつつ頷いた。
    「皆様には感謝しなければなりませんね」
    「無事で良かったぜ。……さて、一気に巻き返しと行くか」
     ディエゴは低く告げて、キョウカの姿を大剣の刃に映す。灼滅者たちは救援チームの面々と共にキョウカを包囲し、総攻撃を仕掛けた。
    「人数が多くとも、同じこと!」
     キョウカは跳躍し、キックを朝日へと撃ち込んだ。激しい火花が爆ぜるも、朝日は異形化させた腕をかざし、衝撃を受け止める。
    「同じ、ではございません」
    「何……」
    「わからないのであれば、それでも構いませんが」
     キョウカが飛び退いた瞬間、朝日も跳んだ。今しがた攻撃を受け止めた鬼のごとき剛腕を、力のかぎり叩き付ける。
    「ちい、ッ」
     吹き飛ばされながらも受け身を取るキョウカ。その落下地点に、奏が弾丸を放った。
    「本当はもう、わかっているんじゃないかな」
     動きを封じる魔力の弾は、キョウカの体に命中する。奏の問いにキョウカは答えない。総勢十六人から攻撃を受け疲弊していくキョウカの姿が、代わりに答えを物語る。
    「何を考えて力にこだわっているか知らねェが、テメェはここで終わりだ」
    「私は……まだ終わらない!」
     ディエゴの言葉を、キョウカは否定する。体を無理やり動かし、拳をディエゴへと打ち放つ。
    「テメェはお呼びじゃねェんだ。とっとと消え失せろ!」
     一喝し、ディエゴは大剣を振り上げた。悪魔のごとき破壊力を宿した一撃が、キョウカへと振り下ろされる。禍々しい刃はキョウカの骨を貫通し、容赦なくその片腕を粉砕した。
    「邪魔者は退けるって言ったでしょ。あなたはここで終わりよ!」
     ハナも高く跳び、キョウカに飛び蹴りを繰り出す。巡る星々の輝きが足元から吹き上がり、流星の勢いをもってキョウカへと叩き込まれた。
    「終わりではない、と言っているだろう!」
     キョウカは潤へと残る拳を突き出す。しかし、槍に阻まれた拳は先ほどよりも軽い。灼滅者たちが重ねてきた攻撃が、彼女の火力をついに削いだのだ。
    「さっきのお返しっす。その安っぽいプライドごと、斬り裂いてやるっすよ」
     潤は挑発の口調を崩さず、エネルギーを槍に集束させる。キョウカの拳を弾き飛ばし、一閃。
    「がは……ッ」
     もう片方の腕を斬り飛ばされ、キョウカは大きく後ろによろめいた。そこに、リィザが追撃を入れる。
    「天覧儀を勝ち抜いた強敵との戦い、思う存分楽しみたかったですけど……今日はそれどころじゃありませんのよっ!」
     その手に、眩い電流が走った。爆ぜる雷撃の拳で、リィザはキョウカを殴る。彼女のライドキャリバー、ブラスも弾痕をキョウカの身に刻む。
    「ぐうぅああアアッ!!!」
     キョウカは吹き飛びながらも叫び、体から殺気に満ちたオーラを打ち出す。しかし、それは標的に届く前に、恭輔に阻まれた。
    「もう、誰も傷付けさせないよ」
     エアシューズから激しい炎を噴き上げ、恭輔は疾走する。接近し蹴り上げれば、キョウカの体は激しく炎上した。
    「があああああああっ!!!!!!」
     燃え盛る炎の中で、キョウカは轟音にも似た悲鳴を上げる。
    「ちょっと、その音は耳障り、かな。すぐに消してあげる、ね」
     刻音は静かに告げ、刃を閃かせた。体を高速回転させ繰り出されたそれは、キョウカの服と体をざっくりと斬り刻む。
     キョウカの体は燃えカスを散らしながら崩れ落ち、空気に霧散するように消滅していった。

    ●終戦
     激闘の末、灼滅者たちはキョウカを打ち倒すことに成功した。戦闘終了の連絡を入れたあと、救援チームのメンバー全員に心霊手術を施す。そうして次の場所に向かう彼らを見送って、無事任務は完了したのだった。
     ようやく普通の臨海学校が戻ってきた。灼滅者たちは海辺でのひとときを、思い思いに満喫する。
     潤と刻音は適当な岩場から同時に飛び込み、どちらが速く泳げるか競争する。
    「一族伝来の古式泳法! 犬かk……もとい、狼かきっすよ!」 
     手足を高速で回しつつひたすら前進する潤。その横を、クロールで刻音が追い抜いた。
    「負けない、よ」
     息継ぎのタイミングで、ぼそりと告げる刻音。二人は白熱した勝負を繰り広げる。朝日は体育座りでその光景を眺めていた。が、ふと思い立ったように立ち上がり、二人の後を追うように全速力で泳ぎ始める。
    「みんな泳ぎが上手なのねー。頑張って!」
     浜辺から泳ぐ面々を応援するハナ。ふわふわと微笑む彼女の隣で、ディエゴも同様に仲間の泳ぐ姿を眺める。アロハシャツにサングラス、浅黒い肌に輝く金のアクセサリが威圧感を醸し出していた。
     恭輔も浅瀬に立ったまま、泳ぐ女子たちを眺める。
    (「やっぱ女の子の水着姿はいいなぁ……」) 
     ぼんやり考えていると、突然顔に水がバシャリとかかった。
    「うわっ!?」
    「ふふん、余所見してるからですよっ♪」
     リィザがくすりと笑う。白ビキニにパレオ姿が何とも可愛らしい。
    「つか水掛けて遊ぶとかどうなの!」
     水をかけようとするリィザの腕を、恭輔は思いきり前に引っ張った。
    「きゃあっ!?」
     リィザは顔から水に突っ込む。
    「ふ、油断したね!」
     二人の水の掛けあいはさらに加速する。海でたくさん遊んだあとは、浜辺に戻って一休み。ハナとディエゴはお菓子やジュース、おにぎりやサンドイッチなどを準備してレジャーシートに広げる。
    「今日は一日おつかれさま! たくさん準備したから、遠慮せず食べてね」
     海から戻って来た面々をハナは明るく迎える。
    「なくなったら買ってくるぜ。今日は俺の奢りだ」
    「おおっ、奢りとは太っ腹っすねぇ! それじゃ、いただくっす」
     ディエゴの言葉に、潤は鳥の唐揚げをぱくりと口に入れた。
    「ん、おいしい」
     シートに座りソーダアイスをシャクシャクと食べながら、刻音も小さく呟く。
    「ん……なんか、いい匂いがするね……」
     皆の声と食べ物の香りに、パラソルの下で惰眠を貪っていた奏がむくりと起き上がった。
    「おう、食べるか?」
    「……そうだね。少しいただこうかな」
     奏は静かに返すと、ディエゴから差し出されたお茶とおにぎりを受け取った。
     恭輔もリィザと食事を楽しみつつ、ふと思い出したように言葉を零す。
    「学園祭ん時会わなかったから言い忘れていたけれど。その水着似合っているよ。うん、可愛いと思う」
    「な、なんですか今更。て、でも……ありがとう」
     リィザは顔を真っ赤に染める。その場でじっとしているのも恥ずかしく、近くで何やら砂を弄っている朝日に声をかけた。
    「朝日様、何をなさっているのですか?」
    「クラブの人にお土産を、と思いまして」
     そう告げて、朝日は手に持った袋の中身を見せる。中には色とりどりの貝殻や、ヒトデが入れられていた。
     こうして、泳いだり食事を楽しんだり、浜辺で珍しいものを見つけては騒いだりしながら、灼滅者たちの臨海学校は和やかに過ぎていくのだった。

    作者:鏡水面 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年8月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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